「マンダ、点火しろチル」
「…私をマッチみたいに扱うな」
「チル! ボーちゃんのお手軽さはチャッカマンふりゃー!!」
ボーマンダが渋々と大文字で燃料に点火する
暫くすると金網の中心部が真っ赤に変色した
「さぁ、早く進むッス」
金網の上に足を踏み入れると、ジュー…と足の裏が焼けていく
「熱っ! 熱いミィ!!」
「ミヒッ! ミフッ!! ミヒャ!!」
仲間も僕も、真夏の砂浜を素足で歩くかのように、小さくジャンプしながら走る
じりじりと足の肉球が火傷していくのがわかった
「肉球! 肉球が焦げちゃうミィ!!」
彼女もかなり辛そうだミィ…。 出来るだけ早く決着を着けるミィ…
「ははははっ! ポップコーンみたいクリ」
「ポップコーン…何処にあるサザ? …腹減ったサザ」
「グドラー! サザンドラが限界ッス」
「そろそろおっ始めるリュー! ノメル汁のタブタンは僕が頂くリュー…あっ!!」
「へっへっへっ! 一番乗りは俺様が戴くガ…ギャァァァ!! 熱いガブぅ!!」
「…馬鹿チルね。今回は飛べない竜に用はチル」
「ふん! 飛べない竜はただの竜なのさ…」
「おぉ! なんだかチャッカマンが偉そうふりゃ!」
「ぐぅぅ…、全然熱くねぇガブ! 俺はイケるガブ!!」
――― 来た!
今の奴は火傷を負ってるミィ! 思わぬハプニングだミィ…!
「キャァァァッ!! 来ないd…」
「いただきますっ! クチャクチャ…ごちそうさざ!!」
サザンドラの近くにいた仲間が開始直後にリタイアしたミィ…
無惨に残された食いカスが燃えて炭になっていく
残り29匹…
「私の肉を焼けぇチル!」
「ミィィ…!チルタリス程度の火力でぇ!!」
力のあるタブンネが火炎放射を強引に振り払う
「どうだミィ…ミグッ!?」
ブチブチと繊維が千切れる音を出しながら、腕の肉が啄まれる
「…サザンドラの言った通り、レアが旨いチル」
「痛…いミィ…」
「次はミミガーにするチル。ついばむ!!」
火炎放射で焦げた箇所を啄まれる行為を繰り返され、腕と耳を順に失っていく…
「ハッ…ハッ……ミギィー!!」
まるで鳥葬されたような姿の
マランネと化したタブンネは、最後の力を振り絞りタックルを仕掛けた
しかし、バランスのとれない体で当たるはずもなく転倒する
「…もう美味しいところ無いから要らないチル。ごちそうさまチル」
チルタリスはそう言い残して去っていった
勿論、腕の無いタブンネは自力で起き上がれるはずもなく、路上で干上がるミミズのように焼け死んだ
「…ちょっと焦げてるけど、これあげるふりゃ」
「ありがとッス。食べ残しってのが気に入らないッスが…」
「…所々虫食いの後があるのが生々しいクリね」
「噛み砕くふりゃぁ!!」
火炎放射や竜の息吹が飛び交う中、彼女と僕は背中合わせでリフレクターと光の壁を貼って凌いでいるミィ…
彼女の特性:癒しの心と神秘の守りで火傷によるダメージも軽減した
…冷凍ビームは最初の抽選で4発、ポケ質をとった際に3発で残り8発だミィ
仲間も残り16匹、そろそろ奴が…
「ガブブ! まだまだ生きのいい豚が残ってるガブ!!」
「…待ちくたびれたミィ」
「あぁ? …ってなんだ、あの時の屑? まだ生き残ってたガブか」
まだ死なない…死ねないミィ!
「お前を…お前を倒すミィ!!」
体が震える…脅えなのか武者震いがわからない
けど、僕は奴に指を突き付けて叫んだ
「…1匹で? 滑稽ガブ」
「1匹じゃないミィ!私もいるミィ!!」
彼女も声を張り上げて叫んだ。 1匹なら無理でも、彼女となら勝てる確信があった
「あの時の屈辱…返してやるミィ!!」
「ゴミクズが増えたところで、俺様には敵うはずがな…」
「ほぅ…、その冷凍ビーム持ちは貴方が担当した時のですか」
「うげ…、バレたガブ」
「私の計画を歪めてくれて…。 帰ったら急所に冷凍ビームの刑ですから」
「…心配しなくても、ちゃんと骨は拾ってあげるチル」
「ボクの体をキズモノにした罪は重いふりゃ! 責任とるふりゃー!!」
「…勝っても負けても死ぬじゃねぇか。 まぁ…俺様が負けることありえないガブ!!」
空気が変わった。ピリピリとして冷たい、プレッシャー…
彼女が指を絡ませてくる。それを優しく握った
パチッ!と油がはねる
それと同時に奴が消えた―――
フッ…と、ガブリアスが僕の前に現れる
「豚は大人しくオレたちの餌になってればいいんだ…よっ!」
ダブルチョップ! さっきはこれでやられたミィ…
「断るミィ! 僕たちにも幸せになる権利はあるミィ。 お前たちの好き勝手にぃ…させないミィ!!」
僕は叫びをあげて奴の腕を弾き返した
そう…今度は違うミィ
貼っておいたリフレクター、奴の火傷でダメージは1/4だミィ!
「ちぃ! 墜ちねぇガブ!」
「まだやられないミィ!」
腕に冷気を溜めて、奴の顔目掛けて冷凍ビームを放った
しかし、奴の隙を突いた至近距離からの攻撃は楽々とかわされてしまったミィ
けれど奴は体勢を取り直すべく、僕たちと距離をとった
――― かかったミィ!
「そんなノロイ攻撃! 砂隠れがなくても当たらないガ…」
「今だミィ! やるミィ!!」
「任せるミィ! トリックルーム!!」
僕の合図で彼女は時空を歪めた…反撃開始だミィ!!
「クソアマが…厄介な技をガブぅ」
挙動が重々しい奴と対象に、なんだか体が軽々しいミィ…!
これがトリックルームの力かミィ…
「お前の厄介な点は回避力だミィ。 だから、それさえ奪ってしまえばいいミィ」
「トリックルームは素早さが遅いポケモンほど早くなる技だミィ。形勢逆転だミィ…」
「いくら小細工しようが、このオレ…ガブリアス様がやられる訳…がっ…!?」
僕は奴の脇腹に素早く入り込んで捨て身タックルを喰らわしたミィ
やはり…速い! 勇敢な僕は一層その恩恵が得られるミィ
「…補助は私に任せて、貴方は攻撃に専念するミィ」
「あと4ターン…。今までの借りを返してやるミィ!」
「リュー…、体が重いリュー。……元からデブだろとか思った奴、後で引き裂いてやるリュー」
「ミィィ! トリックルームの下ならお前なんか敵じゃないミィ!」
「再び掴まえてポケ質にしてやるミィ! トリルが切れる前に壁に追い込むミィ!」
「こっちにくるなふりゃ! ストーカーは犯罪ふりゃ!!」
「ちょこまかとかわしやがってウザいミィ…。そっちに行ったミィ!」
「……ミヒィ! 追い詰めたミィ!」
「追い込まれたふりゃ…。 助けてふりゃー!」
「お前の…お前のくだらないクイズのせいで、妻が、息子が死んだミィ!」
「…クイズふりゃ。 オツムが弱いのが悪いふりゃ。だから、ボクのせいじゃないふ…」
パシンと乾いた音が響く。 パパンネは続けてビンタを放つ
「それが死んだ仲間に対する言葉かミィ! お前なんか顔が潰れるまでビンタして…ミギャァァァァァッ!」
パパンネはぐちゃぐちゃに潰れた腕に絶叫をあげた
「幻影クリ。さぁ!まだアンタの往復ビンタは終了していないクリ!」
「やめ…ミギッ! すまなかっ…ミビッ!!」
往復ビンタが決まる度にパパンネの腕が削られていく
5回の攻撃の後には腕のなくなったパパンネが残された
「流石、鮫肌+ゴツメッス。 あんな手はズタズタで使いモンにならないッスね」
「お褒めの言葉どーもクリ。さて、トリパ下最速竜の力見せてやるクリ!!」
「悪かったミィ! 私が悪かったミィ!」
「まずはタブンネの肝臓の刺身クリ!ドラゴンクロー!!」
「グドラ! 蜻蛉帰りがきまったふりゃ! 名付けてクリムガードふりゃ!!」
「…貴方、ただ逃げてきただけじゃないですか」
「…クリムガンを引き立ててあげたふりゃ」
「鉄板で余計な火傷したクリ…。後で覚えてろクリよ」
「ふr…」
「敗走兵ッス」
「…お前らなんて大嫌いふりゃ」
「…テメェ、ぶっころすガブ! 俺様に…逆らった罪を償わせ…っ!!」
奴は重い足取りでビームをかわそうとするが、完全にかわすことは出来ないミィ
冷凍ビームのかすったところから赤黒い血が出ている
逆に僕は攻撃と、彼女の癒しの波動による回復を同時に行い、ダメージゼロ
もうどちらが勝つかなんて火を見るより明らかだミィ
「一匹のタブンネにも五分の魂、私たちを舐めるなミィ!」
…そろそろ終わりにするミィ
そう思って僕は口の中から切り札を取り出した
「ミィ…! 体が軽いミィ! これならカイリューに勝つのだって可能に…突進だミィ!!」
「ッ…! この…破壊光線リュー!」
高エネルギー体がスタジアムの外壁を吹き飛ばすが、肝心の目標には当たらない
「…そんな遅い動作で撃った所で当たらないミィ! 突進!!」
カイリューの後ろに回り込み、その勢いで突撃する
「リュー…! タブンネの火力で僕を倒せるわけないリュー。トリルが切れるまで羽休め連打で…」
「マルチスケイルかミィ…」
「リュー? 何を…言ってるリュー…」
「マルスケ羽休め戦法なんて、仲間作りで無効化してやるミィ! マルスケが生命線の…」
「…あーあ、死んだッスね。ここにいる時点で死んだようなモンッスけど」
「カイリューの前でそれを口にしちゃいけませんからね。確か以前にボーマンダが半殺しに…」
「ミィィ、いくらでも言ってやるミィ! マルスケなんて仲間作りで突破可能に…」
「黙れリュー…、君は僕の逆鱗に触れたリュー」
「仲間作りミィ! そして…突進のコンボだミィ!!」
勝利を叫んでカイリューの腹に突進する。特性が変わったことでカイリューが倒れるのを信じて
しかし、結果は厚い脂肪の層に弾かれ、鉄板の上に尻餅をついた
「ミギャ! …なんで何ともないミィ!? おかしいミィ!」
「忘れたかった記憶をよくも思い出させてくれたなリュー…」
タブンネを怒りを含んだ冷たい目で見据え、片方の触覚を掴んで空中に放り投げる
ブチッと触覚が千切れて鮮血が吹き出した
「ミギィィァァ!」
「たとえどんなに速く動けても…翼がない君じゃ回避しようがないリュー」
「消え去れリュー!!」
カイリューの口から放たれる眩い光はタブンネに向かっていく
「ミィィッ! ひかりのか…――」
目の前に光の障壁を出現させる。 エネルギー同士がぶつかり合う
徐々に威力を増す破壊光線。 こちらも負けじと応戦する
「僕は…精神力だリュー。でも…」
少しずつ光の壁がひび割れていく。 熱線にチリチリと焼かれていく
――― 視界が真っ白になる
目を開けると破壊光線を出し切ったカイリューが硬直したまま立っていた
奴はピクリとも動かない。 勝ったのだ、あのカイリューに…!
「やっぱ俺って、不可能を可能に…――」
「でも…、精神力は僕の誇りだリュー!!」
奴の叫びで我に返る。 今のは……幻?
威力を増した破壊光線が障壁を貫通し、タブンネを飲み込んだ
目が焼け、腕が吹き飛び、皮膚が焦げ付く…。 高エネルギーが一瞬にして蒸発させた
「炭すら残らないなんて…勿体ないサザ」
「…終わったリュー。リュー…――」
「破壊光線の撃ちすぎチル。血が昇り過ぎて顔面クリムガンになってるチル」
「…なんで始めから神速使わなかったッスか?」
「カイリューと言えば、破壊光線リュー。 破壊光線も僕の誇りだリュー…」
「厄介な技ですね。あの雌がいる限り何回でも使われてしまいますから」
「グドラなら、ここから狙い撃てるはずふりゃ。なんで見てるだけふりゃ?」
「私が手出ししたら、彼 怒るでしょう」
「…でも、ガブがやられてるのをただ見てるのは嫌ふりゃ。 ちょっと行ってくるふりゃ」
「策はあるのですか?」
「バッチリふりゃ。1/40の確立で成功するふりゃ」
視界の片隅に光の柱が見える
…これで残りは、ボーマンダとサザンドラと交戦中の8匹になったミィ
「ハッ…ハッ…。糞共が…引き裂いてやるガブ…」
そろそろ終わりにするミィ…
そう思って口の中に隠しておいたジュエルに手を伸ばす
「これで…くたばれミィ!!」
「そうはさせないふりゃ!」
耳障りな羽音がして、フライゴンが向かってくる
飛んで火に入る夏の虫とはまさにこの事だミィ
「ガブリアスの前に、まずはお前だミィ! 冷凍ビーム!!」
トリパ下なら絶対に回避など出来ないミィ
正直、こんな奴の為に冷凍ビームを使うのは勿体な…
「そんな攻撃、当たらないふりゃー!」
冷凍ビームが素早く横軸をずらされてかわされたミィ…!?
トリックルームによって動きが鈍るはず…なんでだミィ!?
「なんでお前は、ちゃんと動けるんだミィ!?」
「…ほんとにオツムが弱いふりゃね。 レベルが低ければ低いほど、トリルの影響は少ないに決まってるふりゃ!!」
「俺の獲物に手ぇ出すなガブ! 引っ込んでろガブ!!」
「追い込まれてる癖に意気がるなふりゃー。この状況をなんとかしてするふりゃ!」
…無理だミィ
今の僕たちは光の壁、リフレクター、トリックルーム…extと要塞と化したミィ
それをあんな奴に突破出来る訳がないミィ
「竜の息吹ふりゃぁ!」
紫色の炎が彼女に向けられる
もとから大したことない威力の攻撃が、彼女の光の壁に遮られる
そのせいか、彼女は全然ダメージを受けてないミィ
きっと同族のビンタ1回分程度のダメージだったんだミィ…
「…何がしたかったミィ?」
「運が良ければマヒして、運よく痺れたところを狙う作戦ふりゃ!」
コイツ…レベルが低いだけじゃなくて、頭のレベルも低いミィ
そんな運頼りの戦法が、今の僕たちに通じるわけがないミィ!
「無駄ミィよ。今は私の“神秘の守り”があるミィ。状態異常にはならないミィ!」
「ふりゃ…!?」
「オツムが弱いのはお前の方だミィ! 冷凍ビーム!!」
茫然としている奴を、直進する冷気の束が掠める
場外に吹き飛ばされた奴への追撃の冷凍ビームが左翼を貫いた
「…りゃぁっ!!」
短い悲鳴。 そのまま床へと落ちていく奴にトドメの冷凍ビームを…
「お前の相手は、この俺様ガブ! 余所見してんなガブぅ!!」
……しまったミィ! いつのまにかガブリアスの接近を許していたミィ!!
奴が腕を振り下ろす。 リフレクターが間に合わないミィ!
鋭い爪が目の前に迫る
――― やられるミィ!!
「だめっ! ミィ!!」
ブシュッ…と、熟れたマトマが潰れたような嫌な音。
ミギャァァァッ!! 刺された!刺されたミィ!!
痛い痛い痛い痛い痛…い…? …痛くない…ミィ
…何かがおかしいミィ
そう思って目を開けると、虚ろな目と目があった
…嘘だミィ。 これはきっと嘘…
「カハッ…!」
目の前のタブンネが尋常じゃない量の血を吐いた
頬にかかる生暖かい感触が遠ざかる僕の意識を呼び戻した
そんな…、嫌だミィ
一緒に生きるって約束したミィ…それなのに……
「ミィィィィィッ!!!」
僕は天を仰いで叫んだ
どんなに叫んでも、叫んで叫んで喉が潰れても、彼女が返ってこない事はわかっていた
叫ばずにはいられなかった
・
・
・
彼女はガブリアスの爪に胸を貫かれて死んだ
そう、僕を庇って…
「…なんで、なんで彼女が…死ななきゃならないミィ? なんで殺したんだミィ!?」
僕は鬼の形相でガブリアスに食って掛かる
「はぁ? コイツから刺さりに来たんだガブ。勝手に死んだのを俺のせいにされても困るガブ」
ブンッ! と奴が腕を振るうと、彼女の身体は飛んで、カイリューが壁に開けた穴に吸い込まれていった
地面につく瞬間にペキッ…と骨が折れる音が微かに聞こえた
彼女は僕が殺したであろうフライゴンの近くに落ちると、ピクリとも動かなくなった
「あ、あああ…!!」
「たかだか玩具の1つが壊れただけなのに、いつまで泣いてるつもりガブ」
ガブリアス…
奴は僕からプライドと仲間と…そして彼女までも奪った
それなのに、それなのにそれなのに…!
「そろそろトリックルームの時間切れッスね」
「嗚呼…、オラの天下が解けていくクリ」
「やーっと鈍足共の天下が終わるリュー。久々に苛々したリュー」
「ミヒヒヒヒッ! どうだボーちゃん、素早いだろミィ! 素早…いミィ?」
「あれ? 身体が重いミィ…。なんで…?」
「…よくも今までコケにしてくれたな。 怒れる竜の恐ろしさを思いしらせてやる…!」
「ボーちゃんごめんなさいミィ! 私は悪くないミィ!誤解だミィ!!」
「五回だ! 今ので貴様は五回もボ……ゃんと呼んだ! 私を侮辱する者は何人たりとも赦さん!!」
「さぁ、メインディシュサザ! もう誰もワタクシを止めることは出来ないサザ!!」
「来るな来るな来るなミィ! ギバャッ…!」
「モグモグ…若干味の質が落ちてるサザ。絶望が足りないサザ」
時空の歪みが戻った
ついにトリックルームが解けたミィ…
鉄板が放心状態の僕の足が焼けていく。 きっと神秘の守りも切れたんだミィ…
彼女が残した物が次々と消える。 次は僕かミィ…?
彼女が居なくなった今、生きることに関して未練はないミィ
でも、まだ消える訳にはいかないミィ…
「……ないミィ」
「あぁ? はっきり言えガブ」
「僕たちは…オモチャじゃないんだミィ!!」
そう叫んで、僕は奴のヒレに噛み付いた
「ほふはひはほほひゃひゃはひミィ!」
「…きたねぇガブ! 触れんなガブ!!」
僕は更に顎に力を込める
奴も流石に痛いのか顔をしかめた
「あだだだだ! 離せガブぅ!!」
奴が力に任せて腕を振りまわすと、僕の身体もブンブンと揺れる
絶対に離さないミィ!
「いい加減に…しろガブ!!」
思いっきり振られた腕の遠心力で僕の身体が宙に浮く
僕はドスンとお尻から鉄板に落下する
奴を見ると、僕に噛まれたところにフーフーと息を吹き掛けているミィ
奴のヒレには僕の歯形と唾液がべったりついた。 ざまぁみろミィ…
「お前ひょ、許さはいミィ!!」
喋る度に僕の歯はボロボロと抜けていくけど、構わずに叫んで、
顎が外れて閉まらない口から涎や血を垂らしながら奴を見据える
「…もういいガブ。ちょっとは遊んでやろうと思ったガブが、初めて戦ったみたいに何も出来ずに死んでいけガブ!!」
うんざりした顔で奴は言い放った
初めて戦った…― 砂ガブかミィ!?
急いで今の自分のステータスを顧みる
冷凍ビームは後2発、生き残っているタブンネは4匹、そして彼女を殺された時に目覚めた技…
いける! 勝算はあるミィ!!
全てをフル活用して彼女の敵をとるミィ…、チャンスは一度だミィ!!
「砂嵐ガブ! これで終わりガブ!!」
やはり初手砂嵐…、読みきったミィ!
「コイツを喰らうミィ!」
消えゆく奴に、冷凍ビームとは違う波状のビームを放つ
―― シンプルビーム
相手の特性を単純に書き換える技だミィ
これで厄介な砂隠れを消して、そして単純になった奴が次にとる行動は…―!
「小細工を! だったら力で捩じ伏せてやるガブ!!」
ただただ馬鹿みたいに突っ込んでくるはずだミィ!
僕も負けじと馬鹿みたいに突っ込む。 捨て身タックルだミィ!!
しかし僕の攻撃は当たる前に、リーチの長い奴の腕が僕の右目を抉った
僕は後ろに吹っ飛ばされた
「ミギギ…ガァァ!!」
激痛に歯を食いしばって耐えるミィ
「ミッ!ミッ!」
右目だった物が瞼の下から溢れ出るのを気に留めず、僕はサザンドラとボーマンダと交戦中の4匹に手をかざす
そうしてサイコキネシスで奴等を僕の支配下に置くミィ
「なんだミィ?」
「身体が勝手にミィ!?」
「なんだか豚どもの様子が変サザ!」
「これは一体…?」
これで布石は整ったミィ…
「冷凍ビームだミィ!」
僕は奴に“最後の”冷凍ビームを放つ
勿論当たらない。当たらなくたって構わないミィ
「しまったミィ!もうPPが無いミィ!?」
僕はわざとらしく叫ぶ
それを聞いた奴は、しめたと言わんばかりにトドメをさしにくる
…ほんと単純で助かったミィ
「これで死ねガブ!! ドラゴンダイブ!!!」
来た…! そのまま突っ込んでくるミィ
あまりに的確な読みっぷりに思わず口元がにやけてしまうミィ
「この瞬間を待ってたミィ!サイコキネシス!!」
「「ミィャァァァッ!!」」
僕は4匹のタブンネを超能力で操って、奴を両サイドから押さえ込む
「ガブッ!?」
「PPが切れたというのは嘘だミィ!」
ただ奴を誘き寄せる為の罠だミィ
僕はジュエルを握り締めた手に冷気を溜める
彼女の痛みを…思いしれミィ!
「冷凍ビームだミィ!!」
冷気の束が、仲間ごとガブリアスを貫いた――― 勝った…ミィ
続く
最終更新:2015年02月20日 17:42