ミィミィデスマッチ2

ザ・TABは、4本のコーナーポストにかぶせられていた布を次々と取ってゆく。
そこには先日の襲撃の際にさらわれた子タブンネが、1匹ずつくくりつけられていた。
「ベビちゃーん!」「ひどいミィ!放せミィ!」「今助けるミィ!」
親タブンネ達は悲痛な声を上げながらリングに上ろうとするが、ザ・TABが邪魔をする。
睡眠薬ででも眠らされているのか、子タブンネ達の反応はなかった。

しかしザ・TABが耳元で「ガァーッ!」と叫んで回ると、ビクンと目を覚ます。
そして縛られた自分の状況と、目の前のザ・TABに気づき、火がついたように泣き出した。
「ピィーッ!」「こわいよう!」「チィチィ!」「ママ助けてミィ!」
そんな子タブンネの1匹に近付くと、ザ・TABは太い指でその首を軽く絞めた。
「ピヒィーッ!!」
恐怖で絶叫した子タブンネは盛大にお漏らしする。親タブンネ達が怒りの声を上げた。
「やめるミィ!汚い手でベビちゃんに触るなミィ!」「卑怯者!絶対倒すミィ!」
そんなタブンネ達をザ・TABはなおも愚弄する。場内のボルテージも上がる一方だ。

「ただいまより本日のメインイベント、時間無制限1本勝負、
 1対10ハンディキャップ・子タブンネ救出・棺桶デスマッチを行います!
 青コーナー、タブンネーーー軍ーーー団ーーーー!」
リングアナがコールすると、場内から一斉にブーイングが飛んだ。
「お前らおかしいミィ!どうしてあんな極悪人の味方するミィ!?」
「タブンネちゃん達は被害者ミィ!人間なんかみんな敵だミィ!」
タブンネ達の抗議も、ブーイングの嵐にかき消された。
それもそのはず、客は全てタブ虐愛好家。タブンネが痛めつけられるところが見たいのである。

「赤コーナー、キング・オブ・タブンネキラー、ザ!TーーーAーーーーBーーーーー!!」
一方のザ・TABには大歓声と拍手が送られる。
極悪非道なクレイジーファイターの彼も、タブンネプロレスのリングでは絶対的ヒーローであった。

スタッフによって、リング内に大きな棺桶が1つ運び込まれた。
さらに、かなり小さめの棺桶が10個、リングサイドに並べられる。
「ルールをご説明いたします。この試合は1対10のハンディキャップマッチで行われ、
 タブンネチームは子タブンネを1匹でも救出するか、あるいはザ・TAB選手を
 棺桶に入れれば勝利となります。逆にザ・TAB選手はタブンネチームの
 10匹全員を棺桶に収めた場合のみ勝利となります。
 場外カウントは無し。全ての反則が認められます!」
またどっと大歓声が沸く。人数のハンデに加え、ザ・TABにはかなり不利なルールだが、
観客のほとんどは彼の勝利を疑いもしない。

「いい事聞いたミィ!ベビちゃんを1匹でも助ければこっちの勝ちだミィ!」
ルールを聞いたタブンネ達が、4組に分かれ4つのコーナーに向かった。
1匹でも救出すれば勝ちならば、真っ向から勝負するより、分散した方がはるかに有利だ。
会場からは「汚ねえぞ!」とブーイングが飛び、レフェリーが「ノー!タブンネ、ノー!」と静止する。
だがザ・TBAは余裕だ。「構わねえ、ゴング鳴らせ!」と言うと、リングから飛び降りた。

カーン!
高らかにゴングが鳴る中、ザ・TABは一番手近のコーナーに向かった。
夫婦らしき2匹はパパンネが踏み台となって、ママンネがその上にのぼろうとしていたが、
いかんせん足の短さが災いして、コーナーポストの我が子には手が届くどころではなかった。
ザ・TABはママンネの後頭部を掴むと、鉄柱に叩き付けた。
「ミギャアッ!」額を割られたママンネは、血を吹き出しながら転がり落ちる。
「よ、よくもやったミィ!」パパンネは立ち上がろうとするが、
その前にザ・TABのストンピングをくらって、「キュウ!」と地べたに潰されて平たくなった。

2組目も片付け、3組目を襲おうとした時、どのコーナーにも向かっていなかった2匹が立ちはだかった。
この夫婦は先日の襲撃で子供を全て失い、今回は純然たる復讐のためだけに参加していたのである。
それぞれパイプ椅子を振り上げ、牙を剥きながら襲ってきた。
「ベビちゃん達の仇だミィ!」「くたばるミィ!」
パイプ椅子でザ・TABを殴打するが、タブンネの腕力ではぺちん、ぺちんと叩くのが精一杯だ。
「何だそれは?椅子ってのはこう使うんだよ!」
2匹から椅子を奪い取ったザ・TABは、渾身の力でパパンネとママンネを立て続けに殴りつけた。
「ミギャーー!!」「ピギイ!!」
パイプ椅子の底が抜け、枠の部分に体がすっぽりはまった2匹はバッタリと倒れた。

倒れる2匹を尻目に3コーナー目に向かったザ・TABだが、そこには誰もいなかった。
見ると、最後のコーナーで4匹がかりで救出作業を行っているではないか。
バラバラでは無理と見て、2組の夫婦が力を合わせて1匹の子タブンネを救うことにしたらしい。
3匹が押し上げてくれたおかげで、ママンネは子タブンネに手が今にも手が届きそうだ。
「ちっ!」舌打ちしたザ・TABはすかさずリングインし、コーナーポストによじ登る。
「ミィミィ!ママァ!」「ベビちゃん!…は、放すミィ!」
再会しようとしていた親子を非情にも引き離したザ・TABはニヤリと笑った。

ザ・TABはコーナー最上段に上ると、じたばた暴れるママンネを逆さまに抱えた。
「行くぞーっ!」
観客の大歓声の中、ザ・TABはコーナーからダイブした。ダイビングツームストーンドライバーだ。
「ミギュアッ!!」
マットに叩きつけられたママンネの首は胴体にめり込んだ。ザ・TABが手を放しても微動だにしない。
「T・A・B!T・A・B!T・A・B!」
「おまええええ!」「ママー!ピェェェン!」
観客のTABコールと、パパンネ&子タブンネの悲痛な叫びが交錯する中、
ザ・TABは動かなくなったママンネを悠々と、リング下の棺桶の1つに放り込む。
「タブンネ軍団1匹脱落、残り9匹です!」リングアナのコールに場内がまたどっと沸く。

「ミギィーッ!よくも僕の奥さんをやったなミィ!」
涙を流しながらザ・TABに掴みかかろうとするパパンネを、他のタブンネが制止した。
「気持ちはわかるけど落ち着くミィ!冷静にならないとあいつの思う壷ミィ!」
「一斉に襲い掛かって、あいつを棺桶に入れれば勝ちだミィ!」
「ミグググ…」
パパンネは歯軋りしつつも、その作戦に従う。

「行くミィーッ!」
タブンネ達は叫ぶと、四方八方からわらわらとリングによじ登った。
「こらぁ!このぉ!」
ザ・TABも罵声を上げながら蹴りを入れて、タブンネ達のリングインを阻止しようとするが、
先に上ったタブンネがひしと足にしがみついて邪魔をする。
そうしている内に、9匹のタブンネは全員ザ・TABの腰から足にまとわりついた。
「ミーィ!ミーィ!」と力を合わせ、リング上の棺桶にザ・TABを押し倒そうとする。

大人と子供のような体格差とはいえ、さすがに9対1で一気に押されては不利だ。
「ノー!ノーッ!」とオーバーに両手をばたつかせ、ザ・TABはのけぞった。
もう一押しで棺桶の中に倒れこみそうだ。タブンネ達は必死に押した。
観客の悲鳴と歓声が渦巻く。まさか無敵のザ・TABがここで敗れてしまうのか?
しかしザ・TABは巧みに体を捻って、棺桶の横に倒れこんだ。
場内からは「おおーっ!」と安堵のため息と、歓声が上がる。

ザ・TABは倒れた体勢のまま、ゴロゴロと転がって場外にエスケープした。
しがみついたままのタブンネ達も一緒に落ち、下敷きになった数匹が「ムギュウ!」と悲鳴を上げる。
すかさずふりほどいて脱出したザ・TABは、リング下からビール瓶を取り出した。
鉄柱に叩きつけて割ると、1匹のタブンネを捕まえて額に突き立てる。
「ピギャアアアアア!!」
泣き喚くタブンネの額から血が噴水のように吹き出し、顔を真っ赤に染めた。
タブ虐目当ての観客は大歓声を上げる。

「や、やめるミィ!」「放すミィ!」
タブンネ達はその凶行を止めようとするが、血に興奮したザ・TABは止まらない。
さらにザクザクと、割れたビール瓶でタブンネの額を切り刻んだ。
「ピギーッ!ヒィィーッ!」
血みどろで悶絶するタブンネ、それをいたぶるザ・TAB、救おうとするタブンネ達は場外でもみ合う。

すると観客から「ああー!」「後ろ!後ろ!」と悲鳴に近い声が上がった。
ザ・TABが振り向くと、さっきのパパンネがコーナーポストによじ登っているではないか。
流血タブンネを始め、今度は8匹が囮になっての陽動作戦だったのだ。
「ちいっ!」
舌打ちしたザ・TABは流血タブンネを放り捨て、残りのタブンネ達も振り払うが、
パパンネはもう子タブンネに手が届き、くくりつけてある縄をほどこうとしている。
「パパー!」「い、今助けるミィ!これで僕達の勝ちだミィ!」

だがザ・TABの動きは早かった。リング下から今度は有刺鉄線バットを持ち出す。
そしてリングによじ登ってダッシュすると、コーナーポストに縛られた子タブンネを、
助けようとしているパパンネの手ごとバットで殴打した。
「ミギャアーッ!」「チヒィー!!」
手が血だらけになってパパンネはコーナーポストから転落した。
子タブンネの方は、頭骸骨が半ば陥没し、派手に血を吹き出している。
「そうらよっ!」ザ・TABはとどめとばかり、もう一撃を子タブンネに見舞った。
「チギャ!!」頭を完全に叩き潰された子タブンネは絶命する。

「ミヒィィィィ!!レフェリー、人質を攻撃するなんてありかミィ!酷すぎるミィ!」
「ノー!この試合は全ての反則OKだ。ファイト!」
涙で訴えるパパンネに、レフェリーはにべもなく試合続行を促す。

「ミフーッ!!ミガーッ!!」
完全に我を失い、血だらけの手を振り回しながら、やぶれかぶれでパパンネは突進する。
だがもはや完全にザ・TABのペースだ。カウンターで有刺鉄線バットで殴られ、
顔面から血を吹きながらパパンネはダウンした。

そのパパンネを腹這いに転がしたザ・TABは、馬乗りになってまたがる。
有刺鉄線バットでパパンネの額をゴシゴシこすった。
「ヒギャアアア!!」
既に流血している顔面が、額から流れる血でさらに赤く染まる。

「やめて、やめるミィ!」
他のタブンネ達がリングに上ってきて止めようとするが、有刺鉄線バットの一振りで蹴散らされた。
そしてザ・TABはバットをパパンネの喉元に当てると、ぐいっと締め上げた。
有刺鉄線バットつきキャメルクラッチである。
「ミギュゥゥー!!」
呼吸すらも困難になったパパンネはもはや虫の息だ。

ザ・TABは有刺鉄線バットを持ったまま、瀕死のパパンネを引きずり起こし、
ロープをまたいでエプロンサイドに立った。
「顔面クラッシュ行くぞーっ!」
そして大歓声の中、バットをパパンネの顔に押し当てたまま、
ブルドッキングヘッドロックの要領で場外へとダイブする。
「グギャアア!!」
顔面を破壊されたパパンネは、四肢を突っ張らせたかと思うと、ガクリとなった。
ザ・TABはさっきのママンネの隣の棺桶にパパンネを無造作に放り込む。

「タブンネ軍団2匹脱落、残り8匹です!」

「み、ミィッ!」
ザ・TABの背中を誰かが、ぺしんと弱々しくはたいた。振り向くとさっきの流血タブンネだ。
顔面を真っ赤に染めながら、せめてもの抵抗のつもりなのか、ぺちぺちと叩いている。
しかしタブンネの考えることなど、ザ・TABにとってはお見通しだ。
こいつはまたも囮役を務めるつもりなのだ。弱りきった自分に注意を引き付け、あえて攻撃させて
その隙に誰かが子タブンネを救出する腹づもりなのだろう。そんな手は二度も通用しない。

リングを振り向くと案の定、1匹のタブンネがコーナーポストによじ登りつつあった。
そして残りの7匹がミィミィ叫びながら、ザ・TABのリングインを阻止しようと群がってくる。
さっきと全く同じパターンだ。ザ・TABはその浅知恵に苦笑せざるを得なかった。
ザ・TABは手にしていた有刺鉄線バットを、渾身の力で放り投げる。
回転しながら飛んでいったバットは、我が子に手が届こうとしていたタブンネの側頭部を直撃する。
「ピギャァァ!!」「ま、ママー!」
親子の悲鳴が交差し、コーナーポストから転落したタブンネは、血を吹き出す頭を抱えてのた打ち回る。
「お、おまぇぇぇぇ!!」流血タブンネも悲痛な叫びを上げた。どうやらこいつの妻らしい。

ニヤリと笑ったザ・TABは、流血タブンネだけをリングに放り込むと、
残りのタブンネ達の首根っ子を掴み、次々と観客席に叩き込んでゆく。
「ミギャアーッ!」「うわーっ!」
悲鳴が渦巻き、タブンネが観客席の椅子の中へ転がってゆく。そしてセコンドについていたレスラー達は、
タブンネをリングに戻そう………とはしなかった。
それどころか、逆に殴る蹴るの暴行を加え始める。
「ピギャアアア!!」「せ、セコンドが手を出すのもありかミィ!?汚すぎるミィ!」

当然である。セコンドのレスラーも、タブ虐が高じてTWAに参戦した猛者ばかり。
前座の試合でそれぞれタブンネを片付けてはいるものの、それだけでは物足りず、
こうしてメインのセコンドについては、場外乱闘のドサクサで嗜虐心を満たしているのであった。

場外で蹂躙されるタブンネ達を尻目に、ザ・TABはリングインした。
流血で顔の半分を染めるママンネを、それ以上にに血まみれのパパンネが気遣っている。
ザ・TABはリング中央に置いてある自分用の棺桶の前に立ち、両手を広げて2匹を挑発した。
「どうした、かかってこいよ!俺をこの中に押し倒せばお前らの勝ちだぜ!」
パパンネとママンネは顔を見合わせた。仲間は場外で暴行を受けていて救援は望めない。
となれば、2匹がかりの一か八かの攻撃でこいつを倒す以外には手はないのだ。

覚悟を決めた2匹は立ち上がった。「ミギィーッ!!」と気合を入れる。
「パパー!ママー!頑張ってミィ!」コーナーに縛られた子タブンネの声援に勇気付けられ、
2匹は全身全霊の力を込めて捨て身タックルを見舞った。
「ふんっ!」「ミビャアアァァ!!」
だが2匹の全力の攻撃は、あっさりザ・TABの肉体にはじき返されてしまった。
今までありとあらゆるタブンネの攻撃を受けてきたザ・TABにとっては、捨て身タックルなど児戯に等しい。
それに流血で弱っていた2匹では、跳ね返された自分達がダメージを受ける有様だった。

「ミキュウウ…」リングに這いつくばる2匹を、ザ・TABは哄笑する。
「なんだ、全力でその程度か?もっと頑張らないと子供が大変なことになるぞ」
ザ・TABはさっきママンネに投げつけてリング内に転がっていた有刺鉄線バットを手に取った。
そしてコーナーの子タブンネに近付いてゆく。
「チィチィチィ!!ミィーッ!!」
顔をブルブル振って恐怖で泣き叫ぶ子タブンネの耳元で、ザ・TABは囁く。
「恨むんなら不甲斐ない両親を恨みな」
そして有刺鉄線バットを、ゴリッと子タブンネの額にこすりつけた。
「チビャァーーッ!!」子タブンネの絶叫と共に、額から血が吹き出す。

「やめてくれミィーッ!!」「ベビちゃんを苛めないでミィ!!」
パパンネとママンネは必死でザ・TABにしがみついた。
「そうこなくっちゃな!」
ザ・TABはニヤリと笑い、ママンネを蹴り倒すと、パパンネの腕を掴みロープに振った。
ポテポテと跳ね返ってくるパパンネの腹部を目掛け、有刺鉄線バットをフルスイングする。
「ミガァーッ!!」
空中一回転したパパンネは、もんどりうってリングに叩きつけられた。
ぽってりした腹が、たちまち血で染まっていく。

そしてママンネも引きずり起こしてロープに振り、今度は顔面にバットを見舞う。
「ミヒィィーッ!!」
顔面が陥没したママンネは、もはやピクピク痙攣するのみだ。
ザ・TABは瀕死の2匹をコーナーポストの下に並べた。子タブンネが拘束されているコーナーだ。
「小僧、よーく目を開いて見てろよ」
言いながらコーナーポストによじ登ったザ・TABは「行くぞーっ!」と一声叫ぶ。
「パパー!ママー!起きてミィ!」「ミ、ミィ……」「ベビ……ちゃん……」
親子3匹の声は、観客の大歓声に空しくかき消されてしまう。

ポーズを決めたザ・TABはコーナーポストから飛び降り、その両足は2匹の腹部を直撃した。
シンプルにして危険極まりない荒技・ダイビングフットスタンプだ。
体重30キロそこそこのタブンネが、100キロを超えるザ・TABの体重の直撃に耐えられるわけがない。
「ミギャアアアアア!!」
パパンネとママンネは絶叫と共に血反吐を吐き、肛門からは大腸が飛び出した。
「うわあーっ!!」
ハードコアな光景を見慣れている観客とはいえ、さすがに一部から悲鳴が上がっている。
「チビィィエエエン!!」
泣き叫ぶ子タブンネの声を尻目に、ザ・TABは2匹を場外に転がして落とし、棺桶送りにする。

「タブンネ軍団4匹脱落、残り6匹です!」

それと同時に、場外でいたぶられていたタブンネ達がリング内に放り込まれた。
頭にフォークが刺さっている者、目玉が片方飛び出してぶらぶらしている者、
火炎放射を浴びて半分黒焦げになっている者など、ひどいやられっぷりだ。
「おいおいお前ら、俺の楽しみを取るなよ」
ザ・TABは苦笑した。もう抵抗できそうな余力のある奴は皆無である以上、
そろそろフィニッシュに持っていったほうがよさそうだ。

「よっしゃ、決めるぞーっ!!」

大歓声の中、ザ・TABは半死半生のタブンネを1匹つかまえると、高々と両腕でリフトアップする。
そして狙いを定めると、場外の並べられた棺桶めがけてリフトアップスラムで投げつけた。
「いーち!!」
観客のコールが木霊する中、タブンネは宙を飛んで棺桶の中に見事に叩き込まれる。
「ミギャハァァァ!!」
衝撃で壊れた棺桶の音と、タブンネの断末魔の悲鳴が交差する中、ザ・TABは2匹目を投げ飛ばす。
「にーい!さーん!しーい!ごーお!」
観客がカウントする度に、タブンネ達は次々と棺桶にぶちこまれてゆく。

残るタブンネは1匹だけとなった。タブンネは涙を流しつつ呪詛の言葉を吐く。
「よ、よくも仲間を……お前なんか地獄に落ちるミィ!」
「地獄?上等だ、先に行って待ってろよ。向こうでもいたぶり尽くしてやるからな!」
不敵な笑いを浮かべたザ・TABはタブンネを抱え上げると、コーナーポストに上る。
そして観客にアピールしてから、超ハイアングルのリフトアップスラムで投げ捨てた。
「ミギャアアアーーッ!!」
血しぶきをあげて棺桶に叩きつけられたタブンネは、わずかに痙攣して力尽きた。

「12分42秒、12分42秒、タブンネ軍団全員棺桶送りにより、ザ・TAB選手の勝利です!」
打ち鳴らされるゴングとリングアナのコール。そして観客の大歓声が彼を讃えた。
「T・A・B!!T・A・B!!T・A・B!!T・A・B!!T・A・B!!」

そして観客の歓声も醒めやらぬ中、セコンド達がタブンネの収められた棺桶をリングに放り入れ始めた。
大半の棺桶は砕けて粉々になっているが、その破片もろとも投げ入れられたタブンネはごろごろ転がる。
「ミィィ…」わずかに呻き声を上げる者もいるが、ほとんどはピクリとも動かない。
セコンド達は、縛られていた人質子タブンネの紐もほどく。

頭を叩き潰された1匹を除いた3匹の子タブンネ達は、泣きながらよちよちと親のところへ走り寄る。
「チィチィチィ!」「パパー!ママー!」「しっかりしてミィ!」
さっき有刺鉄線バットで流血させられた子タブンネは、額の血を拭うのも忘れて両親を揺さぶるが、
顔面は血まみれで、内臓がはみ出したパパンネとママンネの返事はなかった。
「パパ…ママ…チビェェェン!」

そんな悲痛な光景をよそに、手渡されたスポーツタオルで目元の汗を拭ったザ・TABはリングインする。
マイクを手に観客に向けて叫ぶ。
「お前ら、今日も楽しんだか!?」「おおーーーっ!!」観客も大声援でそれに応えた。
「よーし、それじゃいつもの奴で締めくくるぜ!カウントダウンスタート!」

それを合図に、リングサイドの観客が退避し始めた。リングアナもカウントを数えながら避難する。
「10、9、8、7、6……」
ザ・TABもリングを降り、花道の後方へと走って下がった。
リング内のタブンネや子タブンネは放置されたままだ。もっとも子タブンネにとってはそれどころではない。
「ミ…ミィ……」「ママー!!」
流血子タブンネの必死の呼びかけで、ママンネがうっすらと目を開いた。しかし。

「5、4、3、2、1、ゼロ!!」
カウントがゼロになった瞬間、リングが大爆発した。タブンネ達は炎に飲み込まれる。
「ミビャアアアア!!」「ピギィィィ!!」「ヂィィーッ!!」

これぞTWAの恒例行事・タブンネ爆破火葬である。
メインイベントの後は、敗北したタブンネをリングごと爆破するのだ。
資金が豊富で、タブ虐のためなら労苦を厭わないタブンネ虐待愛好会ならではの派手なパフォーマンスであった。

炎上するリングを背景に、ザ・TABはマイクで叫んだ。
「俺達はこれからも突っ走るぜ!ウイ・アー・TWA!!」
「T・W・A!!T・W・A!!T・W・A!!」
観客も割れんばかりのコールで応え、場内の熱狂は最高潮に達する。

そして手を振りながら花道を引き揚げて来たザ・TABは、足元の暗闇に何かが転がっているのに気づいた。
もぞもぞと動くそれを拾い上げてみると、さっきの流血子タブンネだった。
おそらくリング爆破の際の爆風で、ここまで飛ばされてきたのだろう。
「チ、チィ…」
流血で目も見えなくなっているらしく、拾い上げた相手が怨敵のザ・TABだとも気づいていないようだ。
救いを求めるように、彼の手をきゅっと握り締めた。全身に火傷を負っており、放っておけば死ぬだろう。
「…………」
ザ・TABは黙って子タブンネをスポーツタオルでくるむと、控え室の方へ引き揚げてゆく。

最終更新:2014年12月30日 17:36