とあるタブンネのお話
楽しそうなメロディときらびやかな装飾 世間はクリスマスムードで賑わっています
子供達は飼いポケモンは親や飼い主から大きなリボンのついたプレゼント貰いみんな笑顔
ですが笑顔になれない子もいます
「ざぶいびぃ…おながずいだびぃ」
このタブンネはまだ40cm程の子タブでつい最近まで優しい両親や仲間、友達と幸せに暮らしていました
ですが肉食ポケ襲撃により子タブを残し全滅。越冬用に貯めていた食料も奪われ、防寒対策ばっちりのお家も無惨に破壊されました
自分一人で生き抜く力はありません。リスク覚悟で人里へおり食料を探しに訪れたところでした
たくさんの生ゴミを見つけるまではいいのですが、時期的に凍結していて食べられたものじゃありません。力も弱く技もない
氷に閉ざされた食料にも手を出せず、空き缶に残されたわずかな水分、枯れ葉を食べなんとか飢えをしのいでました
フラフラ歩き続け広い場所に出ました。どうやら公園のようです
目の前にはイーブイがこちらをみていました
「なんだイーブイ?あ、なんだタブンネの子か」
人間のイーブイだったようです。そのイーブイはたいそう可愛がられているのかキラキラした瞳で暖かそうなお洋服を着て靴を履いています
イーブイは人間に抱きつくとそのまま抱っこされ人間の顔に自分の顔を擦り付けとても幸せそう
そんな姿にタブンネの何かに火がつきました
許さない、ミィはこんなつらいのにあの媚イズのイーブタは
タブは雪を集め玉にするとイーブイに向け投擲しました
ポフッ
「きう?」
突然の雪に驚くイーブイ。たいした力もなくただ当たっただけですがタブはしてやったぜといった顔です
しかし人間の形相を見ておしっこを漏らしました
足元から沸く湯気は温かそうですが、排尿による体温の低下に合わせ全身から血の気が引くのがわかります
殺される
タブは死を覚悟しましたが不思議と怖くありません
むしろパパ達みんなの場所にいくんだ とある種の安らぎを感じたのは頭がおかしくなってしまったのでしょうか
「へえ、ふうん。お前独りか?」
意外な質問に自分はこくこく頭を下げます
「俺はさ、殺す程悪魔じゃないんだよ。イーブイにあやまるならお前飼ってもいいぞ」
意外な提案に自分は雪に頭をめり込ませイーブイに土下座して謝罪しました
イーブイは笑顔で応えて小さな手を差し出しました。口で靴をくわえ 素手の状態です
ちょっとした心遣いにタブは涙を流しながらその手を握り返しました
人間の家につくとドレディアがパタパタ出迎えました。割烹着姿のハッサムもいます
BOWのような殺戮マシーンのはずのハッサムですがとても優しそうでタブは恐る恐る二人に挨拶しました
人間は二人に何かを説明するとタブの手をひきとある一室へ案内します
そこは温かいお湯のはられたお風呂。冷たい池しかしらなかったタブンネには信じられないものでした
いい匂いの泡で体を洗われ暖かい風で毛並みを整えてもらって
昔は母に舐めて綺麗にしてもらってましたがこちらのが気持ちいいとちょっと悪い気がします
次に案内された大きなお部屋は暖かく、さっきのドレディアとグレイシアが木を飾り付けており
ドレディアはこちらに手を振りましたがグレイシアはチラッと見るだけですぐ飾り付けに戻りました
「今から家族だ。仲良くしろよ」
人間の言葉に続くようタブが挨拶をするとさっきのイーブイがアーケンとボールを転がしながら寄ってきました
「一緒にあそぼ」
そんな感じです。タブも嬉しくなり笑顔で二人の中に入っていきました
ここの床はなんで暖かいんだろ?と足元から伝わる暖かさに気をとられているとポスンと頭に球が当たりました
笑うイーブイとアーケンですがもう怒りや憎しみもありません。タブは笑顔で球を優しく投げ返しました
しばらくすると人間が袋を持って現れました。そしてみんなぞろぞろ大きい机の椅子に座っていきます
6つしかないのは自分が本来ここにいないって事で少し寂しくなりましたが、ハッサムが笑顔でどこかから椅子を持ち出し自分に座るよう促しました
人間はメリークリスマスと謎の言葉をいいながらみんなに袋を渡します
グレイシアの袋には山のようなキャンディ
ドレディアのはスキンケアと書かれたクリーム
ハッサムのは包丁セット
アーケンとイーブイのも山のようなお菓子です
渡し終えた人間は罰が悪そうにタブを見ました。解ってるよ、だから…と手を振るタブですが
グレイシアがキャンディ何袋かをタブンネの手元に投げました。それに続くようにアーケンとイーブイもお菓子をタブの前に並べます
ドレディアもクリームをタブのガサガサの肉球に塗り、ハッサムも包丁を出しますが人間に止められてました
自分にもプレゼント。そんな思い遣りにタブは溢れる涙を堪えることはできませんでした
タブはグレイシア達に笑顔で礼をしましたがグレイシアだけはそっぽ向いてネクタイもみあげをいじくってました
その後ハッサムが運んできたシチューはとてもおいしく、ごみばかり食べてきたタブの舌に優しく染み入ります
スプーンをドレディアに使い方を教えてもらい、口の周りベタベタにしながらがっつくアーケンやイーブイに悪いなと思いながらも食べ続けました
グレイシアのもみ上げでスプーンを使うという離れ業にタブは見惚れてしまい、怖そうだけど優しくてかっこいいお姉さんと尊敬の眼差しを向けました
そんな幸せな時間ですがバンバンという音が。周りは誰も気づかないのか手や口を止めません
タブは自分だけ聞こえるのかと背後を振り替えると 雪の降る中ベビンネを抱き、頭に雪を積もらせたママンネが涙ながらこちらを見ていました
タブは同族なので図々しいのを承知で人間に「ミィ」と呼び掛けましたが
「無視しろ。屋根の雪が落ちただけだ」
と言い放ちました。ほんとにみんな何も無いように無視しています
ガラス越しからも聞こえる
「おねがいじまず!!!ベビちゃんと私も助けでくざさいミィ!!どうしてそのタブンネだけ中に入るのよ!私はママなのう!!」
と言った叫びも
タブは耳を塞ぎたくなりました。これだけ騒いでも皆は何事も無いよう食事を続けます
「ミィアアアア!ミギュアアアア!」バンバンバン!!
「今日はずいぶん粘るなあ」
人間がようやく迷惑そうな顔をするとグレイシアがスプーンを置き部屋を出ていきました
外からママの声が聞こえてきます。グレイシアと会ったのでしょう
「あっ、媚イズのかき氷!さっさと私達も入れるミィギャアアアアア!ごめんなさいごめんなさいミィベビちゃんだけでもベビちゃあああ!!」
血飛沫が窓にかかりました。その後何事もなかったかのようにグレイシアは椅子に座り食事を再開しました
タブはどうしても我慢できなくなり椅子から降り窓から外を見ると血塗れでズタズタにされたママと頭の無いベビが横たわっていました
飛び出したママの目はこちらを睨みつけているよう感じられます
さらにグレイシアの真の姿におしっこちびりそうになりました。ハッサムもドレディアも本性はこうなのかと震えがとまりません
あのイーブイですら無視しています。暖かい家族の冷酷な面がみえさらに背筋が冷たくなりました
「冷めるぞ。はやく食べちゃえ」
人間の言葉にはっ、とガラスに写る自身の姿に違和感を覚えました
外で死んでいる仲間はくすんでいるがピンク。自分はピンクではなくパープルの体毛
今タブは自身の決定的な違いに気づきました。自然界にいた時は特別気にした事もない。体色
自分達にとっては
色違いなどよくあるビスケットの形が○か□かくらいどうでもいいことでした
自分は色が違うから破格の扱いを受けられる。ようやく理解しまし
食事や環境で本来の聴力が戻ったのかママンネの死骸から声がきこえてきます
「ママー!マァマァー!!」
「ミェーン!おかあさあああん!!」
ベビ以外にも子供がいたのでしょう。雪の積もった体で必死にママの死骸に泣きついています。白い息が外の厳しさを物語りました
タブはガラスに隔てられた暖かい部屋からその様子を眺めることしかできません
そして二匹の子タブの大きい方が色タブに気づいたのか睨み付けてきました
「なんでお前だけそこにいれるんだミィ?」
「同じタブンネなのに僕たちもいれてほしいミィ」
仲間から向けられた憎悪にタブンネである自分の精神が揺さぶられます
親を殺された気持ちが解るからこそなんとかしてあげたい。でも今ここで意見したら自分も殺されるかもしれない
異常な程の幸せ得たいまたがらこそ不幸な仲間に対し本来の仲間想いの感情が甦る
「いいか?お前は特別なんだ。だからうちに招いた。それでいいだろ?それともあの雪の中にいくかい」
人間はタブを見透かしたように答えました。振り替えると人間の顔は不気味と言える程笑っています
「ほらデザートたべようか。おいでタブ」
人間はカーテンを閉めタブを押すように椅子にかけさせます。窓を叩く音もすぐ収まりました
部屋の入り口から両肘を抱いてプルプル鼻水垂らしたハッサムが現れました。恐らく始末してきたのでしょう
ドレディアが運んできたのはオボンをくりぬいて作ったシャーベット
タブは考えるのをやめました
僕は特別、だからこうして幸せになる権利があるんだ。他のブタなど知ったことか
そうだ!そうなんだ!そうなんす!僕は特別としてこの家族に精一杯恩返しする
笑顔でシャーベットにがっつくタブの流すこの涙の理由はなんなのでしょうか
夜は静かにふけていきました
終わり
最終更新:2014年06月29日 13:31