ある日、とあるタブンネちゃんが「何か面白い事はないかなぁ」と思いながら森を歩いていました。
このタブンネちゃんはとっても優しいタブンネちゃんで、傷ついたポケモンに癒しの波導をしたり、
見つけたオレンの実を分けてあげたりするので、森の人気者でした。
タブンネちゃんがてくてく歩いていると、なんとビックリ、ポケモンのタマゴが一個落ちているではありませんか。
しかも、近くには親らしきポケモンもいません。
「たいへん、こんな所にタマゴを置きっぱなしにしていたら割れちゃうよ!」
そう思ったタブンネちゃんは、タマゴを急いで拾いました。触角を当ててみると、中からコトコトと鼓動の音がします。
タマゴの中のポケモンは無事のようです。タブンネちゃんは自慢の聴覚を使って親ポケモンを捜しましたが、
森の中が暗くなるまで捜しても、結局タマゴの親は見つかりませんでした。
タブンネちゃんは、どうしよう、と困りましたが、何しろこのタブンネちゃんはとっても優しいのです。
タマゴを放っておくなんてできません。それにタマゴの鼓動を聴いているうちに、なんだかタマゴの事が
とっても愛しくなってきてしまって、子供を産んだこともないのに母性本能に目覚めてしまいました。
「決めた!親ポケモンさんが見つかるまで、私があなたのママになってあげるね」
タブンネちゃんはそう思って、タマゴと一緒に巣穴に戻りました。
その日の夜、タマゴを抱えて寝ていたタブンネちゃんは
ピシッピシッというタマゴにヒビが入る音が聴こえてきて、慌てて飛び起きました。
「赤ちゃんが産まれるんだ!どんなポケモンが産まれるんだろう?」
タブンネちゃんは、ワクワクしてタマゴを見つめます。
パリン!タマゴが割れて、中からポケモンの赤ちゃんが出てきました。
その赤ちゃんを見て、タブンネちゃんのお顔が引き攣りました。
中から出てきたのは、なんという事でしょう、タブンネちゃんの種族の天敵中の天敵、コマタナの赤ちゃんだったのです。
コマタナの種族は、群れを組んでタブンネちゃんの種族を追いかけ捕食する種族で、
今までタブンネちゃんの仲間も大勢コマタナの群れに殺されてきましたし、
タブンネちゃん自身も大怪我をさせられたことが何べんもあるのです。
「どうしよう、殺されちゃうよ!」
そう思ったタブンネちゃんは、巣穴から逃げ出そうとしました。
ところがその時、コマタナの赤ちゃんが大声で泣きはじめました。金属音のような、聴いていると頭痛がしてくるような
鳴き声でしたが、
ヒヤリングポケモンであるタブンネちゃんには、
コマタナの赤ちゃんが何て泣いているかがわかりました。
「おなかがすいた!おなかがすいた!ママ!ママ!」
産まれたばかりの赤ちゃんは、そう言って母親を求めて泣いていたのです。
それを聴いた優しいタブンネちゃんは、母性本能を刺激されて、種族のことなんかすっかり忘れてしまい、
「たいへん、赤ちゃんがお腹をすかせてるんだ!」
そう思って、慌ててとっておきのオボンの実を巣穴の奥から取り出しました。
赤ちゃんの口にオボンの実を近づけてみましたが、産まれたばかりのコマタナに木の実が食べられるハズがありません。
赤ちゃんは泣き続けるうちに、鳴き声がだんだんかすれてきて、身体が痙攣するような動きになってきました。
「どうしよう、どうしよう…」
オロオロと自分も泣き出しそうになりながら、タブンネちゃんは少しの間考えて、
木の実を口移しでコマタナの赤ちゃんにあげることを思いつきました。
さっそくオボンの実をシャクシャクとかみ砕いて、お口をコマタナの赤ちゃんに近づけます。
赤ちゃんも、本能で食べられるものがあるのに気がついたのでしょう、
勢いよくタブンネちゃんのお口に自分の口を近づけました。
さて、皆さんご存知でしょうが、コマタナの頭部には鋭い刃が付いています。
赤ちゃんコマタナでも、鋼タイプですからその鋭さは折り紙つきなのです。
コマタナの赤ちゃんがタブンネちゃんのお口に勢いよく口付けた瞬間、
ざっくりと頭部の刃がタブンネちゃんのお顔、目と目の間の辺りに刺さりました。
「ミギャッ…」
タブンネちゃんはあまりの痛さに呻いて、反射的にコマタナの赤ちゃんを突き飛ばそうとしましたが、
その時、タブンネちゃんの触覚がコマタナの赤ちゃんの身体に触れて、
夢中になってオボンの実の汁を吸うコマタナの赤ちゃんの気持ちが伝わってきました。
「おいしい、おいしい、ありがとう、ママ!」
コマタナの赤ちゃんの身体から、ママへの愛情と感謝の気持ちがいっぱい聴こえてきました。
それを聴いたタブンネちゃんは、突き飛ばそうと動きかけた腕をすんでのところで止めました。
だって、このタブンネちゃんはとっても優しいのです。
優しいタブンネちゃんが、自分にこんなに「大好き」の気持ちを伝えてくる赤ちゃんを
突き飛ばすなんて、ヒドイことができるはずがありません。
タブンネちゃんは頭が割れそうな痛みに耐えながら、震える腕でコマタナの赤ちゃんを抱きしめました。
コマタナの赤ちゃんが、オボンの実をもっと吸おうと頭を近づけるたび、身体を寄せるたび、
頭部の刃がますますタブンネちゃんのお顔に食い込み、身体に生えた刃もブスブスと刺さりましたが、
タブンネちゃんは耐えました。全身血まみれになって、抱える腕に力が入らなくなってきたころに、
ようやくコマタナの赤ちゃんは満腹したらしく、タブンネちゃんのお口から離れました。
嬉しそうにキリキリ鳴きながら、「ありがとう、ありがとう、ママ!」という気持ちをタブンネちゃんに伝えてきました。
お顔に大きな穴を空けられたタブンネちゃんもそれを聴くと、この痛みもなんだか意味のある
大事なことに思えてきて、血まみれのお顔でなんとかほほ笑むのでした。
翌朝、タブンネちゃんのお顔に空いた穴は、ほとんどふさがっていました。
このタブンネちゃんの特性はさいせいりょくなのです。どんな傷でも、1日ぐっすり休めばほとんど治ってしまいます。
タブンネちゃんが今までいろいろな原因で大怪我をしても、今まで生き残ってこられた理由はこの特性のおかげなのでした。
タブンネちゃんは、コマタナの赤ちゃんが寝ているうちに木の実を探しに行くことにしました。
今までは一匹が食べていくには充分な食料の確保ができていましたが、これからは二匹分のを探さなくてはいけません。
さいせいりょくでも治せなかった失血による貧血でフラフラしながらも、タブンネちゃんはなんとかがんばって
二匹分のオレンやオボンの実を見つけてきました。
タブンネちゃんが巣穴に帰った時には、もうコマタナの赤ちゃんは起きていました。
目が覚めた時にママがいなくて、ずいぶん寂しい思いをしたらしく、
タブンネちゃんの姿を見ると嬉しそうに走り寄ってきました。
タブンネちゃんも、赤ちゃんのそんな様子を見ると胸がキュンとしてしまい、抱きしめようとしてしまいました。
タブンネちゃんが昨夜のことを思い出したときには、もう遅かったのです。
またもやタブンネちゃんは、刃を受けるハメになりました。今度は頭じゃなくて、お胸にざっくりと刺さりました。
「ミギャアアア!」
すさまじい痛みにタブンネちゃんは泣き叫びましたが、コマタナの赤ちゃんはママに会えた嬉しさで、
ますます強く抱きついてきます。しかも、頭を振りながら。
結果、タブンネちゃんの柔らかいお胸は、刃によってぐりぐりと抉られることになりました。
「ミギッ…ミギュゥヒィィ…ッ」
タブンネちゃんはひいひい泣きながらも、コマタナの赤ちゃんを離しませんでした。
だって、触覚から伝わるコマタナの赤ちゃんの気持ちが、
「ママ!ママ!寂しかった!もう、置いていかないで!離さないで!」
と、聴こえていたのですから。
タブンネちゃんはとっても優しいのです。こんなに寂しがっていた赤ちゃんを離すことなんてできません。
お胸からだらだら血を流しながらも、タブンネちゃんは耐えました。耐えて、コマタナの赤ちゃんを抱きしめ続けました。
赤ちゃんが安心できるように、もう寂しくないと思えるように。
ふと、タブンネちゃんがお胸を見ると、コマタナの赤ちゃんがタブンネちゃんの血をぺちゃぺちゃと舐めていました。
コマタナの種族にとって、血液に含まれる鉄分はとても大事な栄養素です。
これがないと鋼の表皮が不全になってしまい、皮膚病になって死んでしまうこともあるのです。
タブンネちゃんにそんなムズカしいことはわかりませんでしたが、赤ちゃんが自分の血を必要としていることは
なんとなくわかりました。痛くて苦しかったけど、タブンネちゃんは耐えて、自分のお乳ならぬお血々を与え続けました。
それからも、タブンネちゃんとコマタナの赤ちゃんは一緒に暮らし続けました。
さすがの優しいタブンネちゃんも二度も刺されると辛かったので、赤ちゃんが寂しがったときも
うまく刃が刺さらないように抱きかかえるなど、工夫をするようになりました。
それでも油断していると刃が体のあちこちに刺さったり、コマタナの赤ちゃんがタブンネちゃんの血を欲しがる時が
あったので、自分から刺されて血を与えることもあったりして、タブンネちゃんの体には生キズがたえませんでした。
痛い日々でしたが、優しいタブンネちゃんはどんなに辛くても、コマタナの赤ちゃんの気持ちが
「ママ、大好き、ありがとう!」と伝わってくるのを触覚で聴くと、どんな痛みも忘れられるのでした。
そんなある日、コマタナの赤ちゃんがもう赤ちゃんとは呼べないぐらい成長した時のこと。
タブンネちゃんとコマタナの子供は、木の実を探すために森を歩いていました。
タブンネちゃんが前、コマタナの子供が後ろです。
タブンネちゃんは、さっきから尻尾をちょいちょい突っつかれる感じを気にしていました。
わんぱく盛りのコマタナの子供は、最近すっかりイタズラ小僧になってきて、巣穴の大事な食料を盗み食いしたり、
寝床をむちゃくちゃにしたりして、タブンネちゃんも手を焼いてました。
「またイタズラね。そろそろ叱ってやめさせないと」
そう思っていたタブンネちゃんの尻尾に、急に激痛がはしりました。
「!ミッ…ミギャアァ!」
尻尾の付け根の辺りがズッキンズッキンと痛んで、何が起こったの、とタブンネちゃんが後ろを見ると、
なんという事でしょう、コマタナの子供がタブンネちゃんのふわふわした白い尻尾を引き千切って、
ムシャムシャと食べているではありませんか。
コマタナの子供にとって、ふわふわと動く尻尾は本能的に獲物に思えたのでした。
コマタナの子供はしばらく尻尾を噛んでいましたが、タブンネちゃんの尻尾のほとんどは白い毛で、
肉のある部分は少なく、噛んでも尻尾の毛が舌に絡むばかり、
おいしくないのでコマタナの子供はペッと尻尾を吐き出してしまいました。
ワナワナと震えながら、血と唾液と泥まみれになった大事な尻尾を見つめるタブンネちゃんに、コマタナの子供は
「ママ、お腹がすいた!お肉が食べたい、木の実じゃなくてお肉が食べたい!」と、
キリキリという不快な金属音で訴えました。
これはワガママのようですが、肉食の生物であるコマタナの種族は、
育ち盛りの時期に生肉から得られる栄養素を摂取しておかないと、後で体のどこかに機能不全が起こる可能性があり、
コマタナの子供にとって、意識はしていませんが、命に関わる重要な欲求なのです。
タブンネちゃんにそんなムズカしいことはわかりませんでしたが、コマタナの種族が肉食なのは知っていたので、
木の実じゃなくてお肉が必要なことはわかりました。
でも、肉食じゃないタブンネちゃんに、お肉を得る方法なんてわかりません。
鋭い牙などの武器を持たないタブンネちゃんに、狩りや盗みなんてできっこありませんし、
そもそも優しいタブンネちゃんに誰かを傷つけることなんてできません。
「どうしよう、どうしよう…」
困りきったタブンネちゃんに、コマタナの子供は
「お腹がすいた!お腹がすいた!お腹がすいた!ママ!ママ!」と、だんだん鳴き声を大きくして訴えました。
みじめなほどボロボロになった尻尾を見つめながら、お尻がズキズキ痛むのを感じながら、タブンネちゃんは
お肉を得る方法を思いつきました。でもそれは、タブンネちゃんにとって、とてもとても勇気のいる方法でした。
「ママ、お腹がすいたよう…」
コマタナの子供が目に涙を浮かべているのを見て、タブンネちゃんは覚悟を決めました。
優しいタブンネちゃんにとって、自分に「大好き」の気持ちを伝えてくるコマタナの子供の欲求は、絶対なのです。
タブンネちゃんは、自分の片耳を自分の手で思い切りひっぱりはじめました。
自分のお耳をお肉としてあげようと思いついたのです。
タブンネちゃんの特性はさいせいりょくですから、片耳なら千切れても半日で治ってしまいます。
でも、やわらかいお耳は神経も過敏で、ひっぱるととても痛いです。
タブンネちゃんは、「ミゥギィィィッ…ヒィィグゥィィィッ…」と呻きながら、目から涙をぼとぼとと流しながら、
自分の片耳を引き千切ろうと、ひっぱり続けました。
タブンネちゃんはあんまり力が無いのでなかなか千切れず、長いこと痛みに苦しむことになりました。
そんなタブンネちゃんの様子を、コマタナの子供は期待に満ちた目でじっと見つめていました。
それを見るととっても優しいタブンネちゃんは、
「お肉を楽しみにしてるんだ、がんばらなくっちゃ」
そう思って、えいっ、と思い切り耳をひっぱりました。ビリッと音がして、ついにタブンネちゃんの片耳が千切れました。
「ミギャアッ…ミギュウウ…」頭全体にはしる痛みに、ガチガチ歯を鳴らしながらも、タブンネちゃんは
引き千切った自分の片耳をコマタナの子供に与えました。
コマタナの子供はとっても喜びました。
タブンネちゃんの片耳を貪るように食べ、あっという間にお腹にいれてしまいました。
一日中走り続けたあとみたいに、ぜぇぜぇはぁはぁと息を切らすタブンネちゃんに、コマタナの子供は
嬉しそうにキリキリ鳴きながら、「ありがとう、ありがとう、ママ!」という気持ちをタブンネちゃんに伝えてきました。
片耳を無くして、なんだかおマヌケな頭になったタブンネちゃんもそれを聴くと、自分がとても誇らしいことを
したような気持ちになって、血まみれのお顔でなんとかほほ笑むのでした。
タブンネちゃんはそれからも、自分のお耳をお肉としてコマタナの子供に与え続けました。
でも、コマタナの子供もだんだんお耳の味に飽きてきたり、成長するにしたがって食べる量が増えてきて、
まだ両耳が再生していないうちからお肉を欲しがったりしだしたので、
お耳以外のタブンネちゃんの、体の一部を与えざるをえなくなっていきました。
目玉はげぇげぇ吐きながらも、なんとかタブンネちゃん自身で抉り取ることができましたが、
片手、片腕、片足、お腹の肉、お胸の肉、お顔の肉、消化器官、肝臓、肺の一部、生殖器…
これらはタブンネちゃん自身ではどうしても取ることができなかったので、
コマタナが両腕の刃でタブンネちゃんの体から切り取って食べました。
もちろんタブンネちゃんはお肉を取られるたびにとても痛くて苦しくて、ときどきコマタナが欲張って
多めにお肉を切り取ったりしたので、何度かは本当に死にかけたりしたのですが、
お肉を食べるたびにコマタナが「ママ、ありがとう!大好き!大好き!」と思っているのが
触覚で聴いてわかりましたし、タブンネちゃんが死にかけたときには
「ママ、死なないで!死なないで!」と本当に悲しみ、心配しているのが伝わってきたので、
とっても優しいタブンネちゃんは、自分を大好きなコマタナの子供にお肉を欲求されると
どうしても逆らえず、自分から切り刻まれるようになっていってしまったのでした。
そうして、少し時が経ちました。
かつては赤ちゃんだったコマタナも立派に成長し、進化もしてタブンネちゃんより背の高いキリキザンになっていました。
最近は度重なるさいせいりょくの酷使で、すっかり体を痛めてしまったタブンネちゃんの代わりに、
キリキザンが木の実を取ってくるようになっていました。
今日もキリキザンはたくさんの木の実を持って、タブンネちゃんの巣穴に戻ってきました。
片腕片足がちょん切られて、全身に青あざが残るタブンネちゃんが自分の子供に等しいポケモンを出迎えます。
この怪我は、今朝、キリキザンがつけたものです。いつからか、キリキザンはタブンネちゃんのお肉を切り取る前に、
タブンネちゃんを肉体的、精神的に思い切り痛めつけるようになりました。その方が肉の味がよくなるらしい、のです。
一日三食ごとに、思いつく限りの方法で痛めつけられるので、タブンネちゃんはいつもボロボロでした。
キリキザンがタブンネちゃんの前に木の実をバラ撒きます。
オレンの実、オボンの実…に混じって森に無いはずのカシブの実、リンドの実、とっても珍しいネコブの実などが
タブンネちゃんの巣穴に転がりました。どうやってこれらの実を取ってきたのか、
キリキザンは教えてくれませんでしたし、タブンネちゃんもあえて聞こうとはしませんでした。
ただ、たまに落としきれなかったらしい血腥い臭いが、木の実からすることがありました。
タブンネちゃんは、キリキザンがタブンネちゃんのために危険を冒して取ってきてくれた木の実を食べようと
片手を伸ばしました。が、その腕をキリキザンが掴みます。
どうやら、外で動いてきたのでお腹がすいたようです。タブンネちゃんのお顔が一瞬青ざめ、
そして諦めたように弛緩します。タブンネちゃんは慣れっこだという風に、無防備に横たわりました。
ぐったりと仰向けになってお腹を晒すタブンネちゃんを、キリキザンは舌なめずりしながら見つめます。
ギラギラと光る目は、母親を見る目つきではなく、どう見ても捕食者のそれでした。
タブンネちゃんの触覚にキリキザンの気持ちが聴こえます。
「表皮の一番敏感なところを寸刻みにしてやろうか…肋骨を一本ずつへし折ってやろうか…それとも…」
どうやってタブンネちゃんを苦しめるか、考えているのが伝わってきて、タブンネちゃんは震えます。
そうやって怯えることでまたお肉の味が良くなるから、キリキザンも触覚を触れさせたままにしているのです。
でも、タブンネちゃんは逃げようとしません。
タブンネちゃんには、キリキザンの気持ちの奥底にはコマタナの時から変わらない、
「母さん、ありがとう。おいしいよ、大好きだよ」という気持ちがあるのが聴こえているからです。
それが聴こえている限り、タブンネちゃんは生きたまま解体され続け、食べられ続けるのでしょう。
ひょっとしたら、それはもう、母親への愛情や感謝の気持ちではなく、
どちらかと言うと、私たちが食事の前に言う「いただきます、ごちそうさま」に
限りなく近いものなのかもしれませんが…。
最終更新:2014年07月08日 00:23