タブ肉調理実験

ここはヒウン大学の一室
私はタブンネの食肉について研究している
かつてネンブータ一族という方々はタブンネを苦しめてから食べていたという
そしてタブンネは苦しめるごとにその肉の旨みが増していくという実験結果がつい最近発表された
実際に私もその発表に呼ばれて、苦しめずに調理された肉と苦しめてから調理された肉を食べ比べてみたのだが味はかなり違っていた
苦しめなかったほうの肉はボソボソとしていて油分がなくどうにもゴムを噛んでいるような感じだった
しかし苦しめてみたらどうだろう、噛んだ瞬間肉汁がこれでもかというほど出てきて口いっぱいに旨味が広がっていくではないか
私はこのタブンネ肉の旨さの虜になってしまい、どう苦しめたらさらにうまくなるか、研究をしているのだ
煙であぶる、鞭で叩く、極限まで酸素が薄い空間に死なない程度に放置するなどしたが実験結果はまぁまぁと言ったところだった
あの肉を超えたい、いや世界一旨いタブンネビーフを食べたいと私は躍起になって研究している最中だ
そして今回はドラム缶で焼いてみようと思う
用意するのは一週間前に生まれた5匹の子タブンネ
薬品研究を主としている学部なのだがそこの教授と旧知の仲で
旨いタブンネビーフを食べさせることを約束するかわりに安く引き取ったのだ
摩り下ろしたオボンの実を食べているタブンネ、基本的に与える材料は最良のものを与えているつもりだ
絶望が希望に変わった瞬間が真の希望だと言われるように、希望が絶望に変わった瞬間もまた真の絶望だと思うからだ
さて、少し広めのドラム缶にタブンネを入れる
球に入れられてきょとんとしているが、上からのぞく私の顔を見た瞬間ミッミッとこちらに手を伸ばしてきた
どうやら疑われてないようだ、早速実験に移ろう
木材の上に着火剤を用意し、それを囲むように岩を円形に置く、そして岩の上にバランスよくドラム缶を置いた

私はペットとして飼っているゾロアに火炎放射を吐かせる
木材は瞬く間に燃え広がり、ドラム缶を熱していく
異変に気付いたタブンネはミィミィとこちらに対して助けを求めてきた
不格好なタップダンスを踊り泣きながらこちらに手を伸ばすタブンネ
しかし私は手を出さない、ずっと見ているだけだ
目に涙をためて「どうして助けてくれないの?」とでも言わんばかりだ
そのうちタブンネ達に疲労の色が見え始めた
一匹のタブンネがバランスを崩し、ドラム缶に倒れこむ
肉が焼ける音と匂い、そしてタブンネの叫び声が響き渡る
「ミビャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」と叫ぶタブンネ、立ち上がろうとしても肉がドラム缶にへばりついて離れないようだ
次第にそのタブンネは弱っていく、しかしここで気絶されたら肉のうまみが今一つなんだ
俺はタブンネ達に対して「お前らの母親が助けに来たぞ!もうちょっとだがんばれ!」と叫びかける
その言葉にタブンネの目に再び希望が戻った
後もうすぐでお母さんが助けてくれる、あともうちょっとで助ける
きっとそう思っているのだろう、もちろん母タブンネは今頃どこかの雄タブンネとよろしくやっているのだろうが
先ほどまで意識を失いそうだったタブンネも何とか持ち直したみたいで何よりだ
俺はタブンネに励ましの言葉をかける、もう少しだ、あともうちょっとだ、内容はなんでもいいんだがこうやって励まして希望を失わせないようにする
しかしそれでも生まれて半月ほどのタブンネの体力なんて高が知れている
するとあるタブンネが倒れたタブンネの背中に乗ったのだ
倒れたタブンネは再び叫び声をあげる
それを見たタブンネ達が我先にとその乗っているタブンネを退かそうと喧嘩を始めたのだ
これがなかなか稚拙な争いで面白いのだ、食肉以外にもこのようなサプライズを与えてくれるとは本当に感謝しないとな

押しつ押されつの攻防戦、しかし数にはかなわず上に乗ったタブンネは背中からドラム缶に上に倒れる
叫び声が上がるのと共にそのタブンネ二匹の上に三匹が乗ろうとする
そのうちの一匹が乗ろうとした瞬間バランスを崩しよろついた、そのタブンネは二匹の背中を掴む
そして3匹ともドラム缶に倒れこんでしまった、面白いというか哀れというか
疲弊してきたタブンネ達に俺は母タブンネを持ち上げて見せてやる
先ほどとは打って変わりミィミィと母に助けを求めるタブンネ達
しかしそれは母タブンネではなく母タブンネに化けたゾロアだったのだ
ゾロアはタブンネ達にべろべろばーをする、私のペットながら性格のいいやつだよ、本当に
タブンネ達は鳴き声のコーラスをした後放心状態になった、まぁこんなところでいいだろう
俺はドラム缶に蓋をしておいしい水を飲みながらゾロアと一緒に出来上がるのをまった

そして数分後、火が消えて蓋をあけるとそこには中まで火が通ったタブンネビーフが出来上がっていた
肉の焼けた良いにおいが鼻孔をくすぐる、唾液があふれ出てきてしまう
そしてちょうど友人がやってきた、時刻は13時
少し遅めのお昼ということでゾロアと友人と俺でタブンネをいただくことにした
毛皮を包丁で剥いで肉をいただく、内臓は残念ながら糞等があるから今回は食べないでおこう
実験は大成功だったようだ、初めに食べたやつのように旨味のあるタブンネビーフが完成したのだ
友人も俺もゾロアもタブンネに舌鼓をうつ
そして食べ終わった後は後片付けをしてデザートのオボンを食べた
友人も満足したようでなによりだ

私たちはまだまだ実験を続ける、そこにタブンネビーフがある限りもっとおいしい食べ方があると信じて!
最終更新:2014年08月27日 18:58