さっきまでは確かハートマークだった。ハートの3だったはずが、今はスペードの3に
なっている。
柄(スート) | 特性 |
スペード | 戦闘特化。武器は穂先がスペードの形をしている槍。 J~Kはラグジュアリーモードの人造魔法少女2名と同等以上、 Aは武闘派トップクラスの魔法少女五名とほぼ同等。 |
クローバー | 隠形特化。武器は棍棒。スペードほどではないが戦闘能力を有する。 |
ハート | 気が弱く全く使えないが異常な耐久力を有する。肉の盾要員。 スペード全員を皆殺しにできる攻撃をハートの上位ナンバーで防げる。 スートの中で知能が最も低く単純命令しか理解できない。 下位ナンバーほど臆病で上位ナンバーほど勇敢。 |
ダイヤ | 技術力と知識を有する。 作戦行動では敵の機械的、魔法的罠を見破る。 |
ジョーカー | 本体。他の兵隊と違い鎌を持つ。 鎌で奪った魔法少女の命で死んだ兵隊たちを蘇生させる。 |
(前略)生命力がジョーカーを通してシャッフリンに注がれていく。焼き
払われたシャッフリンも食い尽くされたシャッフリンも、生命を失った全てのシャッフリ
ンがジョーカーの身体から一人また一人と生み出されていく。
シャッフリンは補充される。死体は残らず消えるし、それどころかフィルルゥが糸で縛
っておいた個体さえも消え失せた。
「もしも私めが仕留められましては全シャツフリンが消滅いたします。敵の狙いがそこに
あることは充分に考えられましょう」
「カード毎に記憶の共有ができていない。ハートのシャッフリンはただただグリムハート
に従おうとしか考えていなかったのに、スペードやクラブのシャッフリンは私達の排除を
目的にして、それが果たせなければ困ると考えています。それだけなら複数の人格がある
ようにも思えますが、でもこれは一つの人格を薄めてバラバラにしたようなものです。た
ぶん、主人格である本体が他にいて記憶の共有や統合を担当しているはず……」
「言葉は通じず知性を欠いております。ただの仲立ちをさせるにも問題がありましょう」
今まで見てきたシャッフリンは、個体によって能力の差があった。スペードやハートな
ど、スートの違いが一番大きかったが、同じスートでも一体一体、腕力や耐久力、機敏さ
などに明確な差異が見られた。
恐らく数が大きければ大きいほど、シャッフリンは強い。2より3が、9より10が、J
よりQが、そしてKよりAが。
ハートのコスチュームが剥がれ、下からはスペードの10が出てきた。スペード
の上にハートを重ね着させていた。
シャッフリンの製作コンセプトは「数」だ。たった一体で複数が同時に存在する。グリ
ムハートのような一騎当千の超高級魔法少女とともに使用されることを前提としている。
魔法により生み出された愛玩用の少女という商品は「魔法の国」の倫理観をもってして
も問題しかなく、スポンサーはめいめい処罰され、開発局は取り潰されるという関係者が
軒並みろくな目を見なかった曰くつきの一品だったが、オールド・ブルーにとっては福音
だった。一目見た瞬間、オールド・ブルーの魔法は彼女の本質を見抜き、最も有効で強力
な運用方法に思い至った。
*1 魔法少女育成計画「赤」 P52