325 :幼妻大鯨ちゃん:2015/07/07(火) 21:33:39 ID:ydASYHzY
七夕に合わせた話を投下します
今回も独自設定とか艦娘論とかが多くて
エロが少なめですのでNGはいつものでお願いします
ある日の朝、俺は葱を切っている音で目が覚めた。味噌の匂いがした。
「…………おはよう」
俺はまだ少し眠たかったが布団から起き上がった。
「おはようございますう」
そこにいたのは愛する妻だった。
幼さを醸し出している顔と声からは想像できないほどスタイルのいい女性だ。
彼女は一見するとおしとやかな美少女に見えるが、第二次世界大戦を戦った航空母艦龍鳳、
その前身となった潜水母艦大鯨の力を宿した艦娘だ。
「昨日は遅かったみたいですからもう少しお休みになられたらいかがですか?」
「いや、今日は大事な行事がある日だからいつまでも寝ているわけにはいかん」
「そうですか…………まあ今五時半ちょっと過ぎですから別にいいでしょうね。
でも夜は早く寝てくださいね。自分の体をもっと大事にしないと……」
心配そうにする妻を見て少し心が痛んだ。俺は身支度をし、
朝食が用意されたちゃぶ台の前に座り、味噌汁を啜った。
「ん?これ、まさか去年みたいに…」
「ええ。生姜を少々入れました」
ほのかな生姜の味が再び活力を与えてくれるようだった。
「あなたに初めて褒めていただいた思い出のお料理です」
『インスタントの味噌汁でさえこんなに美味しく作れるなんて、大鯨は将来きっと…料理で人を幸せに出来るだろうな』
そう、去年の今日の朝そう言った事もあった。いいお嫁さんになれそう、と言いかけたのは内緒だ。
「………うん、出汁が効いていて美味しいな。
去年の工夫を凝らしたインスタントの味噌汁も美味しかったけど、
材料から作った味噌汁は格別だな」
「お口に合ってよかったです」
彼女の笑顔に俺の心も緩んだ。誰かと自分の空間で朝ごはんを再び食べるようになって調度一年。
それから毎日朝ご飯を彼女と一緒に食べている。
一緒に暮らすようになってからも、そして結婚してからもずっと。
ずっと一緒にいるわけだから良いことばかりではなくちょっと悪い事もあるだろう。
他人に気を使うことは煩わしい事であるかもしれない。
だが彼女にそのような感情を抱いていたとしても、
一人の人間としてはずっと孤独だった俺にとってそれは心地よいものだった。
この先何があるのかわからないが、提督として人々を護りながら、
一人の男としてどんな時も彼女を守り一緒にいたい。
俺はそう思いながら朝の平穏なひと時を楽しんでいた。
ジリリリリン!
だがそんな朝の平穏なひと時は一本の電話によって終わりを告げた。
「はあ……こんな朝から…………ああ、私だ」
「大淀です!提督っ、大変です!鳥海さんが!」
「大淀、鳥海がどうした!?」
「突然倒れて…」
「なんだって!?」
鳥海。その名の通り重巡洋艦鳥海の力を秘めた艦娘である。
彼女がそう簡単に倒れるなんて信じられないが……
「鳥海が倒れた。大鯨、急いで支度を!」
「…はいっ、提督!」
平穏な朝は終わりを告げ、電話を切ったとき俺達は提督と艦娘になっていた。
「心配いりません。疲労の蓄積と寝不足とが重なっただけです。
今日一日ゆっくりと休んでいれば治りますよ」
「よかった……」
医師の言葉に俺達は胸を撫で下ろしたが…
「ごめんなさい…こんな大事な日に倒れてしまって……」
鳥海だけは俺達に何回も謝っていた。
「だって今日は七夕で…子供達にお話の読み聞かせを…ゴホン…」
「いかん、その体では何もできぬ」
「でもでも…」
「君の体調不良に気付かず働かせた俺の責任だ。君はゆっくり休め。いいな!」
「……はい…………」
俺の剣幕に鳥海は渋々ながらも納得した。
「それでどうなさるのですか?
子供達はきっと七夕の物語の朗読会を楽しみに待っていたはずです。
それを今更中止にするわけには……」
大淀の心配はもっともだ。俺達は今日、
深海棲艦によって被害を受けた子供達の慰問に行く予定だ。
深海棲艦を倒すだけではなく、
俺達が深海棲艦から護れなかった人達を助けるのもまた俺達である。
俺自身は人的被害は幸いなことに一度も出していなかったが、
物的被害を出してしまったこともあるし、
それ以上に艦娘をただ戦うだけの兵器・兵士にするわけにはいかなかった。
艦娘は戦力である。それゆえにかつての過ちから『戦力』という存在を嫌う日本では
深海棲艦出没当初は艦娘に対して否定的な意見も沢山見られた。
しかし、深海棲艦が今までの常識が通用する相手ではなかったこと、
日本と同盟関係にあったアメリカ、
対立があったとはいえ隣国である中国やロシア、朝鮮半島の国々など、
それらの国々が自分達の国を守る事で手一杯であり、
とても日本を手助けする余裕などなかった事などから
艦娘という存在を否定する者はいなくなった。
だが今は深海棲艦という敵が存在するからこそ許されていると言えなくもない。
もし深海棲艦がいなくなって平和な世界になったら人間同士の争いで使われるのではないか……
そういった不安を持つ者達はいないわけではなかった。
もちろん艦娘の中にだってそういった娘はいる。
だから俺達は艦娘をただ兵器・兵士という扱いにはさせなかった。
艦娘は戦う事以外の才能に優れた者達も数多くいる。
料理の上手な大鯨や鳳翔に間宮、絵心がある秋雲、真実を求め続ける青葉…………
彼女達が艦娘となってからそれらの力に目覚めた者もいれば、
艦娘になる前からそのような力を持っていた者もいた。
彼女達にはその特性を生かした、戦い以外の任務も与えていた。
艦娘がただ、敵と戦いそれを討ち倒す為だけの存在とならないように…………
「て・い・と・く!提督っ!!」
大鯨の少し怒気に充ちた声に俺は現実に呼び戻された。
「なんだ…ああ、今日の朗読会の事だったな」
「そうですよ、ちゃんと考えてくださいよ」
「ちゃんと考えていたさ」
少し脱線したりしたけど。
「今回の朗読会は深海棲艦のせいで不幸になった子供達の慰問の為のもの。
今の俺達とは直接関係がないとはいえ、
かつて艦娘達が守れなかった為にああいった子供達が生まれたのも事実。
ならばこそ、彼等を支えるのも俺達の役目だ。
いつか平和な時が来た時に艦娘達が戦い以外の生き方もできるようになる為の練習でもあるしな……」
「ええ、私は元々お料理が上手でしたからともかく、他の艦娘の大半は……」
「今はそんな話をしている場合ではないでしょう。倒れた鳥海さんの穴埋めをどうするか…」
「まさか中止にするわけには……」
「…………大鯨、大淀。君達に緊急の任務だ……」
「え……はい」
「朗読会は俺と大鯨と大淀がやる。君達は今から練習していてくれ」
「提督……」
俺にいきなり任務を振られたからとはいえ、二人とも驚きを隠せていなかった。
「それじゃあ本日の秘書や提督がいない間の仕事は…」
「名取に任せる。君達は俺の指示に従ってくれ。
俺も出来るだけ早く仕事は終わらせるからそれまで君達二人だけで頼む」
「りょ、了解!」
二人の声が重なって執務室に響いた。
―むかしむかし、夜空に煌めく天の川のほとりに織姫という娘がおりました―
大淀のナレーションで朗読は始まった。
―織姫の織る布はとてもとても美しいものでした。
織姫の父親である天の神様、天帝はそんな娘が自慢でした。しかし……―
「美しい布を織る織姫はわしの自慢の娘じゃ。
じゃが、機織りばかりしていて自分の事を何とも思っておらん。
年頃なのにかわいそうじゃ……そうじゃ、婿を探してやろう」
俺が天帝役として台詞を言う。
―こうして天帝は娘の為によい夫を探しはじめました。
ある時天の川のほとりを歩いていたら……―
「天帝様、いつもご苦労様です」
「お主もな彦星……そうじゃ、彦星よ、わしの娘を嫁にいらぬか?」
「て、天帝様の娘と、私とが夫婦になれと…」
「その通りじゃ。いつも真面目に働いておるお主ならきっとわしの娘とお似合いじゃ」
彦星の台詞も俺である。一人二役、結構大変なんだよなこれが。
―こうして、彦星は織姫と出会いました。
そして、真面目な二人同士、気が合ったのか、すぐに結婚しました―
「織姫……好きだよ……」
「彦星様……私もあなたを愛しています。
いつも……はい、いつも、いつまでも、あなたと一緒に……」
―夫婦となった織姫と彦星はとてもとても仲良く暮らしていました。
ですが、二人は一日中遊びつづけ、まったく仕事をしなくなりました。
これには天帝も怒り、二人に注意をしました。―
「お前達、夫婦仲が良いのは結構だが、お前達にかせられた仕事も忘れずにな」
「わかりました。これからは気をつけます」
「これからはきちんと仕事しますから、どうか許してください」
―しかし、二人は注意をされたにもかかわらずまったく仕事をしませんでした。
織姫が機織りをしなくなったために神々の着る服はボロボロになりました。
また、彦星が牛の世話をしなかったために牛はやせ細り、
田畑も草が生えたままとなり、
これには天帝もついに堪忍袋の尾が切れました。
そしてとうとう、織姫と彦星を引き離してしまったのです―
「いくら注意してもお前達は与えられた仕事をしなかった。
もはやお前達が一緒に暮らすことははかぬ。
お前達二人は今日からもう夫婦ではない」
「そんな!?」
「散々忠告してこの有様。彦星、もはやお前を認めぬ!
織姫よ、さあ帰るのじゃ」
「嫌っ!私は彦星様と一緒に…」
「いいから帰るんじゃ!」
「嫌ああぁぁぁぁぁっ!」
―こうして、愛し合う二人は離れ離れとなってしまったのでした―
「これで、二人は仕事を頑張るだろう」
―ですが、天帝の思うようにはいきませんでした―」
「織姫……ああ、織姫…………」
―大切な人と引き離された二人は、悲しんでいるばかりでした―
「彦星……様………グスッ……………」
―これにはさすがの天帝も大弱り。何かいい方法はないかと考えました。そして―
「お前達を引き離してすまなかった。お前達にもう一度夫婦として暮らす事を許そう」
「ほ……本当ですか!?」
「ただし、一つ条件がある」
「どんな条件ですか!?」
「お前達二人が出会えるのは一年に一度、七月七日だけだ。
それ以外の日はただひたすら仕事を行う」
「構いません!一年に会えるのがたった一日だとしても、織姫と会えないよりはずっといい!!」
「大切な人と会えない悲しみなんて、二度と味わいたくありません!!」
「そうか……ではこれからは真面目に仕事をするのじゃぞ」
「はいっ!!!!」
―こうして、二人は再び仕事を頑張ったのです。
神々の服は再び輝くものとなり、田畑も大いなる穣りに恵まれたのです。
そして今でも二人は仕事を頑張っているのです。
一年に一度、七月七日にもう一度巡り会う……
それを心の拠り所にして…………―
お話はこれで終わりだ。
パチパチパチパチパチパチパチパチ…………
朗読が終わり、皆拍手をしていた。
失敗せずに済んだ……俺はそう思っていた。
「私がしっかりしていたらみなさんに迷惑をかけずに済みましたのに……」
俺達は鎮守府へ帰り、真っ先に鳥海のもとへ向かった。
話を聞いた鳥海は俺達に平謝りをしていた。
「いえいえ、司令官、大鯨さん、それに大淀さん。三人ともとてもよかったですから」
新聞記事の為に同行していた青葉が俺達を褒めた。
「お世辞はよせやい」
俺はわざと信じていないような感じの口調で応える。
「お世辞なんかじゃありませんって。司令官の演じ分けは見事でした。
大鯨さんも山場では必死さが出ていてまるで本当に引き離されたんじゃないかって感じでした。
あ、そうそう、大淀さんも優しい語り口調がよかったですよ。なんだか鳥海さんみたいな感じで……」
「私みたいな……」
「え?いや、その…大淀さんは別に鳥海さんができる事はなんでもできるなんてことは……」
しどろもどろになった青葉はきっと自分でも何を言っているのかわかってないだろう。
コンコン
そんな青葉に助け舟を出すかのようにドアのノック音が響いた。
「あ、どうぞ」
鳥海の返事の後にほんの少しだけ間を置いてドアが開いた。
「鳥海さん、具合はどうですか?」
「名取ちゃん?」
入ってきたのは名取だった。そうだ、あとで報告を聞かないと。
「うん、もう大丈夫よ。あと少し寝ていれば明日にはもう元気になります」
「よかった…」
「名取ちゃん、お見舞いありがとう」
「お礼なんて…………」
お礼を言われ慣れていないのか、名取は恥ずかしがって顔を赤らめた。
「あ、司令官さん、朗読会お疲れ様です。
司令官がいない間任された仕事、私がやっておきました。
詳しいことはあとで大淀さんに聞いてください
「そうか、わかった」
俺に気付いた名取が報告した。
「あの…名取さん……」
「な、なんですか…」
何か気になることがあったのか、大鯨が名取に尋ねた。
「どうして眼鏡をかけてらっしゃるのですか?」
「え?どうしてって……その……」
「名取さんは本を読むときは眼鏡をかけているんですよ」
名取への質問に青葉が割り込んで答えた。
「それに眼鏡をかけた姿ってなんだか秘書みたいじゃないですか。
せっかくだからと形から入ってみたんじゃないのでしょうか?」
「秘書みたい……」
秘書みたい、という青葉の言葉に何か思うところがあったのか、
話のあとの方は聞いていなかったみたいだ。
鳥海への見舞いの後に大鯨に買い物へ行かせる予定だったが、
少し遅くなりますけどよろしいでしょうかと尋ねてきたので
許可を出したら少し帰りが遅くなりますと改めて言って如月と共に買い物に行ったのだった。
その日の夕方……
「そういえば今日で提督と大鯨が一緒に暮らして一年になるんだよな」
「出会って一ヶ月でなんて凄くはっやーい!」
「運命にひかれたみたいで、まるでそれは星座の神話みたいですね」
「七夕で星座の神話とか恋愛関係では不吉でしかねーよ」
「どうしてなのです?」
「最近調べてみたけどギリシャにも七夕の伝説はあるらしいけど、
それが琴座・ライラの神話、オルフェウスの悲しき神話と一緒なんだよな」
「それは不吉ね。そういえばドイツには七夕伝説はないけどフィンランドにも七夕伝説はあるらしいわね」
「イタリアにもありませんわ。七夕伝説は恋愛関係の話ばかりなのですから
イタリアにもあってもよさそうですのに」
「話を元に戻すわ。提督ったらどうして大鯨さんとあんなにも早く一緒に暮らしはじめたのかしら」
「一目惚れっぽい?」
「ああ」
あまりの即答に聞いた夕立も、そこにいたみんなも半ば呆れ気味に驚いていた。
「テートク、バカショージキなのもいいけどさ、少しは隠そうよ」
「下手に誤魔化して間違った情報が流れちゃ嫌だからな」
「けど提督はともかく大鯨ちゃんはどうして……」
「あんまり聞いてやるな、大鯨から聞けよ。それよりさ……」
天龍がそう言って話題を変えてくれた。一応詳しい事情は知っているが気が利くな。
「空は晴れ間が見えないな。雨は止んだのに」
「雨はいつか止むさ。止んでも雲が晴れるとは限らないけどね」
「雨だったら鵲さんが橋になってくれるけど、曇りだったらどうなるんでしょう」
「一年に一度会える日だからみんなに見られたくない事をするんじゃないかしら」
「お?如月、帰ったか。大鯨は…」
「ただいま戻りましたあ」
「お帰り大げ……」
戻ってきた大鯨は眼鏡をかけていた。
「どうしたんですか大鯨さん。まさか…」
「ただのオシャレですよ。決め切れなかったのとセールとでたくさん買っちゃいましたけど。
あ、安心してください、私の私費で買いましたから」
「そういえばお昼に私が名取さんが眼鏡をつけて秘書艦業やっていたのは
形から入ってみたんじゃないかって話しましたね。
それを真に受けちゃいましたか?」
「どっちでもいいでしょ」
「そうよ。それに眼鏡をかけたら夜戦がもっと捗るかもしれませんわ」
「夜戦が捗る!一個頂戴!」
「それさえつけたらお肌も荒れなくなるかしら?」
「あらあら、私も夜の戦いに備えて一つくらいは欲しいわね、うふふ」
「よかったら一つずつどうぞ」
如月のいつも通りの突拍子もなさそうな言葉をそのまま受け止める者、
勝手に勘違いする者、わかっててとぼける者。
あまりにもいつものことなのでもう誰もつっこまなくなった。
「ところでみなさんどんな願い事考えましたか?私は健康第一です」
「そういえば鳥海さん珍しく体調不良だったわね」
「ごめんなさい、今は大丈夫です。無理は禁物ですが」
「どうしてあんな事になったんだ」
「朗読会でちゃんと演じ分けしようとして、夜更かしばかりしてしまって…」
「責任感強いんですね。そういえば司令官、あまり練習してないのに演じ分けが結構上手でしたね」
「台本のコピーをもらっていたからな。暇なときにちょっとやってたんだ。
演劇の類は昔は結構得意だったからな。まあそのおかげで大鯨にどやされずに済んだわけだ」
「私はそんなこと言いませんよ」
「いやな、ちょっと前に夢の中で劇か何かの台詞を大鯨と一緒に読もうとして、
突発的でいきなりでタイミング掴めなくて全然読めなくて、
それで大鯨に物凄く怒られたってのがあったからな」
「不思議な夢ね。でも大鯨ちゃんは怒ったとしても司令官を見捨てたりはしないわ。
だって短冊に司令官と一緒にいたいって書いてあったし」
「乙女ね。でもいつまでもそう思うことは大切かもしれないわね」
「司令官は何かしら…………来年の伊勢志摩サミットが成功しますように……」
「はっやーすぎぃ!そもそもなんで今からなのよ」
「今度のサミットは伊勢志摩の賢島で開かれる」
「カシコジマ…確か陸路が鉄道以外ではほとんどなく、周りは海に囲まれて……
……アトミラール、まさか!?」
「察しがいいなビスマルク。そうだ、周りが海に囲まれている。
つまり深海棲艦の攻撃に晒される危険がかなり高い。
もし襲撃されて被害が出れば俺の首一つが飛ぶだけでは済まないだろう」
「私達艦娘がちゃんと守らなければいけませんね」
「責任重大っぽいね」
「艦娘という存在の意義さえも揺らぐ事になるのは目に見えている。
だから今からでもやらないと…」
「わかりましたから湿っぽい話はここまでにしましょ。
今日は上を見ても天の川が見えませんから前や下を見ましょ。
今夜は流し麺です。素麺だけじゃなくてラーメンや春雨、パスタもありますよ」
「まさに日本の行事って感じですね、じゃあ私も…」
「大鯨さんはお疲れでしょうからいいですよ。私、伊良湖が全て行います」
「苦労かけてすみません。せめて飲み物だけは持ってきますね」
そう言って大鯨は飲み物を取りに行った。
彼女が取りにいった飲み物はほとんどがノンアルコールだった。
隼鷹や那智のようなアルコール好きは既に勝手に自分で持ってきていた。
「はあ…癒されますね」
そう言いながらも大鯨が飲んでいたのは低アルコール飲料だった。つまり…
「ねえ提督、流し麺とかは提督の発案ですけどよく思いつきますね」
思案しようとしたところを大鯨が入り込んできた。
「ここは軍の類とは違うとはいえ、旧日本海軍気質な考えの人もいますし…」
「だがそうばかりではないだろう?艦娘をはじめとして多くの者がかつてではなく今を生きる人間だ。
特に艦娘は旧日本海軍の人々の力と魂をその身に宿せる存在。
いわば彼女達は旧日本海軍の艦船といえるだろう。
そんな彼女達だ。自らの意思で戦う者がたくさんいて、
わずかだが己の意思にかかわらず戦わされている者もいる。
だがどちらにしても戦いで心が傷付いている事に変わりはない。
戦いが好きな奴も嫌いな奴も。どこかで人間の心が壊れて言っている。
俺は彼女達を兵器にはしたくない。最後まで人間でいてほしいんだ。
だからこうやって人間らしさを忘れさせないようにしているんだ。
そして、守るべきものの存在を忘れさせない為に……」
「提督…」
熱く語った俺に改めて惚れ直した、いや、アルコールのせいなのか。
顔を赤らめていた理由はわからない。でも…………
「ん……はっ……どうです…か……気持ちいい…ですか……?」
「ああ、柔らかさが心地好くて、最近致していないからもうすぐ出そう…」
「出すときは言ってくださいね」
七夕行事を終えた後、俺達は二人だけの夜戦に臨んだ。
彼女がアルコールを飲んだ時、それはOKサインだというのがいつしか暗黙の了解になっていた。
そして彼女は買ってきた眼鏡をかけている。何となく目的は…やばい!?
「すまない、もう出そうだっ……」
「はいっ!」
俺の限界を言葉で聞いた彼女は豊かな胸に挟んでいた肉の棒の先端を自分の顔に向けた。
ビュルルッ!
そしてすぐに肉の棒の先端から熱くドロリとした少し濃い白濁が彼女の顔や髪にかかった。
目はつむっていたが、眼鏡に守られて少しもかからなかった。
「……おわったよ、もういいよ…」
「ん……はい…………こんなにたくさん…」
ぶっかけられた彼女はその量に驚いていた。久しぶりとはいえたくさんだった。
そんな彼女の綺麗な顔も髪もとても汚れていたが、
興奮するどころか罪悪感が込み上げてきた。
元々俺はぶっかけるよりも中に包まれながら出す方が好きだからな……
あそこだけじゃなくて口の中や胸の中とか。
さすがに尻の穴はちょっと……という感じだが。
俺は眼鏡も好きだったが、やはりぶっかけ趣味には合わないと今思った。
それでもやってくれた彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
なんとかして…彼女を気持ち良くさせないと……
「あなた…どうしました?」
彼女が俺の様子を見て驚いていた。
彼女に言われて俺も気付いた。猛烈な眠気に襲われたことに。
なんだかまぶたが重い……
「心配なぃ…」
「心配ですよ、言葉になっていませんから!
最近もまた仕事ばかりであまり休んでいないんでしょ?
だから私のことは気にせずに休んでください」
「でも……君をまだ……」
「いいから休んでください!鳥海さんの二の舞になってほしくないんです!」
「っ…………すまない……」
俺は絞り出すような声で言っていた。そしてそこで意識は途切れた……
『もう……しょうがない人ですね……』
って思わず言いたくなりますね。
今日は久々に夜戦出来ると思っていたのに……
でもあまり無理させちゃいけませんからね。
この人だって別に私としたくないから眠っちゃったんじゃないことは分かっています。
いつもいつも……私や他の艦娘達、
そしてこの地上の人々のことを考えているんですからね。
私ばかり相手にしていたらそれこそ七夕伝説と同じ轍を踏んじゃいます。
今わかりました。七夕伝説って
『好きなことばかりしてちゃダメ。やらなきゃいけないことはやらなければならない』
という教訓があったんですね。
だけど……やっぱりこの体が火照ったままじゃ寝られません。
かといって自分で慰めるのも……
あ……この人寝ちゃってますから好き勝手しちゃいましょう。
私は前に寝ていたりしても好き勝手してもいいって言いましたから、
私がこの人に好き勝手しちゃっても別にいですよね。
大丈夫です、別に負担になるようなことはしませんから。
だ・か・ら……
「好きにさせてくださいね、あ・な・た」
終わり
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後書き |
339 :幼妻大鯨ちゃん:2015/07/07(火) 21:48:20 ID:ydASYHzY
以上です
最近の情勢とか、夢で見たこととか、近くで長崎のことをやっていたりとか
そういったいろいろなものが無造作に入り混じってしまった気がします
でも大好きな人と一緒ならどんな状況だろうと前向きに頑張っていける
そういう気持ちを忘れないでいたいです
それでは
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これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
最終更新:2017年03月20日 19:53