タブンネ話 「肉屋の日常」

タブンネの肉は実に様々な料理に使われている。
こちらの肉屋は生肉だけでなくベビンネを使った食品も販売している。

開店前、店主はベビンネの飼育部屋に向かう。一時的にベビンネを保管する場所だ。
「チィチィチィ!チッチィ!」
「ミィミィ!チャア!チャアッ!」
「チィア~」
沢山のベビンネが部屋で鳴いている。お腹が空いているのだろうが、ここでベビンネの短い生涯は幕を閉じることになる。
店主はベビンネを店の中に連れて行った。

ザクッ
「ミ!?ミピィィィィィ!」
「チィ!チィィ!(ズバッ)チギィ!チュイアアアア!!」
店主はベビンネの尻尾を切り落とした。ベビンネの悲鳴が上がる。その後ベビンネは小麦粉をまぶされ…
ジャアアアアア…
「ピギャアアアアアアアア!!」
「チビィィィィィィ!!ヂャアアアアアアア!!」
熱い油にそのまま放り込まれた。悲鳴をあげるベビンネだが、油の中でどうもがいても無駄というもの。あっという間に揚げベビンネの完成、屋台でも売られている定番メニューである。

「ピャアア…ピィ…」
「ミィーーーー!ミピィーーーーーー!!」
「チッ…チィィ!チヒャアアア!!」
断末魔を聞いたベビンネはガタガタ震えている。店主が構わず尻尾を切った次のベビンネをつまみ上げると、ベビンネはチュピィチュピィと泣き叫んだ。


「ンミッ!?チヒィ!チヒッ…!」
店主はベビンネのお尻から串を差し込み、タレを満遍なく塗る。ベビンネはヒクヒク痙攣しているが、炎で炙られると
「ンミピャアアアアアアア!!ビィィィィィ!ピギュアアアア!!」
絶叫しもがき始めた。だがその悲鳴も香ばしい匂いが立ちこめると共に小さくなっていき…
「チ…チヒッ……ヂ…」ガクッ
遂に力尽きた。そして両面こんがり焼かれた美味しそうな串焼きベビンネが完成した。

『チィチィチィチィ!チィィィ!チィアアア!チュピィィィィィィ!!』
残ったベビンネの鳴き声が響く。と、ここで店主は先程の串焼きベビンネをベビンネ達の前に置いた。串焼きベビンネはまさに地獄の苦しみといった表情で死んでいた。目は白く濁り、体は程良く焦げ目がついている。
『チヒィィィィィィィィィィィ!!チ…!チィ…!!』
今まで以上にガタガタ震えるベビンネ。腰を抜かし失禁しているものもいる。店主は構わず残りのベビンネを運んだ。

店主はベビンネを巨大な鍋に数匹入れ蓋をし、火にかけた。蒸しベビンネである。
「チィィィ!ヂィィィィ!!」
「ピィィ!チュピィィィィ!ミピャアアアアア!!」
ベビンネの涙の叫び、「お願い、ここから出して」とでも訴えているのだろうが、聞いてもらえる筈もない。店主は残りのベビンネを調理し始めた。

「チィィィ!チィ!チィチィ!チィィィィィ!」
「チヒィィィィン!チヒィィィィィン!」
鍋の温度が上がり、ベビンネの声に懇願だけでなく焦りも混じってくる。
「ピィィ!チピィィィィ!ヂィィィィィィィィ!!」
「ンピュィィィィィ!ピャアアアアアアン!!」
とてつもない暑さにいよいよベビンネの悲鳴ラッシュ、しかし温度は上がり続け、「熱い」レベルになると
「ヂュィアアアア!!ヂビィィィィィ!!」
「ピギュィィィィ!!チギュアアアアアア!!ンミ゙ュィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!」
まさに灼熱地獄、ベビンネは苦しみのコーラスを奏で、立派な蒸しベビンネとなった。白く濁った目と絶望の表情、そして食欲をそそる匂いが素晴らしい。

ところで、この店の調理場のケージの中に二匹のベビンネがいた。しっかり餌やトイレ、寝床などの世話はされているようだ…が、
「チ…チヒ…チィィ…」
「ピ…フィ…」
先程からの「惨劇」を何日も見てきたからか、目は虚ろで涙を流し、既に精神状態もボロボロのようだ。
店主によると、これは趣味半分でベビンネに仲間が料理される様子を見せ続け、最終的に味の検証も兼ねて自分の食事にするとのこと。
職業上タブンネが手に入りやすい人の中にはこの手の人も多い。タブ肉を取り扱う店としてはマスコットにもなる。
この二匹は今日食べるそうなので、後日新しいベビンネの様子を見させて頂くことになった。




それでは新しい二匹の「実験」ベビンネに密着するとしよう。

虐待一日目、実験ベビンネは他のベビンネとは別に、地下室で首輪で繋がれた成体の♀タブンネの母乳を飲んでいた。
「チィ!チィィーーチィィーーー!」
「チッチッ!チィ!」
「ミィ!ミッミッ!」
だがこのタブンネ、どうもやつれているように見えるが…。
「食材ベビンネの入荷先の友人からタマゴ生産用タブンネを安く買ったんです。今回はせっかくなのでこちらも新しい個体に替えました。今までずっとタマゴを産まされ、奪われ続けてきたのでしょう。」
成る程、確かにタブンネは自分の子ではないが懐くベビンネに嬉しそうな表情を浮かべている。
「因みにベビンネを傷つけるなど問題を起こした場合は暴行の後に手足の切断を行います。」

「ミッミッ!ミィ~♪」
「チャア!チィ~♪」
「チュア…チィ~チィィ♪」
すっかり仲良しの三匹、だがここで店主がベビンネを店内に連れて行く。
「チィィ!チィィィ!!」
「ミュピィーー!!」
「ミィィ!ミィ!ミィィーーー!」
タブンネが叫ぶ。だが繋がれていて何もできない。
「ミ…ウミィ…ミ…ミアアアアン……」
とうとう泣き出したタブンネ。タマゴを奪われ続けていた日々を思い出したのだろう。まあ心配しなくても二匹はちゃんと帰ってくるのだが。

一方実験用の二匹のベビンネは店内のケージに入れられてすぐはタブンネから引き離されたことでピィピィ鳴いていたが、快適で安全な空間だと分かるとある程度落ち着いたようだ。
『チィチィ!チィチィチィ!』
ここで店主が仕入れた食材ベビンネを運んできた。仲間が増えて嬉しいのか、ベビンネ達は笑いあう。店主が実験ベビンネに水を与えると、食材ベビンネがチィチィ鳴いた。僕達もお水が欲しいよ、お腹が減ったよ、といったところだろう。だが店主は何も与えない。
『チィィィ!チィィィ!』
食材ベビンネが騒ぐ。まあ当然だろう。ここで店主が食材ベビンネの尻尾を切る作業に移った。
ザクッ
「ヂビィィィィィ!!」
尻尾を切られた食材ベビンネの悲鳴が上がる。
「チッ!?チィィ!チィィィ!!」
「チィィィ!チギィィィィ!!」
実験ベビンネが威嚇するような声を上げた。二匹共なかなか元気なようだ。店主が尻尾を切られたベビンネとその尻尾をケージの前に置くと、
「ミィ…ミピィィ…」
「チィ!ピィピィ」
「チィィ!チュピチュピィ」
痛みと尻尾をなくしたショックに泣くベビンネを慰めた。まだまだ余裕がありそうだ。店主はいつものように泣き喚く食材ベビンネを油に放り込み、火で炙った。


ジャアアアア…
「ヂュビギャアアアアアアアアアアアアア!!!」
パチパチパチ…
「ヂィアアアア゙ア゙ア゙ア゙!!ピギュィィィィ!!」
相変わらずの凄まじい悲鳴、さてこの光景を眼前で見た実験ベビンネは…
「チィィィィィ!チィィィィィィ!!」ペシペシ
「チヒッ…チ…ピャアア……」ガクガク
おや、一匹はケージを叩いて叫んだが、もう一匹は腰を抜かして震えている。では区別するために前者をA、後者をBとしよう。

二匹の前に美味しそうな揚げベビンネと串焼きベビンネが置かれた。
「チ…チィィ…チアアア…」
「ミピィッ!!フィ…フィァァ…」
Aは変わり果てた仲間の姿を見つめ涙を流した。一方Bは失禁し、気絶寸前だ。店主が揚げベビンネを切り分け、ケージにバラまくと
「チィィィィ!ミッヒャアアアア!!」バタバタ
「ア……アア………」ガクッ
Aは半狂乱になって暴れ、Bは…完全に気絶したようだ。だが本番はこれから。二匹に熱湯を掛けて起こすと、Aはピギィィィと叫び、Bはフィアア…と怯えた。

その後も料理は続いた。
「ピッギィィィ!!ヂュバビャア゙ア゙ア゙!!」ビタンビタン!
「ヂ…ヂィ゙ィ゙ィ゙……」ガタガタ
蒸しベビンネの悲鳴ラッシュの時の二匹の様子だ。AB共に目を見開き涙を流し、Aは耳を押さえてジタバタ転がり叫び、Bはまたしても失禁し仰向けでガタガタ震えっぱなしであった。

二匹にとっての地獄のような時間が終わり、店が開店した。バラバラに、薄切りにされたタブンネの身体。少し前まで元気に鳴いていたベビンネの身体。それらが、人間がやって来る度に持っていかれてしまうのだ。
「おはようございますっと。」
「いらっしゃい、早いね。」
「今日ベビンネちゃん新調でしょ?なら一番乗りしたいッスよ。おっ、今度のも可愛いねえ~震えちゃって。」
早速やって来たこの客の男、どうやら似た趣向の人物のようだ。
『フィ…チィ!チィ!チィィ!ピィィ!ピィィィ…!』
二匹は助けを求めて揃って必死に鳴く。男はそれを見て満足そうな笑顔を浮かべると品物を注文した。
『チッチッ!チィチィ!』
「タブロース200gと揚げベビンネ一つ…と。毎度あり。」
『チィ!?チィーー!チィーーー!』
「ありがとさん。…さて、ベビンネちゃーん、君達の仲間は俺が美味しく食べてあげるからね~。それじゃ。」
『チィッ!チィィ!チィィ!』
「ありがとうございました。」
『チィーーーー!チピィーーーー!チピャアーーーーー!!』

『チ…チィィ……』
二匹は仲間の遺体を持っていかれて沈んだ表情だが、そこへ二人目の客がやって来た。
「いらっしゃいませ。」
「チィッ!チヒィィィン!ミュピャアアアア!」
「ピャッ…!ミャアアアン…ヒャアアア…。」


再び二匹の反応に差が出始めた。Aは二人目の客に懇願するような声を上げたが、Bは客に恐怖を感じているようで尻餅をついて震えた声を上げている。客が蒸しベビンネを買って出て行こうとすると
「チヒィィィン!チィィィン!」
「ピヒッ…チィィ…」
お願い!連れて行かないで!と言いたそうなAの声が聞こえてくる。Bは完全に怖じ気づいたか。
次は三人目。この客はタブ肉もベビンネも買わなかった。必死に鳴き声を上げる二匹だが、当然助けてはくれない。
「ピフィ…!ミィィィ…!」
「チ…チィィ…」
四人目。鶏肉に蒸しベビンネ一つ。
「チィィッ…チピャアア…」
「チィ…」
五人目。タブバラ肉に揚げベビンネ一つ、串焼きベビンネ二本、蒸しベビンネ一つ。
「ヂ…ヂィ゙ィ゙…」
「ピ…ピヒッ……」
Aはケージの壁に張り付いて目から涙を流し呻いている。Bは後ろの壁に背中から寄りかかり、目を見開き口から舌をだらんと出してヒクヒクしている。二匹共限界のようで、この後はこの状態のまま殆ど反応しなくなってしまった。

死んだように動かない二匹。しかし空腹が二匹を現実に戻す。店主は自分の食事の前に二匹を乳母タブンネのいる地下室に連れて行った。


そういえば乳母タブンネはどうしていたのか。…おや、地下室に数匹のポケモンが。
「ミ…ミビィィ…ビピィ…」
乳母ンネはボロボロだ。まあタマゴ生産用なら長持ちする再生力だろうし大丈夫だろう。
「近所の友人のポケモンとウチのポケモンを遊ばせてます。生産工場のタブンネは反抗心なんてとっくの昔に粉々ですし、最高のサンド…玩具になりますよ。」
成る程、乳母ンネは他のポケモン達の玩具にされていたのだ…恐らく店主も時々使うのだろう。ポケモン達は躾られているのか、乳母ンネに致命傷は与えていない。店主がポケモン達をボールに戻しベビンネを放り出すと、三匹は泣きながら身を寄せ合った。
「ミィィィ!ミィィンミィィン~!」
「チィィ!チャアチャア!チィィィン!」
「チヒィ…チヒィィィン…」

店主が焼いたタブ肉を与えると、乳母ンネは泣きながら食べ(同族の肉と知っているらしい)、ベビンネに母乳を与えた。
「以前目の前で串焼きベビンネを作った時は最高に楽しかったですね。」

「ミィ…ミッミィ!ミィィ~♪」
「チィィィ!チピィッ!ミャアッ!」
「チュア~♪チッチッ!」
三匹にとっては僅かな心休まる時間、だがそれもすぐに終わりを迎えた。再び店主がやって来たのだ。

「ミビィィィィィ!ミビャアアアアアアア!!」ガチャンガチャン!
「ビィィィィィィ!ピギィィィィィィィ!!」
「ピャ…ビャアアアアアアアアアア!!」
「よーしお前達、ここでまた好きに遊んでていいぞ。くれぐれもあのタブンネは死なせないようにな。」
店主がまたポケモンを出すと、その内の一匹が乳母ンネを組み敷いて無理矢理交尾を始めた。それもかなり乱暴にだ。
「ミギャアアアアアアアア!ミビュギャアアアアアアアア!!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!ギィィィィィィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!!」
「時々友人にも頼まれますよ、発散させてやってくれって。タマゴ生産用タブンネは病気も無いですし…しかし地下室は防音とはいえ、凄い悲鳴ですねえ。」
「ヂギィビャアアアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
「チヒィィィ!ピィィィィピャアアアアアア!!」
二匹のベビンネもまた叫ぶ気力が戻ったようだ。この後追加の残りの食材ベビンネの悲鳴に晒され、再び楽しい職場見学の時間となる。

ジャアアアア…(揚げベビンネ)
『ヂギャアアアアガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ビギュギィィィィィィ!!!!』
「ヂィィィィィ゙ィ゙イ゙イ゙イ゙!!」
「ビィィィィィィィ!」

パチパチパチ…(串焼きベビンネ)
『ヴミィィィイイイ!ミ゙ビィィィイイイイ゙イ゙イ゙イ゙!!!』
「ビッギャアアアアアア!!ギャアア!ギャアア!!」
「ピギィィ………チィアアギィィアアア…」

(蒸しベビンネ)
『ピギィィ!チギュィィ!!グギィィィィィィィ!ビュィィィェェアアアアア!!』
「ピッギィ…!ミグギュィィイイ!!ヂギギャギュギィ゙ィ゙ィ゙!!」
「ビギィ……ピヒッ…ピヒヒヒィ…」

Bがとうとう笑い出した。タブンネは感情に極端に敏感なポケモン。感情表現もずば抜けて豊かだ。仲間達の苦痛や絶望の感情で心がパンクしてしまったのだろう。
この後二匹は夜までこの世の不幸を全て背負ったような表情をしていた。本気でこれで死んでしまうのではないかと思う程弱っている。

夜になってまた三匹の再会の時が来た。乳母ンネはあの後は放って置かれたようだが
「ギィ……ミギィィィ………」
うつ伏せに倒れたまま枯れた声で鳴いていた。肉体の方はともかく、精神はズタボロのようだ。
「惨めな日々が蘇っているのが大きいでしょうね。タマゴを身ごもるともっと面白いですよ。産卵そのものに恐怖を抱いていますからね。」
タブンネの場合はタマゴ生産用でも子を奪われる悲しみを植え付けられ、交尾や産卵そのものが苦痛となり、タマゴを自分で孵すことは絶対にできない…それが延々と続くとはまさに生き地獄。そしてその地獄の日々の記憶が今、乳母ンネの頭に蘇っているのだ。
「ミギィィ…ミギュウ……ウビィ……」

三匹が再会したが、乳母ンネがミ…と鳴いたきりで、ベビンネは鳴きさえしない。食事と授乳はしたものの、その後はすぐに寄り添って泣きながら眠ってしまった。お互いの温もりだけが安らぎなのだろう。


翌朝、部屋の隅で固まっていた三匹。そこへ店主がやってきた。
「ミッ…ミビッ…ミアア……」
「チギャア!チギャア!」
「ピヒィ…!ピィィィィ!」
怯える三匹だったが、餌が渡されると幾分落ち着いたようだ。乳母ンネが二匹に授乳を行ったものの、ベビンネは食欲があまり無い。そしてまたまたお別れの時間となった。
「ビギィィィィィイイイイイイ!!ミバアアアアアアアアア!!」
「チュビャアア!ピィィィ!」
「ピギィ…!フィィ…!」
今日もベビンネは仲間の断末魔に晒され、乳母ンネは玩具や交尾の相手にされる。悲鳴も懇願も聞き入れられることはない。

これが数日続くと反応や行動が変わってくる。ベビンネは常に白目で涙を流し半分気絶状態だ。店主が気まぐれで中途半端に揚げられて生きているベビンネをケージに放り込むと
『ピグギャアアアアグビィィイイヂギュィイイアアア゙アア゙ア゙!!!』
と二匹で最高の悲鳴を聞かせてくれた。半焦げや半蒸しのベビンネも入れてケージを埋め尽くすと二匹共泡を吹いて痙攣してしまった。
『ヴピィ…ビグヴ……』
死に際のベビンネの呻き声も素晴らしい。
こうしてベビンネ達の地獄は続いた。


四日が経った。途中から実験ベビンネは食材ベビンネから目を背けるようになっていたが、店主が無理矢理顔を向けさせると即気絶した。これは自己防衛か。
「ピギィィィィィィィ!!」
「ヂギィ…ギグウ…!」
突然奇声を上げて手足をばたつかせることも多くなった。他にも自分の触覚を噛んだり(まだ千切ることはできない)、壁に頭を打ちつけたりと奇妙な行動をとるようになった。
「本能的・無意識的に痛みを感じたり苦痛の声を上げることで生を実感しているのではないかと考えています。」
つまり、ミィアドレナリンの分泌が…
「ええ、凄まじいでしょうね。…そろそろ、ですかね。」

夕方、店主が二匹を地下室へ連れて行った。食べるので授乳は禁止だが、最後の再会だそうだ。
「ミィィ!ミ゙ィィィィ!!」
すがりつくような乳母ンネの声、だが…
「ヂギィヴミビピィーーーーー!!!ミ゙ュィ゙ィ゙ギギュィィーーーーー!!!!」
「ギャフィ!ピヒャィィ!ピギッ…!ビィィ……!」
ベビンネ達は安らぎの時間ですら悶絶している。完全にイカレたようだ。
「ミ…ミィッ…ミグッ…ミィィィィン……ビアアアアアア!!ウビャアアアアア!!グビィィイイグギィィ!!ギビィィ!!ミ゙バアアアアアアアア!!!」

遂に乳母ンネが大号泣してしまった。タブンネは普通のポケモンより感情表現が大きい。だからこそ虐待趣味の人間が多いのだ。
乳母ンネにしっかりショックを与えて最後の対面は終了である。
「ミ゙ィィィィィィィィィィ!!ビャアアアアアアアア!!ミ゙ビィィィィィィィィデュィィィアアアアアアアアア!!!」
乳母ンネが絶望の叫び声を上げた。まあ、またすぐに新しい赤ちゃんがやってくるだろう。君にはまだまだ生きる価値がある。

「やはりオーソドックスに串焼きベビンネですね。苦しむ顔もよく見えますし。」
言いながら店主は二匹にタレを塗る。
「ミパア!ヂィィィ!!ヂィィィ!!ヂビィィィィィ!!ヂュビィィィィィ!!」
「ミュピッ…!ヂヒィィィィィ!ピフィャアアアア!!」
続いて串をお尻から刺し、網の上に串を掛けた。
「ン゙ミィィ!フィギッ…フィッ…!ビィィィ!ビヒィィィィ!!」
「ギュヒッ!ミ゙グッ…ヂビィビヒャッ…フィィィイッ…!」
もう自分がどうなるのか嫌と言うほど分かっているのだろう、ヒクつきながらも二匹は必死に鳴く。他の食材ベビンネ以上の必死さだ。そして二匹が網の上に置かれた。
「一緒に死なせてやりましょう。」
そして火がついた。

「ビィィィ!ンビィィィ!」
「ピヒャア!ピャアアア!」

「ビィッ!ンビィィィィ!ビィィィィ!!」
「チヒィ!チヒィ!チヒィ!チィィィ!!」

「ヂィィィィィィ!!ヂュビィィィィィィィィ!!」
「ピッビャアアアアア!!チギュピィィィィィィ!!」

「ビッギィィィィィアアアアアアアアアビャビュィィィィイイイイイイイイイ!!!」
「ヂィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!!」

「ビャハッ!ビギィィッ!グピィィィィィィ!ビギュウ…!」
「ピガアアア!ギギッギッ…ヂュビビヒィィ…!」

「ビグウ…ミ゙…イ゙…イ゙ギィ……ギ……」
「ビ…ビアア……ヂギュウ……ヴビィィィ゙ィ゙…ン…」
おや…

「ヂ…ア゙ア゙……ン゙ギ……」
「ヂ…ヂィィン……ヂャアア……ヴミ゙ィ……」
Bが白く濁った目から苦痛と絶望の涙を流していた。…だがそれも人間には関係のないことだ。

「………」
「…ヂ…」
Bは最後に先に動かなくなったAの方を見て息絶えた。更にこんがり焼くと極上の串焼きベビンネの完成だ。
一口頂くと口の中に最高の旨味が広がった。これは凄い。手間が掛かっているだけのことはある。つくづくタブンネは最高の食材だと感じた。
おや、店主は一部始終をビデオカメラで撮影していたようだ。
「勿論、乳母ンネが死ぬ前に見せてあげるに決まっているでしょう。これから世話をさせる全員分ね。」
乳母ンネもまた、随分と絶望して死ぬのだろう。

後日、再び店を訪ねた。あの乳母ンネがタマゴを身ごもったらしい。

「ビアアアアアン…ンミィィィィィ…ビィィィィィン……」
乳母ンネは余程タマゴを産みたくないのか涙を流して嘆いているが、既に身体を固定されていて全く抵抗できない。
「何回見ても妊娠期間は短いですが良いですね。こうなると声が枯れても泣き続けますよ。タマゴはちゃんと孵させてあげるつもりなんですがねえ…まあ、生まれた後は「実験台」ですが。それでも我が子を見られるだけ、他のタマゴ生産タブンネよりかは幸せでしょう。」
まあ最後に地獄の映画鑑賞が待っているが。
そんな乳母ンネの運命など露知らず、新しい実験ベビンネが乳母ンネのお腹の上で元気に母乳を飲んでいた。無邪気に戯れてくる二匹に、なんとか手を伸ばして弱々しく撫でることしかできない乳母ンネであった。

「チィッ!チピャア!チャッチャッ!」
「ピィ!ピィ!チピィ!ミピュイ!」
「ミッ…ミヒィ…………………ミィ…ミィィィィィ……グズッ…ヴミ゙ィィィ……」

END
最終更新:2015年02月18日 17:53