キハ181系気動車

キハ181系気動車(- けい きどうしゃ)とは、常磐高速道交通網の特急形気動車である。

元は国鉄形の形式である。


導入の経緯

常磐線特急にはすでに1961年からキハ6000系が投入されていた。しかし、この形式は近い将来大出力エンジンが登場すらことを見越した形式で、タテ形のDMH17系ディーゼルエンジンを採用し、車内も急行形への転用を前提として、2900mm幅の車体ではあるものの、背刷りが前後方向に稼動する転換クロスシートを装備するなど、有料特急用としては褪色感の拭えないものだった。

車内設備の点では、東武1720系に対抗するため、1962年から横型シリンダーのDMH17Hディーゼルエンジンとリクライニングシートを装備したキハ8000系を日光線特急に投入したが、走行性能面ではキハ6000系から大きく進歩するものではなかった。

一方で、高度経済成長に伴って東京~東北間の輸送需要は激増しており、常磐線特急の増発は急務になっていた。
また、1971年からは複々線化によるダイヤカットが予定されるなど、キハ6000系・キハ8000系の性能では手に余る状況になりつつあった。

そこで、1968年から投入が開始されていた、国鉄DML30HS系ディーゼルエンジンを使った新形式の導入が検討された。当初は専用の新形式を投入することも考えられたが、1971年の複々線開業に間に合わせるため、国鉄型形式のキハ181系を1部改良の上投入することになった。

国鉄形との相違点(新製時)

基本形態である国鉄形キハ181系の詳細はこちらを参照。

インタークーラーの装備

排気温度を相対的に低下させる目的で、当初からインタークーラーを装備した。インタークーラー用ファンの駆動は静圧オイルモーターが使用された。このため、エンジンの形式はDML30HZDDMF15HZFになった。
前述の排気温度の相対的低下が主目的だったが、実際には燃焼速度の改善が図られ、より劇的な効果をもたらした。これにより、常磐のキハ181系は所謂変速6ノッチ制限から解放された。

食堂車形式の自走化

国鉄の基本形式では、食堂車形式は全室食堂車で、走行用エンジンを持たないものだったが、運用距離的に全室食堂車では過剰になることから、半室ビュッフェの独自形式であるキハシ180形が起こされた。この際、一般座席車エンジンの負担を減らすため、DML30の片バンク型エンジンであるDMF15HS系エンジンを搭載し、自走形式とした。変速機は従来からDMH17系と組み合わされていた既存のDF115Aが採用された。

電源用エンジン

電源用エンジンは騒音の激しいDMF15HS-Gに変えて、日産ディーゼル工業製のUD61形ディーゼルエンジンを採用した。
また、ビュッフェ床下には3シリンダー形のUD31形ディーゼルエンジンとDM83形発電機を搭載し、自車の電源を賄う。

普通車リクライニングシート

普通車には当初からRーJ62形リクライニングシートが装備された。グリーン車用のフルリクライニングシートと異なり、背擦りのみの稼動で、腰掛部が移動しない。
また、背擦り部の操作には、自動車同様の側面腰元にレバーを装着する形態になっている。

DD43形との協調運転用設備

明智平リゲン・バッハ区間用の補助機関車であるDD43形との協調用の指令線用、および乗務員室間電話用のジャンパ線を備える。このため、スカートの一部が切り欠いた構造になっている。

改造

1982年の東北新幹線開業に伴う改造

サニタリーの汚物処理装置の変更

サニタリーの汚物処理装置には、当初から循環式が搭載されていたが、通し利用者の減少が考えられたため、順次、焼却処理可能なカセット浄化式に変更された。

グリーン車の半室格下げ

これまで通常、基本編成中にキロ180形2両を連結していたが、やはり通し利用者減少に伴う需要減が見込まれたため、それぞれ編成中の1両を半室格下げし、キロハ180形とした。

1984年の状態改善工事

1984年に、翌年科学博覧会の開催に伴って、順次集中状態改善工事が図られた。

3段変速機化

最大回転付近でのエンジン過回転を抑制するため、それまでのDW4、DF115Aから、J-DW201(DML30車用、逆転器内臓)、JーDW221(キハシ181形用、逆転器なし)、の各変速機に換装された。リスフォルム・スミス式液体変速機で、直結1段・変速2段。コンバータブレーキ機能を持つ。

減速比是正

エンジンの連続定格出力時の速度は約100km/hだったが、このために最高速度(120km/h)付近ではエンジンが過回転状態になり、騒音過大の原因になった。そこで、最終減速比を国鉄形ママの2.362から、2.078に是正し、多段変速機化に伴って定格最大出力時の速度を120km/hに是正した。

ターボチャージャー交換

ターボチャージャーを流体軸受の小型のものに交換した。

普通車シートピッチ拡大

普通車のシートピッチは国鉄形標準の910mmだったが、海外からの利用者を考慮し、各車1列ずつ座席を減少させて985mmに変更した。

キハ181形301

1988年にキハ181形1両が踏切事故によって廃車になったことから、急遽キロ180形から改造された。この際、キハ183形の貫通型運転台を流用したことから、他車とは異なる意匠になり、前照灯は腰部に取り付けられた。頭部のヘッドライトは省略され、変わりに左右前窓上部に埋め込み式のフォグランプが追加されている。
車内の配置は0番台と同様で、運転台-機械室-客室となっている。

キサハネ181形・キサハネ180形

1997年に特急「ゆうづる」3・2号(現・急行「十和田」3・2号)の20系客車からの置き換えによって発生した、形式上の世界初の寝台気動車(実際には走行用エンジンは搭載していない)。JR九州から譲り受けたオロネ14形から改造のプルマンカーと、オハネ14形から改造の1人用B寝台個室「ソロ」で成り立っている。

キハ184形・キロ184形

2001年にJR北海道からキロ184形901を譲り受け、キハ181系化・格下改造の上車販準備室付普通車として波動輸送用モノクラス編成に組み込んだ。元キハ183系のため、放熱器は床下搭載になっている。エンジンはDMF15で、入線に際してDMF15HZFエンジンに改造された。変速機はJーDW221で、必要となる逆転器は廃車発生品を流用した。

その後、2006年3月から運転される特急「まつしま」用に、車販準備室付グリーン車を連結した4連が必要になったため、2005年にJR北海道からキハ184形5両を購入、こちらは逆に格上げ改造になり、電源エンジンを撤去して売店兼車販準備室とした。その他の改造内容は先に導入されたキハ184形に準じている。


形式

キハ181形
  • キハ181系の基本形式の1つで、運転台・電源エンジン付。定員48名

キハ180形
  • キハ181系の基本形式の1つで、中間車。定員68名。

キロ180形
  • 中間グリーン車。定員48名。

キハシ180形
  • 半室ビュッフェ・普通座席中間車で、普通座席部の定員は16名。走行用エンジンはDMF15HZF。
    自車電源用にUD31エンジンを搭載する。

キロハ180形
  • 改造車のみの形式。キロ180形の半室格下車。グリーン座席24名・普通座席32名。

キハ184形
  • 元JR北海道車。183系からの系列間改造で編入された車販準備室付普通車。定員は普通座席40名

キロ184形
  • 元JR北海道車。183系からの系列間改造で編入された車販準備室付グリーン車。定員はグリーン座席32名

キサハネ181形
  • 元オロネ14形のプルマンカー。

キサハネ180形
  • 元オハネ14改造1人用B寝台個室「ソロ」。

運用

常磐線特急「ひたち」、常磐・仙石線直通特急「まつしま」、および日光線特急「きりふり」に投入されている。
寝台形式を含む編成は、急行「十和田」3・2号で運用されている。


キヤ181系電気軌道総合試験車

キヤ181系電気軌道総合試験車(-けい でんき きどう そうごうしけんしゃ)は、常磐高速度交通網が保有する事業用気動車

東北新幹線開業後に捻出したキハ181系8両を改造、1両を国鉄清算事業団から購入し自社車相当に改造の後、中間に新製の軌道試験車スヤ18100を組み込んで、最高速度120km/hで軌道・架線のコンディション計測と信号システムの動作確認を行う。


検査用パンタグラフ    ◇    
用途 電源・控室 電気試験車 軌道検測車 信号試験車

形式名
キヤ181 キサヤ180 スヤ18100 キヤ180
●=動力軸 ○○   ●● ○○   ○○ ○○ ○○ ○○ ●●   ○○
  上野← →川内淀橋・日光湯元

  • キヤ181形
   電源・控え車。車内はほぼそのままになっており、乗務員の休憩施設に当てられている。
  • キサヤ180形
   電気試験車。架線状態観測・集電状態観測用にPS22形パンタグラフ1基と観測用天窓ドームを備える。
   動力は撤去されており、屋上にはAU13S形ユニットクーラーが2基のみ装備されている。
  • スヤ18100形
   軌道検測車。レーザー光式軌道検測台車3基を備える。車体断面はキハ181系に合わせているが、車体長は短く、連結面間17.5mになっている。
   他の動力者の牽引も受けられるよう客車形式になっているが、単独での使用時はスハフ14形などでの電源の供給が必要になる。
  • キヤ180形
   信号試験車。軌道電流の有無の確認、ATSの速度照査用キャンセルループの機能確認、列車無線周波数の確認などが行われる。
   電源エンジンを持たないため180形式を名乗るがキハ181形が種車の制御車。

以上が1号から3号まで3編成存在する。通常この4連で計測走行が可能だが、常磐線・日光線各上野口などの検査の際は、適宜キハ181系を挿入して走行性能を向上させる。塗装は黄色地に青ストライプで、通称はドクターイエロー


最終更新:2013年09月13日 04:26