タブンネ親子とボーマンダ

ある森の中、タブンネ親子は謎のタマゴを拾う
数日後、タマゴからはタツベイが孵化した
心やさしいタブンネの親子は、タツベイを家族として迎え入れる
やがて月日がたち、タツベイはコモルーへ、遂にはボーマンダへと進化していった
大きくなってもタブンネの親子を親として、姉として敬うボーマンダ
集落のタブンネ達も最初はボーマンダを怖がってはいたが
やさしい性格をしてると理解すると、仲間として接してくれるようになった

しかし、ある時地殻変動で周囲の気候が変わり、元々寒冷だった気温が大きく上昇
それに伴い、獲物を求めてその森にドラゴンたちが集まりつつある事をタブンネ達は知らなかった
大地にオノノクス、空にチルタリス、地中にガブリアス、闇の中にサザンドラ、大河にカイリュー・・・

タブンネの集落は当然ドラゴンポケモンたちの格好の餌場となる
草むらの巣は焼きつくされ、逃げまどうタブンネ達を次々と食らうドラゴンたち
家族と生きる場所、平和を失い、絶望的な状況のタブンネ達
しかしそんなタブンネ達にも希望があった。
それはタブンネ親子とともに暮らすボーマンダだ


ボーマンダは集落を襲うあらゆるドラゴンと戦った
心やさしいこのボーマンダはいざ戦いとなると恐ろしく強く、好戦的なドラゴン達も恐れるほどだ
闘いに傷ついても、巣として使っているほら穴に戻れば家族であるタブンネ親子が笑顔で迎えてくれる
彼女たちはいつも癒しの波動で闘いで傷つくとボーマンダを癒す
そして母タブンネはいつも「無理だけはしないでね」とポケモンの言葉でやさしく語りかけるのだった
種族は違えども大事な大事なわが子、こんな命をかけた戦いはさせたくないのだ
しかしボーマンダの力を以てしてでも被害を完全に防ぐ事は不可能
徐々にボロボロになっていく家族と苦しくなる生活は集落のタブンネ達の心に暗い影を落としていった・・・

やがて集落のタブンネ達の間にある噂が流行る
それはあのボーマンダがタブンネを裏切り、ドラゴン達を呼び寄せているのだという
とうとう詰め寄られたタブンネの親子は必死になって否定する
あの子は本当に心の優しい子だ・・・ みんなも、あの子の胸に触角を当ててみてくれと
しかし怒りに燃えるタブンネ達は聞く耳持たず、暴力で持って制裁を加えるのだった

強敵、ガブリアスとの長い闘いを終え、家族が待つ家に帰るボーマンダ
しかしそこに待っていたのは温もりではなく、悪夢であった
巣の前には数十匹の近いタブンネが集まっており、恐ろしい叫び声を上げながら棒を振り回している
ボーマンダが見た物は逆さ吊りにされ、血まみれで息絶えている母の姿と
八つ裂きにされ、その首を棒で串刺しにされた姉の姿だった


傷ついた今なら倒せると思ったのか、狂気に満ちた表情でボーマンダに向かって突進する
ボーマンダは咆哮した、
その咆哮は大地を震わし、タブンネの狂気の突進を止めるほどのこの世のものとは思えぬ怒りと悲しみの慟哭であった
「俺は竜の身体で生まれた・・・だがタブンネの愛する心は失わなかった! 
きさまらはタブンネの体を持ちながら竜に! タブンネを喰らう竜になったんだぞ! 
これが! これが! 俺が身を捨てて守ろうとしたタブンネの正体か! 地獄へ落ちろ 糞豚ども!」
タブンネ達の耳は咆哮の中でボーマンダがこう叫んでいるのを聞き取った

怒り狂うボーマンダ、頭蓋を噛み砕き、腹を裂き破り、炎で脂が染み出るまで焼きつくす
尻尾の一撃は胴体を両断し、青い息吹がタブンネの細胞を破壊する
タブンネ達は震えあがり、さっきまでの勢いも忘れて逃げまどうしかなかった
タブンネ達はまさに、ボーマンダの逆鱗に触れたのだ
そして、ボーマンダの収まらぬ怒りは流星を呼び、タブンネ達の集落に降り注ぎ完全に破壊した

全てが終わり静かになると、壊れた巣とタブンネの死体が散らばる中にボーマンダもまた倒れていた
その胸には自分で掻き毟った大きな傷がぱっくりと割れている
限界を超えた怒りは、自分自身をも許せなかったというのか
「俺はきっと母さんと姉さんの所には行けないだろうな」
薄れゆく意識の中で、ボーマンダはそんな後悔をするのであった
最終更新:2014年07月02日 01:42