森で木の実を採っている俺の前に、一匹のタブンネが現れた。なぜか自信満々な顔をしている。
気付かれないようにしてるのだろうか、草むらで姿勢を低くしてこちらを見ている。バカみたいなピンク色でバレバレだ。するとタブンネが近付いて来た。視線でわかる、俺の木の実を強奪するつもりだ。
やせいの タブンネの おうふくビンタ!
短い足でとてとてと走ってくるタブンネ。
「ミィーーーー!!」
俺の目の前でバッと右手をふりかぶった。
「ミィ!ミィ!ミィ!」
しかしタブンネの渾身のおうふくビンタは、渾身の空振りを見せた。
手が短すぎて届かないのだ。俺はというと、ただタブンネを見下ろしているだけだ。
今度は、俺の腰辺りにおうふくビンタをし始めた。ぺしっぺしっと乾いた音が鳴る。やべえ、全然痛くねえ。
俺はあえてタブンネを無視し、木の実を採りはじめる。タブンネは必死な顔して足や背中にぺしぺしとビンタにも及ばない平手打ちをしている。なんだかマッサージみたいで気持ち良い。
覚えたばっかりだから使いたかったんだろう、今日は見逃してやるか。そう思い採取を続ける。
しかし往生際の悪いことにタブンネは木の実の入っているカバンをぐいぐいと引っ張り始めた。さすがにここまでくれば、俺も容赦しない。
「調子に乗るなよ豚!」
タブンネは一瞬ビクっとしたが、俺の顔が前に来たのがチャンスだと思ったのか、ミィ!と意気込み右手をふりかぶる。
しかしビンタが俺の顔に届く前に、俺の右ストレートがタブンネの顔に直撃。
「ミギャァアアアアア!!」
鼻血を吹き出し泣きわめきながらぶっとび、地面をゴロゴロと転がっていくタブンネ。そして木に頭から激突。スピアーの巣が落ちてきた。
「ミヒィッ!?」
ぞろぞろと巣から出てくるスピアー。一心不乱で逃げ出すタブンネ。
しかし逃げ切れるわけなく、スピアー達に串刺しにされていくタブンネ。刺されるたび悲鳴を上げ、血がどくどくと吹き出す。
やがてボロ雑巾のようになってしまったタブンネは、ピクピクと痙攣しながら地面にひれ伏している。するとタブンネの体はみるみるうちに青く腫れていく。毒が効いてきたのだ。
じたばたともがくタブンネ。だがそうこうするうちに毒は体を駆け巡る。
「ミィァアアアアアアア!!」
死への恐怖からか、タブンネは何かに怯えるように叫ぶ。
「ミボオッ……ミッ…ミィ……ミギィィィイイ…」
仰向けになり大量の血を噴き出すタブンネ。スピアーの刺された箇所から、毒がにじみでている。
目はギョロギョロとあらぬ方向に回り、赤い泡を吹いている。
もう永くはない、そう思った俺はタブンネを崖からぶん投げた。
タブンネの悲鳴の後、べちゃっという音がなる。見てみれば、青紫色の液体にまみれたピンクの塊があった。
色違いになれてよかったね!タブンネちゃん!
俺は何か良い事をした気分になり、上機嫌で森を後にした。
最終更新:2014年08月01日 23:33