ラフレシアが林でお散歩していると、キノコの原木の廃材置き場からカサカサと音が聞こえます
気になり様子を見に行ってみると、奇妙な黒い袋がおいてありました
カサカサという音はその中から聞こえてきます
硬く縛られた口を解いて恐る恐る開けてみると、小さなピンク色のふわふわした物がもぞもぞと動いていました
ラフレシアがそれを袋から出してやると、くりくりとした可愛い青い目でとラフレシアを見ています
「ミィ?」そのピンクの生物はここがどこだかわからない様子でキョトンとしていました
袋の中にいたのはタブンネの赤ちゃんでした。人間にいたずらをされたのでしょうか?
「ミィ!ミィ!」タブンネの赤ちゃんは何かを探すようにキョロキョロしています、
きっとお母さんを探しているのでしょう
ラフレシアも辺りを見回してみますが、朽ち果てた木材が転がってるばかりです
「ミィィー!!ミィィー!!」子タブンネちゃんの声はどんどん大きくなっていきます
けれどもお母さんが現れる気配はありません、声すら聞こえてはきませんでした
「ミッ… ミッ…」子タブンネちゃんは泣きそうです、目に一杯に涙を浮かべ、プルプルと震えて
ラフレシアは慌てて子タブンネを抱っこして、優しくぎゅっと抱きしめました
すると子タブンネちゃんは泣きやみます
ぐうぜん触角が身体に当たってラフレシアの優しい心が伝わったのでしょう
ラフレシアはほっとして、タブンネをまた地面に下ろします
(ここに置いておいたら、そのうち鳴き声を聞いたお母さんが迎えに来る)
ラフレシアはそう考え、その場を立ち去ろうとしました
しかし赤ちゃんタブンネがよちよちとラフレシアの後を付いてきます
引き離そうと早歩きで歩くと、赤ちゃんタブンネは必死に追いつこうとおぼつかない足取りで走り出しました
まだ歩くのも上手くできないのに無理して走ったのでコテンと転んでしまいました
「ミッミッ・・・ミィィ~~!!」赤ちゃんタブンネは泣きだしてしまいます
ラフレシアは慌てて駆け寄ると再び抱っこしてしてよしよしとあやしてあげます
「エウ・・・ エウ・・・ エウ・・・」ゆっくりと泣きやむ赤ちゃんタブンネ
大きなけがもないようで、ラフレシアはほっとしました
心配なラフレシアはしばらく一緒にいてやる事にします
抱っこしながらお母さんタブンネを待ちますが、待てども待てども姿がありません
もしかしたらこの子のお母さんはもう・・・ そんな最悪の事態も頭に浮かんできます
そしてそのままとうとう日が暮れてしまいます。
気がつくと、赤ちゃんタブンネは腕の中でいつの間にか眠っていました
ラフレシアはやむをえず抱いたまま家へ帰る事に
帰り道、お腹が空いたのか赤ちゃんタブンネはラフレシアのほっぺをチュパチュパとしゃぶっています
ああ、この子は私の事を本当のお母さんだと思ってるんだ。
そう思うと、ラフレシアはタブンネを不憫に、そして愛おしく思いました
だったら、お母さんになってあげよう、これから一緒に暮らすんだ。
ラフレシアはそう決意して、家路に向かうのでした
やっとお家に着いたラフレシア、すやすや寝てる赤ちゃんタブンネを枯葉のベッドに寝かせると
すぐに夕食の準備に取り掛かります。今日のご飯は何でしょうか?
まず、林で集めてきた鳥ポケモンの白いフンの乾燥したツブツブを水で戻します。
今日は特別な日なのでぜいたくしてトゲキッスの糞を多めに入れます
次に、
黒いヘドロを鍋に入れ、工事現場用トイレから拝借してきた人糞を混ぜます
そして隠し味にハイポネックスを少々、
腐葉土をもはや何の糞かわからない程ネバネバに発酵した糞をつなぎにして団子に
それとオドシシの糞の干物を具として投入します
(ラフレシアにとっては)いい匂いが家の外にも漂ってきました
家の傍を通っていたジグザグマが嘔吐しています
そして鍋のスープをお皿に盛ったさっきの鳥の糞にたっぷりかけると
ラフレシア特製カレーライスの完成です。コーンがちょっと入ってるのが昔のポケモンカレー風ですね
赤ちゃんタブンネが起き出したら、たのしい夕食の時間の始まりです
赤ちゃんタブンネはカレーを目の前にして、怪訝な顔をしています
ラフレシアが美味しそうにパクパク食べているのを見て、タブンネはクンクン匂いを嗅いでみます
あまりの刺激臭にケホっと咳き込んでしまいました、赤ちゃんにはちょっと辛すぎたのかな?
ラフレシアはなかなか口をつけない赤ちゃんタブンネを見て
「もしかしてまだスプーンが使えないのかな?」と考えました
そして、赤ちゃんタブンネの隣に行くと、小さなスプーンでカレーを1さじ掬い、子タブンネの口に持っていきます
最初は口と目を堅く閉じてイヤイヤと首を振るタブンネでしたが
触角がラフレシアの頬に触れ「おいしいよ、たべないとおなかがすいてしんじゃうよ」という心の声を聞き
勇気を出して一口、パクリといきました
「ゲ゙ッ!」タブンネちゃんは口に入れた瞬間爆音とともに吐き出しました
「ミミィ~~!!ミミィ~~!!」それどころか泣きだしてしまいました。ラフレシアは大慌てです
かなり甘口につくったつもりだけど、赤ちゃんには辛すぎたのかなあ・・・?
タブンネをあやしながら原因を考えるラフレシア
やっと泣きやんだ頃、戸棚に拾ってきた哺乳瓶がある事を思い出しました
そしてリングマが自分の赤ちゃんに何やら飲ませているのを見た事があります
ラフレシアは台所に行き、ラフレシア流ミルクを作り始めます
まず、黒いヘドロを大匙一杯ほど哺乳瓶に入れ、ハイポネックスを数滴垂らし、最後に水を入れてしゃかしゃか振ります
これでラフレシア流ミルクの完成です、色はまっ黒ですが
ラフレシアはタブンネを抱きかかえて、見よう見まねで哺乳瓶を口に当てました
タブンネも久しぶりの乳首の感触が嬉しいらしく、チュウチュウ吸い始めました
しばらく何ものんでなく、最初は上澄みのヘドロが薄い部分で何とか飲めたらしいのですが、
次第に口の中がドブのようなにおいで一杯になり
腕の中でじたばたと暴れ出し、哺乳瓶を口から放してしましました
ラフレシアは焦りました、ミルクも飲まない・・・
「エンペルトさんは食べ物を自分の胃で消化して食べやすくしてから子供に与える」
色々考えるうちに、そんな話を思い出しました
ラフレシアはほっぺに目いっぱいさっきのカレーを詰め込むと、液体になるまでぐしゃぐしゃと咀嚼し、
赤ちゃんタブンネの口に自分の口をくっつけました
最初はママとキスができて嬉しかった赤ちゃんタブンネですが
ママが特製カレーとラフレシア族特融の激臭唾液が混じり合った
この世に他に形容し難いほど臭いドロドロを口から喉にに流し込んできます
赤ちゃんタブンネは無言で涙を流しながら「何でこんなひどい事するの・・・?」と疑問に思いましたが
触角を通して伝わってくるラフレシアの心は、ずっと変わらず優しい心のままでした
一応食事が終わると、ラフレシアは号泣するタブンネをあやして、再びベッドに寝かしました
そして自分もそのまま就寝です
「ミヒーッ!ミヒーッ!」
翌朝、目が覚めてみると、タブンネが下痢便まみれのベッドの中でお腹を押さえて泣きわめいてるではありませんか
ラフレシアは病気になったのかと大慌てです
とりあえず水を飲ませて落ち着かせて、タブンネの体を嘗めて綺麗に(余計に臭く放ったが)すると、
大急ぎで治療の準備にとりかかります
ラフレシアは外に大きな穴を掘り、タブンネの首から下を埋めてしまいました
何をされてるか分からずにタブンネはキョロキョロ普段より低くなった景色を見回しています
そしてジョウロで頭から大量に水をぶっかけています
タブンネはもはや声も出せずに口をアグアグさせているのでした
太陽と大地のエネルギーときれいな水・・・
ラフレシアが今までかかった病気はこの方法で治っていました
タブンネの赤ちゃんの症状は食べすぎの下痢
この治療法で直ると思うけれども、もしもっと重い病気だったらどうしよう・・・
ラフレシアは病気に詳しいハピナス先生を呼ぶべきか否か、悩んでいました
(死エンド)
直ると信じてタブンネを埋めたままのラフレシア
夕方になって日が沈むと、いったんはタブンネを家に入れます
ベッドでヒューヒューと虫の息のタブンネ
ラフレシアは心配そうに重湯(沼で取ったデトリタス)をタブンネの口元に差し出しますが、もちろん食べようとしません
とりあえずただのきれいな水をチョロチョロ与えてみると、少しだけコクンと喉が動きました
タブンネにとってただの水がこんなにおいしく感じられたのは初めてです
どうにかして元気を取り戻せないか思案した結果、湯治という方法を思いつきました
勇気を出して苦手な火をおこし、たらいにぬるま湯を作りました
そしてそれに殺菌作用があるマトマの実を溶解液で溶かして入れます
目にしみるほど酸っぱい臭いと辛い臭いがモワっとたちこめていますが、ラフレシアは平気なようです
お湯が冷めないうちにタブンネをお湯につけます
「ミギィィィィィ!!ミギィィィィィ!!」子タブンネはお湯の中で死に物狂いの大暴れです
触覚でラフレシアの心をまた読んでみると(ヒリヒリするけどがまんして・・・おねがい・・・)
と凄く申し訳なさそうです、(お湯につけたら・・・きっと元気になるよ)
子タブンネはもうその言葉を信じるしかありません
お湯から上がって身体を拭くとき、溶解液のせいなのかタブンネのけがごっそり抜けおちてしまいました
お風呂から上がったタブンネはもうグロッキーです
ラフレシアに抱かれてベッドに向かう赤ちゃんタブンネ
(今夜は、ママと一緒に寝ましょうね)
もはや表情を変える力さえ残ってないが、そう聞くと嬉しいタブンネ
しかし、今日のベッドは一味違いました
(腐葉土にコヤシと黒いヘドロをブレンドした、特製ねっとりベッドよ)
ママの心の声を聞きベッドが目に入った時、タブンネの目からダラダラと涙が流れ落ちました
それは、匂いが目に染みただけではないのは明らかです
夜が明けると、タブンネはラフレシアの腕の中で息絶えてました
(ごめんね・・・ママの力が及ばなかったばっかりに)
ラフレシアの家の庭に石でできた小さなお墓が出来ました
お墓の前には、あの特性カレーライスが供えられています
それは、死体を食いに来たバルジーナが、食欲を無くして帰るほどの代物でしたとさ
おしまい
(生エンド)
ラフレシアは大事をとってハピナス先生を呼ぶ事にしました
ハピナス先生はとても物知りな林のお医者さんです
ラフレシアに連れてこられたハピナス先生は赤ちゃんタブンネを見て、戦慄しました
地面から首だけ出されたタブンネがヒィヒィ言ってるではありませんか
ハピナス先生はその天使のような姿からは想像できないすごい剣幕で怒りだしました
最初は何で怒られているのかさっぱり分からないラフレシアでしたが
ハピナス先生が怒りながらも丁寧に説明すると
ラフレシアも事の重大さを理解したらしくがたがたと震えて涙を流しながら
タブンネにごめんね、ごめんね、と繰り返しました
タブンネは土から掘り出されハピナス先生の治療(胃洗浄)を受けています
その間ずっと俯いて涙を流しっぱなしのラフレシアをタブンネは心配そうに見つめていました
タブンネはしばらくハピナス先生の所で暮らしながら付きっきりで治療をすることに
ラフレシアは落ち込んでしまってご飯も喉に通りません
そんな様子で数日後、ラフレシアの家にハピナス先生が訪ねてきました
ハピナス先生の言う事には、タブンネがラフレシアに会いたがっているという事です
ラフレシアは首をぶんぶんと横に振りました
私はタブンネにすごく酷い事をしてしまった、タブンネは私の事を嫌いになって、
もう2度と会いたくないに決まってます
そう言ってそっぽをむいてしまいました
しかしハピナス先生は優しくこう諭しました
植物のあなたにはわからないかもしれないけど、赤ちゃんにとって一番つらいのはママと会えない事なんだ
あなたは間違ったこともしたけれど、タブンネにとってあなたは優しいお母さんなんだよ
ラフレシアは勇気を出してタブンネに会いに行ってみる事にしました
ハピナス先生の巣に着くと、タブンネが嬉しそうにとてとてとラフレシアに走り寄ってきます
ラフレシアはタブンネを抱きしめました、まだ自分の事をお母さんと思ってくれてありがとう・・・と
ハピナス先生はラフレシアにミルクが入った哺乳瓶を渡しました。タブンネにはこれを飲ませなさいと
抱っこしながらタブンネの口に哺乳瓶を当てると、ゴクゴクと凄い勢いで飲んでます。タブンネもラフレシアも嬉しそうです
ハピナス先生は最後に、「絶対に思いつきでミルクにちょい足しとかアレンジとかしないように」と厳重に注意するのでした
おしまい
最終更新:2014年07月02日 01:54