ウォーグルはそんなママンネには興味がないのか、Aをくわえて飛び去る。
後で残った部分を食べるんだな。
そしてベランダに残ったのはAの漏らした凍ったおしっこと、ビニール紐に縛られたまま千切られた両腕だけだ。
ママンネはここでようやくベランダに出て、柵を掴んだかと思うと「ミィビィー!」と叫んだ。
ママンネさん、ウォーグルさんはもうこの場にはいないんですよw
どうせならちゃんとウォーグルさんに挑んでほしかったですwww
さて、Aのお漏らしはいずれ乾くだろうが、この両腕はどうしよう?
特に使い道があるかは分からない。
「ミィ…ミッピ…」
だがママンネがその両腕に手を伸ばしている。
子供の亡骸の一部だ。
きっと欲しいんだろうな。
しかし今の俺にはそれを可哀想と思う仏心はハッキリ言ってないw
むしろママンネが欲しがっているなら敢えてこのままにしておこうじゃないかw
「部屋に入れ。寒くてかなわん」
と言ってやる。
「ミィミッ…」
諦めきれないのかママンネは両腕を見上げて、そして俺にお願いするように鳴いた。
「そうか。お前は今日はそこで一晩過ごすんだな?寒いしさっきのウォーグルやバルジーナが戻ってくるかもしれないけど、まぁ頑張れや」
と言って窓を閉めようとすると「ンミ!?ミ…ミィ…」
と諦めたのかいや、本心では諦めてないだろうが、渋々と部屋に戻り、隅っこで小さくなって「ミーン…ミヒー…ェグッ…」と泣いていた。
ママンネともうちょっと遊びたい気もするが、俺には他にやることがある。
Aを見捨てたB。
お仕置きをしないといけないよねw
さて、俺はもう一度ベランダに出て、Aの残した両腕のうち片腕を取った。
そして部屋に戻ると、炬燵の下を除く。
「ミック…ミッミフィィィィ…」
Bがメソメソと泣いてやがる。
やはりケンカもしたが年の近いAがいなくなったのは寂しいのだろう。
見捨てたくせにw
俺が見ていることに気付かないBに「出てこい」と声をかける。
「ミッ!?ミフィ…」
ビクッとして俺に怯えるが何とかハイハイで炬燵から出てくるB。
俺はそんなBを蹴り飛ばした。
「ピィギー!ピミャッピッピィ!」
Bはいきなり蹴られて訳もわからず転げ回っている。
「………」
ママンネは一度こちらを見たが、そのまま壁に凭れかかって天井を見つめている。
ママンネは廃ポケになっちゃったのかな?
まるでBを助けようとしない。
俺はAの片腕をBの前に放り投げてやる。
「ミビーッ!ミッファーー!!」
ボロボロと涙を流して片腕に抱き付くB。
だが俺はそんなBの首根っこを掴んで持ち上げる。
「どうして炬燵にかくれたんだ!お前があのウォーグルに挑めば助けられた可能性もあったのに…バカ野郎!」
また俺も涙を流して怒鳴り付ける。
「ミッギー!!ミゥッピェ~ン!!」
するとBは心底後悔するように泣いた。
「僕のせいで兄弟が死んじゃった!」
今のBの心境を人間の言葉でいうとこんな感じだろう。
お前が挑んでも一緒に食われただけだろうがw
俺がBを離してやると、Bは片腕を抱えたまま「ミビーッ!ミミッビャー!」とママンネに駆け寄った。
ママンネはBを見ても無反応だったが、Bの抱える片腕にワナワナと震えだした。
そして「ミゥ…ミュゥ…ミヒーン…」と泣きながら片腕に向かってペコペコする。
Bは黙って両手両足を広げてうつ伏せになった。
二匹とも「助けられなくてゴメンね!」と謝ってるのだろう。
「お前ら、床はどうするんだ?まだ汚れてるぞ?」
俺はいつまでも「ゴメンナサイ」している二匹に話しかける。
だが二匹は「ミィ…」と泣いたが動かない。
ふむ、どうしたものか…
床はキレイにしたいが、これ以上コイツらには望めないだろう。
Bを人質にすればママンネは動くだろうが、その展開も飽きてきた…
そうだ!
「わかった。後は俺がキレイにするよ」
と言うと、ママンネへ何も言わないが表情が和らいだ。
「ミ?ミィミィ♪」
Bへ素直に喜んでいる。
ようやく解放されたとでも思っているのだろうか?
「でもさすがに一人じゃ大変だから、子タブンネ、少し手伝ってくれるかい?」
というと、ママンネが「ミッ…ミッ!」と鳴いた。
警戒してるんだろう。
「ミィ!」
どがBは一瞬キョトンとしたものの、すぐに少しならと返事した。
俺はゴム手袋を付けてBをもちあげた。
そして、Bの背中で吐瀉物をゴシゴシ拭く。
「ミィ!?ミ"ミ"ビィー!!」
短い手足をジタバタさせて「止めて」と叫ぶB。
「ミフッ!ミミッ!!」
ママンネも俺に向かって「止めてください」と喚いている。
かと思うと「ミギーッ!!」と叫んで前傾姿勢を取った。
また突進かい?w
ギュイーーン!
と不快な音が鳴り響く。
ルカリオがママンネの突進前の恒例雄叫びを聞いて金属音を鳴らしたのだ。
「ミィフィィ…」
とすっかり萎縮するママンネ。
そして「ビィー!!ミファーー!」と泣き叫ぶB。
大分キレイになったかな?
ふう、床がキレイになり、俺は一息ついた。
ママンネはこちらに背を向けてガクガク震えている。
「フィィィ…ミック…」
Bは俺の手に捕まれて弱々しく泣き、時折むせている。
その姿は吐瀉物でグチョベチョで、タブンネのキレイな毛並みは見る影もない。
今コイツを離すとせっかくキレイにした床がBについている吐瀉物でまた汚れてしまう。
かといってこのまま風呂に入れてやるのもなぁ…
悩んだ俺はBを台所に持っていった。
「ミッ……ミッ……」とママンネが後ろを付いてくる。
まずはキレイに洗ってあげよう。
俺は水を出して、Bを浸けようと水に近づける
「ミミーィ♪」
とママンネの喜ぶ声が聞こえる。
「キレイにしてね」とでもほざいてるんだろう。
そして勢いよく流れる水にBを浸けた。
「ミッピャ~ッゥビーン!!」
Bがカッと目を見開き叫ぶ。
残念ながらこのアパートは相当古くてね。
台所から温かいお湯が出るような親切設計じゃないんだよw
家の中は暖かいとはいえこの時期だ。
水道水は相当な冷たさだろう。
「ミヒッミハッハッ」とBは過呼吸のような症状を起こしている。
「ミッ!?ミィミ!?」
ママンネは「何があったの!?」と慌てている。
よし、キレイになったなw
俺はタオルで優しく拭いてやる。
「ミィ…ミッミィ…」
と泣きながらママンネが近付くが、俺はそれを制した。
納得はしてないだろうけどw
俺は呼吸難に陥るBを持ち上げ、次はおふろばに向かった。
ルカリオがリビングにいるし、ママンネはほっといて大丈夫だろう。
お風呂場に着くと、Bは若干落ち着きを取り戻した。
しかしまだ息苦しさはあるようで「ミハーッミハーッ」と大きくゆっくり深呼吸している。
そして俺がBを掴んだままお湯の溜まったバスタブに近付くと「ミハヒッミッ…ミギーッ」と暴れだした。
大方これが先程のような冷たい水か、或いは熱湯だと思って嫌がっているのだろう。
いや、本当ならば俺もそうしたいのだが、俺だって風呂には入りたいw
暴れるBを無視して、一緒に風呂に入る。
「ミ"ーー!!ミッ…ミィ??ミィ♪ミーィ♪」
Bはお湯に浸かった瞬間、物凄い声で鳴いた。と思うと「あれ?」と思ったのか、小首を傾げる。
そしてちょうどいい、気持ちいいお湯に気付くと、嬉しそうな声で鳴いた。
「ミッミ♪ミュッミー♪」
Bはすっかり元気を取り戻し、俺は胸から上を出すようにBを支えてやると、両手で水面をパチャパチャ叩いて喜んでいる。
こういう仕草は可愛いんだがな…
俺は唐突に手を離した。
一瞬お湯に沈んだあと、バジャバジャと水面に上がってきた。
「ミ"ーッ!ップゥッ!ミ"ミ"ャーー!!」
と涙を流して助けを求めるB。
最初に沈んだ以外は何とか顔を水面から出している。
さすがお兄ちゃん♪おしっこで溺死したベビンネよりは泳げるみたいだねw
しばらくもがくBを楽しく見物して、俺はBをバスタブから出した。
Bは隅っこで小さく震えている。
まぁ狭い風呂場だから逃げれてないがw
俺も自分の体を洗って上がろう。
俺が体を洗っていると、Bは俺の体に付いた泡を少し掬って自分の体に擦り付けた。
俺の真似をしてるのか、吐瀉物の匂いが取れないのかはわからないがw
俺はBに「おい!」と声をかける。
ビクンと震えて小さくなるB。
だが「あとでちゃんと洗ってやるから待ってな」と言ってやると、安心したように笑顔を見せてくれた。
先程から薄々思っていたのだが、コイツは俺が何をしたのか分かってるのだろうか?
俺がベビンネとAを殺したのを知らないわけはない。
なのに何故俺に普通に接してくるんだろう?
そうしていれば助かるかもとか思ってんのか?
疑問はあるが結果は変わらない。既に決まってんだよw
「よし、おいで。キレイにしてあげるよ」
「ミッミーィ♪ミミィ♪」
俺の言葉に喜ぶB。
俺は亀の子タワシにタップリ石鹸を付けて、Bの背中をゴシゴシした。
「ミ"ミ"ーー!?ミ"ッビャーーゥ!!」
おぉ、痛がってるねw
身を捩って苦痛から逃れようとしているが、これくらいの子供が人間に敵う訳もない。
今度はお腹を向けてゴシゴシした。
「ミ"ィゥガーーッ!!カッハッ!ゥギィーッ!!」
こちらも面白い反応をしてくれるw
俺たちが風呂場から出ると、Bの体は真っ赤になっていた。
特にお腹は酷いもんだ。
「ミゥ~…ミィ~」と悲しそうにすすり泣くBを拭いてやろうとタオルを近づける。
「ミミィッ!!」
だがBはそれを拒んだ。
は?何だ?ただ拭こうとしてるだけだが…
Bを濡れたままにすることは当然できないので、Bの意志は無視してちょっと強引に吹いてやる。
「ミ"グギィーー!!」
するとBが大声を出した。
なるべく優しく拭いたつもりだが、そんなに痛かったのか?
俺はようやく理解する。
強くゴシゴシしすぎて、Bの皮膚は相当弱っているのだ。
これはいいw
Bはしばらく何をしても体が痛むんだなw
俺はBを軽く乾かしてからリビングに向かった。
「ミ…ミ……」
するとそこには、何故かボロボロで横たわるママンネがいた。
ルカリオがそんなママンネを睨み付けていることから、きっと風呂場から聞こえた子供の悲鳴に、助けに行こうとしたがルカリオに阻まれたってことかな。
「ミィ…ミィ…」
Bはボロボロとはいえママを見て安心したのか、痛む場所を庇うようにバランスの悪い歩き方でママンネの元へ向かう。
「ミ…ミィ♪ミッミィ♪」
ママンネも子供が生存していることに喜び手を伸ばしている。
「ミ"ビャーーッ!!ミ"ミィーーッ!!」
だがママンネがBを抱き締めた瞬間、Bが叫んだ。
ママンネはBを抱き締めたまま「ミミッ!?ミィミ?ミィミッ?」と恐らく「どうしたの?」聞いている。
「ミゥギィッ!アーーッ!!」
だがBは泣き止まない。
ママンネが抱き締めている限りw
「ゥビィッ!!」
ここで、Bがママンネの手を振りほどいてしまった。
ママンネかれ完全に逃げて、隅で体を触らせないように丸めている。
「…ミィ?ミィミィ♪ミーィ♪ミミィ?」
ママンネはそれを信じられないといった表情で見つめたが、すぐに笑顔で「おいでおいで」と手招きした。
それでもBは動かない。それどころか、余計に縮こまって震え「ミィ…ミ…ィ」と呟いた。
「ミ"バァーーン!!」
ママンネはようやく理解したようだ。
自分が子供に拒絶されたことに。
その衝撃は俺には計り知れない。ざまぁw
このままお別れだよ。
俺は冷凍庫を炬燵に上げた。
冷凍庫と言っても一般家庭にあるようなものではなく、料理学校で支給されたものだ。
大きさは
電子レンジよりも少し大きいくらいだが、その分温度は普通の物よりかなり下がる。
中に入っていた冷凍のタブ肉を取り出し、普通の冷凍庫に詰める。
Bはこれに入ったらどう反応してくれるかな?外からは中が見れない設計なのは残念だw
俺がBに近付くと、Bは「ミゥ…ミ…」とイヤイヤをしながら首をふった。
それが俺には「こっち来ないで」と言われているようで苛立つ。
俺は乱暴にBを掴んだ。
「ミ"ッギーッ!ミ"ッミ"ッー!」
泣き叫ぶその口からは泡を吹いて、目は白目を向いている。
「ミィーーッ!ミッ!ミッ!」
ママンネが俺に食いついてきた。
先程Bに拒絶されたから、もうBを助けようとは思わないだろうと思っていたが、そこはやはり母親なようだ。
必死に「返して」とお願いしている。
「カハッ…」
チアノーゼでも起こしているのかな?
Bがビクンビクンし出した。
ママンネも心配そうに見ているが…
俺はBを冷凍庫に突っ込む。
「…ミ…ミィ…♪」
Bが嬉しそうな声を出した。
ひんやりとして気持ちいいのだろう。
「ミッ♪ミミィ♪」
ママンネもこれが何なのか知らないで俺に頭を下げている。
「ありがとう」だろう。
これまでそれで散々酷い目にあってきたのにw
今生の別れになります…
俺はそう心の中で呟き、冷凍庫の扉を閉めた。
「ミミィ♪ミーィ♪」
姿は見えなくなったが、Bの声は聞こえる。
どうやら大分元気になったようだ。
「ミミッミィ」
ママンネも喜んでいる。
てか癒しの波動かければBの爛れた皮膚は治せたのにw
そうすれば拒絶されなかったかもしれないのにw
まぁいい。
今はBの嬉しそうな声が聞こえるからママンネも安心しているが、この先どうなるこな?
楽しみだw
「ミッ♪ミッ♪」
Bが冷凍庫に入って15分程経過。
大分楽になったのか、きもちよさそうな声が聞こえる。
「ミッミィ~♪」
ママンネは冷凍庫の前でドッカリと座り喜んでいる。
少しソワソワしているのは、Bが出てくるのを待ってるからだろうか?
冷凍庫や冷蔵庫は内側から開けられないことを知らないでw
「ミッミ~ィ♪ミミィ♪」
ん?冷凍庫の中から、これまでとは違う様子の声が聞こえてくる。
な、何が起きたんだ?
こんなことなら冷凍庫の中にカメラでも仕掛けておけば…なんて出来るはずもないが。
「ミィ!?ミミッ♪」
ママンネもそんなBの声に一瞬驚いたが、中の子供が喜んでいるらしいと察して、一緒に喜び始めた。
「ファッ!ファアウア~!!」
だがその直後、何とも締まりのないBのうめき声が響いた。
「ミヒッ!?ミィミィ!」
ママンネも驚き、冷凍庫のドアに手をかけようとする。
「触るな!!」
しかし俺はそれを制した。
「ミッ!?ミィミッ!!」
当然ママンネは納得いかない。
「子供は今体がヒリヒリして痛いんだ。だから冷してあげないといけないだろ!?」
だが、今回の俺は少し最もらしい理由を着けて説明すると「………ミィミィ」と少し考えて納得した。
余談だが、この時のママンネの腕を組み顎に手を添えて考える仕草は、今この瞬間に殴り殺してやろうかと思える程腹が立った。
「フィヒッ!フィィィ!フィィィィッ!」
Bの叫びが響く。
始まったか。このためにわざわざ風呂上がり、生乾きのままにしたんだからw
「ンミィーーッ!ミッミィーー!!」
ママンネもBの叫びに応じて叫びを上げる。
ドンッドンッドンッ
「フィッ!フィッ!フィッ!」
Bが内側からドアを叩き始めたな。先程から締まりない声なのは俺も気になってるが…
そして我慢が出来なくなったのか、ママンネが動いた。
キリッ!とした顔で「ミミィ!!」と気合いを入れると、ドアに手を伸ばしたのだ。
もちろん、俺がそんなことを許す筈はない。
「落ち着け!子供は大丈夫だ!」
後ろから羽交い締めにして言ってやる。
「フィッファウーーッ!!」
だが、どう考えても平気とは思えないBの叫びに、ママンネはバタバタして俺を振りほどこうともがく。
「ミッ!ミゥッギィッ!」
「邪魔するな!」とでも言ってんのか?
ここに来て一々イラつかせてくれる。
ギュイーーーン!
本っ当に頼れるよ、ルカリオ。
ママンネを抑えるのにてこずる俺を見て、ルカリオが金属音を掻き鳴らす。
「ミヒ!?ミミィ…ミィ…」
ママンネはその音に怯え腰を抜かしてしまった。
せっかくキレイになったカーペットにまたもやお漏らしをしてw
しかしママンネは諦められない。何しろこれまで二匹の子供を失っているのだから。
「ミィ…ミィ…ミッミ…」
ママンネはこれまでのように、ルカリオに媚びて助けてもらうのではなく、本当に懇願するようにルカリオを見つめながら泣いた。
だがルカリオがそれに応える筈もない。
「ミィイィッ!!ミッミビーー!!」
ママンネは堪えられずに泣きわめきだした。
「大丈夫だ!暗いから少し怖がっているだけだよ。とにかく体を冷やした方がいい。信じろって!!」
俺はママンネに力強い口調で言ってやる。
「ミィ…ミ…ミィッ!」
ママンネはそれを聞いて、少し俺と冷蔵庫を見た後、コクンと頷いた。
イヤイヤイヤ、普通二匹の子供を殺した人間の言うことなんざ信じられないだろw
本当にお花畑だねw
「ファァァッ…ンクッ…」
唐突に冷蔵庫から声が聞こえた。
今までのような叫び声ではない、これは欠伸だ。
寒さに加えこれまでの疲れが睡魔となってBを襲っているのだろう。
寝ちゃダメだ!寝たら死ぬぞ!寝なくても死ぬけどねw
「ほら、聞いたかタブンネ?子供はそろそろ寝んねしたいらしい。本当に危なかったら寝れないだろ?」
俺はその欠伸を利用してママンネに追い討ちをかけた。
「ミィミッ♪ミミーィ♪」
ママンネもこれで納得したように喜ぶ。
「フィッ…フィッ…」
Bの声が聞こえるが、もはや勢いはない。
眠る寸前、なんとか声を絞り出しているのだろう。
「ミッミィ。ミミィ」
だがママンネはその声をSOSとは受け取らず、安心した声を出したかと思うと、ベビンネを眠らせていた座布団に横になり自分が眠り始めた。
まぁママンネも疲れただろうなぁ。
「ミクーッミカーッ」と直ぐに寝息を立てた。
ドン!
「フィップィッ…!」
ここでBがまた抵抗にでる。
どうやらママンネの寝息を聞いたようだ。
ママンネさん、あなたよりも子供の方がよっぽど優れた聴力を生かしてますw
今頃中のBは絶望に染まっているだろう。
唯一の自分の味方が自分を放って寝てるのだw
まぁ最初に捨てたのはBだけどw
捨てた相手に助けを求めるなんて、虫が良すぎやしませんかねぇ?
「フィィ…フィッ…」
だが先程のが最後の抵抗だったようだ。
冷蔵庫からBの寝息が聞こえる。
俺は今日はママンネが起きてもいいように、ソファーで寝ることにした。
もちろん、ルカリオも出して。
さぁ、明日が楽しみだw
ん、朝か。
俺が目を覚ますと、ママンネはまだ寝ていた。
「ミュィ…ミィッ!グ~」
呑気なものだな。
冷凍庫けらへ何の音も聞こえない。
ママンネと一緒に冷凍庫の扉を開けよう。
ガツン
ママンネの頭を軽く蹴ってやる。
「ビッ!ミッグッ!」
ママンネはビックリしたように飛び起きた。
「おはようタブンネ」
「ミッ!!ミフーッ!ミフーッ!」
だがママンネは俺を威嚇した。
相当寝起き悪いなコイツ。
「さ、子供を出してあげよう。」
だが俺のその言葉に「ミッ!」と片手を挙げてげんきに返事をする。
ママンネは冷凍庫に向かって走りると、尻尾をパタパタさせ、ピョンピョン飛びはねて「ミ♪ミミィミー♪」と鳴いた。
「早く出して」だろう。
急がなくても出して上げるさ。
俺は冷凍庫を開けて中を見た。
あれ?Bがいないぞ?
「ミ"ーーーッ!!!」
だが、後ろからママンネの絶叫が木霊した。
成る程、Bは扉にくっついていたのだ。
そして、俺は「フィィ」というBの締まりのない声の理由も理解した。
氷った木の実だ。
取り出し忘れてしまったのだろう、木の実ジュース用の氷った木の実が舌に張りついている。
これで口が閉じれなくなってあんな声になったんだ。
どこまでも食い意地張ってたなw
もちろん、Bはカチンコチンに凍って死んでいた。
「ミ"ィーッ!ミ"ゥッミ"ャーーッ!!」
ママンネは俺に必死に訴えかけている。
「大丈夫、信じろって言ったのに!!」だろうな。
信じるから裏切られるんだよw
「あちゃー、子供は死んじゃったのか。ごめんなタブンネ」
俺は悪びれずにママンネに言った。
「ミバァーーッ!!」
と泣くママンネ、そして「ミギーッ!!」と叫んだ。
だがやはりルカリオに阻まれる。
「ミ"ゴッ!」
神速を受けて吹っ飛ぶママンネ。
最早お馴染みの展開だなw
「ミゥ…ンミ…」
何とか這って冷凍庫まで辿り着いたママンネ。
Bを取ろうとするが、ガッチリと張り付いたBは、ママンネの力ではびくともしない。
「ミィィィ!!」
それでも必死に力を込めている。
ベビンネ、Aは遺体すらも残ってないからな。
Bだけでも諦めたくはないだろう。
「ミィ…ミ…」
だが結局はどうしようもない。
ママンネは次にBの体をペロッと舐めた。
「ムァーーッムゥーッ!!」
とママンネの情けない声が出る。
ママンネの舌が、Bの凍った体にペッタリと張り付いたのだ。
顔がBから話せず、手だけをバタバタさせるママンネは実に間抜けだw
「ムァーーッ」
ママンネは必死に舌を剥がそうとしている。
既にその舌は凍傷になってしまったのか、出血していた。
仕方ない、助けてやろう。
俺は台所から、包丁を一本持ってきた。
さて、包丁を持ってきたはいいが、ここで選択肢は二つある。
1.舌と接しているBの体を切り取る。
2.直接ママンネの舌を切り取る。
どちらにしても面白そうだ。
朝日を浴びて、包丁がキラッと光った。
「ムァ…ムッムィ…」
ママンネは俺のしようとしていることに気づいてイヤイヤと首をふった。
「取ってやるから安心しなw」
ママンネはその言葉と表情にガクガクし、より一層剥がそうと力を込める。
俺はとりあえずBの体に包丁を当ててみた。
…ダメだこりゃ。Bの体はとても固く、とても包丁で切れるようなものではない。
ということは自動的に2ということになる。
俺はママンネの舌、Bにくっついている部分の少し下に包丁を押し当てる。
「ムッアゥーーッ!!ムッムッ!!ムビーーッ!!」
ママンネは「お願い!止めて!」と訴えている。
でもこのままじゃあいけないだろう?
幸い、舌の先っぽがくっついているだけなようで、これなら切っても死ぬことはないだろう。
俺はルカリオにママンネの体を押さえつけさせ、思いきって包丁を引いた。
「ガゥア"ーーッ!ウ"ビーー!!」
とてつもない絶叫。そして同時にママンネの口からおびただしい量の血が吹き出す。
ママンネは頭をふって痛がっているため、吹き出した血が俺やルカリオ、壁などを汚した。
「ムビッ!ミ"ニ"ャーー!!」
ママンネは舌が無くなり上手に声が上手に出せなくなったのか、文字では書きにくい微妙な音で叫ぶ。
痛がるのは構わないが、あまり汚されても困る。
俺はママンネの口にガムテープを付けて上げた。
「ウーーッ!ンーーッ!」
ママンネはそう叫んだあと、白目を向いて失神した。
ふむ、これからどうしようか…
ママンネも死ぬことは決定事項だが、どうせなら面白くしたい。
取り合えずBはまた冷凍庫に入れて、冷凍庫を定位置に戻しておいた。
ママンネに見せたらまたうるさい。
失神しているママンネを見ながら、俺は考えた。
そうだ!あれを使おう!
確かこの返に閉まっていたはずだ。
…あった!コルトバイソン!
もちろん、本物じゃない。
子供のころに遊んだエアガンだ。
そして失神しているママンネの手足をビニール紐で縛り上げた。
血ももう止まっているようだし、ガムテープも外してあげよう。
ゆっくりお寝んねしておきな、ママンネ。
君が次に眠るときはきっと永眠だからねw
「ミ"…?」
おし、ママンネが目を覚ましたな。
舌の先っぽがなくなり上手く「ミィ」と言えず、これまでに叫びすぎたのか、甲高く可愛らしい声は掠れてしまっている。
「ム"ゥゥッ!ミ"ーーッ!!」
ママンネは自分の手足が縛られていることに気付くと騒ぎ出した。
ウォーグルに食べられたAのことでも思い出しているのかもしれない。
「目が覚めたかい?」
俺は意地悪に言ってやる。
「ミ"ッ!?ムィッ…ムミッ…」
ママンネは俺と目が合うと、芋虫のように体をくねらせて俺から離れようとしている。
逃がさないよ。
俺は用意したコルトバイソンにBB弾を詰め込み、狙いを定めた。
タンッ!
と乾いた音と共に勢いよく発射された弾は、ママンネのお尻に命中した。
「ムアッ!?ムィッ!!ムミ"ーーっ!!」
懐かしいなぁ。
子供の頃、エアガンが流行った時、回りのみんなはベレッタのエアガンを使っているのに、俺だけコルトバイソンで友達の羨望を集めたものだ。
タンッ!タンッ!タンッ!
そのまま二発、三発と打っていく。
弾はママンネの背中や縛られた手足に当たった。
「ムッ!ム"ミ"ッ!ミ"ャーー!」
その度に叫ぶママンネ。
「ムミァ…?」
俺からは離れたはずなのに攻撃を受けてることが疑問なのか、ママンネがこちらを振り返った。
タンッ!
だがそれと同時に発射される弾。
俺は頭を狙ったのだが…
「ミ"ーーッ!!ミ"ニ"ャーーッ!!ゥギャー!!」
凄まじい叫びだ。
頭を狙った弾はママンネが振り返ったせいで、ママンネの眼球に当たったのだ。
しかも、威力が強すぎて目に入り込んでしまった。
「ミ"ゥーッ!!ニ"ィヤーーッ!!」
ママンネは床の上で転げ回っている。
手を縛られているため、痛む箇所を撫でたり、抑えることもできない。
可哀想だが仕方ないねw
「ヒューッヒューッ」
ママンネは苦しそうに呼吸をしている。
体には赤い点の腫れが無数にある。
やはり大人だけあって体力は中々だ。
その体力のせいでより長く苦しむんだがw
BB弾もなくなったのでママンネの手足の拘束を解いてやる。
「ム"ヒー…ム"ム"ッ」
といいながら、やはりまずは目だろう。
ママンネが目を擦り開けると、弾がコロンと落ちてきた。
そして眼球も…
「ムッ…ムミィ?」
どうやらママンネは眼球が落ちたことには気付いていない。
どれ、鏡を見せてあげよう。
「ム"ゥガーッ!ンムィギーーッ!!」
よっぽどショックだったのか、残った目から涙を流して泣いている。
眼球はまだ紐?のようなものでその穴に繋がっているが、既に見えてはいないだろう。
眼球がプランプランしていて気持ち悪い。
俺はもう一度包丁を握った。
「ゥビーーッ!ムッ!ガーーッ!!」
ママンネは床にうずくまっている。
俺はルカリオにもう一度抑えさせ、包丁をその紐に当てた。
「ム"ゥーーッ!ムゥギーッ!!」
何とか逃れようと暴れるが、ルカリオの力に勝てる筈もない。
「とってあげるね」
俺は包丁を引いた。
「ミ"ッッギャーーッ!!ギャビーーッ!!」
うわ…もしかしたら一番の叫びじゃないか?
ルカリオが離すと、ママンネは転がりながら完全になくなった目を押さえてのたうち回っている。
「ミ"ハァーッ…ミ"ハァーッ…」
そうして何とか立ち上がったママンネ。次に前傾姿勢をとり「ミ"ギーッ!」と叫んだ。
その顔からは「絶対にお前を許さない!」という強い覚悟が見える。
いくらなんでも可哀想だと思い、ルカリオに目で「手を出すな」と合図した。
「ム"ヒッ…」
ルカリオが動かないことを感じ、少し笑うママンネ。
「来いよw」
俺が心からバカにするような声で言うと、ママンネは突っ込んできた。
「ム"ィ!?」
だが俺には当たらなかった。
もちろん俺は動いていない。
片目をなくして、距離感やバランスがとれていないんだろう。
「ム"ミ"ッ…」
そして勢いあまって転ぶママンネ。
顔面から転んだために鼻血がでている。
そしてヨロヨロと立ち上がるとまた「ミ"ギーッ!」と叫び突進してくる。
「ム"ブッ!」
やはり当たらない。
今度は突進の勢いで壁にぶつかった。
折れているのだろう。ママンネの小さな鼻は曲がってしまい、おびただしい量の血が流れている。
だが今のママンネはそんなこと気にしない。
弱々しくも俺を振り替えるとまた「ミ"ギーッ!」と叫んで突進してきた。
いい加減理解しろw
お前の突進ほ当たらない。
てかその突進前の「ミギーッ!」てのやめろよw
ママンネはやはり俺の横を通り過ぎた。
だが今度は…
ガッシャーン!
俺の後ろにはガラスがあり、ママンネはその勢いでガラスをぶち破った。
「ム"…バァッ…」
ベランダに出たママンネは仰向けに倒れている。
あーあぁ、これは完全に買い換えなきゃな。
「ム"ッビ~…ミ"ニャッ…」
ママンネの体はガラスで切り刻まれズタズタだ。
だがそんな状況で、ママンネは痛みとは違う涙を流し泣いた。
悔しいだろうなぁ。
子供を殺し、自分にも暴行を加える人間に復讐できないなんて。
この血の量は助からないだろう。
最後の時だ。俺はもう一度包丁を握った。
が、ここでベランダの柵に大きな鳥が止まった。
バルジーナだ。
昨日ウォーグルに負けてしまったが、ここにくれば何かあるかもと考えたのだろうか?
ならば大正解だ。今なら昨日よりも大きな食べ物を上げられるよw
ママンネは最早諦めたのか、動かずに残ったAの片腕を見上げている。
だがバルジーナはまずそちらに手を出した。
ウォーグルよりも嘴を器用に使い、紐にぶら下がる腕を食べている。
「ム"…ミ"ゥッ…」
ママンネはこれに反応した。
バルジーナに必死に手を伸ばしている。
目の前に食料がある動物にとって、ママンネの願いなど聞き入れられるはずはない。
バルジーナはキレイにぶら下がった腕を骨にすると、ママンネにその鋭い視線を映した。
「ミ"…ミ"…」
ママンネはバルジーナの視線に震えている。
諦めたとはいえ、やはりその瞬間は怖いだろう。
だがこれまでのように媚びる姿は見られなかった。
「ミ"ブブブッ!ガバッ」
バルジーナの食事はウォーグルのそれとは大分違った。
ウォーグルはまず首を折って殺してから食べたが、バルジーナは何と、生きているママンネの腹を裂いたのだ。
たまらずママンネは叫ぶ。
「ミ"ボッ!ゥブブッ!」
そして完全に腹を開いたバルジーナは内臓を食べ始めた。
「ボボッ!ギャーーッ!ミ"ミ"ギーー!!」
ママンネの叫びが続くが、「ミ…ィ…ミャン…」
と段々弱くなっていく。
そして、もう痙攣ほどにしか動いていない心臓に、バルジーナはその嘴を突き立てた。
「ミ"ッギャーーーー!!」
と断末魔の叫びを上げるママンネ。
これが喧しいママンネの発する最後の音だった。
バルジーナは内臓を綺麗に食べたあと、俺にお辞儀をして空っぽのママンネを持って飛び去った。
挿絵
終わった…
天真爛漫な
タブンネ一家を、俺が殺したのだ…
ママンネの残した血やガラスは俺が片付けておこう。
俺は妙な達成感に包まれていた。
「ふぅーっ」
血とガラスを片付けて俺はため息をついた。
時計を見たら時間は午前10時を指している。
何だかんだ、あのタブンネ一家に三連休の半分を使ってしまった。
少し昼寝をしたら、ルカリオとピィと一緒に遊びに行こう。
ライモンシティか、セッカの湿原か、ビレッジブリッジに観光なんてのもいいな。
そんなことを考えながら俺は自分の部屋に入る。
久しぶり?の自分のベッドだ。
だが俺は気がついた。
あのタブンネたちが入った部屋はリビングだけだったか?
最初の日、俺が失神している間、奴らは俺のベッドで寝ていた。
冷静になった俺は自分の部屋をしっかり見た。
洋服ダンスは引き出しを引っ張り出されて中はメチャメチャ。
ベッドはシーツが引き裂かれ、机の上も荒らされていた。
早い話がリビング以上に散らかっている。
「タァブンネェェェッ!!」
俺が叫んでも、ママンネの「ミィ♪」という声も、Aの「ミ…ミフー!」という怯えながらの威嚇も、Bの「ミィ♪ミミィ♪」という媚びる声も、ベビンネの「チッチィ!」という声も聞こえない。
みんな俺がこの手で始末したのだから…
俺は結局、その日の午後も片付けに時間を費やしてしまった。
<終>
最終更新:2015年02月20日 17:33