朝8時25分。作業着に着替えた俺はタイムカードを押した。
いつも通りの何の変わり映えもない一日が始まる。
俺の勤務する会社はタブンネ肉加工工場。
タブンネを精肉として加工するのが仕事だ。
「さてと、今日は…放血ラインか」
作業場の入り口に、本日の作業内容と配員表が貼り出されている。
それなりに力作業も多いので、一部の社員にばかり重労働が偏らないよう、
ローテーションで作業内容が回る仕組みになっているのである。
俺の今日の配置は放血を行うライン。事実上、タブンネの息の根を止める工程である。
放血処理室のところに行くと、ロッカーからゴム製のエプロンを出してつける。
タブンネの返り血を浴びて作業着が汚れないようにするためだ。
「ミッミッ!」「ミーッ!ミィィーー!」
ちょうど2人の運搬係によって、檻に入れられたタブンネが10匹運ばれてきた。
後ろ手に縛られたタブンネ達は、これから自分の身に起こることを察しているらしく、
怯えたり、涙を流しながらミィミィ鳴いている。
別に同情の念など起きない。いつも通りの「仕事」がやってきただけの話だ。
「おら、出ろ」「ミィィィ!!」
まず1匹が檻から出される。こいつは縛られる時に暴れたらしく、顔に殴られた痣ができていた。
手だけでなく足も縛られているので、ぴょこんぴょこんと跳ねて移動することしかできないが、
そのタブンネはまだ往生際悪く身悶えして、逃げ出そうとしている。
運搬係の2名と一緒に、俺はそのタブンネを抱え上げた。
処理室内の壁と壁との間には、直径10センチくらいの太く頑丈な金属棒が据え付けてある。
俺達は、その金属棒に掛けられたフックに、逆さまにしたタブンネの足を縛ってある紐を引っかけた。
逆さ吊りにされたタブンネはもがくものの、紐は丈夫な素材でできているし、
フックも金属棒同様に頑丈な代物なので、体重約30キロのタブンネが多少暴れたところでびくともしない。
同じ要領で、残り9匹も逆さ吊りにした。金属棒も10匹分300キロの荷重を支えてしなりもしない。
「それじゃよろしく」
運搬係の2名は、檻の乗った台車を押して出て行った。ここからは俺1人の作業だ。
ゴム手袋をつけ、作業棚から牛刀を取り出し、鞣革で軽く磨く。
「ミィィィィ!!」
10匹の逆さ吊りタブンネが一斉に悲鳴を上げるが、俺はお構いなしに右端のタブンネに近づいた。
暴れるタブンネの頭を押さえ、頸動脈を牛刀でスパッと切断する。
「ミギャァーーーー!!」
さっとよけても、血しぶきがエプロンに少々飛んだ。こういう時のためのゴム製エプロンなのだ。
最初は派手に噴き出した血も、数秒で弱まり、あとはボタボタと垂れてゆくのみだ。
同じように残り9匹の頸動脈も次々切断してゆく。
「ミグッ!」「ピギッ!」「ミヒィー!」
逆さ吊りにされたタブンネ達の下は幅の広い排水溝になっており、血はそこから流れ出てゆく。
10匹分が同時に流れ、さしづめ血の川のようになっている。
「ミィィィ…」
後ろ手に縛られた上に逆さ吊りとあっては、首筋から流れる血にもなす術はなく、
タブンネ達は弱々しい呻き声を漏らすだけだ。
一仕事終えた俺は、部屋の一角のデスクに座り、ゴム手袋を外して作業記録をつけ始めた。
電気ショック等で即死させれば簡単なのだが、それではタブンネ肉の旨味が引き出せない。
ミィアドレナリンをできるだけ分泌させるために、あえてこのような手法を取っているのである。
人間や他のポケモンなら頸動脈を切られれば1分も保たずに死んでしまうが、
生命力に優れたタブンネは、こんな状態でも30分は生きている。
よって、血抜きを兼ねてミィアドレナリンを抽出させているわけである。
「ミ…ィ……」
5分もすれば、さすがのタブンネ達も声が出なくなってくる。
もう暴れる恐れもないので、俺はホースでコンクリートの床に水を流し、
飛び散った血が固まる前にドライ
ワイパーで洗い流した。
15分も経過すると、過半数は息絶えている。
かろうじて息のある2、3匹も「ヒュー……ヒュー……」と呼吸音が弱くなり、時間の問題だ。
とりあえず死んだ奴から、大きな傷はないか、寄生虫の痕跡はないかとチェックを済ませる。
30分が経とうとした頃、デスクの上の電話が鳴った。
「次のロット搬入します。いいですか?」「ちょっと待ってください」
電話を保留し、最後まで生きていたタブンネの瞳孔を確認する。もう死んでいた。
「OKです。搬入してください」
返事をして電話を切った俺は、逆さ吊りのタブンネ達を降ろしにかかった。
吊り下げる時は抵抗されるので3人がかりでやった方が早いが、
今やただの肉塊となっており、血が抜けた分軽くもなっているので、1人でも何とかなる。
10匹のタブンネを台車に乗せ、隣の部屋まで押してゆく。隣は解体室だ。
「お願いしまーす」「はい」
解体室の担当者達は、タブンネを台に乗せ、大型の肉切り包丁で解体してゆく。
頭と手足を切断し、毛皮も残らず剥ぎ取る。
そして赤身の肉の塊となったタブンネは冷凍室に運ばれ、出荷まで保管されるのである。
放血処理室に戻ると、次の檻が運ばれてきていた。
ミィミィ泣き叫ぶタブンネ達を同じように吊るし、同じように頸動脈を切る。
後はこの繰り返しだ。
数回分のロットを解体室に送ったところで休憩時間になった。
自販機コーナーでジュースを飲んで一息ついていると、後輩の社員がやって来た。
「休憩中すみません、スライサーの調子が悪いんで見てもらえませんか」
「ああ、いいよ」
ジュースを飲み干してスライス室に向かう。
俺もある程度のキャリアがあるから、ちょっとした機械のメンテナンスくらいならできるのだ。
スライス室には巨大なスライサーがあり、処理室同様に檻が置いてあって、
中では数匹のタブンネがやはり命乞いするかのようにミィミィ鳴いている。
聞いてみると、スライサーの回転が弱くなり、切れ味が悪くなっているという。
調べてみれば何のこともない、刃のシャフトの部分にタブンネ脂が固まっていただけであった。
熱湯をかけて脂を溶かし、洗浄ブラシで詰まっていた脂や肉を除去した。
「これでいいだろ。ちょっと動かしてみてくれ」「はい」
後輩とスライス担当者は、檻から1匹のタブンネを出した。
「ミィーッ!ミィーッ!」
こちらでは、タブンネを直接機械に投入するので、手足は拘束していない。
タブンネはその分必死で暴れるが、たかが知れている。
後輩達によって抱え上げられ、足から金属製の円筒型ドラムの中に入れられた。
「じゃ
スイッチ入れて」
スライサーの電源が入り、タブンネが入れられたドラムの足元で、
鋭い刃のカッターが高速回転し始めた
「ミ…ギャアアアアアアアアアアア!」
タブンネは足元からどんどん輪切りにされ、ドラムの下方から血の滴る薄いスライス肉となって出てくる。
「ギィアアアア……!!」
声は途中で途絶え、下方で肉を受け止めるバットがたちまち一杯になってゆく。
「オッケーです。ありがとうございました」「あいよ」
俺は手を振ってスライス室を後にした。休憩時間が終わってしまったが仕方がない。
放血処理室に戻った俺だったが、まだ次のロットの檻が来ていなかった。
その代わりに運搬係のチーフがやって来る。
「すまんな、業者のトラックが事故渋滞で遅れてるらしくて、まだ入庫してないんだ。
もうすぐ着くらしいから、悪いがそれまでもうちょっと休憩しててくれ」
「わかりました」
さっきの休憩はメンテナンスでつぶれていたから、これはラッキーだ。俺は再び一服する。
窓から外を眺めていると、10分くらいして運送業者のトラックが到着するのが見えた。
「すみません、遅くなりました」
「事故なら仕方ないよ。さあ、早く降ろしちまおう」
謝るドライバーと荷受け担当者は二言三言会話して伝票をチェックした後、荷降ろしに取り掛かる。
トラックのコンテナの扉を開き、ドライバーが運転席のボタンを押すと、
蓋代わりの鉄板がゆっくりと倒れて、地面に下りていきスロープ階段となる。
そしてコンテナの中には、ぎっしりとタブンネが詰め込まれていた。
長いこと閉じ込められていたかして、外の光を浴びてミィミィミィミィと大合唱だ。
「ほら、降りろ」
促されたタブンネ達は、スロープ階段からぞろぞろと降り始めた。
「ミッミッ?」「ミィィ!」「ミッ?」
降ろされたタブンネは、まだ自分達がどこに連れてこられたか理解していないようで、
不安気に鳴き声を上げている。
そこに運搬係達がキャスターのついた檻を運んできた。
「ミミッ!?」「ミィ、ミィーッ!!」
ようやくタブンネは状況を把握し、何匹かは逃げ出そうとするが、すぐ捕まって檻に入れられる。
10個あった檻がたちまちタブンネで一杯になった。よくあれだけ詰め込んでいたものだ。
納品したタブンネの総数を確認し、トラックは去って行った。
運搬係はそれぞれの檻を回り、タブンネをチェックして回る。
「はい、卵ありました」
1人の運搬係が声を上げた。その檻の中の1匹のタブンネが卵を抱きかかえている。
長い距離を輸送されてくるタブンネの中には、その途中で出産する者もいる。
だが正常な流通過程を経ずにイレギュラーな形で出産された卵は、食品衛生的にもよくない。
よって見つかり次第処分するのが義務付けられているのだ。
檻の外から手を伸ばし、運搬係は不安そうな顔をしている母親タブンネから、卵を素早くひったくった。
「ミィィーッ!?」
卵を返してとばかりに悲鳴を上げるタブンネの目の前で、運搬係は見せつけるかのように、
廃棄用バケツの縁で卵を叩き割った。黄味と白味がバケツの中に流れ、殻もその中に投棄される。
「ミヒィィィィィィ!!」
泣き叫ぶタブンネを尻目に、運搬係はチェック作業を続ける。
「ベビンネ発見でーす」
別の運搬係からも声が上がった。見つけられた母親タブンネは、慌ててベビンネを自分の尻尾の中に隠す。
さらに檻の中央に行って仲間に囲まれる形になった。これでは外からは手が届かない。
しかしこの程度のことはよくあるので運搬係も慣れている。
人間の背丈では少々低い檻の中に、腰をかがめて入って行った運搬係は、
その母親タブンネを守ろうと取り囲む他のタブンネ達を、次々スタンガンで気絶させていった。
「ミッ!」「ミギッ!」
壁はたちまちなくなり、バタバタ倒れたタブンネの中に、母親タブンネは立ちすくむ。
「ほら、よこせ」「ミィィィィ!!」「チィチィ…」
ベビンネはあっさりと母親タブンネから奪われてしまった。
母親タブンネを振り切って外に出た運搬係は檻の鍵を閉めた後、手に持ったベビンネの首をぐりっと捻る。
「ヂギッ!」「ミビャアアアアアアア!!」
小さな悲鳴を上げてベビンネは即死し、廃棄用バケツの中に投げ捨てられた。母親タブンネは檻の中で泣き崩れる。
チェックが終了した。今日、問題があったのはその2件だけだったようだ。
卵とベビンネを奪われて号泣する2匹を慰め、また人間を非難するかのようにタブンネ達はミィミィ大騒ぎするが、
その叫び声は無視され、10個の檻は工場の随所へと運ばれていった。
どっちにしろこの工場から生きて出られる奴は1匹もいないのだから、騒ぐだけ無駄というものだが。
俺もそろそろ持ち場に戻ることにする。
入荷されたロットをいくつかさばいている内に、昼休みのチャイムが鳴った。
牛刀からタブンネの血を拭い、同じく返り血だらけの手袋とエプロンを洗って、干し台に引っかけ、食堂に向かう。
社員食堂では配膳カウンターにいくつか列ができていた。カレー、そばなどメニューによって列が分かれている。
厨房の中では、料理のおばちゃん達に混じり、白衣を着た雑役係のタブンネが数匹働いていた。
特性が器用の者だけが選ばれているのでそれなりに手際はいいが、一様に顔色が悪く、目が死んでいる。
俺はベビカツ丼の列に並んだ。ベビカツ丼はうちの人気メニューの一つだ。
「大盛りで」「はいよー」
配膳のおばちゃんは、揚げたてのベビカツにサクサクと包丁で切れ目を入れてゆく。
隣にはパチパチと油が跳ねるフライヤーがあり、別のおばちゃんがベビカツを揚げていた。
1個を揚げ終わってトングでバットに乗せると、横の作業台に並べた卵を1個手に取った。
卵を割ると、中からは小さなベビンネが出てくる。体長15センチ弱、もちろん未熟児だ。
「チュィィ…」
強制的にこの世に誕生させられたベビンネは、わけもわからぬまま小さな産声を上げた。
おばちゃんは、そのベビンネに手早く小麦粉とパン粉をまぶす。
「チッ、ピュヒィ…」
苦しげに手足を弱々しく動かすベビンネだが、即座にフライヤーに投入される。
「チビィ…!」
か細い悲鳴はたちまち油の音にかき消され、この世に生を受けて1分でベビンネはベビカツに姿を変えた。
料理店によってはベビンネが普通に生まれた後、揚げたり活け造りにするところが多いが、
うちの社食では、卵が孵化するまでの時間を短縮する実験でいろいろ試行錯誤した結果、
正常な誕生を待たずに、未熟児状態でも十分食べられるという結論に達した。
おかげで市価よりもだいぶ安い値段で、ベビカツが食べられるというわけである。
「ミィィッ!」
突如、1匹の雑役タブンネが耳を押さえてうずくまった。もう耐えられないといった感じだ。
その頭を、おばちゃんがひっぱたいた。
「サボってると、あんたもお皿の上に乗せられることになるよ!」
その言葉にビクッとしたタブンネは、涙を流しながら作業に戻った。
それもそのはず、この厨房ではベビカツにとどまらず、カレーの肉や、ハンバーグ、サイコロステーキなど、
ほとんどの料理にタブ肉が使われている。
その上、ベビンネが料理される声まで聞かされるのでは、おかしくなりそうなのも当然だろう。
しかし、それ以外の雑役タブンネ達は特に反応することもなく、黙々と作業を続けている。
ここで働かされているうちに、抵抗すれば死、同情するのも無駄と、諦めの境地に達してしまうのだ。
さっきのうずくまったタブンネはおそらく新入りなのだろうが、
数日も働く内に、他の連中同様に死んだ目になっていくというわけである。
いずれにせよ、俺には関係のない話だ。俺は席について、近くにいた同僚と世間話をしながら箸を進める。
やはり揚げたてのベビカツは美味い。食われる側ではなく、食う側の人間に生まれた幸せを感じる。
「ミィィィィ!!」
声のする方を見ると、さっきのタブンネがまた悲鳴を上げて、おばちゃんに殴られていた。
あいつは駄目だろう。仕事に順応できなければ、さっき言われた通り「皿の上に乗せられる」だけの話だ。
お茶を飲んで食堂のテレビを見ている内に、昼休み終了の予鈴チャイムが鳴ったので腰を上げた。
半日ローテーション方式なので、午後からは別の作業場に移動になる。今日は加工ラインだ。
ペースト製造室に行くと、見慣れぬ機械が目を引いた。投入部や、パイプがガラス製になっている。
そういえば先週だかに、新しい製造機が導入されたとか言っていた。それがこれか。
運搬係が、檻を運んできた。中にタブンネが入っているのは同じだが、今度は全部子連れだ。
こいつらは親子セットで育成業者から仕入れているのだ。
ベビンネを抱いた母親タブンネ達は、怯える子供をあやしたり、解放しろとばかりに騒いだりしている。
その中の1匹を檻から引きずり出すと、俺はベビンネをむしり取った。
「ミィィーーッ!!」
母親タブンネを突き飛ばしておいて、先述の新しい製造機の投入部からベビンネを放り込む。
「チィチィ!チィチィ!」
ガラス張りのボトルの中に閉じ込められたベビンネは、ガラス壁をぺちぺち叩いて泣き声を上げている。
そこで、俺と組みになっている加工担当者がスイッチを入れた。
ボトルの中のベビンネの足元で、ガラス製の鋭利なカッターが高速回転し始める。
「チギャァーーーーッ!!」
ベビンネは足の先から細かく砕かれ、どんどん吸い込まれてゆく。
「ミヒィィーー!!」
母親タブンネは号泣して機械にすがりつこうとするが、羽交い絞めでそれを引き留めるのも俺の役目だ。
ガラスのカッターは三段階の構造になっており、その下からはペースト状と化したベビンネの肉が出てくる。
そこまでのパイプもガラス製なので、母親タブンネには我が子が挽き肉と化す様を見せつけることができる。
次に処理される母親に、ミィアドレナリンを十二分に分泌させる効果があるというわけである。
「ミ…ミィィ………ミッ!?」
へなへなと崩れ落ちそうになる母親タブンネを、俺と加工担当者は2人がかりで担ぎ上げた。
そして、その隣の機械の投入口に投げ込んでスイッチを入れる。
「ミギャアアアアア!!」
母親も砕かれてペーストになってゆく。そしてできあがったペーストを袋詰めにして、次の親子の処理にかかる。
母親はポケモンフーズに、ベビンネは赤ちゃん用のポケモンベビーフーズになるのである。
午後はずっとその投入と袋詰め作業に従事した。そしていつの間にか夕方になり、終業のベルが鳴る。
今日一日の作業が終わった。取り立てて代わり映えのしない、単調な作業ではあるが、
飯を食う為、生きていく為にはぜいたくは言えない。
タイムカードを押し、作業着から私服に着替える。
「お疲れ様でしたー」
周囲に挨拶をし、自転車置き場で自転車にまたがろうとした時、近くの草むらで何かが動いた。
「チィチィ…」
ベビンネだ。入荷の際か、それとも運搬中に逃げ出したのだろうか。もしかしたら野生かもしれない。
「チィ…チィ…」
つぶらな瞳をうるませ、助けを求めるような鳴き声を上げている。心細いのだろう。
入荷担当者に連絡しようかとも思ったが、ちょっと気が変わった。
「おいで、こっちおいで」
手招きする俺の笑顔に誘われ、ベビンネはよちよちと近づいてきた。俺はベビンネを抱き上げる。
「チィチィ♪」
母親に抱かれたようで安堵したのか、ベビンネはうれしそうな声を上げた。
そしてさらなる安心を求めるかのように、俺の胸に触角を当てて心の声を聞こうとする。
だが、その顔はみるみる真っ青になり、全身がガクガク震え出した。
それはそうだろう。
俺は心の中で「ツイてるな、一食分浮いた」と呟き、昼飯のベビカツ丼を想像したのだから。
「チィィーッ!!」
慌てて逃げ出そうとするベビンネだが、もう遅い。
俺はベビンネをバッグに放り込んで、ペダルを漕ぐ足も軽く家路につくのだった。
(終わり)
最終更新:2015年02月11日 15:36