私の木の実畑に、仲の良い2匹のタブンネが度々やってくるようになった。
1匹は只のタブンネだが、もう1匹は私の見たことのない紫の毛並みをしていた。
本で調べたところによると、色違いのタブンネらしい。大変貴重で、高く売れるそうだ。
私はこのタブンネの毛皮を手に入れるため、毎日すこしずつタブンネたちを慣らした。
苦労の甲斐あって、2匹は私にだいぶ慣れてくれたようだ。
今日も、私は縁側に座って2匹のタブンネと戯れていた。
いつものように、紫色のタブンネが私の膝の上に顎を載せた。頭を撫でて欲しい、という仕草だ。桃色の方は私の横で、腹を撫でられて気持よさそうに伸びていた。
私はタブンネの頭を撫でてやりながら、ふと思う。
タブンネはポケモンだ。人間の言葉を理解できるこのタブンネたちを捕らえ殺してしまうことが、とても残酷なことのように思えた。
私はこのタブンネたちにチャンスを与えることにする。
「いいか?私は今からお前たちを捕まえる。捕まえて残酷に殺す。
幸せな時間はもう2度と訪れないし、美味しい木の実を食べることももう2度とできなくなる。
それが嫌なら一刻も早くこの庭から立ち去れ。そしてもう2度と私の前に現れるな」
言われたタブンネたちはきょとんとして首をかしげたが、すぐににっこり笑って、もっと撫でてよ、と言うように私の手に頭を押し付けてきた。
なんだ。人間の言葉がわかるなんて言うのは私の勘違いだったか。
所詮獣だ。家畜と変わらん。なら、殺したって問題ないだろう。
「さあ、おやつの時間だぞ!今日は特製の甘いポフィンだ。」
私は目を輝かせるタブンネたちに、即効性の睡眠薬の入ったポフィンを手渡す。
タブンネたちは疑いもせずにポフィンを口に運ぶと、ほどなくして折り重なるように眠りについた。
すやすやと寝息を立てているタブンネ2匹を、順番に地下室へと運ぶ。
まずは桃色のタブンネの手足を縛り、そのロープを天井から吊ってあるフックに縛り付けて自由に身動きを取れないようにした。さながらサンドバッグ状態だ。
紫色の方は、運び込んであった木製のテーブルの上にうつ伏せに寝かせ、手、足、首、背中などを革バンドで抑えつけ釘でテーブルに固定する。
ひと通り仕事を終えた私は、ほっと息を付いた。あとはタブンネたちの目を覚まさせてやればいい。
私はバケツに汲んだ水をそれぞれの頭にぶちまけた。
目を覚ました2匹は、すぐに自分たちの身体が固定されていることに気づき、ミィミィと不安そうな声で鳴き出した。
私の方を見て、助けてくれと言わんばかりに必死に訴えかけている。
私は工具箱を持って桃色のタブンネに近づいた。桃色はほっと安堵したような表情を見せる。
工具箱から包丁を取り出す。通常のタブンネは毛皮を売っても二束三文にしかならないらしい。数が多すぎるのだ。
貴重な
色違いタブンネは丁重に扱うとして、まずはこの珍しくもなんとも無いただのタブンネをいたぶって遊ぼうと考えた。
桃色は、包丁を持って近づいてくる私を見て不思議そうな顔をしていた。
「ミィ?」と問いかけてきたので、にっこりして「ああ、今からこの道具を使ってロープを切るんだよ」と言うと、嬉しそうに尻尾を振った。
腹に包丁を当てる。桃色のタブンネは少し不安そうな表情になったが、まだ疑いのない目で私の挙動を見守っている。
私は振りかぶって桃色タブンネのやわらかい腹を素早く斬りつけた。
突然の痛みに桃色はヒギィ!?と悲鳴を上げて急に暴れだした。紫も後ろでミィミィと何か必死に叫んでいる。
私は笑いながら何度も浅く斬りつけた。傷が増えるたびに、桃色の悲鳴に近い鳴き声が響く。
桃色の声に呼応して、紫もギャアギャアと耳障りな声で喚きだした。友達を傷つけるのはやめてくれと言いたいらしい。
私は気を変えた。そんなに自分の番が待ち遠しかったのか。
私は桃色を斬りつけるのをやめて、紫の方に向き直った。
紫はうつ伏せのまま、涙を流して必死に叫び続けていた。なんともイライラするので早くどうにかしたい。
とは言ったものの、貴重な毛並みを汚すわけにもいかない。暫く思案した結果、歯を抜いてやることにした。それなら毛皮に影響はないだろう。
私は、革バンドを取り出し、紫の口に噛ませる。紫は当然拒否したが、包丁を持って桃色に近づくふりをするとすぐに従った。
噛ませたバンドを釘でテーブルに固定する。これで紫の頭は動かなくなった。
バンドをもう一本、今度は上顎に引っ掛けて上に引っ張る。涙目で口を開けたままのタブンネはなんとも間抜けな顔だ。
「ィエエエエ?ェゥ、ウィッ、ウィィ!」飲み込めない唾液が口の脇からだらだらとこぼれている。
私は工具箱からラジオペンチを取り出し、前歯を一本引きぬいた。
「ウィエエエェェエエェエェ!エウィッ!ェアアアアアアアアア!!!!!!」絶叫を上げる紫。ゴリゴリという感触がペンチを通して伝わってくる。
更にもう一本。紫の悲鳴と、後ろの桃色の叫び声が
地下室に響いた。
「うーん・・・1本ずつだと地味だな・・・まとめて折るか・・・」
私は金槌を取り出す。紫は半分白目を剥いてハヘハヘと喘いでいる。後ろではまだ桃色が暴れながら喚いていた。
私は狙いを定めて、紫の前歯目がけて金槌を横殴りに全力で振り下ろした。
バリバリゴキッという嫌な音と、タブンネの悲鳴が地下室に響き渡る。飛び散った歯の欠片が顔に当たった。
紫の下顎の前歯は壊滅状態だ。衝撃で抜けたものもあるが、ほとんどは根を残して吹っ飛んでいた。
「ふーん・・・力を込めればいいってわけでもないのか」
私は納得し、今度は上顎の前歯を慎重に、力を加減してゴンゴンと叩いた。叩くたびに歯が内側に倒れていき、ポロポロと落下していく。実に楽しい。
紫はというとさっきから絶叫しっぱなしだ。タブンネというのはこの程度の痛みにも耐えられない種族なのか・・・
ひと通り前歯を折ると、ヒーヒー泣いている紫の口を閉じさせてやる。
今度はどうしてやろうか・・・切り裂いてやりたいところだが、毛皮のことを考えると、それはできない。そうだ、手足を潰そう。
私はまずナイフを使い、紫の足に付いている可愛らしい肉球を抉り取った。
「ミビャアアアアァァア!!・・・ハッフ!ゲホォッ・・・ハギャアアアア!!!!」
先程から叫び通しで疲れたのか、声がだんだんかすれてきている。
私は構わず、紫のつま先を金槌をでガンガン叩いた。だんだん足が醜く変形していく。グチャグチャだ。
手先も同じように容赦なく何度も叩く。白い骨が剥き出しになり、可愛かったおててはただのミンチと化した。
さっきからどうも静かだなと思ったら、どうやら紫は気絶してしまったらしい。
丁度いい。うるさいのも静かになったことだし、今度は桃色の方を構ってやろう。
私は包丁を手にし、桃色の方を見る。桃色は呼吸を荒くしながら私をキッと睨み据えた。
気の強いポケモンだと感心するが、強気なのは態度だけで体の方は失血でフラフラといったところか。
私はそんな桃色をあざ笑い、包丁で両耳を切り取った。
桃色は目を見開いて叫んだが、その口からはもうかすれた吐息しか出てこないようだ。
海坊主のようになった桃色が面白かったので、切り取った耳をその口に突っ込んで、その姿を本人にも見せてやろうと鏡を持ってきてやった。
しかし桃色はまったく鏡を見ようとせず、頭をブンブン振りながら暴れている。口に含んでいた耳がぺしゃりと床に落ちた。こいつはもう駄目だな。
私は桃色のみぞおちあたりに包丁を深く突き刺した。先程まで声にならない悲鳴を上げていた桃色が、今度こそ絶叫を上げる。
そのまま放置しても面白いと思ったが、そのまま死なれてもつまらないので、そのまま一気に体重をかけて腹を切り裂いた。
「イビャアアアアアアアゥッウエエエエアアアアアア!!!!!」
口から血を撒き散らし、この世の元は思えない声で絶叫しながら、桃色は腹の中身を床にぶちまけた。
「ホゴゴゴロゴロ゙ッゴゴオゴオボボボボ・・・・ギュボ・・・」
悲鳴はだんだんと水音混じりになり、弱々しい物へと変わっていく。私は桃色をぶら下げている縄を切った。
ベチョベチョと嫌な音を立てて、時折ビクビクと痙攣する肉塊が自らの内臓の上に座るような格好でずり落ちてくる。
私は満足して、気絶している紫の拘束を解き、足首を縛り直して桃色の隣に逆さ吊りにぶら下げた。
「おい起きろ」
私はかがんで逆さ吊りの紫の頬を叩いた。目を開けた紫は私をみてビクリと震えたが、隣の惨状が視界に入ったようだ。
はっとして自分のすぐ側にある肉塊を見つめた。
赤黒い塊の上に乗っかっている、殆ど真っ赤に染まった毛皮の正体はきっとすぐに解ったことだろう。
紫は何も言わなかった。ただ虚ろな目で、先程まで友達だった肉塊を凝視し続けている。
その表情からは何の感情も読み取れなかった。
私は紫の反応が予想したものと違ったので少々複雑な気分だ。
肩透かしを食らった気分だが、これ以上傷つけても毛皮の商品価値が下がるだけだと思い、私は仕方なくチェーンソーの電源を入れた。
紫は全てを諦めたように、目をつぶってだらりと全身の力を抜く。
金切り音がだんだん大きくなり、すぐ耳元で止まったように感じた。
それきり、紫の思考は停止した。
最終更新:2014年06月20日 21:53