みんなで寝よう

夜のニュースを見終わり、テレビを消す。
明日も朝が早い。そろそろ寝なくてはならない。
「寒くなったなー」
最近、夜の冷え込みが厳しくなってきた。
少し前までの猛暑がどこにいってしまったのかと思うほどだ。

「「ミッミッ!」」
寝室に入り、ベッドに潜り込もうとする俺を呼ぶ子タブンネたちの鳴き声。
声の方に目をやると、6匹の子タブンネたちがケージの中から俺を見ているのがわかる。
ケージにしがみついて、何かを訴える目で俺を見てくる。
はいはい。わかってますとも。

俺がケージの方に近づいていくと、子タブンネたちが「ミィッ♪」と嬉しそうな鳴き声を上げる。
ここのところの冷え込みは、体の小さい子タブンネたちには中々にきつい。
しかし、俺といっしょにベッドで寝れば温かい。それを求めているのだ。
まあ、こっちとしても大歓迎だ。
子タブンネたちの体温の分だけベッドの中が温かくなれば俺も嬉しい。
何より、ベッドの中で安心してスヤスヤ眠る子タブンネたちの姿はとてもかわいらしい。
起きた時にそのかわいい姿を見るのが最近の楽しみにもなっている。

ケージから1匹1匹持ち上げて、ベッドの上に置いていく。
子タブンネたちの「ミィミィ♪」という嬉しそうな鳴き声が部屋にあふれる。
すでにベッドにもぐりこんでいる気の早いやつもいる。
手はかかるが、このぐらいのころが一番かわいいのかもしれない。

5匹をベッドに移し終わると、6匹目が「早く早く」という笑顔で俺を見上げている。
両手を俺に向けて抱っこを要求する姿はとてもかわいい。
その子タブンネを見て、俺の口から思わずクスリとしてしまう。

「お前はダメ。1匹で寝なさい」

驚いた顔をしている子タブンネをケージの中に置いたまま、ベッドに向かう。
「さあ、みんなで寝ようか」「「ミミィ?」」「ミィーッ!」
ベッドに運んでもらえなかった子タブンネが大きな声で鳴く。うるさいな。
ケージを両手でつかみピョンピョンと飛び跳ねながら「ミィミィ!」と不満げだ。

このままでは他の5匹が落ち着いて眠れない。
再度、ベッドから降りてケージに向かうと、子タブンネが笑顔になる。
「お前はまだ、おねしょしてるだろ。だからダメ」
さっきまでの笑顔から一転して、しょんぼりとした顔になる。
心が痛むが、ここはがまんだ。

子タブンネが諦めたのを確認し、ベッドに戻る。
ベッドの中では他の5匹が不安そうな顔で俺を見ている。
1匹だけ残された子タブンネが心配なのだろう。ほんとかわいいなぁ。
「おねしょが治ってないんだ。みんな、わかるだろう?」
そう説明すると、5匹とも納得したようにうなずく。

ケージの中、1匹で毛布にくるまる子タブンネの方に視線を向ける。
毛布ごしにもプルプルと震えているのがわかる。
やはり寒いのだろう。それに、さみしいのだろう。
タブンネは家族間の絆がとても強いという。
1匹だけで寝るのは、まだ小さな子タブンネにはきついのかもしれない。

部屋の電気を消して、心の中でそっとつぶやく。
この5匹だって、おねしょしてる間はベッドに入れてなかったんだぞ。
だからお前もがんばれ。

子タブンネたちの「スゥスゥ」という寝息を聞いていると、俺も眠くなってきた。
夜の冷え込みはこれからどんどん厳しくなる。
本格的に寒くなる前におねしょが取れればいいのだが。
暗くなっていく意識の中で、ぼんやりと考える。
早くみんなで寝れるようになるといいな。

(おしまい)
最終更新:2014年12月31日 20:06