空き巣タブンネ一家 2日目その2

ママンネの身体が宙を飛び、壁に叩きつけられる

「ミッ…!ァガ…ッ!?」

目の前の人間に攻撃しようとしたら、次の瞬間何故か自分が倒れている
一体何をされたのか理解できず、困惑しながら呻く

勘の良い人は気づいていると思うが、ママンネは俺に突進仕掛けようとした瞬間
一足早く動いていたルカリオのインファイトを受け、そして吹き飛ばされた

「ミィ…ギギ…」

タイプ一致効果抜群の攻撃を受けたのだ、もはやママンネは瀕死状態となり動くことすらできないだろう
今ではもう叫ぶことすら無くなり、ただ小さな声で泣きながら短い手を伸ばしているだけだ

「ミギッ…!ハーッ…ハーッ…!」

一方のチビンネBに視線を向けると、こちらももはや息も絶え絶えで小さく痙攣している
涙で顔はクシャクシャでもはや舌にすら力が入らないのかベロンと垂らしている状態だ

どれ、そろそろ引導を渡してやるか
そう思ってBの近くに歩み寄ろうとする、だが…

「ミッ!」「ミィミィ!」「ミギィーッ!」

突然三匹のチビンネ達が俺とBの間に割り込み、立ちはだかった
正確には身体の大きさが違いすぎて障害にすらなっていないが…
俺が立ち止まっていると、チビンネ達は思い思いの方法でBを助けようとしている
震えながらも手を大の字に広げてとおせんぼうをしている(つもり)の者や
Bを逃がそうと助け起こそうとしている先程Aと名付けたチビンネ
そして俺に向かって可愛らしい声で必死に威嚇しているやつもいる

「ミィミィ…ミィィィ」

ママンネもそれを見て何かをチビンネに向かって鳴いている
それが頑張って!と励ましている内容なのか、逃げて!という内容なのかはわからない
もっとも前者ならお花畑思考にも程があるが

さすがにこんな茶番を見てたらイライラしてきたのた、さっさとBにトドメを刺してやろう
とおせんぼうチビンネと威嚇チビンネを素通りしてBに近づこうと再び歩み出す俺

「ミッ!」「ミィ!」

するととおせんぼうチビンネ(これよりC)と威嚇チビンネ(これよりD)がヒシッと俺の足にしがみついてきた

「ミィーッ!ミィーッ!」「ミッミィ!」

そしてAとBに向かって早く逃げて言わんばかりに鳴き始める
それを聞いてAはBの肩を抱えてヨロヨロとコータスもビックリの鈍足で俺から離れようと歩き出す
どうやらこの2匹が俺をくい止めている間にBを逃がそうという作戦らしい
こいつらが大人のタブンネなら多少効果的な作戦だったかもしれないが…
先程も言った通り俺にはとっとはただの茶番にしか見えない
むしろチビンネ達の必死で真剣な表情のせいで笑いがこみ上げてくるぐらいだ

しかしチビンネ達にBを助けようとする意志があるのがわかったのは収穫だった
自分達が必死になって助けようとしているBの命をその目の前で絶てば
きっと俺が期待してる以上の絶望の表情を見せてくれるだろう

俺はその場から動かずぬぅっと手を伸ばすと、Bの肩を抱えたAからBの身体をひったくる

「ミィィィッ!?ミィ!ミィ!」

兄弟の助けで少しでも逃げられるかもしれないという希望を持っていたBは
再び捕らえられたことで今度こそ命を奪われるかもしれないという恐怖に
またしても助けを求めるかのように泣き出した

「ミィ…!ピギャア!?」「ミギッ…!」

俺がBを捕まえたことで足に取り付いていたチビ2匹がBを取り戻そうと動く
しがみついていた足に突進しようとするが、その前に俺の放った蹴りを受けて吹き飛んだ

「ルカリオ、そいつらを連れてきてくれ」

俺は倒れているママンネとチビンネC、Dをルカリオに任せて
俺自身は右手に掴んでいるBに加えて震えているAも左手掴み、それぞれ両手に掴んで部屋を出た

ミィミィ鳴きながらバタバタと暴れているAとBを連れて向かったのは我が家のキッチン
ルカリオが後からついてきているのを確認し、一緒にキッチンに入る

冷蔵庫、コンロ、食器などは全て新品でピカピカ…のはずなのだが
現在両手に捕まえている侵入者達に蹂躙されたことで何処か薄汚れて見えてしまう
そんなイメージを払うためにもキッチリと一匹残らず断罪してやろうと改めて俺は思った

とりあえずAは床に放り投げて再び解放してやる、当然Bは掴んだままだ
心配そうにBを見上げ、次いで俺を見ると、ミィミィとまたあの媚びるような声で鳴き始めた

「そんな風に鳴いたってダメだぞ、お前らは一匹残らず家を荒らした報いを受けるんだ」

そう言ってやるとAは下を向いて黙ってしまった
一方のBはというと…

「ミィィィィィ!ミギィィィィ!!」

またしても何やら叫んでいるが何か違和感を感じた、どうもどこか様子が違う

「ミィィ!ミギィ!ミッミィ!ミ"ィ"ーッ!!」

喚くようなBの鳴き声がキッチンに絶え間なく響く、やっぱりBの様子が変だ
先程までの泣き叫ぶような声とは違い、まるで何かに怒っているような激しい鳴き声に聞こえる
一体Bは何を言っているんだ?早速俺はエーフィにBの声を通訳してもらうとした

”なんでこいつはたすけてくれてぼくはこんなひどいめにあうの?ずるいよ!ぼくもたすけてよ!”

なるほど…そういえばさっきからAを掴んだりはしても、結局Aにはなんの危害も加えていないな
それを見てBはAが依怙贔屓されてると思ってるのか、何で自分ばっかり…と
ある意味子供らしい思考だが…この状況でそんなこと考えるか普通…

「ミ…ミィィ…」

Aが申し訳なさと困惑の混じった声で鳴いている、こいつも戸惑っているようだ
当然か、なにせ間接的にしろ兄弟に卑怯呼ばわりされたんだしな…

「ミィーッ!ミギャーッ!ミッミィ!」

しかしそんなAにもお構いなしと叫び続けているB、なんなんだコイツは…いい加減ウンザリしてきたぞ
この期に及んで自分勝手なこのクソガキを絶望の底に叩き落とせないものか…そうだ!

「そうだな~…こいつ(A)のほうがお前より体も小さくて可愛いしな~」

「ミッ!?」

鳴き喚くBにそう言い放ってやると、驚くような声を上げてBはピタリと黙ってしまった
すかさず俺はBを壁に向けて思いっ切り投げつけてやる

「ミギュッ!ミ…ミィーッ!!…ミッ!?」

壁に強く叩き付けられ、再び鳴き始めるB…だが次の瞬間Bは大きく目を見開いた
なぜならAが俺に抱き上げられ、優しくその頭を撫でられていたのだから

「ミッ…ミミィ?」

「ミ…ミ…」

困惑した顔でAを見上げるBと否定するかのようにフルフルと顔を振っているA
そんな2匹を見ながら俺は用意していた次の言葉を言い放った

「おいお前、どうしてお前がこんな風に虐められてるかわかるか?
 それはな…お前よりこいつのほうが可愛かったからだ、もしお前の方が可愛かったら
 そんな酷い目には遭わなかっただろうになぁ?」

「ミッ…ミッ…」

プルプルと震えながらこちらを見上げているB
涙を流しながらまるで「そんなの嘘だよね?」とでも言いたげな顔をしながら

「じゃあね、醜い子タブンネちゃん」


「ミィィィィィィ!!ミギャアアアアアアア!!!」

俺の言葉を聞いて逃げ出そうとするB、だが素早く伸びた俺の手に尻尾を捕まえられてしまう
そのままキッチンに備え付けてあるオーブンに放り込んでやる

「ミビャアアアアアア!!!ミィーッ!ミィミィ!!」

すかさずオーブンの扉を閉めてやると、内側からBが泣き叫びながらバンバンと扉を叩いていた
それを見てAがBを助け出そうとオーブンの扉に手をかけて開けようとしているものの
強力なマグネットで簡単に開かないようにしている扉を非力な子タブンネに開けられるはずがない
やがて途方に暮れて中にいるBに向かってミィミィと例の声で鳴き始めるA
さて…後はオーブンのスイッチを入れればBの処刑は完りょ…

「ミィィィィィィィィ!!!」

すると突然背後からタブンネの鳴き声が聞こえた、そうか忘れてた

「ミギィィィ!!ミ"ーッ!ミ"ーッ!」

ママンネが必死にこっちに手を伸ばしながら叫んでいた
しかしルカリオに背中を踏みつけられ、ベタッと床に這いつくばって身動きが取れずにいる
ついでにCとDは首根っこを掴まれ苦しそうにジタバタしている

折角だからママンネにもBの処刑を見せてあげよう
ルカリオにママンネを解放してやるように指示を出す
するとルカリオは押さえつけていた足を退け、ママンネを解放してやる
身動きが取れるやいなや、脱兎のごとき勢いでオーブンに向かって走り出すママンネ

「ミィィィィ!ミッ!ミィ!」

「ミィ!ミッミィ!」

オーブンの中のBに向かって嬉しそうに鳴くママンネ、それに応えるようにBも鳴く
しかし当然だが感動の対面なんてこいつらさせてやるわけがない、すかさずオーブンのスイッチを入れてやる

「ミッ…ミィ?」

オーブンの内部が赤く光り始め、Bもママンネも不思議そうに鳴き始める
そうしている内にオーブンの中の温度はドンドン上昇していく

「ミィィィ!!!ミギャアアアアア!!」

Bがそれを感じたのか、悲鳴をあげながら顔色を変えて再び扉をドンドンと叩き出す

「ミィィ!?ミィ!ミィミィ!」

ママンネもBの危機を感じたのか、Bを助け出そうとオーブンの扉の取っ手に手をかけた、そこにすかさずローキック!

「ミギャッ!?ミッ…ミィィィィィ!!!」

腹部を蹴られて怯んだママンネを後ろから羽交い締めにし
手出しできないようにしながらオーブンの内部を見せつけてるようにしてやる

「ミギャアアアアアアアアア!!!!ビャアアアアアアアアアア!!!!」

温度が上昇していくオーブンの中で涙で顔をクシャクシャにし
絶望に顔を歪めながらも以前として扉を叩き続けているB

「ギャッ!?ピギャアアアアアアアアア!!!!?」

だがそうしている内に高すぎるオーブン内の温度によって、いよいよBの耳が焦げ始めた
焼け焦げていく耳に続いて腕に足とドンドン焦げていき、その部分を広げていく
既にその悲鳴にタブンネのあの媚びた声の面影は少しも感じられない

「ミィィィィィィ!!!ミビャアアアアアアア!!!」

少しずつ体を焦がされていく我が子の姿を見てママンネが泣き出した
だが泣き叫んだところでBの運命は変わらない

「ミ…ビィ…」

気がつけば身体中を焦がされ、口内の唾液から眼球の水分に至るまで全て蒸発し
さながら灼熱地獄のようなオーブンの中でBが力無く動いている

「………」

そして、とうとうその僅かな動きすらも無くなり、悲鳴も聞こえなくなった
食材の調理が終了したためオーブンが止まる、赤い光が消え、温度は少しずつ下がっていく
やがて中には全身を黒く焼き尽くされたBの亡骸だけが残った

「ふぅ…」

Bの処刑を終えた俺はソファに座って一息ついた
なにせタブンネとはいえ命を奪っていることには変わりはないのだ、それなりに神経を使う
正直ただの空き巣にここまでする必要も無かったんじゃないかとも思っている

(これからどうすっかな~…)

そう俺は迷い始めていた、パパンネ、ベビンネ、そしてチビンネBの命を奪ったことで満たされてしまったのか
今では空き巣タブンネ達に対する恨みの念が薄れてしまっている

ママンネとチビンネ達はあれから今もキッチンでBの黒焦げの遺体を囲んで泣いている
若干その姿に哀れみまで感じてしまった俺はこんなことまで考えた

(もう、逃がしてやろうか)

タブンネ達に対する恨みが晴れたなら、これ以上痛めつけるのは無意味とも言える
勿論このまま逃がしてやるというのも癪ではあるのだが…

「とりあえずアイツらの様子でも見てみるか…」

そう言ってソファーから立ち上がると、俺はタブンネ達の所に向かった

「ミィ~ン…ミヒヒィ~ン…」

「ミィー…!ミィーン…!」

Bの亡骸を抱きしめてママンネが涙を流して泣いている
チビンネ達も同様だ、Aに至っては自分の触覚を引きちぎろうとしているかのような動きをしている
恐らく俺の先程の言葉を気にしているのだろう、それでトレードマークである触覚を千切ろうとしていると…

「ミッ…!?ミミィ!」

タブンネ達の元まで歩いていくと、ママンネが俺の姿に気付いたようだ
少し震えるような声を上げてチビンネ達を自分の後ろに隠した後、手を大の字にして俺の前に立ちはだかった

「ミィーッ!!ミギィーッ!!」

こちらを睨みながら威嚇の声を上げているママンネ

(…ん?)

俺は歩を止めて立ち止まりながらもママンネの態度にちょっとした違和感を覚えた
それを確かめるために再びママンネ達に近付こうと歩を進める

「ミギィーッ!ミッミィーッ!」

ママンネがさらに激しく鳴き始めた
あれ…コイツ…なんでこんなに反抗的なんだ…?

(ああ…そうか…)

俺は違和感の正体を理解した、ママンネの態度が余りにもデカすぎるのだ
そもそも始めに俺の家で空き巣を働いたのはコイツらのはずなのに、ちっとも悪びれる様子が無い
それどころか今もこうして俺に対して怒りを剥き出しにして威嚇している
まるで何故自分達があのような仕打ちを受けたのかわかっていないかのように

「ミフーッ!ミガーッ!ミギィ!ミィ!」

なおも威嚇を続けるママンネ、やはりその姿に反省というものは感じられない

「……」

俺の中でまた段々とタブンネに対する憎しみが湧き上がってきた
俺達の家で空き巣を働いたのは誰だ?食料を食い荒らし、我が物顔でベッドを占領していたのはどこのどいつだ?
泣きながら俺に許しを乞うのならともかく威嚇するとは何事だ?

(もう許さん…コイツら…)

「ミィーッ!!ミッ…ミギッ!?」

気が付いたら俺はママンネの顔を殴りつけていた、顔面に拳を受けてママンネがよろめく
続けて間髪入れずにヤクザキックを繰り出してママンネの身体を蹴り倒す

「ミッ…ミィーッ!!」

再生力によりルカリオから受けたインファイトのダメージは回復しているらしい
追撃を加えずにいるとすぐにママンネは起き上がってきた
そして怒りの声を上げ、こちらに突進を仕掛けてくる
あえて追撃を加えず距離を取っていたため、ママンネの突進を難なく避わす
しかしキッチンは狭くてアイツが暴れにくいな…場所を変えるか…

「こいよ」

手でママンネを挑発しながら居間に向かって走る、といってもキッチンと居間は繋がってるんだけどね
ともかく居間の広い空間に出ると、背後を振り返りママンネを見据える

「ミッミィ!ミィーッ!」

ママンネはしっかりと挑発に乗せられてついてきてくれたようだ
こちらに対して怒っているようだがその鳴き声からはどこか余裕のようなものも感じられる
恐らく人間が相手なら自分の方が強いとでも思ってるんだろう

残念だったな

お前の相手は俺じゃない

「いけっ!カイリュー!!」

俺は腰のボールに手をかけ、相棒の一匹を解き放った

「ミッ!?」

ボールからカイリューが現れ、ドスンと音を立てて床に降り立つ
そしてすぐにママンネの姿を確認し、目つきを鋭くしてママンネを睨みつけるカイリュー

「ミッ…ミィィィ…」

圧倒的な力を持つドラゴンポケモンの威圧感を受け、既にママンネは先程までの勢いを失っている
それを見たカイリューがママンネとの距離を一歩ずつ詰め始めた
ドスン!ドスン!とプレッシャーを与えるようにゆっくりとママンネに歩み寄っていく

「ミッ…ミッ…」

するとママンネもカイリューから逃げるよう後ずさりを始めた
だがママンネには後退は許されない、なぜなら…

「ミィィ…」「ミィミィ…」

ママンネの後方でキッチンからついてきたチビンネ達が怯えるような弱々しい声で鳴いている
自分達を護ってくれるはずのママンネの姿を見て不安になっているのだろう

「ミッ…ミィィ…ミィ!」

そんな子供達の姿を見てハッとしたような表情になるママンネ
自分が相手の威圧感に押されていては子供達に不安を与えてしまうと思ったのだろう
まるで勇気を身体中から振り絞るように唸った後、キッ!とカイリューを睨み返した
あくまでもこちらに反抗する気のママンネの姿を見て、俺はフッと笑う

いいだろう、これから先どんなにお前がどんなに惨めな姿になろうとも
俺はもうお前を許すつもりはなくなった

「カイリュー、ドラゴンクローだ」

俺の命令を受けてカイリューがママンネに攻撃を繰り出した
鋭い爪を光らせながら腕を振りかぶり、そしてママンネに向けて振り下ろす

「ミィィ!」

悲鳴を上げながらママンネは間一髪それを避けた、だが甘い

「今だカイリュー!チビ共を捕まえろ!」

ママンネが避けたことでカイリューとチビンネ達の間を遮るものは無くなっている
コクンと頷いてチビンネ達に近づいていくカイリュー

「ミィィィ!!」「ミャアアアア!!」「ミィミィ!」

カイリューがこちらを捕まえにくると知り、チビンネ達は逃げようとする
だがママンネが後退したことで既にチビンネ達の背後には壁が迫っており、追い詰められてしまう
近づいてくるカイリューに恐怖し、助けを求めて鳴いているチビンネ達

「ミギィィィィィ!!」

子供達に手は出させまいと、ママンネがカイリューに向かって突進する

「ミギャア!?ミギッ!ミィィ…」

だがカイリューが尻尾を一振りしただけで、呆気なくママンネは吹き飛ばされた
壁に叩きつけられ、呻くように鳴きながらも床にずり落ちる
邪魔者を排除して再びチビンネ達に向き直るカイリュー

「ミィィィィィ!!」「ミッ…ミーーーッ!!」

ママンネがカイリューにやられるとチビンネ達はより一層恐怖に駆られたように鳴き出した
カイリューは意にも介さずチビ共に向かって手を伸ばし、掴み上げる
するとチビンネ達はパニックになってガタガタと震えたり、漏らしたりしている
それにちょっと不快そうにしているカイリュー、ごめんな…こんなことさせて

「ミッ…ミィィィィィィ!!」

一方それを見たママンネが悲鳴を上げている、子供達が捕まってしまったのだから当然か
だがどうやら先程の一撃だけで動けなくなってしまったらしい
必死に子供達に向かって鳴いているが、身体は弱々しく動かすだけだ
そんなママンネの傍まで俺が近づいていくと、ママンネは俺の足にすがりついてきた

「ミィ!ミィミィ!ミィ~ン…」

ズボンの裾を引っ張りながら媚びるような声で鳴いてくるママンネ
どうやらやっと力の違いがわかったらしい、俺に頼んで子供達を返してもらおうというわけだ
俺はママンネの手を振り払い、全体重をかけてその手を思いっ切り踏みつけた!

「ミギャアアアアアアアアア!!!?」

グチャッ!という音と共にママンネの手が潰れる
痛みのあまりママンネの特大の悲鳴が上がった

「今更遅いんだよクソ豚が!!どうした!?俺が憎いんだろ!?
 だからさっきまであんなに怒ってたんだよな!?なのにちょっと力の差を示してやったらこれか!?
 人を舐めるのも大概にしろ!!」

ママンネの身体をこれでもかというほど蹴りつけてやる

「ミギャッ!!ミゲェ!!ミギィ!!ミブゥエ!!ミィィィ!!」

「ミィィィィィィ!!」「ミッミィィィィ!!」「ミーーーッ!!」

ママンネのリズミカルな声とチビンネ達の悲痛な叫びが重なる
気の済むまでママンネを蹴り続けると、ミィィ…とママンネは弱々しく呻いていた

「カイリュー」

チビンネ達を捕まえていたカイリューを近くまで呼び、チビンネを一体受け取る

「ミッ…ミィミィ」

俺の手の中で恐怖に震えながら鳴いているチビンネ、こいつは…確かAか
俺はチビンネAを放してやり、ママンネの元へ向かわせてやる
Aはキョトン、と不思議そうな顔でこちらを見てきたが、すぐにママンネの元へ走り出した

「ミィ!」

「ミィ~!」

それを見たママンネは安心したように鳴いてAに向かって潰れた手を伸ばした
Aもママンネの顔の前まで行くと、嬉しそうに鳴きながら手を伸ばす

二匹の伸ばした手が重なろうとした瞬間

カイリューのドラゴンクローがAの身体を貫いた…!

「ミッ…?」

貫かれたAの身体から鮮血が迸り、ママンネの顔を赤く染める
カイリューが引き抜くとAはバタリと倒れ、痙攣し始めた
ママンネは突然のことで状況が理解できず、わけがわからないという顔をしている

「ミ…ギ…ギィ…」

既に感覚が失われているのか、Aが痛みに泣き叫ぶようなことはなかった
二、三回苦しそうに呻き、その後息絶えて動かなくなる
Aの死に顔には恐怖も苦しみもなく、ただ驚愕の表情のみが刻みつけられていた

「ミッ…!?ミィィィィィ!!?ミ"ィーッ!?ミ"ィーーッ!!」

ようやくママンネが状況を理解したのか、急いで既に骸と化したAを抱き起こす
Aの身体を揺すったり、呼びかけたりしているがAがそれに応えることはもう無い

「ミッ…ウギャアアアアアァァァァァ!!!ゥバアアアアアアアア!!!!」

やがてAが死んでしまったことを理解してしまったママンネが、悲痛な叫び声を上げる
そしてAの身体に顔をうずめ、シクシク泣き出した

「ミヒィィ…!」「ミッミェ~ン…」

残るチビンネC、Dも兄弟の死を理解して涙を流し始めた
目に手を当てて泣きじゃくり、ただAの死を悲しんでいる

呑気なものだ、その兄弟を殺した張本人が目の前にいるというのに
危機感というものがこいつらには可哀想なぐらい欠如しているらしい
だからこそ今こうして酷い目に合っているのだが

この哀れなタブンネ達にそれを教えてやるか
そうして俺は次の行動を起こした

まずはカイリューをボールに戻す、ご苦労さんカイリュー…そして

「出てこい!ゾロアーク!」

ゾロアークの入ったボールを手に取り、解き放つ

「ミヒッ…!」

ママンネがゾロアークの姿を見て恐怖に顔を染めた
なにしろゾロアークは愛する夫を殺したポケモンなのだから
チビンネ達もそれを思い出したのか、ガクガクと震えだした

ゾロアークはそんなタブンネ達を見て嬉しそうに笑うと
ママンネから強引にAの身体をひったくった

「ミィーッ!!ミィーッ!!」

それに対してママンネがゾロアークに抗議する
だがそんなママンネのことなど意に介さないゾロアーク
そしてママンネ達に見せつけるようにAの身体を一瞬で噛み砕いた!

「ミヒャア!?ミッ…ミィィィィ!!ミギャアアアアアァァァァァ……!!!」

鋭い牙に砕かれ、見るも無惨な姿になったAの亡骸はママンネの前にペッと吐き出かれた
血まみれでボロボロになったAの姿、そして次はこちらを見て舌なめずりしているゾロアーク
それらを見たママンネは悲鳴を上げながら居間を飛び出し、姿を消してしまった
次に殺されるのは自分だと思ったのだろう

この家の出入り口はエーフィのエスパーの力で封鎖され、外に逃げることはできない
つまりママンネに完全に逃げられることはない…それよりもだ!

「ミヒィィィィ…」「ミキャァァァ…」

取り残されたチビンネ達に向き直るとチビンネ達は再度震え出した
そう、ママンネはチビンネ達を置いて逃げていってしまったのだ
自分のことを考えるのに精一杯で忘れていたのか、はたまた囮のつもりか
どちらにしても母親失格ですな

『ポッポー!ポッポー!』

こいつらをどうしてやろうと考えていたら、ポッポ時計が鳴き出し、午後2時を知らせた
朝から虐待を始めたので大分時間が経っている、夢中になって時間を忘れてしまっていたらしい

とりあえず昼飯にしよう、いいアイデアも浮かばないしな
それまでこのチビンネ2匹はケージにでも入れておこう

ママンネがこの後どう動くかも気になるしね

 ・
 ・
 ・

「よいしょっ…と…」

物置部屋からケージを引っ張り出し、組み立てる。ついでに『あるもの』も持ってきた

「ミィィ…」「ミッ…ミ…」

チビンネ2匹は居間の隅っこでおびえながらこちらを見ていた
ケージを組み立てを終え、俺は2匹の元へと歩いていく

「ミッミィ!」「ミフーッ!」

すると片方のチビンネが威嚇してきた、しかしチビンネ達を見ると目に涙を浮かべて身体は震えている
怒りではなく恐怖による威嚇だろう、それぐらいは寛容な心で受けて入れてやろう

だが自分達の粗相は自分で片づけないとな

「ミキャッ!?」

俺はCと名付けた方のチビンネを掴み、物置から持ってきた『あるもの』を取り出した
居間はチビンネやママンネの血や排泄物で汚れてしまっている(これに気づいた時、俺はシートを敷いておくべきだったと後悔した)
まずはこれらを綺麗にしなければならないのだが…意外と汚れは酷く少し骨が折れそうなのだ
そこで登場するのがこのアイテム…!

「てれれってれー!ミィミィクリーナー~!」

俺は某猫型ロボットのような声で『あるもの』を掲げた、それは特殊な洗剤の入った容器だった

タブンネが痛みや苦しみを受けた時にミィドレナリンという物質を分泌するは有名な話だ
だがこのミィドレナリンというのは食す際の味が良くなるという効能だけでは無い
このミィミィクリーナーはタブンネが分泌した汗に含まれたミィドレナリンとなんやかんやで反応を起こし
どんな頑固な汚れも一瞬で落とす洗剤になるという凄い洗剤なのだ
使用方法はタブンネを雑巾代わりに洗剤を付けて拭き取るだけ、早速俺はCの身体につけてみることにする

「ミィー!ミィミ!ミキャア!」

首根っこを掴まれてジタバタ暴れているC、こちらを精一杯睨んでる顔がうざったいのでまず顔面に洗剤を吹きかけてやる

「ミッヒャァァァァァッ!!!」

目にとてつなく滲みたのか、顔を押さえてより激しく暴れ出した。俺は構わず次にCの身体全体に洗剤を吹きかける
まずはこいつが漏らした排泄物からだ、俺は汚れの近くにかがみ、Cをそれに押しつけて拭き始めた

「ミ"ィ"ーーーーッ!ミ"ビィィィィィッ!!!」

顔面を押しつけてゴシゴシと拭いてやると、Cの濁った鳴き声が居間に響く
手足をジタバタさせて逃れようとするが抜け出せるわけがない

「ミッ…ミブゥエッ!!」

Cが嗚咽のような声を出すと、床に押しつけたCの顔面辺りからゲ○のようなものが広がり出した

「折角掃除してるのに汚すなんていけない子だ」

俺はCに洗剤を付け直すと、より一層強くCを床に押しつけて拭き始めた
もはや汚物に溺れたCからはゴボゴボという音しか聞こえなくなったが
手足は微妙に動いているので死んではいないだろう

Cの漏らしたモノ+αを拭き取り終えたので、次はAの流した血を拭き始めた
血溜まりに押しつけてもCは抵抗することなく「ミ…ミ…」と僅かに鳴いてるだけとなっている
やがてAの血溜まりを拭き終え、あのピンクの毛皮や自慢の尻尾が汚れで見るも無惨な姿にCを持ち上げる
弱々しく動き、屈辱や悲しみで涙に濡れてクシャクシャなCの顔、そして綺麗になった床を見て満足そうに頷いていると
突然背後からドンッと小さい何かがぶつかってきた

「ミ…ミィーーッ!ミッミィ!ミフーッ!」

たいした衝撃も無く後ろを振り向いてみると、Dが威嚇するように鳴きながらこちらを睨みつけていた
唯一残った兄弟が酷い目に合わされてるのを見て、助けようとしてるのだろう

「ミッミッミィ!ミギィー!」

Cを指差してまたしてもなにやら鳴いている、兄弟を放せ!ってところかな
俺は酷く汚れたCの姿をDに見せつけてやった

「ミヒャア!?ミッ…ミガァーッ!」

Cのあまりの姿に驚いて尻餅をつくD
だがすぐに立ち上がると兄弟を傷つけられた怒りか、こちらに体当たりを仕掛けてきた
だが小さな子タブンネの体当たりだスピードもパワーもたいしたことはない

「ミギャア!!」

Cを握ってない方の手で体当たりしてくるDに合わせてカウンターを入れる
Dは悲鳴を上げながら鼻血を出して吹っ飛んでいった
俺はそこら辺の床にCを放り捨て、吹っ飛んだDに向かう

「ミィィ…ミッ…ミィーーッ!!」

吹っ飛ばされたDは痛そうに顔を押さえながら立ち上がるが
俺が近寄ってくるのを見ると今度はおびえたように鳴きだした
そんなDを掴み、今度はDにミィミィクリーナーの洗剤を付ける
そしてまだ綺麗になってない汚れに押しつけて拭く!

「ピビィィィィィィィ!!!ミビャァァァァァ!!!」

Cに比べて随分と壮絶な悲鳴が上がった、心なしか汚れが取れるのも早い気がする

「フィィ…」

部分一帯を拭き終えDを持ち上げると、弱った声で鳴くD
だが情けなどかけない、俺は次の汚れの近くまで歩くと容赦無くDをそれに押しつける

「ミビャィィィィィィィィ!!!」

まだ叫ぶ元気はあるようだ、ならもっと酷使しても大丈夫そうだな
俺はDを使ってより一層激しく拭き出した

「ビャアァァァァァァァ!!!」

それと同時にDの悲鳴も大きくなる、こりゃ面白い
やがて居間全体の汚れが綺麗になるころにはDは息も絶え絶えで力無くぐったりとしていた
しかし、CもDも雑巾代わりに使われたことで異臭を放っている
部屋は綺麗になったものの、こんなものがいては臭くてたまらない

俺はDに加えて死んだように動かないCもひっつかみ、風呂場へと向かった

最終更新:2015年02月20日 17:19