アットウィキロゴ
ふと、その日きまぐれで外に出た
冷蔵庫の中身を買うため・・・というのもある
だけれど今日は、外に出たかった気分だった
出ると、積もらない程度に降っていた雪が溶け出したのか道路が濡れて光っている
しっかりと歩かないとすべってころんでしまいそうだ
気をつけながら、いつもより慎重に進むことにした

「ありがとうございました」
いつも買い物に来る大江戸マートから出ると、中と外の温度差に身震いした
さぶっ・・・と、小さくつい呟いてしまう
もう春だから冬本番のときほど寒くはないが、一応厚着して正解だったらしい
白い息を吐きながら、来た道を戻った
      • と、そのときだ
キキィィィィィィ!と言う凄まじい音が辺りに響いた
それはまるで、車が急ブレーキを踏んだ時の音だ
普段は無視していくのだが、ふと気になって音がしたほうへ近付く
周りにはすでに人だかりが出来ていて、俺はそれを退けながら前に出た
そして目に見えた光景は、大惨事というほどでもなく、車ももう無い
だが、人だかりが出来ている理由があった。
1匹の、いや1羽の大きな鳥が血だらけで横たわっていたのだ
見たところ、鷲のようなその鳥はぐったりとし、目を瞑ったまま動かない
次第に人だかりは消えていく
時々何だ鳥ごときかなどと聞こえた
俺も、その人だかりに紛れ、さっさと帰ろうとその鷲に背を向ける
こんな寒いなか、ずっといると風邪を引くのはこっちだ
だが、その背中から何か・・・鋭い視線を感じふと振り返る
人はもうすでに消え、視線を発するものなど無い
気のせいかとまた背を向けるとまだ視線を感じる
俺はまた振り返って探し、ふと視線を下に降ろす
そこにはさきほどの鷲が横たわっているのだが、その鷲は、俺を見ていた
鷲はその鋭い目で何かを訴えているようだった
喋れない、人間と違い言葉という手段を持たない鷲は、俺に目で伝えようとしている
決して逸らさず、きりっとした目で見続ける
その視線は、俺にはこう感じた。
『まだ生きたい』と。死にたくないと。
その視線が、あの時の戦争の死にゆく仲間のことを思い出させた
仲間達もまた、最後のときにこんな目をしたやつもいた。
俺はまだ、生きたい死にたくないという目。
「・・・しょうがねぇな・・・」
誰でもどんな生き物でも、死ぬのはやっぱり怖い。
俺もそうだ、死ぬ覚悟をしていても、やはり怖いものは怖い。
生きたい、そう思うのは人間だけではない。
わかっている。
戦争を体験したからこそ。
俺は鷲の気持ちを無駄にはしたくなかった
俺自身思っていたのかもしれない
死なせたくない、まだこの世で生きていてほしいと。
傷に触らないように鷲を手で包み込む
そして、持っていたマフラーを鷲に軽く巻いて、保温をする
早く手当てをしないと。
そう思うあまり、自然に早足となっていた

「たでぇま~。と、新八ぃ、救急BOXねぇか?」
「え、ありますけど・・・。銀さんどこか怪我したんですか?」
「いや、俺じゃねぇよ。とにかくこっちへ持って来い早くな」
入って早々、そんなことを早口で口にしていた
新八は最初困惑していたが、救急BOXを持って玄関に来た
「でも銀さんじゃないってじゃぁ誰が・・・?」
外に出て行ったのは1人だけなのに。
新八が疑問を含ませながら、問うた
俺は言葉には出さず、マフラーを解く
「鷲・・ですか?」
「あぁ」
「・・・変な銀さんですね。いつもなら放っておくのに」
そう言いながらも新八はくすりと笑う
そして救急BOXを開けて包帯を取り出した
「まぁいつもだったらな・・・」
普通に可哀想と同情するだけだ
だけれど、こいつの目は生きるのを諦めていなかったから。
放っておけなかった。
あの時、取りこぼした命の数は知れない
ならこの小さな命だけでも生きるのを諦めていないなら。
救ってやりたいと思っただけだ
「でも、もしかしたらこの小さな命なら、救えるかもしれないだろ?」
そう言うとそうですねと鷲の翼に包帯を巻きながら、新八は言った
何だかんだで、新八も鷲を救いたいのだ
一生懸命なその目でわかった
ある程度処置をしてから、此処から少し遠い動物病院へ向った

病院の結果では、少し翼が折れただけと、擦り傷だけなのですぐに野生に戻れるだろうとのこと。
その間は預かろうにも預かるようなところは開いていないので、俺たちが家で看病することになった
獣医に色々と言われて、この薬を傷に塗りこめやら何やら言われる
全部MEMOしておき、俺はそいつを動物病院でもらったケースに入れて帰った

その後、1週間か2週間ほどで鷲は翼が完全に治り擦り傷も傷跡は残れど、元気になった
最初は近寄っても来なかった鷲もいつの間にか俺や新八、神楽や定春の肩や頭に乗るようになっていた
鷲はもう、野生へ帰れる体になっていた
「もう、定春29号とはお別れアルか・・・?」
悲しそうに、神楽は言った
定春29号というのは神楽が勝手につけた名前だ
それだけ1、2週間という間に、この鷲に対して愛着がわいたのだ
だけれど、元々野生だった者は野生に戻さなければならない
「・・・元々こいつぁ、野生で生きていく、野生の世界で生まれたやつなんだ」
ポンと神楽の頭の上に手を乗せて励ます
今にも泣き出しそうな目を、涙を溜めている目を擦る
「うん・・・そうだよネ・・」
消え入りそうな声。
だが辛いのは一緒なんだ
新八も俺も神楽も。
だから強がって、そうだと言う
「じゃぁ向うぞ」
「・・・はい」「分かったアル」
いつものような元気はない
別れはとても辛いものなのだ
鷲をあの時のケースにいれて、バイクに乗る
新八がケースを持ち、神楽は定春にのって。
近くの森へ走らせた

そして森に着く
生まれ故郷なのかはわからないが、森ならまた事故に会うということもないだろう
森はきっと、野生にとっての故郷。
新八がケースを持って、地面に置いた
「じゃぁ・・・開けますよ」
その言葉に無言で頷く
新八も了承を得たと思ったのかこくりと無言で頷いて、開けた
途端鷲は飛び出した
少し前までは羽ばたかせも出来なかったその大きな翼を力強く羽ばたかせて。
羽が舞う
鷲は一度も振り返らず、森の奥へと行ってしまった
3人はその背中をずっと見ていた

そして翌日
「新八ぃ!早くするアル!」
「おっせぇぞ~」
「待ってくださいよ~!!」
お花見が出来るほど満開に咲くということでお花見に行くことにした
俺が食料とかを持って、神楽がレジャーシート、新八は姉に頼まれたらしい何か。
新八の用意がやっと終わって、扉をガララとあけた
「ん?」
「どしたアルカ?」
「どうしました?」
「これ見てみろよ」
銀時がしゃがんで、持ったものは1枚のキレイな茶色い羽。
そして何故かネズミの死体が置いてあった
すると上空でピ~ヒョロロロという鳴き声が響いた
その鳴き声に気付き、上を見ると1羽の大きな鳥が輪を描きながら飛んでいた

それは、鷲にとってのささやかなお返し




 ☆あとがき☆

動物にも命はある。感情もある。性格も違う。それは生きている証拠、生きている命
人間と同じ命を持つ生き物。人間よりも儚い小さな命。
動物はただの物じゃない。動く「物」じゃない。命を持つ同じ者。
そう伝えたかったんですけど・・・微妙ですねぇ^^;というかなんてべたな(笑
次のページは動物虐待についてものすごく長く語っているので見ないほうがいいかも(笑

最終更新:2009年03月10日 11:09