裏の社会で有名なとある高級レストラン。
単なる料理の美味さだけでなく、客に見える位地に設置された特設の舞台で行われるショーが人気を呼んでいる。
観客が雑談していると、次第に照明が暗くなっていった。いよいよショーの時間のようだ。
舞台に照明が当てられ、そこから司会が登場する「レディース&ジェントルメン!ようこそ我がレストランへ。これより皆様お待ち兼ねのショーを始めさせて頂きます。」
観客の拍手と歓声が沸く中、舞台に設置された幕が上がっていく。そこにはタブンネが三匹居た。親二匹の子供一匹、それも生まれたてのベビンネ。どうやら
タブンネ一家のようである。
「アナタ・・・とても怖いミィ」「大丈夫だミィ!お前と赤ちゃんは僕が守ってみせるミィ!」
何故タブンネが人の言葉を喋るのかと疑問に思うだろう。知っての通り本来ポケモンは人の言葉を喋らないが、いつの間にか司会が呼び出したエーフィがその場の人間に超能力を送る形で通訳しているのだ。
「おぉーっと!皆さん。聞こえましたか!?あの雄のタブンネ。生意気にも家族を守ると言い放ちました!」
司会がそう言ったのと同時に、観客が一斉に笑いが漏れる。
「なっ!何が可笑しいミィ!今に見てろミィ!きっと後悔させてやるミィ!」
「・・・との事です。では早速後悔させてもらうとしましょうか!!」
そう言うと司会がモンスターボールを複数取り出し。一斉に解き放った。中からはリーフィア、グレイシア、シャワーズ、ブラッキー、ブースターが現れた。
その中からリーフィアが前へ出て来た。「さあ、来なよ。僕達に勝てば晴れて自由の身だよ?」
「分かってるミィ!覚悟ミィ!!」雄のタブンネがリーフィアに突っ込んで行った。
リーフィアが迎撃体勢をとる中、タブンネが距離を詰めて行く。そして渾身の力でタックルを叩き込んだ。リーフィアは直撃し、転がっていく。
リーフィアはそのまま転がって行き、舞台から落下。ピクリとも動かなくなった。
「・・・やったわ!アナタ!」「ミィヒヒヒ♪ミヤッホォォウウ!♪」
タブンネは気分が高揚し、思わず叫ぶ。
「・・・成る程、中々やりますね。」シャワーズが言った。何故かその顔は穏やかな笑みを浮かべている。
「次はお前だミィ!降参するなら今ミィよ!?」
タブンネがシャワーズへと歩み寄る。
「寝言は寝て言いなよ。」「え?」倒した筈のリーフィアの声。その声に驚いた次の瞬間、タブンネの耳が刃物のように鋭い草によって切り落とされた。
タブンネは耳があった場所を押さえて倒れこむ「ミィィィイイイ!!??そ、そんな!?さっき倒した筈ミィ!」
「クス・・・馬鹿だね、あんなのお芝居に決まってるじゃないか。英才教育を施された僕があれくらいでやられるわけ無いでしょう。
木の実を食べるだけの頭の中お花畑なアンタら豚畜生と一緒にするなっての。」
「さて、お行儀の悪い坊やには
お仕置きが必要だね」リーフィアは再びナイフ状の草を作り出す
「ミィィ・・・!何をするつも・・・ミィビャアアア!!」タブンネの台詞が終わる前にリーフィアが草の刃を振り下ろし、もう片方の耳を切断した。
「ビギャアアアア!!痛いミィイイイ!!」「アナタァアアア!!!」タブンネが絶叫する。
「さて、次はその邪魔な尻尾を切り落としてやろうかな」「ミィ!?尻尾だけはやめて下s「もう切っちゃったもんねえ♪」
またしてもタブンネが言葉を言い終わる前に切り落としたリーフィア。タブンネの意志など知った事では無いと言わんばかりだ。
「ミィ・・・ウッ・・・僕の白くてフワフワの尻尾がぁ・・・」タブンネは涙を流し、泣いている。よほど大切なものなのだろう。
その後も順調に手足を切断され、抵抗できなくなったタブンネの皮を、リーフィアは片っ端から剥いで行く。
観客はすっかり興奮し。声も出さずに目の前の舞台で展開される解体と言う名の惨劇に見入っていた。
今までピンクと黄色の皮で覆われていたタブンネは今や真っ赤に血塗られた肉塊となってしまった。
「お~い、見てないでそっちもそろそろ始めてよ」「ええ。」「はい。」「・・・フン。」「分かったよ。」
今まで見ているだけだったイーブイズ達が一斉に動き出す。シャワーズとブースターは、リーフィアの手によって達磨と化した雄のタブンネの元へ、グレイシアとブラッキーはベビンネを抱えた雌のタブンネの元へと歩み寄る。
「ミィィイイ!!」雌のタブンネがベビンネを抱えて走り出す。それもグレイシア達とは逆方向に。要は逃亡を計ったのである。
ベビンネを抱えて死に物狂いで走るタブンネだが、しばらく走っていると言い様の無い違和感を感じた。いつまでたっても舞台の端に辿り着かないのだ。
「ミィ!・・・ミィ・・・!?ど、どうして舞台の外へ出られないミィ!?」
タブンネは走り疲れてしゃがみ込む。
「黒い眼差しって奴さ。お前はもう逃げられない」背後からの声に、タブンネの背筋が凍りつく。ブラッキーがすぐ後ろに居たのだ。
「まったく・・・豚の逃亡を阻止させるのは足の速いダースにでもやらせろっての・・・」ブラッキーは実に不服そうにボヤいている。
そんなブラッキーを他所にグレイシアがゆっくりとタブンネに近付く「そう怖がらないでおいでなさいな」「ミィィィイイ・・・!来ないでミィ!」
すっかり怯えきってガクガク震えるだけのタブンネを無言で見つめつつ、グレイシアはベビンネに向けて氷の礫を撃ち込んだ。ベビンネは目を見開き、声にならない悲鳴を上げてこの世を去った。
「ミィヤァアアアアアア!!!ベイビィちゃあああん!!!」タブンネは絶叫する。悲しみの慟哭だ。
そんなタブンネの背後からブラッキーが追い討ちを入れる「ビィービィー五月蝿いんだよ!」「ア゛ガッ・・・!」タブンネは腰が砕け、その場へ倒れこんでしまう。
「・・・何でこんな事をするミィ・・・。私達が何をしたって言うんだミィ・・・」失意に満ちた雌のタブンネが感じた疑問。何故自分達がこのような理不尽な目に遭わなければならないのか。
「フン。家畜を殺すのに何の理由が要るって言うんだ?」「・・・ミィ!?」ブラッキーからの返答は実にそっけないものだった。
「タブンネは家畜なんかじゃ無いミィ!ポケモンセンターでも仕事をしてるしポケモントレーナーと共に戦う人だった居るミィ!」タブンネは思わず逆上し、怒りを露にする
そんなタブンネにグレイシアが言った。「社会的な地位もポケモンを選ぶって事よ」相応の地位に居られるのは選ばれしポケモンのみ。実に簡単な話だ。
「死ぬ前に気付けてよかったわね」グレイシアの顔には皮肉などこもっておらず、タブンネを心から祝福しているような笑みを浮かべた。
次の瞬間、グレイシアはタブンネに氷の礫を突き刺した。タブンネは体に異物が入ってくる感覚と体中が急激に冷えていく感覚を同時に味わい、そのまま意識は消えて行った。
「・・・お前達許さないミィ・・・!」「はい?」シャワーズの作り出す水によって洗浄されている雄のタブンネが言う。その声は憎しみで溢れており、青く澄んでいた目は真っ赤に充血している。
「許さないミィ!今に見てろミィ!この恨み絶対に来世で晴らして見せるミィ!」
「そうかい。楽しみに待っているよ」側にいたブースターがタブンネの剣幕に全く動じる事無く返答した。
「ああ、そうだ。最後にひとつ言っておくが、口で言うだけなら誰にもできる。問題は出来るか出来ないかさぁ!」そう言い終るや否やブースターは小柄な体からは想像もつかない馬鹿力から繰り出される蹴りを叩き込んだ。
タブンネの首は一撃で圧し折れ、口からは泡を吹いて息絶えた。
その後もブイズ達は順調に作業を進め、極上の焼き豚ンネを完成させた。
リーフィア、グレイシア、ブラッキーによるタブンネの屠殺と、シャワーズによる洗浄、最後はブースターが炎で炙ると言う連係の成せる業だ。
調理が完成し、ブイズ達が一斉に舞台の中央に集まり、観客に頭を下げた。客は総立ちでブイズへ惜しみない拍手を送る。
「皆様!いかがだったでしょうか!?これにて本日のショーをお開きとさせて頂きます」
こうして、鳴り止まない声援の中、タブンネ調理ショーは幕を閉じたのだった。
最終更新:2014年11月05日 13:24