我が儘タブンネ

「タジャ~!」
ツタージャの泣き声だ。様子を見に行くと僕に気付き抱きついてきた。
またタブンネの仕業か。
ツタージャに与えたはずのミックスオレをタブンネが飲んでいる。

「ミィ~♪ミッボ!」
豪快にゲップをしたタブンネはそのまま床でゴロゴロし始めた。

ツタージャもタブンネもうちで飼っているポケモンだが何故かタブンネだけ我が儘放題で困っている。
ツタージャの方が幼いから世話をしてくれると期待していたが逆にタブンネの方が手のかかる始末だ。

「タブンネ!ツタージャのものを盗っちゃダメだろ!」
タブンネは全く聞く耳を持たない。タブンネは優しくて耳の良いポケモンではなかったのか?

「ほらタブンネ、オムツつけないと。」
うちのタブンネは頻繁に粗相をするのでオムツが必要だ。ツタージャはちゃんとトイレが使えるのに。

「ミガッ!ミフーッ!」
タブンネは嫌がり威嚇している。
プライドだけはあるらしくオムツをするのを恥ずかしいと感じているようだ。
必死に抵抗して酷い時には噛み付いてくる。

タブンネは僕を無視してテレビに興味を移した。
丁度お昼時でステーキを特集している。
タブンネはヨダレを垂らしテレビの画面を舐め始めた。
やれやれ自分のポケモンながら情けない。そもそもテレビに映るステーキはタブ肉だが理解しているのか?
「ミギィ~!ミィ!ミィ~!」
当然だがテレビを舐めても美味しくはない。怒ったタブンネはテレビに八つ当たりしている。

「ミヒャ!ミッピャァァ~!」
突然タブンネの態度が豹変したと思ったら成る程テレビからロトムが出てきて驚いたのか。

ロトムもうちのポケモンだ。毎日タブンネを脅かして楽しんでいる。
タブンネも少しは警戒するとか学習するとかしてほしいものだ。

泣きじゃくりながら部屋中ドスドス走り回るタブンネ。
タブンネの通った所は汚れている。
オムツをしてとあれほど言っているのに。

僕はタブンネの為にもキツイかもしれないが躾をする事に決めた。

タブンネの躾をする前に今一度タブンネの悪い所を見つめ直してみた。
プライドが無駄に高く自分を特別視している。

まずこの部分を修正する事にしよう。

タブンネをダストダス専用車両に乗せ目的地に向かった。
勿論僕は普通車両だ。
ダストダスで満員になった車両の中はトラウマものだろう。
今後も悪さが過ぎたらまた乗せるとするか。

隣の車両からタブンネの悲鳴が響くが電車は目的地までノンストップだ。
やっと電車から降り解放されたタブンネは少しやつれて見えた。

さて今日はここからが本番だ。
あえてタブンネを迷子にさせて半日一匹だけで行動させる。

キョロキョロしながら僕を探すタブンネの顔は不安で青ざめている。
タブンネは媚びて人に助けを求めたが特性が悪臭のポケモンがまともに相手にされる訳がない。
女性から避けられポケモントレーナーから蔑まれ子供達から馬鹿にされカイリキーに黒い鉄球を投げつけられたりと散々だ。

タブンネは泣き出し公衆の面前で喚き始めた。
あまりの耳障りさに激怒した男の怒鳴り声にビクッと反応して、やっとおとなしくなる。

「何でみんな僕の言うことを聞いてくれないの?何で可愛い僕を虐めるの?何で僕が酷い目にあわなきゃならないの?」
タブンネの心中はこんな感じだろうか?

泣き止んだタブンネは空腹に気付く。
「ミフィ~」
タブンネは食べ物を求めて頼りない足取りで町をさ迷い始めた。

さて後を付けてみるか。

「ワニ~♪」
空腹のタブンネの視界にアイスを舐めるワニノコの姿が入った。
トレーナーから貰ったアイスを器用に手で持ち美味しそうに舐めている。

「ミィ~」
ヨダレを垂らしながら羨ましそうにワニノコを凝視しているとワニノコは不愉快に感じたのか(悪臭がするので当然だが) タブンネに水鉄砲を浴びせた。

「ミピャア!ミボ!ガババ!」
全身水浸しになったタブンネ。悪臭は幾分がマシになったが自慢の毛並みは台無しになってしまいタブンネの自尊心はより一層傷付いた。


アイスを諦めきれないタブンネの足は匂いにつられ自然と公園に向かっていた。そして運良くアイスを舐めるチラーミィを発見した。

タブンネはチラーミィの元まで一直線に向かいアイスを奪おうとした。自分より幼く弱そうだから奪えると思ったのだろう。

しかしあっさりと返り討ちにあった。
チラーミィのスイープビンタをまともに食らい頬は赤く腫れ上がってびしょ濡れの姿と相まってタブンネは一層不気味な姿に成り果てた。

せっかく悪臭はとれてもこの姿では誰も寄り付こうとしない。
何よりアイスを奪おうとする性格の悪さを露呈してしまった以上どれだけ容姿が可愛くても意味をなさない。


「ミシュン!」
体が冷えてきて歯をガチガチ鳴らすタブンネ。鼻水を垂らし顔はさらに醜く汚れている。
「ミ、ミギュゥ~」
寒さから便意を催したようだ。
日は沈み始めていた。

便意を催しブルブル震えるタブンネ。
しかし幸いにもここは公園。
すぐ近くにトイレがある。・・・が、タブンネは公園の真ん中で踏ん張り始めた。

タブンネが暴挙に出ようとする直前にデンチュラがタブンネの尻に詮を詰めた。
「ミッピャピャ!ミガギャア!」
詮を通して尻の穴に電撃を浴びてピョンピョン跳ねるタブンネの姿は滑稽で公園にいた全ての人やポケモンの笑い者になった。


脂汗を流しながら踏ん張るタブンネ。その形相はまさに鬼そのもの。歯をむき出しにして四つん這いになり唸る姿に周囲はドン引きだ。
詮を勢いよく飛ばし狂ったように排泄したタブンネはすっきりした顔でまた媚びて餌をねだり始めた。
学習してくれ、タブンネ。餌を貰える筈がないだろうに。

「ミギャ!ミブッ!ミピャイ!ミジュワ~!」
結局タブンネは公園にいたポケモン達にボコボコにされてゴミ捨て場に投げ捨てられた。

再び特性が悪臭になったタブンネは空腹のあまりゴミを漁り始めた。
フランクフルトの棒切れに残った肉(タブ肉100%)や残飯に紛れていたステーキ(タブ肉100%)の切れカスを食べるタブンネ。
皮肉にも以前テレビで特集していたステーキをタブンネは食べる事が出来たのだ。
冷えて固くなり味は悪いがタブンネにとってはご馳走だ。ゴミ捨て場で夢中でガツガツと残飯を食らうピンクの塊。
異様な光景だ。
最も汚れて最早ピンクと呼べるかは微妙だが。
そんな肉を貪るタブンネの目の前にダストダスが現れた。
最終更新:2015年02月18日 17:16