すくわれよタブンネども1

ここは欲望の渦巻く街、ブラックシティ
この街の鉄の掟は弱肉強食、人であれ、ポケモンであれ弱いものがぬくぬくと生きていくことを許すことはない
特に弱く、醜く肥え太った豚なぞ獲物か餌以外にはなりえないのだ


ドバキズガゴギャ
「ふー、こんなもんか、スッキリした」
「あ、ありがとうございました…ミィ」
サンドバッグを務めていたタブンネがそういうとバタリと倒れてしまった

今日最後のタブンネの相手は格闘ポケモン並、いやそれ以上の強さであり、その打撃はタブンネの意識を刈るのに十分であった
しかし、だからといって気絶すればせっかく稼いだ金を全て盗まれてしまい、今以上の苦痛を味わわされてしまうことを知っている
タブンネは執念で気を失いそうになるのを堪えながらいずこかへ歩き出す
これは仕事こそ違えどこの街に住むタブンネのごく一般的な姿である


この街に住み搾取の限りを尽くされるタブンネ達のほとんどは元々近くの野山で幸せに暮らしていたものたちなのだ
しかし、タブンネ狩りに来た人間達に捕まって首輪を嵌められ、焼印を押され、心を折られ、奴隷として死ぬまで終わることのない
過酷な労働を課されている
…いや、死んで済めば幸せだろう、死んだタブンネの魂が苦しむ方法などいくらでもあり、それに直面しないことなどこの街で期待
できるものではないのだから


深夜、ブラックシティの片隅に建つ小さな祠に沢山のタブンネ達が集まっていた
一匹残らずズタボロで汚らしく、口々に祈りと怨嗟を吐き出している

「神様、タブンネ達を助けてくださいミィ」
「神様、タブンネ達はどんな悪いことをしたんですかミィ
こんな目に遭わないといけないほど悪いことをしたんですかミィ」
よく見ると先程サンドバッグを務めていたタブンネが混じっており、一際熱心に祈りと怨嗟を唱えている

タブンネに神などいない?        ・ ・・
いや、この街には間違いなくいるのだ、すくう神が


しばらく安らぎの時間を過ごし、どこぞで拾った僅かな小銭やアイテムを捧げ、祈りと怨嗟に飽きたタブンネ達は帰っていく
折れそうなタブンネ達の心を支え、神は今日もタブンネ達の奴隷奉仕の時間を引き伸ばした

この街のタブンネが許されることは決してない
苦しめ、苦しめタブンネども、神が豚どもに与えるのは救いではなく絶望なのだ
最終更新:2015年02月18日 17:05