週刊循環経済新聞(2007年11月26日)
木材情報297 需給動向、プラと同じプロセス

 

 木材リサイクルは言うまでもなく、全国各地にチップの大口需要家となるバイオマス発電施設が林立したことで、搬出サイドでは廃材やチップの供給不足が課題になっている。
 チップ調達については、これまでは商社が間に入る形で、バイオマス発電施設を中心に活発な営業が行われてきた。しかし、リサイクル市場では少しずつプラスチック分野と似てきている。ユーザーの取組はサーマルが先行し、マテリアルが巻き返し、その間に海外輸出を軸とするグローバルリサイクルが進み始めるというものだ。
 木材リサイクルは2003年まではチップの受け皿が少なかった。製紙・ボード・燃料など用途・グレード別に廃材を分け、水選別や金属検知機を通して品質管理を徹底しても、絶えずチップの供給過多に悩まされていた。
 それが、木材の発生量が最も多い関東圏を例に取ると、茨城県と県境が近い福島県いわき市の日本製紙勿来工場が2004年9月までに年間のチップ消費能力9万トンのバイオマス発電施設を立ち上げた頃から、各地に発電施設が林立した。
 わずか3年間でチップの需給関係が逆転し、チップ業者や中間処理業者は商社などと連携を図りながら、廃材分別や品質管理が容易な燃料を中心にユーザーを選ぶ状況が増え始めた。また、廃材の調達競争も厳しくなり、処理原価が割れるほどのダンピングが懸念されるケースさえ出てきた。
 需給関係が逆転した当初はチップの売買価格はそれほど動かなかったが、2007年度に入ってから、ユーザーの買値が上がったり、運賃をユーザー側が負担するなどの展開が見え始めた。バイオマス発電や製紙会社以上に、パーティクルボードメーカーで積極性が感じられる。チップを確保するための営業エリアも広域化している。そんな中で、木材の中国輸出などグローバルリサイクルの取組も活発化しそうだ。まさに、プラリサイクルと同じようなプロセスをたどっている。

 

※ここに書かれていることが起こる可能性はありますが、価格次第にどう変動するかは何ともいえません。中国で紙や木質ボードの需要が上がれば、木材チップ価格も比例するので日本から輸出する事態も考えられます。


週刊循環経済新聞(2007年11月19日)
木材情報296 脱「発生頼み」へ向けた動き

 

 全国木材チップ工業会のまとめによると、チップ価格は全国的に値上げ基調で、10月末の市況速報によると1トンあたり300~700円の上昇となっている。しかし、製材残材や建築解体材は、建築基準法改正の影響がまだ続いており、大幅な減少傾向にある。
 解体材系木くずの確保が先行き不透明となる状況から、改めて生木に注目する業者も現れている。
 生木は質さえ良ければ、買値の高い製紙用や木質ボード用原料としての出荷が可能となる。
 パーティクルボード原料は、解体系で含水率の低いチップが多く使われている。しかし、製造工程では、ある程度の水分を要する。したがって、一定量の生木を混ぜて使うと、一石二鳥(水分補給および原料補給)のメリットが出てくる。だが、燃料用の場合は、生木の割合が多くなり過ぎると、サイロ内で円滑に落ちないなど、ハンドリング上の問題も時に生じるようだ。
 一方、産廃・一廃由来の木くずは性質上“発生頼み”にならざるを得ず、外部要因に左右される確率が高く、生木も例外ではない。
 一部の木くずチップ業者の間では、そんな不安定な状態から脱却するため、未利用樹木が眠る山林を買い求め、チップ原料の自己調達を図ろうとする動きも出ている。
 設備的には、破砕機のみならず、バーカーも導入すれば「製材業者」と兼業することも可能だ。むいた皮(バーク)は燃料用に活用ができ、付加価値の高いマテリアルリサイクル原料として売却できるので無駄がない。ただし、生木チップを製紙用に出荷するには、専用の切削ラインをもうけなければスケールメリットが出にくく、小まめな刃のメインテナンスも必要となってくる。生木を本格的に取扱い、利益を生み続けるには、それなりの投資と、原材料を継続的に確保できる道筋をつけておく必要がある。

 

※生木のチップ化はかつて木材自給率が高かった頃は盛んに行われていました。ある程度高価格になれば安定的な供給が可能ですが、製紙会社や木質ボードメーカーの意向に左右されやすくなります。


週刊循環経済新聞(2007年11月12日)
木材情報295 先行き保障ない“解体材頼み”


 近畿圏では、木くず不足がいよいよ本格化する見通しとなり、売り手市場を通り超え、もはや供給先に優先順位をつけるのさえ難しい状況となりつつある。
 ある中堅木くずチップ生産業者は「もうこれ以上切れる供給先はない。メインのユーザーの必要枠を確保するのが精一杯だ」と語り、先行きを懸念する。
 解体系木くずは、建て替え需要がどの程度続くか否かに左右される。依存し続けて「大丈夫」との保障がない限り、チップ生産側としては以前から業界内で指摘されてきた、一廃や生木などの集荷強化に本腰を入れる必要が出てくる。
 一廃系で、ある程度の量が期待できるものとしては、せん定枝と木質粗大ごみがある。
 せん定枝は、堆肥化などに取り組む自治体も増えつつあるが、依然として焼却処理の割合が高い。街路樹や公園緑地など公共機関の管理する立ち木は、夏と冬の前にそれぞれせん定が行われるので、入荷量の計算ができる。葉が一緒についていても、大多数を占める他の木くずチップに粉砕物をブレンドして出荷すれば問題ないレベルだという。
 環境省の2005年度一般廃棄物処理実態調査の結果によると、自治体などの粗大ごみ処理施設で発生し、焼却処理に回る残渣は全国で135万トン以上にのぼる。この中には、プラスチック類も含まれていると考えられるが、半数にしても70万トン近くになる。
 燃料チップ化に当たっては、家具などに付着している金属は除去し、塩ビ以外のプラスチックは多少混入していても差し支えない。ただし、取り扱いの割合が増えると、中間処理の許可品目追加も一考しなければならない。

 

※せん定くずは利用実態がほとんどわかっておらず、生木からの加工が望ましいかどうか疑問が残ります。小規模分散的に排出されるので、収集・運搬システムの構築が難しいと思います。

 



週刊循環経済新聞(2007年11月5日)
木材情報294 不透明感漂うチップの需給見通し


 

 近畿圏では、2007年12月に予定されている日本ノボパン工業(大阪府堺市)のバイオマス発電施設の稼働が、木くず需給動向の焦点となっている。
 これまで、大口の木くず燃料チップの需要は、兵庫パルプ工業(兵庫県丹波市)のバイオマス発電施設や住友大阪セメントの赤穂工場(兵庫県赤穂市)などが存在するものの、比較的供給とのバランスは保たれていた。木くずチップ業界は、中国・四国地域の製紙工場等へも、木質燃料チップの出荷を行ってきた。
 日本ノボパン工業の施設は、年間約7万トンの木質燃料チップの利用を計画しており、あわせて従来からのボード原料用のチップ使用量も、1か月当たり1万トン以上にのぼる。
 一方同社は、焼却・発電施設とともに、1時間当たり30トンの処理能力を持つ破砕設備(ハンマーミル)も新たに導入しており、産業廃棄物処理業の許可も受ける。つまり、自力でも木くずを受託できる体制が整うことになる。また、広域再生利用指定産業廃棄物処理者指定を早期に受けており、2003年の廃棄物処理法改正によって2008年10月、広域認定を切替取得している。これにより自社製品に関しては産廃収集運搬業の許可がなくとも、回収することができる。
 業界関係者の間では、ハウスメーカーなどとのつながりから「自然の流れで解体系も搬入されるケースが出てくるのではないか」と懸念する声も上がっている。
 ただし、ボード原料調達との絡みがあるため、日本ノボパン工業サイドとしても、急激な木くずの自社調達拡大は、従来の納入業者を刺激することにつながるため、どのあたりで棲み分けの線引きをするのか、判断を迫られるところだ。

 

※日本ノボパンは元々パーティクルボードの生産工場なので、熱と電力の両方を利用する素地はあります。あとは協力工場から入手した木材チップだけでは不足する場合どうするかを前もってどう考えているかでしょう。

最終更新:2007年11月27日 16:44