非エロ:提督×鳥海「想いを込めるもの、愛を込めるもの」16-88

88 :想いを込めるもの、愛を込めるもの:2015/02/14(土) 22:05:44 ID:rr5V7JAk
「私の計算では、この甘さがベストなはず……あ…あの……このチョコレート、どうぞ…………」

私は勇気を振り絞ってチョコレートを愛する人…私の旦那様に渡しました。
想いが通じ合う夫婦の関係でも、こういう時は緊張するものです。

「ありがとう」

彼はそう言ってすぐに箱を開け、チョコレートを口にしました。

「………………」
「………………」

沈黙が流れました。彼の口に合ったでしょうか……

「……おいしいよ、ありがとう」
「…よかったぁ……」

彼の喜んだ顔を見て私も思わず笑顔になっちゃいました。勇気を振り絞って渡した甲斐がありました。
別に夫婦なのですから特別勇気を出す必要なんてありませんけどね。
でももし口に合わなかったらと思ったら勇気を出さざるをえないでしょう。

「でもごめんなさい。私の手作りじゃなくて如月ちゃんに作ってもらったものですから」
「それは仕方ないよ。君は出産したばかりでまだ万全じゃないからさ」
「そうよ。それにレシピを考え、私がその通りに作ったものを食べて最終的な判断したのはあなたよ」
「でも如月ちゃん迷惑だったでしょう」
「気にしないで。私の方こそあなた達に迷惑をかけたし」
「おあいこですよ。私も似たような事で仕返しをしたわけですし…」
「まあ二人とも落ち着け。ああいう事があろうとなかろうと如月は作ってくれていただろうさ」
「そうですね…」
「ごめんなさい司令官。見苦しい争いを致しまして」
「いや、わかればいいさ……ん?電も欲しいのか?」
「いえ…」

遠慮しながらもチョコを欲しそうに見つめているのは
私達がいない間に秘書艦を勤めていた電です。
あの人が司令官になって最初に出会った艦娘でもあります。


「じゃあちょっとだけ食べてみるか?」
「鳥海さんが司令官さんのために作ったチョコレートですから…」
「いいんですよ。私も如月ちゃんも味見として結構食べましたから」

あの人の為に作ったチョコレートですから本当は全部あの人に食べてもらいたいです。
けどそんな考えは少し大人気ないかもしれません。
それに電ちゃんは秘書艦として私の代わりに頑張ってくれましたから少しは労わないといけません。

「いいんですか?……それじゃいただきます……」

そう言って電ちゃんは恐る恐るチョコレートを口にしました。恐る恐るなのは味がどうこうではなく、
『司令官の為に作られたチョコレートを自分が食べていいのか』という気持ちなのでしょう。

「……おいしい…ありがとう……」

本当においしそうに食べていた電ちゃんの素直な笑顔を見ていたら
私の小さな悩みもどこかへ吹き飛んでいきました。

「このチョコレート、なんていうか……
 お母さんを感じるような味でしたけど、どんなものを入れたんですか?」

その言葉に私と如月ちゃんは一瞬言葉に詰まりましたが……

「鳥海さんの愛ですわ」
「ん…そうですか…」
「お母さんの味って言うくらいだからミルキードリンクでも入れたんじゃないのか?」
「そ、そうですよ、よくわかりましたね!」

如月ちゃんの言葉やあの人の思い込みでなんとかこれ以上の詮索は避けられました。
私達の態度が少しぎこちなかったのもなんとか怪しまれなかったかもしれません。


楽しい時間はあっと言う間に過ぎていくものです。

「あの、司令官さん、そろそろお時間ですよ」
「わかったよ電。じゃ、行ってくる。如月、後は頼んだぞ」
「まかせてね」

そう言って彼らは部屋を出てまた仕事に向かいました。

「ふぅ…………でも鳥海さんって不思議ね。大胆なのは格好だけかと思ったら
 司令官に渡すチョコレートとして
 母乳で作ったミルクチョコレートを作っちゃうなんて……」
「ッ…………」

考えたのは自分なんですけど、他人に指摘されると流石に恥ずかしいです……

「あら、赤くなってる。そうそう、そこが不思議なの。
 大胆な格好や行動とかするかと思ったら急に恥ずかしがったり…
 というかなんでチョコに母乳を入れたのかしら?」
「私は出産したばかりで母乳が出るということでちょっとだけ試してみたかったんです。
 試してみたら意外とイケました…それに母乳だったら愛がたっぷりな気がして…」
「そうね。母乳って母親が子供に与える無償の愛が形になったものですからね。
 でも赤ちゃんにちゃんと飲ませないと司令官怒りそうですよ。
 あの人妙な所でこだわる癖がありますから」
「赤ちゃんにはちゃんと飲ませてますよ。
 使った母乳は赤ちゃんが飲まなかった分を使っていますから大丈夫です」
「……で、来年はどうするの?」
「来年は……」
「流石にまた母乳ってのは無理と思うわ。あなた達が頑張るのなら別だけど」
「来年のことを言うと鬼が笑うって言いますからね。来年のことは来年考えますよ」
「そうね。来年のチョコレートはあなただけの想いを込めてあげてね」
「如月ちゃん……」

少し寂しそうな顔をしていた如月ちゃんの姿が印象的でした。
私はこれから子育てと作戦立案と戦闘と大忙しになるでしょう。
でも私には希望があるから頑張れます。
私が生まれた日を祝ってもらう、あの人やあの子が生まれた日を祝ってあげる、
そして今日みたいな特別な日に大切な人へドキドキしながら想いを伝える……
そういうことを楽しみにしながら毎日を頑張っていきたいです。
人間、楽しみがないと生きていてつまらないですからね。

―終―

+ 後書き
91 :名無しの紳士提督:2015/02/14(土) 22:10:03 ID:rr5V7JAk
まずは鳥海のSSを投下しました
最初は書く予定がありませんでしたが
バレンタイン限定ボイスを聞いて閃きました
シリーズで鳥海を子持ちにしていたのでこんなネタにしました
母乳でミルクチョコレートが作れるのかどうかいくら調べてもわからなかったので
もし間違っていたらその時はごめんなさい


これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2017年01月04日 23:21