「エレナさん!ドレディアは『フラフラダンス』を使えますか?」
「え、ええ…」
「ならタブンネの前衛を混乱させてください!」
「!、そうか!」
エレナさんは俺の考えを察し、ドレディアを繰り出した。
「みんな!『守る』よ!」
ストライク達は「守る」を使った。
自分達が混乱しないためだ。
「ドレディア!『フラフラダンス』!」
「ドレドレ~♪」フラフラ
ドレディアはリズミカルにフラダンスを踊った。
見ているだけで一緒に踊りたい気分になる、不思議で可憐なダンスだ…
「ミ…ミィ?」ヨロヨロ
(な…何だミィ?)
「ミィィィ…」ペタン
(頭が揺れるミィ…)
「タ…ブタブ…」ポテン
(目が…回ってきたミィ…)
前衛のタブンネ達は混乱状態になり、立つことも出来ないようだ。
そのままだらし無い身体を地面に横たえた。
そして後方のタブンネ達は突進の勢いを殺せず、
「ブギャアァ!!」ボテ-ン「ミィィミィィ!」ドテ-ン(どけどけミィ!)
「ミィィィ!ミィィィィン!」ジタバタ
(重いミィィ!どいてくれミィィ!)
「ミィィィィィン!ミィビィィィィ!」ドスドス
(前衛何をしてるミィ!後が支えてるミィ!)
混乱して平伏した豚に力任せに突進してきた豚が躓き、その豚にまた突進してきた豚が躓き…
次々に玉突き事故を起こしている。
将棋倒し状態になり、仲間同士「のしかかり」を決め合っている豚達もいるな。
互いに身動きが取れずにいる。
前方のタブンネ達が平伏しているおかげで、リーダーンネの巨体がよく見える。
「さあアレンさん!チャンスです!頭(かしら)の首を取って、一気に指揮系統を瓦解させましょう!」
俺は大きく頷き、
「ストライク!」
「ゾロアーク!」
二人で息を合わせて、
「「『辻斬』!」」
俺達の命令を受けたストライクとゾロアークは、
「スットオォォォォォォ!!」ビュンッ
「シャアァァァァァァァ!!」スタッ スタッ
ストライクは弾丸のような速度で羽ばたいて、ゾロアークは驚異的な跳躍力で、リーダーンネに急接近した!
そして鎌と爪がリーダーンネの首を捉えた!
…だが
「タブネェ!」ビリビリ
「ミィィィ!」パキパキ
リーダーンネの両側にいる二匹のタブンネが、それぞれ「十万ボルト」に「冷凍ビーム」を正確にストライクとゾロアークへ発射した!
「ストォ!?」
「シャオ!?」
二体は何とかギリギリで避けた。
しかしあともう少しで首を取れたのに!
「ブヒャハハハァ!ブッヒッヒッヒッ!ブヒィブヒィブヒィ!」ドヤンネ-
(ブヒャハハハァ!この二匹のタブンネちゃんはミィの側近で、コロニーの中でも随一の命中率を誇るブヒィ!ギリギリで避けたブヒィが、今度は外さないブヒィ!)
まるで自分の手柄のように自慢している。
そいつらがいなかったら、頭と胴体がおさらばだっただろうに…
「ブブヒィ?ブヒャアハハハァ!」ドヤンネ-
(どうしたブヒィ?もう諦めるブヒィ?)
くそっ!
ならば先にその二匹を始末するまでだ!
すると
色違いのリーダーンネ、たしか川のコロニーのリーダータブンネとか言われてた豚が、
「ミィ?同胞よ。肩から血が出てるミィよ?」
デカブツのリーダーンネの右肩を指差した。
しかし遠目から見たらわかりにくい浅い裂傷。
ストライクの鎌がかすったようだが、致命傷には程遠いな。
すると何故かデカブツリーダーンネの周りにいたタブンネ達が、
「ミィ!ま…まずいミィ!」サササッ
「み…みんな離れるミィ!」サササッ
顔を青くして離れ始めた。
(ミィ?みんな何してるミィ?自分達のリーダーンネちゃんが怪我をしているんだから、『癒しの波動』くらい浴びせてやるミィ!)
しかし周りのタブンネどもは、
「ミ…ミィィィィィ!ミフィミフィ!」ガタガタ
(か…川のリーダーンネちゃん!すぐに離れるミィ!)
「ミィィィィィン!」ブルブル
(今ミィ達のリーダーンネちゃんは危ないミィ!)
何故か自分達のリーダーンネを恐れている。
(ミィ!?お前達!自分達のリーダーンネちゃんに失礼だミィ!…仕方ないミィ。ミィが直々に傷を癒してやるミィ。)
川のリーダーンネは肩に手を向けて、
(今『癒しの波動』を浴びせてあげるミィ。しかし何でタブンネちゃん達お前を怖がってるミィ?)
しかし質問されたデカブツリーダーンネは、
「ブ…」ワナ
(血…)
「ミィ?」
(ミィ?)
「ブヒ…」ワナワナ
(血が…)
「ミィミィン?ミィン!ミヒャハハハァ!」ドヤンネ-
(もしかして血は嫌いかミィ?なら大丈夫だミィ!今すぐミィの崇高な『癒しの波動』を浴びせてあげるミィ!)
川のリーダーンネは「癒しの波動」を浴びせ始めた。
「ブ…ブビィ…」ワナワナワナ
(い…痛え…)
「ミミフィ…。ミィミィィン?」
(やれやれしっかりするミィ…。リーダーの品格が問われてしまうミィよ?)
するとデカブツリーダーンネは右手を空へ掲げた。
(ミィ?何をしてるミィ?)
そして次の瞬間!
「ブギィヒィィィィィィィィ!!!」ブンッ
(痛ってえブヒィィィィィィィィィ!!!)
デカブツリーダーンネはでかい手で威力が増した張手を、川のリーダーンネに躊躇いも無くぶつけた。
ビシャアアァァァァァアアァァァァン!!
張手が色違いリーダーンネの顔面を直撃した。
グシャアァァァアァァァ
!!!
色違いリーダーンネはそのまま地面に叩き潰された。
「「「「「「ミィィィィィィィィィィン!!??」」」」」」ガタガタ
周りの100匹以上のタブンネ達が、同胞が同胞を叩き潰す光景を見て絶叫した。
あいつらはあの色違いリーダーンネの支配下にあったタブンネ達だろう。
色違いリーダーンネがどうなったか覗いてみると、
……うわ…
衝撃で目玉が二つとも飛び出し、顔のあらゆる穴から血が流れている。
また地面に後頭部を強く打ち付けたために出血し、頭を中心に赤い水溜まりが広がっている。
脳震盪も併発したのか、痙攣している。
「タアッ!タブネェ!タァブンネェェェェ!」ギャアギャア
(おいっ!リーダーンネ!ミィ達のリーダーンネに何をするミィ!)
「ミィィン!ミィミィミィミィ!」ポテポテ
(早く助けるミィ!「癒しの波動」で蘇生するミィ!)
色違いリーダーンネの部下達は文句を言ったり、色違いリーダーンネを治療するためにデカブツリーダーンネに近付いた。
だが、
「ブヒギィィィィィィィィィ!!!」ブンッ ブンッ
(痛ってぇブヒィィィィィィィ!!!)
狂ったデカブツリーダーンネは、近寄る豚どもを片っ端から薙ぎ倒していく。
「フ”キ”ィ!」グシャアッ
「ミ”ヒ”ャカ”!」ドガッ
「ホ”カ”ァ!」バキィッ
デカブツリーダーンネは豚どもを20m吹き飛ばしたり、頭に垂直に叩き潰して頭蓋骨や脊髄を粉砕骨折させたりしている。
「ミ…ミィミィミィィィィィ!」ガタガタ
(リ…リーダーンネちゃんは自分の血を見ると、狂って殺人タブンネになってしまうミィ!)
……迷惑極まりないリーダー豚だな…
というか殺人ではなくて殺タブの間違いだろ…
(リーダーンネちゃんの動きを封じるには、みんなで一斉に鉄パイプを投げ付けるミィ!)
すると何匹かが巣穴から鉄パイプを何本も持って来た。
一体どこから拾って来たんだ?
「ミィィィィィ!」ビュンッ(一斉に鉄パイプを投げ付けるミィ!)
豚どもはデカブツに一斉に鉄パイプを投げ付けた!
だが、
「ブヒィヒィヒィヒィヒィ…」メリメリメリ
腹に命中した何本もの鉄パイプが、その分厚い肉に減り込んでいく。
(な…何だミィ!)
(鉄パイプが吸収されてるミィ!)
そして!
「ブヒィィィィィィ!」ボンッ
鉄パイプがまるで矢のように、四方八方へ発射された。
「ハ”キ”ャ!」グジャアッ
「タ”ハ”ァ!」グシャッ
「ミ”フ”ァ!」ゴガッ
鉄パイプは散弾となって豚どもに飛来する。
「…ってヤバイヤバイ!ストライク!『守る』!」
「みんなも『守る』よ!」
皆「守る」で鉄パイプの矢を防いだ。
周りを見渡すと、鉄パイプは地面や樹木に突き刺さっている。
もし「守る」を覚えていなかったら、取り返しのつかない事態になっていたかもしれない…
「会長!お怪我はありませんでしたか!?」
エレナさんは慌てた様子で会長の無事を確認するが、会長は焦る素振りも無く、
「ああ、大丈夫だよ。サーナイトとリグレーが『サイコキネシス』で防いでくれたからね。」
確かにサーナイトとリグレーは「サイコキネシス」で鉄パイプを静止させ、宙に浮かせている。
タブンネどもはどうなったかというと…
……うわうわ………
強打されてのたうちまわっている豚、目や腹に鉄パイプが突き刺さってパニックになっている豚、さらに頭に突き刺さって痙攣している豚もいる。
また、群れの外で戦いを傍観していた、戦えない子タブンネやママンネ、ジジババンネも例外ではなく、上記のような状態になっている。
「チ”ャアァァァァ!チ”ャアァァァァァ!チ”ュアァァァァァ!」ビタ-ン ビタ-ン
(ママァァァァァ!いたいよぉぉぉぉぉ!ちがとまらないよぉぉぉぉぉ!)
「タ”…ア”ァ…、タ”……タ”フ”…ネ”ェェ……」ピクピク
(バ…アさん…、目……目の…鉄パ…イプを……)
「チ”…チ”……チ”ィ…ィィィ……」ピク ピク ガクッ
(マ…マ……いた…い…よ……)
「ミ…ミィィィィィィ!ミィィミィィィィィン!」ワナワナ
(ベ…ベビちゃあぁぁぁぁぁぁん!死なないでぇぇぇぇぇぇ!)
血に塗れた豚ども、苦痛に満ちた呻き声、子が死んだことを受け入れられず、必死に「癒しの波動」を浴びせる母豚の鳴咽。
地獄絵図とはこのことだな。
「ブヒャハハハハハハアァ!ブヒブヒィブヒャァ!ブヒィィィィィィィ!」ドヤンネ-
(ブヒャハハハハハハアァ!使えないゴミタブンネちゃんどもがぁ!ミィの崇高なる肉は、あらゆる攻撃を吸収、跳ね返すことを忘れたかブヒィ!?)
デカブツリーダーンネは同胞達を殺したことに一切の罪悪感も持たず、
「ブヒィ、ブヒブヒィ。ブヒャブヒャ。」ブヨブヨ
(ブヒィ、またやっちまったブヒィ。だから血は嫌いだブヒィ。)
…なんてやつだ……
…そして何なんだこれは……
豚どもが潰されたのは寧ろ喜ぶべきことだ…
だが喜べない…
人によっては勝手に自滅した豚どもを嘲るだろう…
しかし俺はムカついている…
駆除すべき豚であれ、仲間を虫けらのように殺すリーダー豚を…
俺がいたぶると決めた豚どもをかなり始末されたこと…
「おいリーダー糞豚…。てめえ仲間を殺したのに何で笑ってるんだ?」
デカブツリーダーンネは「何を聞いている?」と言わん顔で
「ブギャハハハハハハアァ!ブヒャハハハアァ!」ドヤンネ-
(この崇高なるリーダーンネちゃんに鉄パイプを投げ付ける愚行をしたんだブヒィ!当然の制裁だブヒィ!)
…正に糞豚のリーダーだな…
今まで出会った糞豚の中で最も劣悪な下衆豚だ。
すると周りの豚どもは抗議を始めた。
(このタブ殺し!)
(お前なんかリーダーに選ぶんじゃなかったミィ!)
(チビちゃんを!チビちゃんを返してぇ!)
(よくもミィ達のリーダーンネちゃんを殺してくれたミィ!)
だがデカブツは意に介する様子も無く、
(うるさいタブンネちゃん達だブヒィ。ミィはお前達とは格が違うブヒィ!お前達の生殺与奪はミィが握っているブヒィ!だからミィの気まぐれで殺されようと、ミィは全て許されるブヒィ!)
…さすが糞豚の頂点に君臨するリーダー下衆ンネだな…
タブンネの中でも害獣である。
(そもそも何が『お前なんかリーダーに選ぶんじゃなかったミィ!』だブヒィ。前のリーダーをミィが叩き殺した時、お前達は『ミィ達の木の実を搾取し続けたクズリーダーを葬ってくれた英雄タブンネさまだミィ!』とか『こいつがリーダーになってから縄張りがどんどん減っていったミィ!使えないリーダーだったミィ!』、さらに『ミィの妻を寝とった天罰だミィ!』と喜び、ミィを満場一致でリーダーに迎えたブヒィ!このコロニーがここまで拡大できたのも、ミィが能無しのお前らを指揮し、敵を叩き潰してきたからだブヒィ!そんな崇高なるミィに鉄パイプを投げ付けたのだから、制裁を受けるのは当然ブヒィ!)
すると一匹の豚が言い訳を始めた。
「ミィ…ミフィィィ…」オズオズ
(し…しかしそれはリーダータブンネちゃんが暴れたから気絶させようと…)
しかし言い訳した豚を、
「ブヒィ…」ズンッ
(うるさいブヒィ…)
リーダー糞豚は張手で叩き潰した。
「ミ”キ”ィィィ!」グシャアァァ
「ブヒィブヒャブヒャ!ブヒィィィィィ!」ドヤンネ-
(ミィが暴れようとお前達は攻撃する権利なんて無いブヒィ!甘んじてミィの張手を受けるブヒィ!)
…正しいと思えてくる程の支離滅裂な主張だな……
すると一匹の豚が、
(そんなのミィ達のリーダータブンネちゃんを殺した理由になるかミィ!今からリーダーの一番の側近だったミィが、新たなリーダーとしてお前を成敗してくれるミィ!)
すると周りの豚がざわめき始め、
(何を勝手に決めてるミィ!リーダーはミィにこそ相応しいミィ!お前なんかがリーダーになったら、三日でコロニーが壊滅するミィ!)
(貴様こそ何を言っているミィ!リーダータブンネちゃん亡き後のリーダーの座は、一番有能でリーダータブンネちゃんによく仕えていたミィの物に決まっているミィ!)
(お前のどこが有能だミィ!お前が率いる部隊が、大きな縄張りを手に入れたことなんて一度も無いミィ!いつも木の実も水も無い、役に立たない土地ばかり手に入れるミィよ!?)
(人…いや、タブのこと言えるかミィ!?お前がリーダータブンネちゃんに献上する土地も、オボンの実どころかオレンの実も生えていない、痩せた土地ばかりだミィ!)
そしてさらに、
(おいお前達!何を二匹だけで争ってるミィ!リーダーの座に相応しいタブンネちゃんは、今ミィ達が暮らしている川岸を献上したミィに決まっているミィ!ミィは他のポケモンがいない土地しか手に入れられない、臆病タブンネちゃんのお前達とは格が違うミィ!)
(ほざくなミィ!川岸を縄張りにしていたヒヤップやヒヤッキー達を追い出す際、若いタブンネちゃん達に『ヒヤップやヒヤッキーは水ポケで一番弱いミィ。だから新米のお前達でも余裕で追い払えるミィ。』と吹き込んで、『熱湯』で火傷を負って苦しむタブンネちゃん達を横目に、母ヒヤッキーと赤ちゃんヒヤップを人質にとり、縄張りを放棄するように脅したそうだミィね!?しかもリーダータブンネちゃんには『ミィが先陣となって勇敢に戦い、敵を討ち取ったのですミィ。』と報告したミィ!?同じタブンネとして恥ずかしいミィ!)
(ミヒャハハハァァ!負けタブンネの遠吠えだミィ!ミィはこの崇高なる頭脳を使って、確実な方法を編み出して実行したんだミィ!頭が木の実とメスタブンネしか詰まっていないお前達とは、『月とゼニガメ』程に頭が違うミィ!)
その言葉に豚はキレて、
(ぶっ殺してやるミィ!『冷凍ビーム』を喰らえミィ!)
豚は口を開けて、大きく息を吸った。
だが、
「ミィィィィィ!」ドス-ン
(ちょっと待つミィィィ!)
また別の豚が、『冷凍ビーム』を放出した豚を『突進』で突き飛ばした。
「ブギャアァァァ!」ボヨ-ン ピキピキ
『冷凍ビーム』はあらぬ方向に飛散し、
「タブネェェェェ!」ピキピキ
「チィィィィィ!」パキパキ
周りのタブンネやベビンネに命中している。
(貴様何をするミィ!渾身の『冷凍ビーム』が台なしだミィ!)
(お前の『冷凍ビーム』なんてどうでもいいミィ!それよりもお前達の取り柄は土地の献上だけだミィ!リーダーは毎日コロニーを警備し、近付く敵を追い払ってきたミィがなるべきだミィ!)
すると次々に豚どもが喚き始めた。
(それなら死ぬまでコロニーの警備をしてろミィ!いつも木の実の収穫量が一番多い班を率いるミィこそが、リーダーに相応しいミィ!)
(お前いつからミィ達を率いる立場になったミィ!?ミィ達の班がたくさんの木の実を収穫できるのは、ミィが『火炎放射』で枝を燃やし、落ちた木の実を収穫してるからだミィ!お前はただ突っ立って、どの木の実を収穫するか選んでいるだけだミィ!)
(木の実の収穫なんて、ベビンネでもできるミィ!コロニーで一番チャーミングな触角を持つミィが、リーダーになるべきタブンネだミィ!)
(触角でリーダーが決まるなら苦労しないミィ!ミィの何匹ものメスタブンネちゃんを虜にした、この神聖な尻尾でこそリーダーが決まるミィ!)
さらにはメス豚同士でも醜い言い争いが始まった。
(どいつもこいつもリーダーには向かないタブンネばかりだミィ!ミィのチビちゃんこそが、皆を率いるべきだミィ!)
(馬鹿言ってんじゃないミィ!出来損ないのママタブンネの子なんて出来損ないに決まってるミィ!何匹ものオスタブンネを魅力してきたミィの尻尾を受け継ぐ、ミィのチビちゃんこそリーダーになる資格があるミィ!)
そして口論はやがて取っ組み合いへ移った。
(お前の出来損ないの尻尾なんてこうしてやるミィ!)
(ミギィィィィィ!手垢ついた手でミィの神聖な尻尾を引っ張るなミィ!ンミィィィィィ!)
(ミィガガガガガッ!糞拭いた手でミィの崇高な触角を引っ張るなミィ!)
すると醜く争うメス豚二匹を、十匹ほどのメス豚どもが囲った。
ここで、自分は神聖な尻尾を持つと勘違いし、相手の尻尾を引っ張るメス豚を「尻尾メスンネ」、その尻尾メスンネの触角を引っ張るメス豚を「触角メスンネ」とする。
メス豚どもの目線からすると、狙いは尻尾メスンネのようだ。
(な…なんだミィ!?傍観してないで、こいつの尻尾を引きちぎるの手伝えミィ!)
しかし、
(一体どの口利いてるミィ?
(ミィ!?あんたミィがコロニー一美しいタブンネちゃんと理解してるミィ!?ミィはリーダータブンネ様の寵愛を受けていたミィ!そんな崇高なミィにあんたこそどの口利いてるミィ!?)
(うるせえミィ!この淫乱メス豚ぁ!)
メス豚の一匹が尻尾メスンネを思い切りはたいた!
「ブギィィィィィ!」スパーンッ
まぁ全く迫力は無いけどな。
(ミ…ミィのラブリーな顔に何するミィ!)
(あんたその憎ったらしい尻尾で、私の夫をタブらかしたミィね?)
(ミ…ミィィ!?)
(おかげで夫はあんたの巣穴にほぼ毎日通い詰め、しかも私やベビちゃんの木の実まで貢ぐ有様!)
(だ…だからどうしたミィ!?ミィは木の実を要求した覚えは無いミィ!あんたの夫が勝手に持って来るだけだミィ!)
(ミィだけじゃないミィ!ここにいるタブンネちゃん達みんなが!あんたに夫を寝とられたミィ!)
(ミ…ミィに責任なんて無いミィ!簡単に誘惑に乗るオスタブンネ達、夫を引き留められないあんた達の魅力の無さが悪いミィ!)
その逆ギレが起爆剤となった!
(やっちまえミィィィィィ!)
1 ))
メス豚どもは一斉に尻尾メスンネに殴り掛かった!
だが、
「ミィヒャハハハハァ!」キンッ
尻尾メスンネは「リフレクター」を使った!
「ブギャ!」ボテ-ン
「ミビャ!」ビタ-ン
メス豚どもは見えない壁にぶつかって倒れている。
(ミィヒャハハハハァ!ミィの崇高な技の前に、あんたらは近付くこともできないミィ!)
偉そうに自分の技をひけらかしている。
当然野性の糞豚が「リフレクター」を覚えられるはずがない。
つまりトレーナーに捨てられた糞豚か、その子孫であろう。
どちらにしろ何の訓練もせずに覚えている技を、我が物顔で自慢しているメス豚は腹立たしいかぎりだ。
(このメス豚ぁ!卑怯だミィ!)
(こんな見えない壁壊してやるミィ!ンミィィィィィィィ!)
メス豚どもは見えない壁に何度も突進するが、突破できる様子は無い。
そして周りを見渡すと、
「ミィィィィィ!」ドスドス
「タブゥゥゥゥゥ!」ビリビリ
「ミィビャアァァァァ!」ピクピク
「ミッ!ミヒッ!」ポテポテ
「ミィィィィィ!ミィィィィィン!」スザァッ
オス豚どもも乱闘を起こしている。
ソーラービームや冷凍ビームが飛び交い、肉塊同士がぶつかり合う。
さらに相手の尻尾や触角を引っ張り合う糞豚ども。
(ミィこそリーダーに相応しいミィ!刃向かうタブンネちゃんは殺してやるミィ!)
(ミィヒャハァ!ミィのソーラービームの餌食になりたいタブンネちゃんはまだいるかミィ!?)
そして豚一匹を五匹で袋だたきにしている豚どももいる。
「タブネェェェェェ!タブタブネェ!」ウルウル
(ミビィィィィィン!止めてくれミィ!)
「ミィミィミィィィィィ!?ミィヒャヒャヒャヒャ!」ゲシゲシ ドヤンネ-
(先にミィ達に破壊光線を撃ったくせに何をほざくミィ!?まあミィの『守る』の前には無力だったミィけどね。)
「タ…、タブネェェ。タブネェ。」プルプル
(な…、ならみんな怪我もしてないミィ。許してくれミィ。)
そう懇願された豚は、何かを思い付いたように醜い笑顔を浮かべた。
「ミィヒャハハハハァ!」ドヤンネ-
(ならお前が自慢していた『チャーミング』な触角をちぎって差し出せミィ!)
「ミ…、ミヒィ!?タ…、タブネタブネタブネェェ!」ジタバタ
(ミ…、ミヒィ!?ふ…、ふざけるなミィ!ミィの神聖な触角を小汚いお前達に誰が差し出すミィ!)
すると豚どもはさらに怒り、
(ミィ!こいつを羽交い締めにするミィ!)
一匹の豚がチャーミング触角ンネを羽交い締めにした。
「ミィ!?ミ…、ミィィィ!」ジタバタ
(ミィ!?は…、放せミィ!)
豚が豚に捕まる光景…。
滑稽だな。
「ミィ!ミィヒャハハハハァ!」ゲスンネ-
(よし!みんなでこいつの触角を引きちぎるミィ!)
「「「ミィミィミィ!!」」」ニヤニヤ
「ミィィィィィィ!?ミィィィィィン!」
豚どもは触角ンネの『神聖』な触角を掴み、一斉に引っ張った!
「ミ”ヒ”ィィィィィィィィィィィィィィ!!!」ジタバタ
「「「ミィミィ!ミィミィ!ミィミィ!」」」ニヤニヤ
糞豚どもは喜々とした顔で引っ張っている。
そして、
ピィィィィィン………ブチィィィィィィィィィ!!
想像以上に早く触角はブチ切れた!
「ミ”ィカ”ハ”ア”ァァァァァァァァァァァァ!!!」ブシャアッ
神経が多く集まる触角をブチ切られたのだ。
耐え難い激痛だろうなぁ。
触角片方無しンネになった豚は、傷口から血と透明な何かが混ざった液体を撒き散らしながら、激痛でのたうちまわっている。
糞豚どもはそれを歓喜の声で笑う。
「ミィヒャヒャヒャヒャァ!ミヒィ?ミヒィン?」ゲスンネ-
(ミヒャヒャヒャヒャヒャァ!痛いかミィ?痛いかミィ?)
と、下衆顔で笑う糞豚もいれば、
「タブネタブタブネェェェェ!タブタブネタブタブ、タブネェェェェェ!」ミッ
(ミィに彼女が出来なかった原因は全てお前だったミィ!お前がこの汚らわしい触角で、ミィの彼女になるはずだったメスタブンネちゃんをタブらかしたんだミィ!)
手に握り締めた『神聖な』触角(笑)を触角片方無しンネに見せ付け、何ら根拠の無い怒りをほざいている。
決して認めたくはないが、タブンネの中には毛皮コートにしたい程に艶の良い豚もいる。
触角や尻尾の他に、毛皮の艶の良さも異性ンネを引き付けるポイントだそうだ。
だがこの糞豚はどうだ?
少し離れて見てもわかる程に毛並みはボサボサ。
川で洗ったりしていないのか、手や腹の毛には木の実の染みがこびりついている。
かなり食い意地の張った豚なのだろう。
尻尾には溢れる程に木の実が引っ掛けられている。
しかもいくつかは腐っている。
だから他の豚以上に体臭がキツイ。
正に歩く生ゴミだ。
タブらかすしか能が無いメス豚でも、この糞豚はお断りだろうな。
少し落ち着いた触角片方無しンネは、引っ張られた触角を確認しようとしているのか、両手を顔の左に伸ばしている。
だが当然両手は空を切るばかりだ。
「ミィヒィ!?ミィヒィ!?」スカッ スカッ
そして決して認めたくない事実を突き付けられた触角片方無しンネは、
「ミフェェェ~~ン!ミフェェェェェ~~~ン!!」ジタバタ メソメソ
癇に障る泣き声を発し、地に寝転がってジタバタし始めた。
それを下衆豚どもは下衆顔で笑いこける。
他の糞豚どもも同じだ。
戦いに敗れた豚は徹底的に虐げられ、勝ち豚は他の勝ち豚とさらに醜い戦いを繰り広げる。
……何なんだろう、こいつらは…
「醜いだろう?これがタブンネというポケモンの本性だよ。」
会長はパイプを吹かしながら、何の感情も示さない目で糞豚どもを見つめる。
最終更新:2015年02月20日 17:38