ホワイトフォレスト

ここは、イッシュ地方山岳部の豊かな自然に囲まれた村である
都会の喧騒から離れ、静かな休日を満喫したい人々の観光地としても好まれていた

最近の目玉は、他の地方にしか生息しないポケモンである
希少なポケモンを自然環境の中へと放し、群れを成すまで交配させるのだ
カントーやジョウト、ホウエンのサファリパークを簡略化したものだと思って頂きたい

「グレースおばあちゃん!わたし、タツベイと仲良くなったよ!」
「あらあら、よかったわねぇ」

群生するポケモンのレベルはそう高くないため、トレーナーになりたい子供にも人気があるようだ
村の観光課は、ブラックシティの役場から顧問を招き、これを利用できないかと相談した
そこで考案されたのが、子供にポケモンバトルを体験してもらうという試みだった

「ささ、怖がらないでポケモンを出してごらんなさい」
「よ~し。いけっ、タツベイ!」

少女が元気よくボールを投げ、先程捕まえたタツベイを呼び出す
細い木々で囲まれた草原の簡易フィールドには、まだ生まれてから数年も経っていない、幼いタブンネがいた

「まずは牽制するのよ。さあ、タツベイに命令しなさい」
「うーんと・・・タツベイ、頭突きよ!」

『チギッ!』
タブンネはタツベイの頭突きをモロに喰らい、地面に叩きつけられる
突然の攻撃に怯えながら、ずりずりと這って逃げようとした

「逃がしちゃ駄目よ。体力も減ったところで、追い討ちをかけて」
「タツベイ、噛み付く!」

『チヒィィィィィィ・・・・・・!』
身動きのとれないタブンネの足に、腹に、耳に、タツベイの鋭い牙が突き刺さる
やがて、小さな目をぐるん、と回すと、タブンネの血塗れの身体はぴくりとも動かなくなった

「やったー!レベルがたくさん上がったよ!」
「タブンネはたくさん経験値をくれるのよ。この調子で頑張りましょうね」
「うん!シッポウに帰ったら、タツベイを友達に自慢するんだー」

『ミィ!ミィィィィィィィ!!!!!』
楽しげに去っていく二人を、頑丈なケージに閉じ込められた成体のタブンネが見ていた
さっき狩られた幼いタブンネの親であろう
ズタズタに破れたボロ雑巾と化した幼いタブンネに向けて、何度も何度も声を呼びかけていた

タブンネという種族は、イッシュ地方の多くに群生している
その個体数から、生態系の破壊や人里の襲撃など、厄介なポケモンとして扱われていた
ブラックシティから来た顧問は、その習性を逆に利用したのである

数組のつがいをホワイトフォレストに誘き出し、隔離した檻の中で家畜として利用する
食肉加工や剥製としてのアンティークなど、使い道は様々である
繁殖力が高く、どういうわけか倒したときの経験値も豊富であるため、他のポケモンのバトルの練習相手にも、もってこいだ

子供にバトルを体験させるため、親タブンネに大量のタマゴを産ませるのである
産まれたタブンネは親の温もりを与えられることもなく、豊富な経験値のたまった金の袋として、狩られるだけの一生を終えるのだ


場所は変わって、シッポウシティ
祖母と楽しい休日を過ごした少女が、タツベイと仲良くなったときの体験を自慢していた

「タブンネってポケモン知ってる?歩いていると時々、揺れる草むらから飛びでてくるポケモンなんだけどね」
「たっくさん経験値がもらえるの。なんだか優しいポケモンよね!」
「ホワイトフォレストにも、いっぱいタブンネがいてね・・・・・・」

次の連休には、多くの観光客がホワイトフォレストを訪れるだろう

最終更新:2014年09月20日 00:32