「自分には関係のないことだと思っていました。この気持ちが強さに繋がるとは……。
さすが提督殿、恐れ入りました……ますますあなたのことを知りたくなったであります」
白手袋を外して曝け出したあきつ丸の白い指で、指輪は銀色を主張させている。
黒の装甲に身を包むあきつ丸自身の生身の色もそうだが、光を反射するそれは一際目立っていた。
自分があきつ丸に贈ったそれが、関係ないと言うあきつ丸の答弁を完全に否定してくれる。
今やあきつ丸はここにすっかり慣れたものだが、
一方の自分は全く別世界の陸軍で作られたあきつ丸について、知り尽くしたとはまだまだ言い難い。
自分も益々あきつ丸の事が知りたい。
あきつ丸と紡ぐこれからの日々がどのような走馬灯になるのか、とても知りたい。
自分はそう思っている。
「提督殿も、でありますか」
奇遇な事にな。
するとあきつ丸は白手袋を装備している右手で軍帽のつばを引っ張り、気恥ずかしそうに目元を隠そうとする。
それでも、ふちから左目が此方を覗き込んでいた。
「それなら、自分にいい案があります」
白い左手で右手を掴まれる。
指輪の硬い確かな感触を味わう間もなく、自分は奥の私室に連れ込まれた。
あきつ丸は、施錠した扉に私の体を押し付ける。
木の扉に装飾として施された凹凸の感触が背を刺すが、
一方目の前では、元々の肌に添える程度の白粉を纏った顔が迫っていたのでそれどころではなかった。
「ん……」
唇が柔らかい感触を受け震える。
此奴は昔からずけずけと物を言う奴だったが、口を塞ぐ時までその性格は変わらないようだ。
それでも流石に経験まではそれに伴わなかったようで、
口を他人の同じ物に重ねるだけの行為が初めてである事を教えてくれる。
口でなく別のモノに押し付ける行為はこなしてきたと言うのに、皮肉な物だ。
「っは……。ふふ、提督殿も、こういったことは知らないようでありますね?」
悪かったな。
だが経験がないのはおあいこだ。お前がそうやって私を笑う権利はない。
「別に馬鹿にしているのではない。
提督殿も、こういったことをこのあきつ丸で知ってもらえることを嬉しく思うだけであります」
あきつ丸はこう補足するが、
自分はやはり遠回しに馬鹿にされているような、見縊られているような気がしてならなかった。
だから、可愛いものでも見るような目で私を見詰めるあきつ丸の柔らかい笑みを崩したくなるのは、
当然の道理と言えよう。
その道理に則り、自分はあきつ丸の唇を奪いに行く。
「っ!」
が、頭の軍帽が邪魔をした事でそれは阻まれた。
当たり前だ。
自分もあきつ丸も、軍帽を被っている。
小細工無しで突っ込めばそうなる事は明白だったのに。
顔の角度を傾けて私に挑んできたあきつ丸を見習え。
「っふふ……、落ち着いて。自分は逃げないのであります」
ほら、また笑っている。
もう黒歴史確定だ。今のはノーカンだ。
あきつ丸。やり直させろ。
「お断りであります……。んむ……」
あきつ丸は私の失態を無かった事にはしてくれず、口を啄ばみに来る。
作戦を考えていなかった私と違い、あきつ丸はやはりしっかりと角度を考えて軍帽同士の衝突を避けている。
あきつ丸の作戦に完全に呑まれているようだ。
「ん……、ん……」
とは言っても、幾ら練度を上げようともあきつ丸は戦闘に向いている船ではなかった。
それ故あきつ丸が単独で遂行する作戦はとても慎重だ。
分からないままに求めようとするあきつ丸の接吻には、それがひしひしと表れている。
「ぁ……! はふ、ちゅる、提督、殿っ、んむ、んぁぁ……」
だから、あきつ丸の作戦と言えど、私も参加して先導しないと先へ進めない。
あきつ丸の口をこじ開け、舌を捕まえた。
それを弄ぶと、あきつ丸は驚きながらも拒まない。
あきつ丸の邪魔な軍帽を取る。
陸軍所属のあきつ丸は、今ばかりは本当に私だけのものだ。
あきつ丸の体を反る程に抱き寄せる。
「んっ、ぱ、んむ、ちゅく、ぅぅ、ん……、はー……。っふふ」
どうした。
面白いものを見るような目で。
「自分の熱も提督殿に感化させることができたようだ、と思いまして。
提督殿の激しい一面を知ったのであります」
珍しい事にな。
只、彼方にとってはこんな事は何の価値もない情報だろうよ。
「からかわないでほしい。情報目的などではなく、純粋な気持ちで自分だけが知っていきたいのであります」
分かっている。
自分もそうだ。
だからこそ、抱き寄せたあきつ丸の身体を素直に魅力的だと思う。
堅苦しい言動とは逆にこのふくよかな身を感じたくて、寝具へ導いた。
自分のとあきつ丸の軍帽を脇へ放る。
寝かせたあきつ丸の、自分の軍服と同じような作りの装甲をゆっくりと確実に解いてゆく。
内側の白シャツも完全に開くと、【以下は陸軍により検閲】
これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
最終更新:2017年11月27日 01:15