愛誤

舞台はタブンネにより衰退し荒廃したイッシュ地方。政府はタブンネの異常な増加に頭を抱えていた。
タブンネは草木があるところならどこにでも生息し、少しでも長く栄えるために子孫を大量に残すポケモンだ。
今までは多少タブンネの数が増えても肉食ポケモンによって生態系のバランスは保たれていた。
しかし現在タブンネの数は十年前の四倍ほどにまで増加している。このまま増え続ければイッシュ地方がどうなるか誰でもわかる。
なぜ爪や牙を持たず逃げ足も遅いタブンネがここまで増えたのだろうか?答えは一つ、タブンネ愛護団体の存在である。
愛護団体は今から五年前、タブンネ虐待を根絶するために発足した団体だ。掲げるスローガンは「ノーモア、タブンネ狩り」。
発足当時はタブンネに爆弾を埋め込むなどの非道な虐待が多かったこともあり、愛護団体は政府に正当な保護団体として認められていた。
ところが最近過激な活動が目立つようになった。虐待愛好家だけではなく、経験値のためにタブンネを倒すトレーナーも攻撃するようになったのだ。
最近起こった虐待愛好会会長殺害も愛護団体の仕業である。野良タブンネに技マシンで強力な技を覚えさせ生態系を崩しているのも彼らの仕業だ。
政府が取った対策は二つ。カルト教団と化した愛護団体の排除と増えすぎたタブンネの殲滅だ。
武装した警官隊と数十人のタブンネ狩りを得意とするトレーナーを集め、作戦決行はいよいよ明日となった。

次の日の朝六時。ヒウンシティの雑居ビルにある愛護団体の本拠地に警官隊が乗り込み、団員を全員逮捕することに成功した。
ビルの中は目が痛む派手なピンクで塗られ、奥には「タブンネちゃんのお部屋」と書かれた扉が見える。
トレーナーがモンスターボールを握りドアを蹴破る。中にはブクブクと太りきったタブンネたちが好き勝手に暮らしていた。
タブンネたちはいきなり入ってきた見知らぬ人間に一瞬驚いたが、警戒心が無いのか「ごはんちょうだい」と尻を振ってミィミィ鳴き始めた。
耳に残る媚びた鳴き声を聞かされたトレーナーはもう我慢の限界である。先頭の一人が近くにいたタブンネの腹に鋭い蹴りを刺した。
「うるさいんだよ、このブタが!」
「ミグッ!」

「ムブッ!ミヒイィィ」
「やめろぉ!私たちはどうなってもいい、タブンネちゃんだけは見逃してくれ!お願いだ!」
腹を押さえてうずくまるタブンネの脇腹や背中に容赦ない蹴りが入れられる。団体の一人が涙ながらに叫ぶが蹴りは止まない。
トレーナーは細い呼吸をしている青黒くなったタブンネの首を踏み折ると、震える他のタブンネたちにボールを投げた。
ボールからアーマルドが飛び出しタブンネたちはヒィ、と叫び声を上げた。中には失禁しているものもいた。
アーマルドは手前にいたタブンネを二匹まとめて串刺しにして壁に叩きつけた。壁にめり込んだ体は鮮血を噴出し動かなくなった。
「ミヒイイイイ!!ミャアアン!!」
タブンネは蜘蛛の子を散らすように走ったが、運動をしないタブンネたちは逃げられず次々と転んで倒れていった。
他のトレーナーもポケモンを出しタブンネを殺していく。
バンギラスの撒いた砂粒がタブンネの目を塞いだ。目を擦るタブンネの背骨を尻尾の一撃で粉砕する。
ゴローニャが転んだタブンネをハードローラーで足からぶちぶちと踏み潰し1ミリ程の肉の紙に変える。
ナットレイが長い触手でタブンネを捕らえ、体に生えた長い鉄の棘に何度も何度も叩き付ける。
デスカーンが棺桶の体にタブンネを閉じ込める。扉が開くと肥満のタブンネは中身が全て抜かれミイラになっていた。
テッカニンがタブンネたちの間を音速で通り抜ける。タブンネは体に赤い線が走っていることに気付いた瞬間、輪切りのハムになり床に転がった。
シャンデラが殺されて抜け出たタブンネの魂を全て吸い込み体内で焼き尽くす。
数時間で団員は全員逮捕、タブンネは全員処分された。

愛護団体は壊滅したが、まだ外にはタブンネが大量にいる。山森でピンク色を見ない日は無い。街ではタブンネによる犯罪が未だに起こる。
そこで政府はタブンネにより職を失った人をタブンネハンターとして雇用することにした。
生態系や街の秩序を乱すタブンネを狩らせ、失業者救済とタブンネの減少を同時に成し遂げようという狙いである。
そしてその結果は大成功であった。現在タブンネの数は十年前と同じ数値に戻っている。
最近ではタブンネの体力と再生力を利用して制限時間内にタブンネを倒した数を競うスポーツが流行している。
タブンネ狩りによりイッシュ地方は再び繁栄を取り戻したのだ。

最終更新:2014年10月07日 22:40