微エロ:提督×大井14-746


「今日の戦艦の防御力は凄かったね~……」

北上が納得の行かない演習結果に疲れたようにぼやく。

「完っ全に作戦が悪かったのよ……」

戦術的には勝利判定となったのに大井も不満気だ。

「………」

その二隻の小言に挟まれる指揮官の自分は、少しではあるが肩身狭さを感じ反論は一つもできない。
練度をひたすらに極めた相手艦隊の戦艦はデータ上は低速であるはずだが、
装甲の厚さと侮れない回避力を前に決定的な打撃を与えられなかったのだ。
それに加え、嘗ての海軍に見限られる程に魚雷とは元来命中率の低い艦装であり、
努力で完全に克服できる柔な宿命ではない事も熟知しているつもりだ。
かと言って本当の意味での重雷装艦とさせた魚雷のみの大井と違い、
比較試験のため片腕に主砲を残している北上が大井よりも良好な戦果を挙げたかと言えばそれもまた難しいもので、
果たして此奴らはどのように運用するのが正しいのか、
長い目で見てきても未だに結論付ける事が出来ないでいる。
北上が言うように此奴ら重雷装艦とは甚だ扱いが難しい船で、戦艦のように単純明快とはいかない。
それでも何故此奴らを使い続けているかと言うとそれは自分の趣味でしかなく、
此奴らにその事を尋ねられた時は何時だって重油を濁してきた。
特に練習艦として使われ続けるうちに作戦内容に敏感になっていった経歴を持つ大井の前でそんな本音をほざいてみろ。
冷たい魚雷でぶん殴られ木の床に沈められるのは目に見えている。

「あらやだ。北上さん、碌な作戦も考えられない提督ったら何も言えないみたいね」

「まあそう言わないであげなよ。提督も提督なりに考えてるんだからさ、って……」

「……やっぱり何も考えてないんじゃないんですか? 提督笑ってますし」

しまった、顔に出ていたか。
私の顔なんか見上げていないで二隻だけで和気藹々と駄弁ってくれればよかったものを。

「笑ってない。作戦は真剣に考えているつもりだ」

焼け石にバラスト水であろうと、念のため取り繕っておく。
次に聞かれたら重油をどう濁すのが格好付くか、とか、
これだから重雷装艦は面白いだとか考えていたのがばれるのは此方としては面白くないのだ。

「いや笑ってたよね」

「笑ってましたね誰が見ても」

「笑ってない」

「笑った!」

「笑いました!」

「笑ってない!」

ああもうゲシュタルト崩壊するからやめてくれ。
馬鹿みたいな言い争いを繰り広げながら廊下の右への曲がり角の一つで立ち止まろうとする。
すると。

どんっ!

「うわっ!」

曲がり角の側を歩いていた北上に突然衝突された。
衝突と言っても小突くような程度のもので、自分に被害はない。
北上はその後よろめいて尻餅を付いた。
正確には、北上に衝突されたと言うより……。

「いったー……」

「ううぅ、またやっちゃ……え?」

同じく床に座り込んで頭を押さえ唸っているのは、軽巡阿武隈であった。
どうやら自分らが五月蝿く騒ぎ立てていたせいで、阿武隈が廊下を走っていた事に気付けなかったらしい。
"廊下を走るな"の貼り紙を"廊下は静かに歩け"と書いたものに変えるべきかもしれない。
阿武隈が掟を守る気がないのか、貼り紙に気付かないのかは定かではないが、どちらにせよ効果は薄そうだ。

「き、北上さん、と、大井さん……」

貼り紙だけでなく私も見えないのか。
書いた者の存在感が薄いと貼り紙もそうなるのか。
怒っていいか。大井が。

「阿武隈ちゃん? "廊下は走るな"って、書いてあるわよねぇ?」

突き当たりの壁に貼られたそれを指差してくれる。
ありがとう大井。大好きだ。

「乱暴な字ですけど」

五月蝿い。
時間が推している時に何枚も手書きした物だから諦めろ。
座り込んだまま次第にこの世の終わりを悟ったような顔に変化していく阿武隈と、それを修羅の顔で見下ろす大井。
それは、何処から見ても蛙と蛇の図だった。

「ご、ごっ……、ごめんなさああぁぁい!!」

耳をつんざく大音量で放たれた謝罪の言葉が、ドップラー効果を持ってこの場に残る。
音爆弾の艦装は載せていない筈だが。
つまるところ、阿武隈は北上に当て逃げしていった。
せめてこの場で止まって謝罪していれば擁護する余地もあったのだが。
ところで、来た道を脱兎の如く全速力で戻って行ったが、阿武隈は何の用事があったのだろう。

「よくも北上さんを……、うふ、うふふふふ……」

「こら、美人がしちゃいけない顔になってるぞ」

演習を終えてすぐ艤装を下ろしていなければ阿武隈に攻撃していそうであった大井を窘める。
修羅を思わせる顔の歪め方をしていた大井は私の言葉にきょとんとし、
一呼吸置いて満更でもなさそうに少しだけ顔の歪みを戻した。

「……美人? そうですよねー、堅物気取りでヘタレな提督を骨抜きにしたんですからねー」

「あのな」

合ってるけれども。

「……いちゃついてないで助けてくれないかな」

「いちゃついてませんよ。……北上さん、立てる?」

大井は姉妹艦を心配するのみの顔付きに変化させ、手を差し伸べた。
大井の手を取り起き上がった北上の装甲は少々傷ついている。

「あーもう小破しちゃったよ。せっかく入渠したのに……」

この後すぐには出撃命令は出さないから、もう一度ドックへ行くか明石の世話になってきなさい。
ただ高速修復材の使用は控えてくれ。
あまり時間もかからないだろうし、何よりこんな下らない事故で一々使っていられない。
兎にも角にもあの阿武隈には後で私から言っておくから許してやれ。

「え? あの娘のところに行くんですか? …………」

どうした。自分で手を下さないと不満か。

「あんな娘の元なんかに……、いえ、何でもないの」

大井は取り繕うようにやけににっこりと笑って艦首を振る。
一先ず自分はこのまま執務室に行くから、大井は北上を連れて行ってやりなさい。

「いいよ、小破なんだからあたしだけで」

「駄目よ、また何か起こるかもしれないわ。守ってあげるから一緒にドック入りましょう!」

ドックまで連れて行ったら大井は戻るんだぞ。いいな。

「ッチ」

おい。



あの後阿武隈の部屋を訪ねてみたが、阿武隈は不在だった。
大井に襲撃される事でも恐れて逃げたか。
仕方なく執務室に戻り、演習前から置き去りにしていた書類に手を付けていると、扉が叩かれる音が響く。

「大井、戻りました」

うむ。
では早速で悪いがそこに分けておいた書類を処理してしまってくれ。
自分は此方の束に集中したい。

「分かりました。さっさと終わらせましょう」

そう意気込んで大井は私の隣に座り、筆を握る。
私の任務は小一時間かかりそうだが、大井の方は半時間もかからないだろう。
共に黙り込んで紙の束を消化していく。

自分の見込んだ通り、大井は時間をかけずに素早く消化してしまった。
やる事がない大井は姿勢を崩しながらも健気に私の作業の終焉を待ってくれる。
特に喉が渇いてはおらず、お茶淹れにも断ったので尚更退屈そうだ。
それからまた数分そうしていると、視界の端で大井は突然ぶつぶつと何事か呟き始める。

「北上さん、大丈夫かなぁ……。私がいないと心配だなぁ……。
うん……、心配……きっと、そう、きっと何か起きてる! 私、行かなきゃ! …………」

…………。
何なんだ。
その、ちらっと此方を伺うような横目は。
返事でも求めているのか。
何を返せば満足なのか。
あと少しかかるから、それまでは好きにしろとしか言えない。
集中しているのだから。
すると、まるで代わりに答えるように鳩時計の針やら歯車やらの機械音の後に鳩が鳴く。

「……あらやだ、ヒトナナマルマルです。もうすぐ夕食の時間ですね。私、ちょっと夕食の仕込みしてきますね」

む?
間宮の手伝いでもするのか。
出来ると言うのであれば行ってこい。
しっかり頼むぞ。迷惑はかけるなよ。

「言われるまでもありませんよ」



大井が出て行ってから、暫くして本日付の執務は粗方片付いた。
後は余裕があれば片付けた方がいいものもあるが、集中力を切らした自分は食堂へ足を運んでいた。
騒がしい食堂の厨房には割烹着に身を包んだ間宮と大井の姿が。
大井が持っているその蓋付きの鍋の中身は何だ?

「勿論、愛情たっぷりの、大井特製カレーです!」

ほう、カレーか。
今日は土曜日ではないが、良かろう。
実際土曜日にカレーを作るなんてのは、多くの兵が艦上で何日も過ごす事のある海軍の名残りでしかないから構わない。
ではその愛情を香辛料にしたであろうカレーを貰おうじゃないか。
そういえば北上の姿が見えないが、修復はまだ終わらんのか?

「あ、いえ。それが、北上さんにもあげようとしたら、もう夕食は済ませたって……」

それはそれは、残念だったな。
まあ安心してくれ。
大井の有り余ってしまった愛情は私が全部頂く。
私と北上にしか食べさせる気がなかったのか、そのくらいの鍋ならおかわりすれば完食できるさ。
早速よそってくれ。

「はい。では、そこの席で待っていてください」

そう言って大井の目線の先の席とやらを見る。
そこは二人用の小さな席がぽつぽつある食堂の入り口付近で、
多くの艦娘が陣取る海を一望できる窓際辺りと比べると閑散としている。
あそこじゃないと駄目か?
間宮の作業場が見えるカウンターか海が見える窓際近くがいいんだが……。

「だ、駄目です。あまり騒がしいところは好きませんので」

むう。まあ良かろう。
そこまで執着はしない。
素直にその席につき、大井はテーブルに鍋を置きまた引っ込む。
今度は割烹着を脱ぎ、白飯を盛った皿を持って現れた。
同じように大井も対面した席につき、鍋の蓋を開ける。
すると、厨房で歴戦を繰り広げた証である湯気と香りが立ち込める。
今日もカレーは美味そうだ。

「"は"とはどういう意味ですか。頭にぶちまけますよ」

一々細かいところに突っ込むな。
大井の愛情を頭から被るのは悪くはないが、これは愛が情熱すぎて火傷を負ってしまうからまた別の機会に頼むぞ。
では頂くとしよう。

「はい。召し上がれ」

薔薇を思わせるにっこりとした笑顔で許可を頂いたので、白飯とカレーを掬ったスプーンを口に運ぶ。
米特有の甘みを持つふっくらしつつも立った白飯と、辛過ぎない程度に食欲を促進させてくれる香辛料の入ったカレーは、
自分好みに調理されている味で毎度ながら感服される。
一口目を咀嚼して飲み込んだ後、大井は最早聞き飽きたであろう短い賞賛の科白を今日もつく。
よく出来ている。美味い。

「美味しい? そうでしょう?」

嗚呼、具も柔らかく煮込まれている。
完璧だよ全く、カレーはな。

「一言多いです。文句言わず食べて下さい」

言われなくとも二口目を運び、大井を観察する。
テーブルに両肘をついて頬に手を当てる大井は、
美味しいと言ってやれば嬉しそうに目を細め、今のような戯言を言ってやるとむっとして口角を下げる。
内に秘めるように普段微笑を浮かべていながらも、実際はこうしてころころ表情を変えるから面白いものだ。
二口目も飲み込み、すうっと流れる後味の中、自分の味覚は何時もと違う何かを感じ取った。
大井、隠し味か何か入れたか?

「あ、分かりますか? 隠し味を入れてみたんですよ」

ほう。自分はそういった試みに挑んだ事が無いから分らないんだが、何を使った?
チョコレートか? 牛乳か?

「愛情を入れました」

自分は、がくっと少し首を横にずっこけさせた。
それはさっき聞いた。
そうじゃなくて、何か別の食材でも入れたんじゃないのか。

「はい。いつもお疲れの提督の為に、元気になるものを入れました」

「ふうん……」

漢方薬か何かだろうか。
心遣いは身に染みるが、カレーの隠し味には はっきり言ってしまうと合っていない。
しかしカレーの味を壊す程不味くもないので、自分は気にせずまたスプーンを口に運ぶ。
話は変わるが大井よ。
お前は食べないのか。

「え……。私はいいんですよ、提督のために作ったんですから」

なら一口やろう。
ほら、あーんだ。

「い、いやっ、私は……」

どうした。
何故差し出したスプーンから逃げるように身を引くんだ。
料理の基本である味見も毒見も行ったのだろう?
不味くないから大丈夫だ。
大井が食べないで私だけ呑気に食べてはいられない。
ほら、口を開けてくれ。

「で、でも……」

ははあ。
もしや間接キスでも気にしているのか?
それ以上の事をやってきてこんなので恥ずかしがるとは、大井は乙女だなあ。

「恥ずかしがってなんかいませんよ!」

だったら一緒に食べような。
ほら。

「……ぁ、あーん……」

大井は自分で作った癖に、
まるで苦手な物でも食べる子供のように目を瞑ってスプーンのカレーを口で受け取り、不安そうに口を動かす。
何を怖がっているんだ。美味しいだろ?

「お、美味しい、です……」

そうだろう。
私の為に愛情込めて頑張って作ってくれたんだから、不味い訳が無いんだ。
この分だと鍋の方も冷めるまでに食べ尽くせるな。
このカレーは二人で食べてしまおうな。
ではもう一度。あーん。

「そんな……」

何か言ったか?
此方から口に入れておいて悪いが、よく聞こえなかった。

「んくっ。い、いえ、何でもないの」

そうか。ならさっさと食べてしまおうな。
遠征部隊もそろそろ帰ってくる頃だ。
そう言って自分は腕時計を気にしながらカレーの咀嚼に勤しんでいた。
その隙に、大井が恨めしげに何事か呟いていたのを自分は全く気付けなかったらしい。

「ううっ、どうなっても知りませんから……!」




さて、それからというもの自分と大井で手分けして時間もかからずに一つの皿を二回空けた。
のだが、自分の身に異変が生じていた。
別段激辛のカレーを食べた訳でもないのに……。

「はぁ、体が熱くなってきた? そうでしょう、ね……。はぁ……、はぁ……」

そうなのだ。
体の中を熱が疼く。
運動していないのに息が荒い。
屋内なのに汗も滲み出ている。
そして何より、同じような症状が出ている大井が、何故かとても扇情的に映える。
一応断っておくが、自分は時と場所を考えずにこんな情を抱く獣のつもりはない。
大井も途中から自棄になってカレーを食べていたが、お前は本当に何を入れたんだ……?

「言ったでしょう……。ん、提督が"元気"になるものって……」

まさかとは思うが、もしかして。
自分がやがてある一つの答えに行き着き、口にする前に大井がゆっくりと立ち上がる。
テーブルに両手を突いてやっと立ち上がった大井はふらふらになりながら私の肩に縋り付き、
私の耳元で妖艶に何事か囁きかける。

「早く、はぁ……、早く、はぁ、行きますよ、執務室……」

大井が食堂の入り口から近い席に座るよう指示したのは、この為だったのだろうか。
自分も、そろそろ我慢が限界を迎える。

……………………
…………
……

共に危ない足取りで執務室に引き篭もり、施錠した。
カレー鍋も、食器一式も放置してきてしまった。間宮よ許してくれ。文句なら大井に頼む。
残った理性の欠片はそんな事を遺言とし、弾けた。
執務室の扉に大井を押し付け、次々と口付けを落とす。

「っ、はぁ……。好きですね、提督も……」

「"も"ってのはどういう意味なのかな」

「一々拾わないでくれませんか……」

知った事か。
お前にだけは言われたくないね。
同じ物で塞がれれば物言えなくなると思うが。

「黙ってて下さい。ちゅう、ちゅ……」

首を伸ばすようにして私の口に大井は吸い付く。
大井の柔らかい両手が私の顔を包む。
まんまと嵌り、共に戯言をきけなくなり、部屋には夜戦の始まりを告げる音だけが響く。

「っぱ、はぁ、はぁ……」

やがて口を離した頃、大井は体を完全に扉に預けてしまっている事に気付いた。
自分も両手を扉に預けてやっと足を床に支えている状態だ。

「はあ、ほら、向こう行くぞ……」

「……っ」

大井は顎を引いた。
私の肩にしがみ付く手を取り、更に奥の私室へ連れ込む。



寝具に飛び込み、事を再開した。
装甲の乱れた大井の扇情的な姿に堪らず、色んな場所に口付けを落とす。
まず、足。

「はぁっ……。提督、んっ、そんなところにして、楽しいですか……、んっ……」

聞かず唇を押し付け、吸い付く。
十数秒もそうしていると、いい具合に白い足に跡が付いた。
周辺に幾つも付けていく。
気が済んだら、次に、腹。

「ぅ、ん……、んっ、臍に、興味があるんですか……?」

次に、手の甲。

「っ、ふふ……。はぁ、気取らないで下さいよ……」

次に、首筋。

「っあ……、はぅ、うぅ……」

最後に。

「っ、やっとですか、んむ、……ちゅ、ちゅ、ぇる……はぁ、ちゅる」

自然と共に口を開き、小さな舌を絡める。
情はどんどん深まり、口だけでなく互いの首が互いの腕で繋がれ、足も縺れ合う。
身を引き寄せ合い、互いの熱を共有する。
大井のボイラーは自分に負けずひどく熱い。
あのカレーは殆ど半分ずつ食べたようなものだからな。
特に熱暴走がひどいのは下腹部だ。
自分の考えている事を読むように、大井の手が私の局部を布越しで擦る。

「ちゅく、っあ、はぁ、はぁ、提督の魚雷、もう硬くなってるじゃないですか……」

誰の所為だ誰の。
責任取れよ。

「ふぅ……、んん、こんなつもりじゃ、なかったんだけどね……」



「責任取って、処理してあげます……。私だけが、ね……」

……………………
…………
……

「どうしたの大井っち、前の服なんか着て」

「え、北上さん!? えと、気分よ、気分……」

午前。
やっと昨夜ぶりに邂逅を果たした北上が、大井に話しかける。
臍部分が隠れる以前の装甲に身を包んだ大井は、後ろ指でも指されたように僅かに飛び上がった。

「なんでずっと魚雷つけてるの?」

「え、こ、これは……。そう! 昨日北上さんに衝突した艦に制裁を与える為よ!!」

大井は仇討ちに燃える修羅を演じているつもりか、腕を突き出す。
しかし説得力がない。何故なら。

「じゃあなんで補給してないの?」

「えっと……、暴発したら危ないじゃないですか!!」

魚雷が一門も装填されていない発射管を見せられて、誰もが疑問を持つ筈である。
見事に打ち破られた大井は最早言っている事が支離滅裂であった。
その横で自分は知らぬ顔を貼り付けつつ、自分は北上と同じように大井に疑問を突っ込む事もしなかった。
真実は自分と大井しか知らない。
朝になって我に返った自分らは、体のあちこちにできた夜戦の痕跡である赤い印をどうにかして隠す事に奔走した。
自分は元々袖も丈も長い服装なので今まで通りの格好で良いのだが、
それなりに露出がある大井はそうも行かない。
大井の首筋は長髪に隠れるから良いとして、足、腹、手の甲に私がつけた印をどうするか。
議論の結果、腹まで隠れる装甲に変更し、足と腕に艦装を施していれば隠れる事が分かり、今に至る。
これに阿武隈への仇討ちの意志は全く含まれていなかったが、北上の言葉で大井は思い出してしまっただろう。
本当に仇討ちを遂行しかねない。
阿武隈よ南無三。
これに懲りて金輪際廊下を走らない事だな。
唯、刑執行人が大井の場合だと金輪際走る事が出来ない体にさせられそうである。
そのブレーキ役となるべく、今日は一日一緒にいるとしよう。



「はい、提督にオムライスです。……え? いやだ、愛情以外何も入ってませんよ。うふふ……」

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最終更新:2018年04月14日 08:17