ここはポケモンセンターのスタッフルーム。
わたし、ここで生まれたトクベツなタブンネなの。
だってわたしのママはこのポケモンセンターで働いてるタブンネさんの中でも一番優秀なタブンネで、ママのご主人様はジョーイさんなんだよ!
すごいでしょう!
だからタブンネやタブンネのおねえちゃんやいもうとたちはみぃ~んな野生のタブンネさんたちがなかなか覚えられない「いやしのはどう」もすぐ覚えられるんだ。
でもね、今はポケモンセンターで暮らしてるけど、いつかはママやジョーイさんとお別れすることになるんだって…
さみしいよぅ…
***
とうとうこの日が来ちゃった。
昨日ジョーイさんからね、
「タブンネちゃん、明日あなたのご主人様になる方がくるわ。すごく優秀なトレーナーさんだからきっと大事にしてくれるわよ。」
っていわれちゃったの。
ここを離れるのは悲しいけど、タブンネにもご主人様ができるんだ!と思ったら少し楽しみなんだ。
ジョーイさんにかわいいリボンをつけてもらったよ。
このリボンはママの子どものタブンネさんだけがつけてもらえる「トクベツ」な印なんだ。
ジョーイさんに手をひかれてポケモンセンターの受付にいったら、優しそうな男のひとが立っていて、
「彼がタブンネちゃんのご主人様になる方よ」といわれたの。
タブンネのご主人様になるひとはタブンネの頭をなでなでしてくれて、
「よろしくね」ってタブンネに笑顔を向けてくれたんだ。
タブンネのご主人様、優しそうなひとでよかった。
***
ご主人様はポケモンセンターを出たらすぐに地下鉄に入って行ったの。
タブンネのこと、どっかに連れて行ってくれるのかな?
っておもったら、ご主人様は青い頭のひととお話ししてる。
タブンネの自慢してるのかな?って耳を傾けたら青い頭のひとがね、
「このタブンネは、まずまずの能力です。最も高い能力なのはHPでまぁまぁの力をもっています。」
っていってたの。
どういう意味なんだろう?タブンネはトクベツなタブンネなのにまずまずだなんて!
でもHPが優れてるって褒められたのにご主人様は大きなため息をついて無言のまま早足で歩きだしたの。
さっきまであんなにゆっくり歩いてくれてたのに、怒ってるのかな?
途中で立ち止まってお水を飲みだしたのでコッソリご主人様の胸に触角をあてて気持ちを聞いてみたの。
そしたらね…
「コイツ、特性もさいせいりょくじゃないし、個体値もひっくいし、タダで貰ったとはいえ使えねぇわ」
って…。ご主人様、タブンネに会ったときすごく優しそうだったのに…。
タブンネすごく悲しくなっちゃった…。
***
ご主人様がバックの中から不思議な機械をだしたの。
なんだろう?音楽聴くのかな?って思ったら急にタブンネの前に差し出したの。
そして、
「いやしのはどういらねぇからかわりに火炎放射覚えさすか…」
って言ってるの!!
いや!いや!いやだよぅ!
いやしのはどうはご主人様にひきとられる前の日に、ママから教えてもらった大切なわざなんだよ!
ママもジョーイさんからも「ぜったいに忘れちゃダメよ」っていわれたわざなんだよ!
わすれたくない、おねがい!「いやしのはどう」だけは…
一生懸命イヤイヤと首をふってみたけれど、ご主人様はタブンネの気持ちをわかってくれなかったの。
タブンネのお手てからは、あのやさしいはどうはでなくなっちゃったよ。
ママ…ごめんなさい………
***
ご主人様と歩いてる間も一生懸命両手を伸ばして力をいれてみたけれど、お手てからは何もでないの。
まだママの前で一度しか出したことがなかったいやしのはどう。
はじめてできたとき、ママはすごく喜んでくれたのに…
もうタブンネは出来ないんだと思ったら涙が止まらなくてずぅっと泣いてたの。
そしたらご主人様が、
「ミィミィミィミィうるせーな!そんなに思い出したかったら自分でハートのうろこでもさがしてこいよな!
自力で探して持ってきたんだったら、思い出させてやるよ。」
って怒鳴ったの。
くすん。こわいよぅ。
タブンネ、ハートのうろこなんて見たことないけど、歩きながら必死になって草むらをかき分けたよ。
でもでてくるのはゴミばかり…。
くすん…くすん…。
***
草むらを探そうにもご主人様がどんどん先をいっちゃうからハートのうろこ、なかなか探せないよぅ。
向こうからご主人様が
「おせぇぞ、ブタンネ!足みじけぇんだからとっととついてこいよ!」
ってまたタブンネのこと怒鳴ったの。
それに、タブンネはブタンネなんて名前じゃないのに…ひどい…。
ご主人様が優しかったのはポケモンセンターで会ったときだけだよ…。
なんで?タブンネなにもわるいことしてないのに…。
ジョーイさんやポケモンセンターのスタッフさんたちはタブンネにすごくやさしくしてくれたのに…。
あ、ジョーイさんたちのこと思い出したら、ポケモンセンターに帰りたくなっちゃった…。
ママ…
ジョーイさん…
寂しくてとぼとぼ歩いてたら、向こうからバトルを終わった女の子とヨーテリーちゃんとすれ違ったの。
そのヨーテリーちゃん、キラキラしたものもってるみたい!
きっとあれがハートのうろこだぁ!って思ったからタブンネ、そのヨーテリーちゃんに思いきって話しかけたんだ。
「ハートのうろこ、タブンネにちょうだい」って。
ポケモンセンターにいたときね、タブンネが笑顔でおねだりすると、みぃんな、
「タブンネちゃんにいわれたら仕方ないなぁ~、ハイ!」
っておかしや甘い飲み物わけてくれたから、きっとヨーテリーちゃんもくれるはず!
でもね、ヨーテリーちゃんはタブンネのことキッて睨んでキャンキャン吠えだしちゃったの?
あれ?急に声かけてびっくりさせちゃったかな?って思ってたら、
ヨーテリーちゃんのご主人様が
「なんなのこのタブンネ!ヨーテリー、かみくだく!!」
っていった瞬間、タブンネは目の前がまっくらになっちゃった……
***
目をさますと公園のベンチにいたの。
あれれ?ご主人様どこ?って探したらご主人様は男の子と二人の女の子とお話してる。
そばに言ってみると、ご主人様とお話していたうちのひとりの髪の長い女の子が、
「これ、ポケセンで貰ったタブンネ?私も先月貰ったけどホント使えないよね~、ジョーイさんには悪いけど。」
っていってるの!それにその隣にいた黒髪の女の子も、
「うちなんてまずまずだよ~わらっちゃうでしょ!あまりにムカツクから毎日イライラしたとき腹蹴り飛ばしてストレス解消に使ってるよ!」
って。
なんで?なんでみんなタブンネのこと大切にしてくれないの?
おねえちゃまたち、みんなみんなご主人様ができて、幸せに暮らしてると思ったのに、なんで?!
タブンネが泣いていたら、女の子達がプレシャスボールをだしてきたの。
あれはママの子どものしるし。
トクベツなタブンネだけが入れてもらえる、トクベツなボール。
きっとおねえちゃま達だ!と思って待っていたら、でてきたのは
もうすぐ瀕死になりそうなおねえちゃまと、痣だらけのおねえちゃま!
あ…あ…いやしのはどうしなきゃって思ったけど、タブンネは何もしてあげられない…。
大切なおねえちゃまが傷ついてるのに何にも出来ないなんて…。
せめて、せめてママがいればっておもって、大声で「ママーーー」って叫んだの。
ママはお耳がいいからタブンネの声、聞こえると思って。
でもママはきてくれない…。
黒髪の女の子は
「え!まさかこのタブンネいやしのはどう忘れたの?ウチのキルリアでもできるのに?」
って大声で笑うの!
やめて!タブンネだって忘れたくなかったのに…大切な大切なわざだったのに…
タブンネが耳を塞いでいると、痣だらけのおねえちゃまが瀕死のおねえちゃまにフラフラしながらもいやしのはどうをしてあげてる!
よかった…おねえちゃまよかった…ってほっとしたら、髪の長い女の子がね、
「こいつのこのいやしのはどうするときのドヤ顔みるとイライラすんのよね!」
っていって痣だらけのおねえちゃまを何度も、何度も蹴りだしたの。
やめて!やめて!おねぇちゃま、死んじゃうよぅ!
痣だらけのおねえちゃまが
「いたいよ…エリちゃんやめて…うぅ…」
って泣いてる。おねえちゃまが、おねえちゃまがしんじゃうよぅ…
タブンネは泣くことしかできないなんて。
ママ…おねぇちゃまを助けて…
ジョーイさんと一緒にここにきて…
そう祈っていたら、今度は瀕死になりかけてたおねえちゃまがやっとのちからをこめていやしのはどうをつくってたの。
おねえちゃまの手の中にはやさしいやさしい光のたまができてるよ。
ああ、これで痣だらけのおねえちゃまもきっと…
と思ったのに、黒髪の女の子が笑いながら、
「お前、調子んのんなよ!!」
って言って瀕死だったおねえちゃまを後ろから傘で突いたの!!
もうちょっとで痣だらけのおねえちゃまにいやしのはどうをうてたのに!
瀕死だったおねえちゃまも、
「コハルちゃん…やめてよぅ…」
って泣きながらその場に倒れてしまったの。
なんでご主人様なのにそんなことするの?
おねぇちゃまたちが肩で息をしてるのに、みんな笑ってるなんてひどすぎる。
タブンネは苦しくて悲しくて胸が痛いよぅ。
はやく、ハートのウロコみつけなきゃ、はやくいやしのはどうを思い出さなきゃってタブンネは決心したの…。
***
「タブンネ、火炎放射だ!」
え?
振り返ると、背後からご主人様がタブンネに命令してる…
おねえちゃまたちに?
そんなことできないよ!できるはずない!
ふるふる首を振っておねえちゃま達の背中をなでてるとご主人様が、
「聞こえないのかタブンネ、火炎放射しろ!」
って怒鳴ったの!
なんで?なんでおねえちゃまを傷つけなきゃいけないの?
いやよ!いやよ!わかって、ご主人様…
涙目になってご主人様を見つめてタブンネがお願いしても、ご主人様の意思はかわらない…。
「火炎放射がいやならおうふくビンタでいいぞ!早くしろ!」
なんで息も絶え絶えのおねえちゃまにそんなこと…
ご主人様に背を向けておねえちゃまの怪我してるトコロを撫でてると、ご主人様は
「やれやれ、とんでもない不良タブンネを押し付けてきたもんだなぁ、ジョーイさんも。ポケモンセンターのジョーイさんはやさしくて頼りになる人だと思ってたけどガッカリだぁ~」
っていって笑ってる!ひどい、ジョーイさんのことそんな風に言うなんて…
髪の長い女の子も、
「お誕生日プレゼントです。なんていって自分のポケモンのガキ配布してるけど、本当はバトルの邪魔して他の手持ちポケモンの足ひっぱらせて瀕死にさせたいだけなんじゃないの~超メイワクなんだけど!」
なんてこというの!
痣だらけのおねえちゃまが首をふって
「…そんなこと…してないのに…エリちゃんひどい…」
って泣いてるの…とてもかなしいよ、タブンネ。
黒髪の女の子も、
「ジョーイさんのタブンネ、ポケセンでうろうろしてるけどあいつみてると本当イラつくのよね。『自分は働き者のタブンネちゃんですぅ』って顔しちゃってさ」
っていいながら、おねえちゃまを傘の先っぽでつつき続けてる。
ママの、ママの悪口言うなんて…。
タブンネの大きな瞳からはいっぱいいっぱい涙がこぼれたの…。
「ジョーイさんの評判もガタ落ちだろうなぁ…おまえのせいで!」
そのコトバがタブンネの心にチクンってささって苦しくって、
ご主人様の方をチラってみたの。
そうしたら…
「ジョーイさんとジョーイさんのタブンネ、イッシュ地方を追い出されるかもしれないねぇ…」
って……。
そんな!そんなのいやだ、いやだよう。
タブンネがご主人様に、そんなこと言わないでって思いをこめて縋り付いたの。
タブンネに触れたら、きっとご主人様のトゲトゲした気持ちも優しくなると思って…。
そうしたら、ご主人様、タブンネの頭をナデナデして、ポケモンセンターで出会ったときのような笑顔を作って、
「いい子なんだから、ちゃんと言うこと聞かなきゃダメだよ。さぁ、どっちでもいい、おうふくビンタしておいで」
って。
おねえちゃまも、ジョーイさんもママも、みんな大切なのに…。
すると、痣だらけのおねえちゃまがふらりと立ちあがってタブンネのほうを見つめてる。
どうしよう…。タブンネの心をギュっと締め付けるようにご主人様はタブンネの耳元で、
「あ、立ち上がった方のタブンネにしようか。あのこなら、おうふくビンタ耐えられそうだよ。もし、やらないならジョーイさんもママもイッシュ地方には住めなくなっちゃうよ?いいの?」
ってささやくの。
おねえちゃま、おねえちゃまごめんなさい…。
タブンネは大粒の涙をポタポタ流しながら大好きなおねえちゃまに…
ビタン!ビタン!ビタン!ビタン!ビタン!
うう…うう…
おねえちゃまは、
「いたいよぅ…いたいよう……う…う…エリちゃん…お薬つけてよぅ…」
って泣きながらパタリと倒れちゃったの。
おねえちゃまのバースデーリボン、泥だらけでボロボロで、タブンネはすごくすごく悲しくなって、涙がとまらなくなっちゃったの。
ご主人様はおねえちゃまのバースデーリボンを見て、ニヤってしてる。
なぜ?
「おい、エリ!コイツのバースデーリボンちょっと借りていいか?」
「え?いいけど…ちょっとまって。タブンネ、リボンはずすわよ」
髪の長い女の子はおねえちゃまの痣だらけの腕をぐっと掴んだけれど、おねえちゃまは「だめぇ!リボンは宝物なの!」と泣きながらリボンをとられまいと女の子の手を払いのけたの。
髪の長い女の子はおねえちゃまにこわいこわい顔をして、
「主人にさからってんじゃねぇよ!オラ!オラ!オラ!」
そう叫びながらおねえちゃまのお腹を何度も何度も蹴り続けてる!
やめて、おねえちゃまが!!
ミニスカートからスラリと伸びた女の子の脚は折れそうに細いけど、もの凄い強いキック力みたいで、
おねえちゃまは朝食べたらしき木の実をいっぱいいっぱい吐き出してしまったの。
その吐いたものがおねえちゃまの体や脚、バースデーリボンにもべったりついてる…。
「キッタナァ~イ!そのままボールにしまったらボール汚れそう!」
そう笑いながら女の子はプレシャスボールを手にもってポンポンお手玉のようにしてる。
おねえちゃまは
「…ダ…イ…ジ…ナ…ボ…ォ…ル…だいじなボール…よごさないで…」
って泣きながらお願いしてる。
女の子は、
「あのリボン、きったないけどどうする?」
と髪の長い女の子はご主人様に聞くと、
「う~ん、さすがにありゃさわりたくねぇな。コハル!お前のタブンネのリボンかしてくれよ。」
といってたおれたままの瀕死になりかけてるおねえちゃまを指差したの。
黒髪の女の子は、
「かまわないけど」
といって、声もだせないおねえちゃまの口の中に傘を突っ込み、
「暴れたら苦しいわよ!さ、今のうちにとっちゃって^^」
そういいながらおねえちゃまをおさえつけたの!
おねえちゃまは
「ぐ…ぎ…あ…びぃ…がぁ……」
といううめき声をあげながらリボンをとられまいと苦しそうに手をバタつかせてるの!
タブンネも慌てておねえちゃまのそばに駆け寄ったけど、ご主人様が足をひっかけたので転んじゃって……
ご主人様はそのすきにおねえちゃまのリボンをとってしまったの。
黒髪の女の子はサッと傘を口の中から抜きながら
「どうせボロかったし、返してくれなくていいわよ^^」
と話すとおねえちゃまは、
「…リボン…ママのリボンなの!!!ママからもらったリボンなの………!だめぇぇぇえ…」
と泣きながら気を失ってる…
そんな、ひどいよぅ…タブンネたちどうしてこんな目にあわなかやいけないの?
ママみたくみんなに愛されてしあわせになれるって思ってたのに…。
ご主人様はタブンネをボールにしまって歩いてるみたい。
タブンネはボールの中で、さっきあったことはみぃんな夢なのかもしれないって
思いながらウトウトしちゃった。
でも、少しずつね、少しずつ懐かしい音や声が近づいてくるのがわかったの!
タブンネのお耳はママに似てすごぉく優れてるから離れていてもよく聞こえる自慢のお耳なんだ。
ご主人様が一歩一歩踏み出すごとにその音や声がどんどん近くなって、タブンネは嬉しくて仕方なかったの!
だって、だって、ママやジョーイさんたちのあったかい声が耳に響いてくるんだよ?!
ママとジョーイさんのトコロに帰れるんだって思ったらタブンネすっかり元気になっちゃった、ウフフ。
ご主人様、早くボールからだしてくれないかなぁ♪わくわく♪
ポケモンセンターについたみたい!ご主人様、早く!ボールからだしてぇ!
ボールの中でさけんでみたけれど、聞こえないみたい。
ご主人様、出してくれないの。するとジョーイさんがご主人様に声をかけたみたい。
「あら?どうしたの?なんかあったの?」
ああ、ジョーイさんのやさしい声だぁ!ジョーイさん、タブンネここにいるよー!
タブンネ、精一杯の声で叫んでみたけどやっぱり聞こえないみたい。
「ジョーイさん、ちょっと聞いてもらえますか?今日いただいたタブンネのことなんです…」
え?タブンネのことってなぁに?耳を澄ますと、
「さっき、友達に会ってきて、そのコたちもココで貰ったタブンネ連れてたんです。きっと今日貰ったタブンネと姉妹ですよね。
オレのタブンネ、そのおねえちゃんタブンネにむかっていきなりおうふくビンタしたり、怪我してるおねえちゃんタブンネを無視していやしのはどうしてやらなかったり…」
うそ!タブンネわざとしたんじゃないよ!
あ、ママの声が聞こえる…
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
ママがご主人様やジョーイさんに謝ってる…なんで?タブンネわるいことしてないよ!しんじてよ、ママァ!!
ジョーイさんもものすごく悲しそうな声で、
「タブンネちゃんがそんなことするコだったなんて…私やママタブンネの前ではすごくいいコだったのよ。だから…本当に申し訳ないです…」
ジョーイさんまで、タブンネそんなひどいことしてないよ!イヤァ!ジョ-イさん信じて、信じてよぅ!
「これ、そのおねえちゃんタブンネがつけていたバースデーリボンなんですが、すごくボロボロで…」
ママは
「かわいそう!!!!なんてひどいことを!!!!ああ…いますぐ治療してあげたい!!!」
って泣いてるの!タブンネのせいじゃないよ?!ママ…
ジョーイさんも
「こんなになるまで…。いますぐ新しいリボン、用意するわ!」
ジョーイさんの声が悲しみで震えてるのがじんじんと伝わってくる。
タブンネ、ママやジョーイさんに悪いコだと思われちゃってる。
やだよぅ…うぅ…
くすん。くすん。
涙で溺れちゃいそうなくらいボールの中でいっぱいいっぱい泣いちゃった。
ママもジョーイさんもタブンネのこと嫌いになっちゃったと思ったら胸が苦しくてなんにも考えられないよ…。
ご主人様はタブンネをボールから出してくれないまま、ポケモンセンターをでちゃったみたい。
またママたちの声が遠くなっていったの。
ご主人様がタブンネをボールからだしたとき、あたりはまっくらだったの。
泣きすぎたせいで、青くて宝石ミタイにキラキラしてる自慢のタブンネの瞳はミミロップみたく真っ赤になっちゃった…。
ご主人様は
「じゃ、がんばってハートのうろこさがしなよ。俺はキミを育てる気はないからここでお別れだよ。あ、それとこのボール気に入ってるみたいだから、返すね。」
そういって、タブンネの足元に真っ赤なプレシャスボールを転がしたの。
え!?
タブンネ、ひとりぼっちでいきてくなんてできないよ?
ご主人様が育ててくれるって…タブンネご飯をさがすのも、寝る所もないんだよ?
ひどい、そんなのないよ!いかないで!
必死になってご主人様のバッグを掴んだの。タブンネのこと捨てないで…おねがい…
タブンネの泣き顔見たら、きっと放っておけなくなるはず…そう信じて見つめたのに、ご主人様は…
「オ・マ・エ・は・ひ・つ・よ・う・な・い・ん・だ・よ!」
って言ってタブンネをおもいっきり投げ飛ばしたの!
ポテン!コロコロコロ……
ドロまみれになっちゃって、汚くて痛かったケド、今離れてしまったら…
急いで起き上がったけど、あっというまにご主人様はカイリューさんの背中にのって遠くに行っちゃった…
タブンネのバースデーリボン、赤くて金色のエンブレムがついていたのに、ドロドロになっちゃった。
風がピューピュー吹いてきて寒くなってきた。
お腹もすいちゃったし、ドロだらけになっちゃったし、ひとりぽっちで心細くっていっぱいいっぱい涙がこぼれてくるの。
歩くゲンキもなくなっちゃって、ミィミィ嗚咽をあげながら冷たい石の上でしょんぼり座っていたら、聞き覚えのある声が聞こえてきたの!
「今日は塾が終わったらママがわたしのバースデーケーキつくってくれてるんだって!」
「わぁ~い♪わ~い♪」
「それでね、ママがタブンネちゃん用にオボンの実のパイも焼いてくれてるんだよ!他にもごちそうたっくさんあるから楽しみだね!」
「タブンネすっごく楽しミィ♪うふふのふぅ~♪」
この声は…タブンネのいもうとだ!
一緒に産まれて、一緒に育って、今日、ふたり揃ってポケモンセンターを出た双子のいもうと…。
いもうとと女の子の声がどんどん近づいてきた!
そうだ!そのコにタブンネのことも連れて行ってもらおう!
きっとそのコならタブンネも一緒に大切にしてくれるかも!
よかった。タブンネもごちそうたべられるかも♪
そうおもったら、いつものタブンネスマイルが戻ったの。
ふたりの影が見えたからタブンネはサイコーのタブンネスマイルでプレシャスボールを胸の前にギュッてもって道の真ん中に出たの。
おねがい!タブンネもつれってって!このボールにタブンネを入れてつれてってって思いを込めて…。
メガネをかけた水色のワンピースを着た女の子はタブンネを見て、
「わ!タブンネだ!なんでボール持ってたってるの?」
って言って少し後ずさりしてる。
いもうとの方に目をやると、ビックリして女の子のスカートを掴んだまま後ろに隠れてる。
あ、暗がりだったからびっくりさせちゃったかな?
でもタブンネは今日イチバンのスマイルと、うるうるお目目で
[タブンネのご主人様になってくださぁい♪」
ってお願いしたの。そうしたら、タブンネの声にハッといもうとが気付いたみたい。
いもうとは女の子の前にトコトコ出てきて、
「この子はわたしのご主人様よ!おねえちゃんはおねえちゃんのご主人様がいるでしょう!」
って、ちょっと怒ってるみたいなの…。なんでそんなにこわい顔するの?
「ご主人様とはぐれちゃったの…だから、おねえちゃんも一緒にこの子と暮らしたいの!おねがい!おねえちゃんともういちど一緒に暮らそうよ?」
そうペコペコおねがいしてみたの。
女の子の方はいもうととタブンネのやりとりをみて「なんなんだろ?」っていうような困った顔をしてる。いもうとは、
「じぶんでご主人様さがしなさいよ!なんでわたしのご主人様を取るの!一緒に暮らすなんてイヤよ!この子にタブンネはひとりでいいの!」
そう怒ってタブンネの方に歩み寄って…
ビタン!ビタン!ビタン!ビタン!ビタン!
おうふくビンタをしたの…。
いたい、いたいよう…ママにもぶたれたことないのに…。
タブンネが倒れてる間に、いもうとは
「ミズホちゃん、はやく行こう!ママもまってるよ!」
って言って女の子をひっぱって歩いて行っちゃったの。
あんなにあんなに優しかったのに…おねえちゃんにビンタするようなコじゃなかったのに…
タブンネは悲しくて悲しくてまたいっぱい泣いちゃったの。
するとタブンネの鳴き声を聞いてだれか来たみたい!
タブンネが可哀想で助けにきてくれたんだ!タブンネは今度こそって足音のする方に駆け寄ってみたの。
するとそこには、さっき公園でご主人様やおねえちゃまのご主人様と一緒におしゃべりしていた、青い髪の男の子がたっていたの!
あ、きっとこのコもタブンネのこといじめるんだっ!ておもったからタブンネは逃げようとしたんだけど、暗くて足元の石ころにつまづいちゃった。
いたいよぅ…いたいようぅ…
タブンネが泣きながら立ち上がろうとしたら、男の子が手にプレシャスボールをのせて、
「ボール、落としたよ。大切なボールじゃないのかい?」
って笑顔で渡してくれたの。
このひと、もしかしたらタブンネのご主人様になってくれるかも…?
タブンネは涙をぬぐって、もう一度今日イチバンのタブンネスマイルをしながら、
「タブンネのご主人様になってくださぁい!」
っておねがいしたの。そうしたらね、ね、
「カワイイね。もしよかったら、僕のお家おいでよ。僕まだお誕生日じゃないからバースデータブンネいないんだ。」
っていってくれたの!!!
ウフフ、やっぱりママが言ってた通り、タブンネスマイルは人間の心を癒すすてきな魔法なんだ♪
新しいご主人様、タブンネのことカワイイっていってくれてすごくご機嫌だよ。
タブンネ、カワイイってことばだぁいすきよ!
はやく体きれいにして、ナデナデいっぱいしてほしいナ♪
新しいご主人様はタブンネが忘れてしまった大事な大事な「いやしのはどう」を思い出させてくれたんだよ!
タブンネのお手てから、ママとおんなじ、やさしいやさしい光がちゃんと出てる。
あったかくてフワンとした、おひさまみたいなはどう。
ご主人様は
「ぼくのおうちにはバースデータブンネはいないけど、いっぱいタブンネちゃんがいるんだよ。赤ちゃんからタブンネちゃんのママくらいのコまでたっくさん。
きっと、仲良くなれるよ。」
って教えてくれたの。なぁんだ…タブンネの他にもタブンネがいるんだ…タブンネだけをかわいがってくれるかと思ったのにナ…ガッカリ…。
でも…
「キミは他のタブンネちゃんと違ってトクベツだからね!僕のポケモン専用の
ナースさんになってくれるかな?!キミのママみたく怪我したり傷ついたポケモンを治療してあげるの!できるかな?」
っていってくれたの!タブンネはご主人様に上目遣いでタブンネスマイルしてコクンって頷いたよ。ご主人様も嬉しそう!
ママの子どもはやっぱりトクベツなんだ、うふふ。
ご主人様のお家につくとお家の隣に大きな畑があるの。ここでオボンの実を育ててるみたい。
お家の中にはいっぱいいっぱいタブンネさんがいたよ。
でもやっぱりリボンのついたトクベツなコはひとりもいなかったの。
みんなふつうのタブンネさんなんだね。
ご主人様は、
「実はナースキャップ用意してたんだ!これ、タブンネちゃんにプレゼント!」
そういってみんなの前でナースキャップをつけてくれたんだ!
鏡で見たらママそっくりなの!うれしいナ!憧れてたママみたいだよ!
他のタブンネさんが羨ましそうにタブンネをみてるケド、これは「ジョーイさんのタブンネの子ども」のタブンネだけがかぶれるんだもんね♪
ご主人様は、
「タブンネちゃんはナースさんだからトクベツにひとり部屋だよ!」
そう言って通されたお部屋はタブンネの大好きなピンクでいっぱいのやさしいお部屋。
ベビーピンクのバスケットの中にはピンクのお花模様の毛布がしかれたお姫様みたいなベッドとピンクのレースのカーテン、ピンクの絨毯。
タブンネここに来てよかったな。
最初のご主人様に逃がしてもらって、はじめは寂しかったけど、新しいご主人様に捕まえてもらえてすっごく幸せ!
最終更新:2014年08月15日 13:38