河川敷。橋脚の影に自転車や冷蔵庫等粗大ゴミが乱雑に放置されている場所にタブはいました
解放されてから体を引きずりここにたどり着いたのでしょう。たいした距離じゃありませんがタブなりに長距離移動したつもりなのです
ゴミに寄りかかるその姿にかつての愛らしさはまったくありません
うけた拷問虐待の日々を物語る傷口は化膿し、黄色い膿を噴き出しています
「まーりるーりーるりりーまりるー♪」
楽しげに川を流れていくマリルリ二匹とマリル、ルリリ。家族でしょうか。みんな笑顔で幸せそう
ママリルリはルリリの食べ溢しをペロペロなめとってあげてます
反面自分は膿だらけの指を舐めようにも舌は届かない。枯れたはずの涙があふれそうになります
自分もママや家族と幸せな暮らしがしたかった。あんなふうに笑顔でいたかった。それすらも許されなかったし、私はもう無理なんだ
そんな時、目の前にイーブイが現れました。可愛らしい白いリボンを両耳につけていることから飼いポケなのでしょう
「ミィは…汚い…から…あっちいってね…」
タブは日々の虐待から卑屈根性が染み付き、かつてのような明るさはありません
意外な事にイーブイは「これあげるねえ」と口に加えていたもの、ポフィンをタブの足元に置きました
溢れていた涙が流れました。こんな自分にも親切にしてくれる子がいたなんて。タブはよろよろ手をポフィンに伸ばしますが…
「うっわ!きったね!なんだこれ!?離れろイーブイ!」
伸ばした手を蹴り飛ばしたのは人間の少年。そういえば何処かで見たような…このイーブイも
でもそんなことは既にどうでもよかったのかもしれません
彼は気づいてませんが、足はポフィンの上に置かれ結果踏み潰されていました
そして少年は、おら経験値だせ。とタブンネに再び足を叩き込もうとしますが
イーブイが「やめたげてよお!」と言った顔で制止しました。少年はイーブイを抱き抱えいいました
「こういうのさわったら病気になるんだぞ!はやく帰ってごはんにしような」
飼い主がどれだけ自分を大切にしているかイーブイは理解しているのでしょう。耳を倒して顔を埋めました
タブも見えなくなるまで「ありがとう」と何度も心で言いグシャグシャになったポフィンを土ごとですが口にすると、とても甘く優しい味がしました
今イーブイに対して得た暖かな感情が近い未来自分や周囲を破滅させる出来事のきっかけになるとはこの時思うことはなかったでしょう
再びあの虐待人間達と廻り合うことになり、幼い頃から憧れていた家族、優しいご主人様という存在すらも自らの手で粉砕する運命をたどることになるとは
陽も沈み、タブは動くことすらままなくなりました。でも辛くも悲しくもありません
ありがとうマリルリ一家、最期にいいものを見せてくれて。ありがとうイーブイ、最期に優しくしてくれて
バルジーナ、サンダース羨ましかった。自分もああなりたかった
。ラフレシア踏みつけてごめんなさい
意識が沈みかけた瞬間 タブは暖かく柔らかいものに包まれました
触覚から伝わります
『こんなになるまで痛め付けられて痛かったろつらかっただろ!?もう大丈夫さ、僕が守るから。僕がきみを必ず助けて見せる!』
自分を抱き抱えるものが何かはわかりませんがタブは身を委ね静かに目を閉じました
ビギニング・終
最終更新:2014年06月29日 13:52