俺の家にはタブンネがいる
タブンネといってもボロボロで汚くて可愛くないズタ袋のようなタブンネで
虐待を受けていたのをタブンネ愛護団体に所属している姉が引き取ってきたのだ
顔は殴られてボコボコで耳はハサミかなんかでズタズタにされ、片方の目は抉りとられている
全身まんべんなく痣や切り傷だらけでとても見苦しい
足の健も切断されていてビィビィ汚い声で鳴きながら家の中を這い回っていて最高にウザい
ついでに糞尿垂れ流しの
オムツ生活で最高に臭いときたもんだ
こんなのと一緒に暮らしてるとどんどんタブンネというポケモンが嫌いになっていくのは当然の事だった
そんなある日、姉が大声ではしゃいでるので何かと思い見に行ってみるとタブンネがタマゴを抱えていた。しかも3つ!
♂もいないのにどうしたことだ思い姉に聞いてみると
「子供が欲しいから♂タブンネと交尾させてあげた」とのことだ
何でそんな事がわかるのかというとタブンネ用の翻訳機というものがあるらしい
一匹でさえ鬱陶しいのにさらにタブンネが三匹も増えるとはうんざりだ
ボロタブンネはこっちの気も知らないでと醜い笑顔で嬉しそうに卵を暖めている
数日後、「ピィ!ピィ!」という甲高い鳴き声で目が覚めた
そう、あの3つの卵が孵ったのだ、無精卵であってくれという俺の願いは届かなかったか
眠い目を擦りながらタブンネのケージがある物置部屋に行ったら姉が赤ちゃんタブンネを産湯に入れている所だった
あんなボロでも子供はまともなタブンネなんだな
「よくがんばったね、ほら、タブちゃんの赤ちゃんだよ」
姉が赤ちゃんタブンネをボロタブンネに渡す
赤ちゃんタブンネは「チィチィ」と鳴いて母タブンネの腕の中でもぞもぞと動いている
やがて傷だらけの母の毛皮の中から乳首を見つけると、チュウチュウと吸い始めた
感極まったのか、ボロタブンネは「ブィィィィ」と声をあげ、ポロポロと涙を流した
泣きたいのはこっちの方だ、なんで3匹とも元気いっぱいなんだよ…
「あ、こらっ、はやく出ていってよ。子供が生まれたばかりのお母さんタブンネはデリケートなんだよっ」
俺は姉に物置部屋から追い出されてしまった
ふんっ、言われなくても近づくもんか。
あんなボロクズに子供なんか育てられるわけないに決まってる
俺の予想に反してあの子タブンネはすくすく育っているらしい
そんな事より許せないのは姉が「タブンネちゃんの赤ちゃんたちは寒がってるの!」などとほざいて俺の部屋のストーブを持っていきやがった事だ
深夜と早朝の寒さに震えるたびにあのタブンネ共に対する憎しみが大きくなる
というか持っていくなら自分の部屋のストーブにしろよ
やがて一ヶ月ほど経ち、ストーブが要らなくなってきた時期になると
姉は成長して歩けるようになった子タブンネたちを家の中で遊ばせるようになった
至るところでミッミッ!ミッミッ!と聞こえてきて鬱陶しい、何より嫌なのはそこら中にウンチやおしっこを撒き散らして家中が臭い
姉いわく「まだ赤ちゃんたからトイレのしつけができないのっ」とのことだ、そんな生き物を室内で飼うなよ
ちなみにケガしたり変なもの食べたりするかもしれないから庭で遊ぶのはだめだそうだ、めんどくせぇ
ボロクズタブンネもリビングに這い出してきてブイブイ鳴きながら醜い体を揺らして喜んでやがるし
…ん、ちゃぶ台の上にタブンネ翻訳機が、ちょっと遊んでみるか。
まずは床でゴロゴロ転がっている子タブンネから
『あぶぶーうぃーまんままんまー』
なるほど、赤ちゃんなんだからこんなもんか。
次はあのボロクズだ。うめき声みたいな汚い声だか大丈夫かな
「うれしい、あかちゃんたちげんきげんき、
きっとわたしのかわりにゆめかなえてくれる」
夢?こんな肉塊に夢なんかあったのか
ボロタブンネに夢がなんなのか聞いてみた
『わたしのゆめ、ミュージカルでおおぜいのおきゃくさんのまえでおどる
こどものときにてれびでみた、でも、わるいにんげんにつかまって、いじめられて、からだぼろぼろ、わたしもうおどれない
だから、あかちゃんたちおおきくなったら、ミュージカルのスターになってほしい』
ミュージカルスターねぇ…そういえば姉がポケモンミュージカルのDVDを赤ちゃんタブンネに見せてたな
その時赤ちゃんタブンネどもはテレビの真似してピョンピョン跳び跳ねて反応は上々だったが…
まあこのゴミグズの夢を知ったところでオシャカになってほしいとしか思えんがな
ちょっとは同情的な気分になったがその同情も数日のうちに吹っ飛んだ
赤ちゃんタブンネの睡眠時間は不規則で3時間おきに起きては眠るということを繰り返す
そして姉はあの子タブンネたちにレッスンと称して起きてる間中ずっとDVDを見せ、踊らせている
深夜でも関係ない、起きてる間じゅうずっとミッミッ!と騒ぎながら跳び跳ねる糞タブンネたち
子タブンネ特有の高い声が頭の中にキンキン響く
「ブィャァァアビギィイイ」というあのボロクズの合いの手にも殺意を覚える
「赤ちゃんたちが寝たいときに寝せてあげないと、からだが丈夫に育たないし、
病気にもかかりやすくなっちゃうんだよっ」
俺の睡眠不足はどうでもいいってのかよっ!
「ミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッ
ミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッミッ…」
ドタドタドタ…
あああああああこんな所で眠れるかぁっ!!
躍り狂う糞ピンクどもを横目に逃げるように玄関を飛び出た
あまり行くあても無かったのでコンビニでお菓子を買ってからとりあえず近くの公園に向かう
かすかにホーホーやヨルノズクの鳴き声がするだけで公園は静かだ…
このまま公園で寝てしまおうとすら思えてくる
そう思いながらベンチに腰かけてお菓子を口に入れる
ああ、家だと「赤ちゃんタブンネが欲しがるから」ってお菓子を食べるのを禁止されてたなぁ…
はぁ、何で俺は姉に逆らえないのだろうか…、
姉は昔からなんかおかしいとこもあって口答えするとめんどくさい事になって、それがダラダラとずっとか…
いつの間にかタブンネ愛護団体なんかに入っていて、それにのめり込みすぎていつの間にか会社クビになって一日中家にいるし…
「キュルル…」
…ん、眠ってしまっていたらしい
なにか不思議な声で目が覚めた、辺りを見回して見るとそこは公園。それは分かってる
膝に重みを感じ、視線を下ろしてみると緑色の髪の小さな女の子が
いや、よく見ると人間じゃない。
これはたしか… キルリアというポケモンだ
膝の上のキルリアは少し心配そうに俺の顔を見つめている
大きな赤い目で上目使いでこっちを見てる姿がとっても可愛い
お菓子をひとつあげてみると細い手で上品で受け取り小さな口でしゃくしゃくと食べた
食べ終わると嬉しくなったのかバレエのようにクルクルと踊り出した
あの赤タブンネ共の騒音ダンスの100倍は美しい
しかし公園にキルリアがいるのは変だな、誰かに捨てられたのかもしれないな
ベンチから立ち上がり公園から帰ろうとするとキルリアが後ろからついてくる
俺の事を気に入ってくれたのか?、だがウチにはあの糞タブンネどもがいるしなぁ
考えてるうちに家についてしまった。キルリアも一緒に
しょうがないのでキルリアを家に入れてやる。五月蝿いけど我慢してね
とりあえず布団にくるまり冷えた体を暖める事にした
するとキルリアは腰を大きく回してベリーダンスのような躍りを始めた
その躍りを見ているとだんだんタブンネの騒音がぼやけていきやがて耳に入らなくなり
やがて目の前の景色がぼやけていき、まぶたが重くなっていく…
そうか、これは催眠術という技か。気が利くな…zzz
翌朝はキルリアが馬乗りになって起こしてくれた。こんなに爽やかな寝覚めは久しぶりだ
それから俺はこのキルリアを飼い始めた
姉は「そんなのよりタブンネちゃんの方が可愛いのに」とイヤミを言われるがそんなのは想定ずみだ
キルリアはダンスが好きで赤ちゃんタブンネがダンスの練習(笑)をしていると自分も隣でくるくると踊り始める
それは跳ねたり闇雲に手を振り回したりするだけの赤ちゃんタブンネの踊りとはまったく別物の
小さなバレリーナのような優雅な舞いだった
その違いは赤ちゃんタブンネたちにも分かるらしく
キルリアが踊っているのに気づくと赤ちゃんタブンネたちはピタリと踊るのを止め
その踊りに見入っているのだった
キルリアが踊りに終わると赤ちゃんタブンネ達がキルリアの踊りの真似をしようとするのだが
バランスが悪いらしく回ろうとするとコロンと転んでしまい、跳ぼうとすると足の長さが足りずずっこけてしまうのだった
俺はそれを見てプププと吹き出してしまう
タブンネ達のそばにいる姉は気づかないが赤ちゃんタブンネには聞こえるらしく
俺を悔しそうな顔で睨むのだった
そんな事が続いていたある日、姉がすごい形相で俺の部屋に怒鳴り込んできた
「あんたのキルリアが踊りを邪魔するから赤ちゃんタブンネたちがやる気を無くしちゃったじゃないのっ!」
なんだそりゃ?言いがかりもいいとこじゃないか。キルリアはただ隣で踊ってただけなのに
むしろあの糞タブンネどもの手本になってやってたじゃないか
…言われてみればこの頃赤ちゃんタブンネのドタドタが聞こえないな
「と・に・か・く!そのキルリアはさっさと捨ててきなさい!
あのタブンネちゃんたちにはミュージカルスターになるって大きな夢があるの!
そんな道端で拾ってきた雑魚ポケモンに邪魔されちゃたまんないわよ!」
一通りヒステリックにわめき散らしたあと姉は部屋から出て、バタンと乱暴にドアを閉めた
キルリアは俺の後ろでぶるぶる震えている。
何も言い返せなかった自分に腹が立つ、キルリアは俺が守ってやらなきゃいけないのに…
しかし赤ちゃんタブンネがやる気を無くしたってのはどういうことだ?
タブンネ翻訳機を片手にリビングに様子を見に行ってみる
なるほど、DVDのタブンネたちが踊っている映像からそっぽを向いてそれぞれ思い思いに遊んでいた
それに向かって母タブンネは「ビギァイアアグビィイアェアェア」と汚いうめき声で呼び掛けている
翻訳機の電源を入れて赤ちゃんタブンネたちにどうしておどるのをやめたの?と聞いてみよう
『おどるのもぅやーよぅ!』
『みどりのぽけもんさんみたいにじょうずにおどれないもん!』
『くるくるもできっこないよぅ!』
なるほどな、キルリアのダンスを間近で見て自分達もやってみようと思ったが出来なくて
それでやる気を無くしたって事か
タブンネがまだ赤ちゃんだとか体の作りが違いすぎるとかいう話しは別として
こいつら諦め早すぎるだろ!
まあ今まで姉にさんざん甘やかされて育ったからこうなるのは当たり前だ
母親もあのザマじゃあしつけも何も出来たもんじゃないし
さて、次はその母親の声を聞いてみるか
『あかちゃん、みんな、おどる、しない、なんで、おかあさん、かなしい、すごく、かなしい』
とにかく踊ってくれないのが悲しくて仕方がないらしい、恨むなら忍耐力のないわが子と甘やかしまくりのバカ姉を恨むんだな
リビングに姉がいない事に気づいたのか、いつの間にかキルリアがテレビの前で踊っていた
「ミィッミィ!!」
キルリアが踊り始めると赤ちゃんタブンネたちはそそくさと部屋を出て行ってしまった。
現実逃避というやつか、赤子の時からこんなんじゃあミュージカルスターなんて絶対無理だろうな
「クルルッ!?」
キルリアが何かに驚きダンスを止める。すごい形相をした姉が部屋に入ってきたのだ
「あんたのせいでっ、タブンネちゃん達がやる気なくしちゃってるじゃないの!
このまま踊らなくなっちゃったらどうしてくれんのよっ!!」
姉はキルリアをサッカーボールのように蹴り飛ばそうとした。幸いキルリアはひらりとかわしたが
「キルリアは悪くない!あの子タブンネが勝手にやる気を無くしただけじゃないか!」
と姉に食ってかかったがそれがまた火に油を注ぐ結果となってしまった
金切り声で叫びながらバットをめちゃくちゃに振り回し周りの物を破壊していく
俺は姉を必死に諌めようとしたが怒り狂った姉はもう止まらない
俺はバットを脇腹にくらいながらもキルリアを抱きかかえて居間から脱出した
「二度と帰ってくるなーーっ!!」
姉は玄関に逃げる俺に向かってめちゃくちゃに物を投げた
キルリアを抱いて当てもなく町をさまよう。ごめんなぁ…俺がもっとしっかりしていれば…
キルリアは「キュウウ」と鳴いて俺の頬にそっとキスをして優しく微笑んだ
ひょっとしたらキルリアはウチで暮らすよりも公園で暮らした方が幸せなのかもしれない
「キュウ!」悲しそうな声を出しながら胸に顔を埋めてきた
そうだ、キルリアは人の感情が読めるんだった。あんなヤツが家にいても俺から離れるのは嫌ってことか
嬉しいよ、こんな俺でも好きになってくれて
何かうまい物でも食わせてやろうと商店街を歩いていると突然「ンキュウ!」と鳴いてとある店を指差した
それは子洒落たアクセサリーショップで
ショーウインドウに飾られていた綺麗な水色の半透明のビーズがたくさんついたネックレスを指差している
食べ物じゃなくてこんなのが欲しいなんて変わったやつだな、よしよし、買ってやるぞ
…勇んで店に入ったのはいいものの1万円もするとは思わなかったよ… 痛い出費だ
ネックレスを首につけてもらい、キルリアは喜んでくるくる踊ってぴょんと飛び跳ねて抱きついてきた
これなら1万円でも安いと思う事にしよう
しばらく町をぶらぶらした後、暗くなってきたので家に帰ろうか
ションベン臭いし変な奴もいるけど楽しい我が家だ
家に着くと子タブンネ達はおねむの時間のようだ、ついでに姉も。その隙にこっそり自分の部屋に帰った
今日は疲れた… 布団に寝っ転がってみると、いつの間にか眠ってしまっていた
「クスン… クスン・・・」
夜中にぼんやりと目が覚めるとキルリアが部屋の隅ですすり泣いていた
足元には糸が切れてバラバラになったあのネックレスが、
糸が切れてしまったのか?直してやろうと思いビーズの一つを手に取る
ヌルっとした嫌な触感が、しかもなんか臭い ……これは子タブンネの唾液だ!
なんとなく何があったかはわかった。
赤ちゃんタブンネ達がネックレスを飴かグミかなんかと勘違いし無理やり奪って食べようとしたのだ
そして舐めても甘くないとわかると吐きだしたのだろう
流石に俺は切れた、駆け足で下に降りリビングで遊んでいるタブンネ共の首根っこを掴み、顔の前まで持ち上げた
「ゴラァ!キルリアに何してくれてんだあこの糞ガキどもがぁ!」
声を荒げて怒鳴りつけると子タブンネたちはじたばたと大暴れしながら「ムアァーー!!!」とすごい声で大号泣
手を離して床に落としてやるとシャカシャカと高速でハイハイして母親(ボロクズ)の後ろに隠れてしまった
今まで叱られるという事を知らなかったんだろうな、すごいパニックぶりだった
母タブンネの後ろを覗き込んでみると子タブンネたちは小便を漏らしながら恐怖でガクガクと震えている
ちょっとは気分がスッとした、姉にもこれくらい強気に出れればいいが
さて、あとはキルリアのネックレスを洗って直してやるだけだな
ビーズをきちんと洗ってネックレスを直してあげたらキルリアはなんとか泣き止んでくれた
後で姉に赤ちゃんタブンネたちをちゃんとしつけるよう文句を言いに行こうと考えていたが
姉の方が俺の部屋に怒鳴りこんで来る方が早かった
「あんたちょっと居間に来なさいよっ!」
耳を引っ張られて居間に引きずられていく。さっきの決意はどこへやら、我ながら情けない
居間につくと赤ちゃんタブンネたちが眉間にしわをよせてミッ!ミッ!と吠えたててきた
昨日はあんなに怯えてたのに姉が一緒だと一変して強気になるのな
「あんたが昨日何やったかタブンネちゃんたちに聞いたわよ!
こんなちっちゃい子達に暴力振るうなんて信じらんない!あの子たちに謝んなさいよっ!!」
そもそも子タブンネがキルリアのネックレスを壊したのが悪いんじゃないか、言いがかりもいいとこだ
という旨をなるべくソフトに伝えた
「そんなものを赤ちゃんタブンネたちが間違って飲み込んだらどうしてくれるの!」
自分とタブンネは一切悪くないというこの態度、もう我慢の限界だ、ガツンと言ってやる!
「ふざけてんじゃねえぞオイおめえが甘やかすだけで躾も管理もちっとめしねぇのが悪いんだろが、
だいたい糞尿垂れ流しの糞ワガママのバカチビをリビングで放し飼いってどういう事だよあの親タブンネも邪魔だし臭ぇし最悪だよ!
愛護だがなんだか知らねぇけどおめぇとタブンネどものせいで家中糞まみれのグチャクチャだ!おれはもう…
姉は鼻から顔を真っ赤にしてわなわなと震えだし、俺の話が終わるのを待たずに
近くにあった花瓶をガッと掴み金切り声とともにめちゃくちゃに振る舞わした
「うるせー!うるせー!うるせー!私に口答えすんなぁぁぁぁぁ!!!!すんなぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は脳天に花瓶を喰らってしまいそのまま崩れ落ちてしまう
た、立てない…、俺が頭から血を流して倒れてるのを見ると赤ちゃんタブンネたちがトテトテと近づいてきた
「ミッミッミッミッw」赤ちゃんタブンネたちは笑いながら俺の頭をベチベチと叩く
弱々しい往復びんたでも割れた頭にはズキズキと響く
「あはははは、ほーらやっちゃえタブンネちゃ~ん」
興奮した赤ちゃんタブンネのうちの一匹が俺の顔面に馬乗りになり、小便とドロドロの糞をビチビチと垂れ流した
他の2匹と姉はそれを見て大笑いしている。自分の弟に対してここまでの仕打ちができるものなのか…
この家に生まれたことを心底後悔した
「クルル!」
鳴き声で薄れ行く意識がはっと覚めた
キルリアが泣きながら姉の足にすがり付き「やめて!」と訴えている
あんなに姉のことを怖がっていたのに… 勇気をだして…
「邪魔っ!」
だがそのの想いは姉に届かない。キルリアは腹から蹴り飛ばされて壁にバシンと叩きつけられた
お腹を押さえてオエッオエッと嗚咽している。すまん、俺のせいで…
「ほーらタブンネちゃんたち、次はあっちよ~!」
ミッミッミッと騒ぎながらキルリアに群がるタブンネたち
殴られ、蹴られ、髪やネックレスを引っ張られ悲鳴をあげるキルリア
助けてやりたい、でも体が動かない。意思をふしりぼって「や…め…ろ…」と声を出すのがやっとだ
「キャハハハハハハタブンネちゃんを虐めた天罰よっ!弟のくせに私に逆らった天罰よっ!」
姉は笑いながら座卓を持ち上げ、カドを俺の胸に向けてふり下ろさんとしている
だ、だめだ、し、死ぬ…
姉は完全に正気を失っていた
すまん、キルリア、ここでお別れのようだ…
「ミィッ?!」
リンチの最中、キルリアのネックレスがまるでマグネシウムの燃焼のように光りだした
あまりの眩しさに姉は持ち上げた座卓を自分の足の上に落としてしまって痛がっている。ざまあみろ
「ミウワアァァァアーー!!」
右手に掴みかかっていた子タブンネが悲鳴をあげた。
なんと、キルリアの肘から菖蒲の葉のような物が飛び出して赤ちゃんタブンネの肩を貫いてるではないか
赤ちゃんタブンネは泣き叫びながらじたばた暴れてそれから逃れんとするが菖蒲の葉は傷口を押し広げどんどん伸びていった
それを皮切りにキルリアの体はどんどん変化していく両腕の皮が肩から蝶の羽化のようにビリビリと裂けていき中から緑色の新しい腕が姿を表す
髪の毛は一部が剥がれ落ち、もみあげ一部は形を変えくるりと緩いカーブを描き、
今まで髪に隠れていた耳が現れてその耳もにょきにょきと大きくなっていく
頭の角は引っ込んでいき、変わりに大きな包丁のようなトサカが頭の中央から生えてくる
スカートの部分は長くなっていく足に追い付くように両足をズボンのように覆い、細かった腰は膨らんで円盤のような出っ張りとなる
最後に胸の中心が盛り上がっていき、皮を破ってキルリアの角のような赤い突起が突き出してきた
これらの変化は、ほんの数秒の出来事だった
キルリアの姿はまるで別のポケモンに変わってしまった
身長は倍近くにまで大きくなり、その姿はまるで歩く刃と言ったところ
なにより違っていたのは、その瞳にキルリアの頃には見せなかった激しい怒りを宿している所だ
もうこの子はキルリアではない、たしか…エルレイドといったはずだ
「ウオォォォァアアアアアアアアアアア!!!!」
エルレイドは天を仰ぎ激しい雄叫びをあげた
それはついさっきまで笑いながらキルリアにリンチを加えていた赤ちゃんタブンネたちが
恐怖によって体の芯まで凍りつくほどの怒りの雄叫びであった
雄叫びが止まるとエルレイドは右手の肘刀に刺さった赤ちゃんタブンネを右手をブンと振って振り払った
「ギュピイ!」
壁に激突して血の跡を残しながらずるりと落ちる赤ちゃんタブンネ
よく見ると腕が肩から手の甲まで切り裂かれていた
「ああああああタブちゃんになんて事するのよぉぉぉ!!!」
姉はエルレイドの顔面に向かってタブンネの餌皿を投げつけた
しかしエルレイドは肘の刀で餌皿を弾き返し、返す刀でサイコカッターを姉に向かって発射した
それは姉の頬を掠めただけで直撃はしなかった、こんな奴でも殺したらマズイという事は分かっているのか
それとも怒りのあまり狙いが定まらなかったのか
どちらにしろ姉に恐怖を与えるには十分だったようで
姉はパニックになり悲鳴をあげギクシャクと走って自分の部屋に逃げていってしまった
動きが変だったのはさっき座卓を足に落としたからだろうなw
…ん?頭の痛みが引いている。エルレイドがいつの間にか癒しの波動を使っていてくれたらしい
さて、姉がいなくなったからエルレイドの怒りは赤ちゃんタブンネが全部受け止める事になるな
当の赤ちゃんタブンネは頼れる姉が逃げてしまい、棒立ちのまま顔面蒼白でガタガタ震えてやがる
いちおう母タブンネもいるがあんなビィビィ鳴くだけのボロクズが守ってくれるはずがないのは赤ちゃんタブンネも理解はしてるらしい
その母タブンネは腕を斬られた赤ちゃんタブンネの傷を舌で嘗めやっている、こんなんでもいちおう母親なんだな
「ミヒーッ!ッヒィィィィ!!」
エルレイドは一匹の赤ちゃんタブンネの後頭部を掴み、念力で割れた花瓶の破片を自分の足元に集める
そしてそこに赤ちゃんタブンネを顔面から思いっきり叩きつけた!
「ウビャーーーーー!!!」と悲鳴をあげバタバタともがく赤ちゃんタブンネ
陶器の破片が身体中に刺さりまるで散弾銃で射たれた有り様だろう
エルレイドは追い討ちに赤ちゃんタブンネを破片の上にギュッと押し付け、激しくゴシゴシと擦りだした
「グギュキイビアアガガビギュアブバァガガ」と血の軌跡を床に残しながらもみくちゃになる赤ちゃんタブンネ
まるで花瓶の破片を赤ちゃんタブンネという名の雑巾で掃除しているようだ
やがて赤ちゃんタブンネの反応が鈍くなるとエルレイドは赤ちゃんタブンネをひょいとつまみ上げて俺に前面を見せてくれた
全身の皮がベロベロに剥けて血で真っ赤っか、顔面もズタズタで唇や瞼も無くなってグロテスクな顔面となっていた
だけど背中はきれいなまんま、これは逆びんぼっちゃまだなw
「グビギュアッゴグアアアアア!!!」
ボロクズタブンネがエルレイドに向かって何やら喚いている
あまりに声が汚すぎて威嚇だか哀願だかわからないな、タブンネ翻訳機の出番だ
『あかちゃん、だんさー、なる、おかお、だいじ、いじめる、やめて』
エルレイドはさっきの逆びんぼっちゃま赤ちゃんタブンネを水戸○門の印篭のようにボロタブンネに見せつける
「ビブアアアグバアアアアアア!!!」
涙をダアーッと流して泣き叫ぶボロタブンネ …通訳してよう
『あかちゃん ぼろぼろ しんじゃう ひどい ひどい ひどい ひどい ひどい 』
そこで俺はボロタブンネに「こんなキモいタブンネちゃんはミュージカルになんか出せないねw」と耳打ちしてみる
「ブアァァァァァァーーーー!!!」
喉の肉をタプタプ震わせての咆哮、おむつにはじわ~っと茶色い染みが広がっていき悪臭を放つ
夢を奪われたのがよっぽどショックなんだろうなw
エルレイドは持ってる赤ちゃんタブンネをビタンと床に投げつけると次の獲物にターゲットを定めたようだ
それは一番最初に腕を切り裂いた赤ちゃんタブンネだ
気絶している赤ちゃんタブンネを右耳を掴んでひょいと持ち上げた
死んでいるのかと疑うほど何の反応も示さずぶらぶらと揺れているだけの赤ちゃんタブンネ
エルレイドは左耳の触角をがっちり掴み、一気にブチッと引きちぎった
「チギュピィーーー!!!!」
痛みで目を覚ました子タブンネ。神経が集まった急所なのかもしれない
ひとしきり泣いて暴れたあとエルレイドに捕まっている事に気がづくと、
一瞬ウワッと驚いた表情になりそれから潤んだ目で「ミィミィ」と可愛い声で鳴いて媚を売り始めた
エルレイドはそれが許せなかったのか顔面に鋭いパンチを入れる。
タブンネの顔面が陥没してエルレイドの足元に血がドバドバと落ちる
鼻の骨が折れたのか赤ちゃんタブンネの声は「ビィビィ」という濁った汚い声に変ってしまった
次にエルレイドは裂けている方の腕を両手で掴み、雑巾を絞るようにバキバキと捩じる
「ブギュグバァァァァッァァァァヴアアアアアアア!!!!」と血の混じった涙を流して悲鳴をあげる赤ちゃんタブンネ
プシュウと血が噴き出し血染めの皮が裂けズタズタの筋肉が露出していく
赤ちゃんタブンネの腕はねじりん棒のようになってしまった
エルレイドは赤ちゃんタブンネの小さな両足を片手で束ねてこれまたバキバキと捩じっていく
赤ちゃんタブンネは「ガガガッガッガッガブギアガガッガガガ」などと奇声を発し
顔面からいろんな血をダラダラと床に垂らしている。
痛みが我慢できないのかエルレイドの腰の円盤の部分を小さな左手でキュッと握っていた
ゴキン!とひと際大きな音がした、それと同時に赤ちゃんタブンネの股間から赤いションベンがダラダラと漏れ出してきた
きっと腰骨が折れてそれが膀胱に刺さってしまったのだ、こりゃあミュージカルどころか一生オムツ生活だ
母親と同じでよかったじゃないかw、両足は骨が砕けて絡み合い一本の足のようになっている
最後に無事に残った左手にもエルレイドは容赦ない
一つになった両足を持って左肩に肘刀を突き刺し、そのまま手首に向かってザクザクと切り裂いていく
もはや赤ちゃんタブンネは叫ぶ気力も無く、白目を向いてヒューヒューと息をする事しか出来ないようだ
やがて肘刀は手のひらも切り裂き、左腕は綺麗に真っ二つにされて腕が2本生えたようになった
仕上げにエルレイドは赤ちゃんタブンネに癒しの波動をかけた
みるみるうちに赤ちゃんタブンネの傷が塞がっていく。体は醜く変形したままで…
赤ちゃんタブンネは意識を取り戻し、這いつくばって逃げようとしたその時、
「グバァァァァァァァーーーー!!!!!!」
悲鳴を上げて転げまわる赤ちゃんタブンネ。
そうか、砕けた骨のかけらが体中に残っていて
赤ちゃんタブンネが動こうとするたびに中で肉を切り裂いて激痛が襲うという事だな
消えない痛みに泣き叫び続けるねじりタブンネを後にして、
エルレイドはまだ五体満足な3匹目の赤ちゃんタブンネに向かっていった
「ブグィーゴッブギィィィィィッ!」
3匹目の赤ちゃんタブンネをエルレイドが捕まえた瞬間、
ボロタブンネが鼻づまりのドドゼルガのような雄叫びをあげながらエルレイドに突進ていった
しかし、足が動かないハイハイでの突進ではスピードや威力なんて出るはずもなく、
サッカーボールキックを鼻っ柱に食らってしまい鼻血を流してフガフガと悶絶している
「ミィィ!!」
「キルッ!?」
母親を攻撃されて怒ったらしく、赤ちゃんタブンネはあろうことかエルレイドの手に噛みついた
しかしまだ前歯が2本生えかかっているだけの赤子の噛みつきではほとんど痛くはないらしい
「ウィィィィィ!」とうなり声をあげて必死に食らいつく赤ちゃんタブンネ、口の端からはヨダレが湧水のように流れ出している
エルレイドの目がキュウッと鋭くなり、ワナワナと震えている
時間と共に薄れてきたエルレイドの怒りもこれでMAXに戻ったようだ
噛まれてない方の手で指先サイズのサイコカッターを自分の指先に作り、子タブンネの唇の中に無理やり突っ込んだ
「ギチュバァァァーー!!!」
赤ちゃんタブンネはエルレイドの手から口を離し床に頭からゴトリとと落ちた
ビービー泣きながら両手で口を押さえてうずくまっている、
白い小さな手が血が染み込んだティッシュのように赤く染まっていく
エルレイドの怒りはそれくらいでは収まらない、
赤ちゃんタブンネの頭をグイッと持ち上げ、念力で口を無理やりこじ開けて閉じられなくした
そこで出てきたのはさっきの指先サイコカッター、子タブンネはフルフルと首を振って嫌がっている
まるで歯医者を嫌がる子供のようだ、だが歯医者さんもエルレイドも容赦はしない
「ウワァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
キュイイイインというあの音と共に赤ちゃんタブンネの口から血しぶきが噴き上がる、
2本しかない歯はもう無くなったのに何を削っているのか?
やがて音が止まると、エルレイドは赤ちゃんタブンネの後頭部をバンと叩いた
その衝撃で口の中から何やら白い欠片が出てきた…これは歯茎に隠れて見えなかった生えてくる前の歯だ
このタブンネは歯が生える前にすべての歯を失ってしまったのだ、
赤ちゃん仰向けにひっくり返りあふれ出る血でゲボゲボ言いながらもがき苦しんでいる
エルレイドの追撃はまだ終わらない
赤ちゃんタブンネの左腕をギュッと掴み、エルボードロップでザクッと切り落とした
「ミュゥゥゥゥゥギアァァァァァァァァァァァ!!!!!」
悲鳴が終わらぬうちに右足も同じように切り落とした
子タブンネは駄々っ子のようにじたばた暴れてその場でグルグル回り出した
アレか、チョロQのタイヤを片側だけ外すとグルグル回るのと同じ原理だな
血を垂れ流しながらグルグル回るから赤ちゃんタブンネを囲むように赤い円が出来ている
「アウア…アウアウ…」
ボロタブンネは弱弱しく這いずりながらもがき苦しむ赤ちゃんタブンネに這い寄ってくる
『みんなー!ミィミィ体操、はーじまーるよー!』
テレビがタブンネのダンスに使っていたDVDの映像を映し出した、エルレイドが再生ボタンを押したのだ
「キルルッ!」
赤ちゃんタブンネたちに何か命令しているエルレイド
涙目になってブンブンと首を横に振って嫌がったが
エルレイドが片手片足の赤ちゃんタブンネの耳をぶちりと千切ると赤ちゃんタブンネ達はおとなしく従った
テレビの前に集まった赤ちゃんタブンネ、エルレイドがやらせた事はいつものように踊りを踊らせる事だった
「ビギッ!」「ウビィィィ!!」「グミ゙アアア!!」
しかし子タブンネの体は昨日までの健全なそれではない
片足タブンネはなんとか片足で立ちあがり踊ろうとするが、すぐにバランスを崩し顔面から床にすっ転び、
傷口(エルレイドが死なない程度に止血はした)が開いて床に血の水たまりを作ってしまい
前面が陶器片でズタズタブンネは痛みで足がおぼつかないがも何とか踊る事ができてはいたものの
しかし飛び跳ねるパートになると腹の切れ目からプリッと腸のような物が飛び出してしまい
それに驚いてダンスを止めてしまい、エルレイドにそこから腸を引っ張り出されその状態で踊りを強要され
ねじりタブンネに至っては悲鳴をあげてのたうち回るだけでまさに発狂ダンスという感じだった
正直こいつのダンスが一番面白いw
俺たちが赤ちゃんタブンネ達の決死のダンスを笑いながら見ている時、
母タブンネは無言で涙を流しながら歯を血が出るほど食いしばっていた
きっとこいつは赤ちゃんタブンネ達のダンスが日に日に上手くなっていくのを間近で見てきたのだ
子供たちが自分の叶わなかった夢を叶えてくれるその日を夢見て
そしてその夢は赤ちゃんタブンネの未来ごと完全に叩き壊された、その悔しさと絶望は想像を絶するものだろう
よし、ちょっとからかってやるかw
「おい、ボロクズ、お前の大事な赤ちゃんひどい有様だね~~wあんなんじゃミュージカルに出るなんて絶対無理だろw」
母親タブンネは何か言いたそうに俺を見上げている、涙に赤い色が混じり鼻血まで出して
「お前と赤ちゃんの努力は全部パアになっちゃったねw
無駄な努力ご苦労さんw」
母タブンネは眉間に目を吊り上げてヒビの入った歯をむき出して俺を威嚇してる。タブンネなので全く怖くないがw
「見ろよ、あのクソガキどもの姿、ポンコツなお前のガキにふさわしい姿じゃねぇかw」
「バァァァァァァァァアアアア!!!!グギィ!ビィッ!ビィッ!ゴブェバ!ギィィー!!!」
絶叫した後に何やら喚き始めた、ここは翻訳機の出番だな
『まだ ゆめ あきらめない わたしの こども みゅーじかる すたー』
まだそんなこと言ってやがる、お前のガキは既にお前と同じボロクズだっつーの!
『あんなの わたしの こども ちがう もう いちど たまご うむ』
「ミ゙バァァァァァァァァァァァァァ!!!」
3匹の赤ちゃんタブンネが絶望の表情(一匹はズタズタでよくわからないが)で号泣しだした、
あんな状態で母親に見捨てられたらもはや泣くしかできまい
それよりも、このボロクズはまた家の中のゴミを増やす気でいやがる
そんな事は俺とエルレイドがさせないぜ!
俺はエルレイドにボロクズタブンネを仰向けに押さえつけるよう指示をした
「ブィィィィィ!!ブィィィィ!!」
ボロクズタブンネは威勢よく俺に威嚇し続けてるが
俺があの座卓を持ち上げ、カドをタブンネの腹に向けるとサーっと血の気が引いて青い顔になった
覚悟はできたようだな!俺は親タブンネの下腹部に座卓のカドを思いっきり振り下ろした
グギュッ!とボロクズは声を上げた、股間からは血がブシュウと噴き出した…
これくらいじゃ安心は出来ないな、タブンネは再生力が強いというからこのくらいじゃ甘いかもしれん
…そうだ、いい事を思いついた
まずあの花瓶の破片を手のひらに集められるだけ集める、
赤ちゃんタブンネの血がたっぷりついててうまい具合に感染症を起こせるかもしれん
次にタブンネのケツ穴とは別の穴に円錐状に丸めた雑誌を突っ込む
そしてそれを漏斗代わりに花瓶の破片をザーッと流し込んだ
体内の違和感に恐怖するボロクズ、最後に下腹部をバキバキと踏み潰してフィニッシュだ
「ブゲェッゲゴボゴボゴボゴボブェェ!!!!」
よしよし、これで卵巣はズタズタ、再生しても破片が体内に残って機能しなくなるだろう
ボロクズタブンネは股間からさらに大量の血を流してビクビクと痙攣して気絶している
さて、このゴミクズ共をどうしようか… 殺すのはさすがに嫌だし、クソ姉の部屋に捨ててくる事にしよう
俺は子タブンネを、エルレイドは親タブンネを抱えて姉の部屋に
タブンネのシールがベタベタ貼られたドアを開けると、なんと姉が部屋にいたではないか
外に逃げたのだとばかり思っていたが自分の部屋に引きこもっていたとは
姉は赤ちゃんタブンネ達の変わり果てた姿を見ると、狂乱状態で俺に対してキーキーとわめきだした
正直興奮しすぎてて何と言ってるのかさっぱり分からない
「うるせぇっ!」
初めて姉に平手打ちした、すると姉はピタッと静かになり、ベッドに飛び込んで布団に包ってウワーッと泣きだした
なんだこいつ弱いじゃないか、俺は初めて姉に勝ったのだった
俺とエルレイドはタブンネ達を部屋に投げ捨てて、そのまま姉の部屋を後にした
居間に戻ろうとすると、姉の部屋の扉越しにタブンネの親子がビャアビャアと罵りあっている声が聞こえた
それからというものの姉は部屋に引きこもるようになった
部屋には何をしているのかさっぱり分からないが深夜に一階に食べ物を漁りに来ているらしく
たまに食べ物が大量に減っていることがある
あのタブンネはまだ生きてるらしく扉越しにビィビィと汚い声が聞こえる
姉と顔を合わせなくなり3か月が経った時、何やら姉の部屋から異臭がし始めた
これは昔に嗅ぎなれたタブンネの糞尿の臭いだ、死臭じゃないだけマシだが掃除してないのか
半年が過ぎると姉の部屋からの悪臭は家じゅうに広がるほどに酷い物となった
これじゃ居間で飼ってるのと同じじゃないか、耐えかねた俺はエルレイドを引きつれて姉の部屋のドアを切り破った
そこには俺の予想をはるかに超える目を疑うような地獄の光景が広がっていた
それは床を埋め尽くし、キィキィと奇声をあげながら蠢いている赤ちゃんタブンネたちであった
しかもそれはただの赤ちゃんタブンネではない、
手足が無い者、耳が異常に大きく目が無い者、目が飛び出していて口がひん曲がっている者
目が一つしかなく下あごが無い者、両足がくっついて魚のようになってる者、もはや言わないとタブンネだと分からない者…
まともなタブンネは一匹もいない、今まで見たことも無いような異形の赤ちゃんタブンネ達が部屋を埋め尽くしていた
そして部屋の中心には偏食による栄養失調と不潔による皮膚病で変わり果てた姿の姉がちょこんと座っていた
両手いっぱいに奇形の赤ちゃんタブンネを抱えて、笑いながら…
「あはは…見てなさいよ!ぜったいタブンネちゃんの子供をミュージカルのスターにしてみせるんだからぁ!」
姉は完全に狂ってしまっていた、俺を指差しうつろな目でキャハハハと笑い続ける
「ブギャァァァァァ!!!」
部屋の片隅にはあのボロタブンネが卵を温めている、まるでジャガイモのようないびつな形の卵を…
おそらく、まともな姿の赤ちゃんタブンネが生まれるまで卵を孵化し続けるのだろう
父親はおそらく最初の3匹のうちの片手片足タブンネだろう。確かあいつだけ雄だったのだ
俺は救急車を呼び、姉を病院に連れて行ってもらった。救急隊員の人もあまりの惨状に驚いていた
後で聞きに行ったお医者さんの話だと、最低3年は治療が必要だとの事だ
姉はこれでいいとして、この不気味な赤ちゃんタブンネ達をどうしようか…
町の小さな博物館、そこには赤ちゃん300体近いタブンネのホルマリン漬けが多数展示されている
もちろんただの赤ちゃんタブンネではない、一匹一匹が全く違う形に奇形を起こしているのだ
そしてこのタブンネの親がただ一匹のタブンネ、あのボロクズタブンネだという事も驚くべき事だ
そのボロクズタブンネは連続出産によるカルシウム欠乏症でもうこの世にはいない。
死体は焼却炉で燃やしたが灰も残らずこの世から跡形もなくしょうめつしてしまったのである
物珍しさと恐ろしさでその博物館の名物となり、人気の恐怖スポットとなった博物館に客が大勢来るようになった
ボロクズタブンネの子供たちはミュージカルのスターにはなれなかったが、ミュージアム(博物館)のスターになれたのだ
おしまい
最終更新:2014年08月14日 17:36