ママを探して三千里

「さすがにボックスが厳しくなってきたな、要らないのは逃がすか」
タブンネ達が卵から孵った場所、そこは薄暗い地下鉄の駅だった。
生まれてすぐに青い髪の男に見せられ、一通りの評価をされる
鑑定された者の何匹かは丸や四角のマークをつけられて、ボールに収納されパソコンへと入れられた

そして子タブンネ達が目を覚ました時、一緒に賑やかな人間の街の中にいた
子タブンネの数は30匹、いずれもマークがついてない子タブンネだった
子タブンネ達は傍にいるはずの母親を探してミィミィと鳴いている
母親に甘えて呼び寄せる声なのだろう、しかし育て屋に預けられている母タブンネがここに来られるはずもない
やがて暗くなりにぎやかだった町が静かになると、鳴きつかれたタブンネ達は温かい自動販売機の裏に寄り集まり眠ろうとした
しかし夜の寒さと空腹から眠れず、赤ちゃんが泣き叫ぶようにミィミィと悲痛な声で鳴くのだった
その時、何匹かのタブンネが自分を呼ぶ声を聞いた
ヒヤリングポケモンの名が示すようにタブンネの聴力はものすごく高い、
はるか千里の彼方で何が起こっているか判るとさえ言われている
タブンネ達は生まれたてとはいえ、母親の声だけは本能で判るのだ
そしてその声はやがて30匹全員に届き、不安と悲しさを吹き飛ばしてくれた
タブンネ達は声のする方向へよちよちとした足取りで歩き出した、
母親に会うために、生き延びるために、生まれたてのタブンネ達は遥か彼方の声だけを頼りに歩き続ける
食物の取り方も敵から逃れる術も知らない子タブンネ達、その進む道は地獄への道であった・・・
最終更新:2014年06月20日 00:41