編集:足立(07/02/15)


環境省の統計によると、200341日の時点で産業廃棄物処理業(中間処分)の許可件数は全国で9,665件で、中間処理と最終処分は10,381件、最終処分のみも含めると11,054件であった。中間処理に限定すると、近畿地方の自治体では、合計971件(全国比9.4%)のうち兵庫が最も多く、大阪、和歌山が続いている。2003年の地域別産業廃棄物量は近畿地方が5,918万トンで、全国合計41,162万トンのうち14.4%を占めている。許可を受けた業者の規模がわからないが、排出された産業廃棄物すべてを近畿地方内だけで処理することは難しいことを示唆している。

 表1 近畿地方の産業廃棄物処理業の許可件数

区分

中間処理のみ

最終処分のみ

中間処理・最終処分

合計

中間処理

滋賀県

94

3

12

109

106

京都府

109

5

1

115

110

大阪府

264

6

1

271

265

兵庫県

322

17

10

349

332

奈良県

42

5

3

50

45

和歌山県

109

5

4

118

113

近畿合計

940

41

31

1,012

971

全国合計

9,665

673

716

11,054

10,381

資料:環境省のホームページ

(財)産業廃棄物処理事業振興財団の運用するホームページでは「産廃情報ネット」と呼ばれるコンテンツがあり、優良性評価制度適合業者であるなしにかかわらず、産業廃棄物業者情報が閲覧できる。各業者は優良性評価制度で定められた情報を公開する情報を任意で登録している。近畿24県の中間処理業者に限定し、当システムの利用状況を調査した。

 ホームページ上にリストのあった近畿24県の許可取得業者971社(中間処理)のうち、産廃情報ネットでの情報公開を利用している業者はトータル122社と約1割の業者が登録している(表2)。2003年時点の中間処理の許可件数とほとんど変わらないが、自治体のホームページで公開されている許可業者の情報は2005年あるいは2006年時点のことが多いので、実際の許可件数は1,000件を超えると思われる。ホームページで調べた自治体別にみると、兵庫が15.6%で最も多く、京都、大阪の順で、和歌山が3.9%と極端に低い。このシステムを使って情報を公開している業者はまだ少ないが、本来の趣旨からいえば自社でのホームページ作成・運営が困難な零細業者にとっては、情報公開の一つの手段として有用と考えられる。しかし、会社形態の大部分は株式会社で、その他の有限会社などはごく一部に過ぎず、個人事業者は1社も見当たらなかった。必ずしも有限会社が小規模とは限らないが、どちらかというと規模の大きい業者の方が産廃ネットで多く情報開示をしていることが示唆される。情報を開示している業者の中で約9割は自社のホームページを持っており、公開情報がコンテンツに含まれている場合がある。

 許可業者の中には自社で充実したホームページを作成していたり、一部上場企業の関連会社や協同組合などが含まれていたが、産廃情報ネットに登録していないことがあった。また、有限会社などでもごく少数でホームページを運用している場合があるとはいえ、内容はあまり充実していない。業者ごとに何らかの事情を持っている可能性はあるものの、当該業者だけではなく、産業廃棄物処理事業振興財団や管轄する環境省の広報が周知徹底されていないと推察される。

表2 産廃情報ネットで情報開示した産業廃棄物処理業(近畿地方)

区分

許可業者数

公開業者(比率)

ホームページ運用業者(比率)

会社形態

株式会社

その他

滋賀県

118

119.3%

763.6%

10

1

京都府

178

2413.5%

1770.8%

23

1

大阪府

203

2512.3%

2496.0%

23

2

兵庫県

346

5415.6%

3564.8%

51

3

奈良県

50

510.0%)

5100.0%)

4

1

和歌山県

76

33.9%

266.7%)

3

0

合計

971

122122

9073.8%

114

8

資料:産廃情報ネットのホームページなど

注:(1)ホームページ運用業者の比率は公開業者に占める割合を示す。

(2)大阪府は大阪市、高槻市、東大阪市の許可業者を除く。

(3)兵庫県は神戸市(ホームページへの記載を希望しない業者)の許可業者を除く。

(4)府県内での業者の重複はなくしてある。

 公開されている情報の内容には、会社情報として住所、代表者と役員の氏名、法人の設立年月日、事業の変遷などがある。この項目はほぼすべての業者がもらさずに記入していたが、中には社名以外はすべて空欄という業者もあり、情報開示の意味をまったくなしていなかった。許可内容のうち事業計画は約9割の業者が記入していたが、単に許可の種類を列挙している場合もあるなど統一性が認められなかった。許可証の記載事項も約9割の業者が公開していたが、「許可証の写しの画像を貼り付ける場合」と書かれているにもかかわらず、自治体別の許可番号、品目、期限などをPDFファイルで示すだけにとどまっていることが多かった。自治体別にみると、元々業者数の少ない奈良と和歌山を除くと京都は事業計画、許可証とも公開の比率がやや小さい。

 施設・処理の状況では、施設の概要(処理施設の種類、処理する産業廃棄物の種類、設置場所、設置年月日、処理能力(規模)、処理方式、構造)、事業場の処理工程、最終処分までの工程、廃棄物の種類・処分方法・月ごとの直前1年分の受入量・処分量・残さ処分量、直前1年分の施設維持管理の記録の情報がある。このうち、事業場の処理工程を除く4項目について開示の有無を調べた。近畿の合計をみると、施設の概要、処理工程、廃棄物の受入・処理量、維持管理記録となるにつれて比率が少なくなっている。このうち、維持管理記録は廃棄物処理法の施行令によって定められた施設を保有している場合にのみ公開が求められるため、他の項目より比率が小さくなっていると考えられる。

 最終処分までの処理工程は約7割が公開していたが、廃棄物ごとにフロー図と委託先の業者名まで示している場合があれば、中には処理過程の途中までしか図に書かれていない場合もあり、対応が分かれていた。自治体別にみると、滋賀や大阪の比率がやや低く、情報公開への動機付けがやや低い印象を受けた。廃棄物の受入・処理量も項目にあげられていることから、本来は各段階での量を公開する方が望ましいと考えられるが、チェックした範囲内ではそこまでの情報はみられなかった。本来、廃棄物の受入・処理量は1ヶ月ごとに直前1年分のデータが求められるが、中には2004年度のみだったり、1年間の合計しかないなど不備が散見された。施設維持管理の記録でも、直前1年分のはずなのに点検の頻度のみが書かれている例があり、実際に施設を管理した日付と点検内容まで記されることは少なかった。

表3 許可の内容と産業廃棄物処理・施設の状況

区分

許可内容

施設・処理の状況

事業計画

(比率)

許可証

(比率)

施設の概要

(比率)

処理工程

(比率)

廃棄物の受入・処理量

(比率)

施設維持管理記録

(比率)

滋賀県

9

(81.8)

10

(90.9)

8

(72.7)

6

(54.5)

5

(45.5)

4

(36.4)

京都府

19

(79.2)

20

(83.3)

22

(91.7)

18

(75.0)

16

(66.7)

11

(45.8)

大阪府

21

(84.0)

23

(92.0)

19

(76.0)

16

(64.0)

15

(60.0)

12

(48.0)

兵庫県

49

(90.7)

51

(94.4)

50

(92.6)

48

(88.9)

45

(83.3)

39

(72.2)

奈良県

5

(100.0)

5

(100.0)

3

(60.0)

3

(60.0)

3

(60.0)

3

(60.0)

和歌山県

3

(100.0)

3

(100.0)

3

(100.0)

3

(100.0)

3

(100.0)

3

(100.0)

合計

106

(89.3)

112

(93.4)

105

(82.2)

94

(73.7)

87

(69.2)

72

(60.4)

資料:表2と同様

 財務諸表については、貸借対照表と損益計算書は必ずセットで公開されており、一方が欠落しているケースはなかった。近畿地方では74.1%だが、兵庫と大阪ではやや低い傾向がみられた。項目には3年分が求められているが、1社が2年分だったのを除いてすべて3年分そろっていた。ただし、両方とも表の書き方に差があり、健全性を判断する材料として十分とは言い切れなかった。料金は9割近い業者が提示しているとみなしたが、「見積もりによる」とことがほとんどであった。料金表は約5割が公表しているだけにとどまっており、廃棄物ごとに金額を細かく示していた業者は非常に少なかった。特に滋賀県はわずか18.2%と少なく、県内の平均的な料金を知る目安にはなりにくいと考えられる。社内組織体制は、ガバナンスを確認する上で重要ではあるが、公表している業者は7割に満たず、たとえ公表していても業務内容をごく簡単に記述するだけのことが多かった。資格の名称と取得人数は8割近くが公表していたが、受講した産廃関連講習会の名称と日付がそろって列挙されているいるとは限らず、2001年の情報を記載するなど、有意味かどうか判断しがたい業者もあった。

表4 財務諸表・料金・社内組織体制の状況

区分

財務諸表

料金

社内組織体制

前年貸借対照表

(比率)

前年損益計算書

(比率)

料金の提示方法

(比率)

料金表

(比率)

人員配置と職務分掌

(比率)

資格の名称と取得人数

(比率)

滋賀県

6

(54.5)

6

(54.5)

10

(90.9)

2

(18.2)

6

(54.5)

8

(72.7)

京都府

18

(75.0)

18

(75.0)

20

(83.3)

14

(58.3)

18

(75.0)

19

(79.2)

大阪府

17

(68.0)

17

(68.0)

20

(80.0)

12

(48.0)

16

(64.0)

16

(64.0)

兵庫県

47

(87.0)

47

(87.0)

48

(88.9)

37

(68.5)

47

(87.0)

48

(88.9)

奈良県

3

(60.0)

3

(60.0)

4

(80.0)

3

(60.0)

3

(60.0)

3

(60.0)

和歌山県

3

(100.0)

3

(100.0)

3

(100.0)

2

(66.7)

2

(66.7)

3

(100.0)

合計

94

(74.1)

94

(74.1)

105

(87.2)

70

(53.3)

92

(67.9)

97

(77.5)

資料:表2と同様

小規模な中間処理業者はインターネットにアクセスする環境を整えているわけではなく、排出業者も同様だった場合にはそもそも情報に接する機会に恵まれない。

最終更新:2007年02月15日 10:48