うちではタブンネを飼っている。
こいつは家事の手伝いをしたがるのだが、いかんせん不器用だ。
皿は割るわ、洗濯物は汚すわ、部屋はちらかすわではっきり言って迷惑だ。
そのうえ、反省した様子もなく、毎回、同じ失敗を繰り返す。
ある日、食事の準備中に、タブンネに皿を運ばせていると、やはり皿を割ってしまった。
食事を作っている俺の所に「ミィ♪」と笑顔で皿が割れたことを報告してきた。
反省するどころか悪びれた様子もなかったのでさすがにカチンときた。
普段なら「こら!」と叱るだけなのだが、今日は頭を思いっきり叩いてみた。
涙目になって俺を見上げてくる。初めての体罰に戸惑っているようだ。
「片付けろ」
そう命令し、食事を作るのを再開した。
片付けろと言ったがそこまで難しい作業ではない。
大きい破片を集めて新聞紙にくるみ、小さな破片をコロコロでとるだけの簡単な作業だ。
そこら辺の小学生でも簡単に……
ミィー! ドコーン!!
今度はなにやらかしたんだ……
食事を作るのを中断し、様子を見に行ってみた。
足の裏をなめようとしているタブンネと、きれいにひっくり返った本棚があった。
おそらく、細かい破片を踏んで飛び上がり、本棚に激突したんだろう。
無駄にパワーだけはあるな、こいつ。
とにかくこのままじゃ飯は食えない。片付けないとな。
「もう何もしなくていいから、あっち行ってろ……」
本棚を起こし、散らばっていた本を戻す。
ほとんどそのままになっていた割れた皿を片付け、食事を作りにキッチンにもどる。
そういえばあいつどこ行ったんだ?
ミィ~♪ もぐもぐ。
……もぐもぐ?
いったいどうやって登ったのか。タブンネが調理台の上にいた。
しかも、あとは盛り付けるだけだった唐揚げをうまそうに頬張っている。
それは俺の晩御飯だぞ。
唐揚げを頬張るタブンネの頭を引っぱたく。
食事を中断されたことに腹を立てたのか「ミフー!」と威嚇してくる。
どうやら、食い物の恨みの恐ろしさを教えてやる必要があるようだ。
シンクの中に置いておいた包丁を右手に持ち、左手でタブンネの体を押さえつける。
抵抗しようとしたので、目の前に包丁を突き付けておとなしくさせる。
「手伝いはできない。つまみ食いはする。最悪だなお前は」
不満そうな様子のタブンネの体から手を離し、人の気持ちがわかる触覚をつかむ。
「1番。お手伝いのできない腕を切り落とす。
2番。つまみ食いする悪い舌を切り落とす。
3番。とりあえず頭をたたかれておく。さあ、好きなのを選べ」
触覚を伝わってくる俺の怒りが本気だとわかったのだろう。
「ミミィ……」とタブンネはおとなしく頭を差し出す。
「みみぃ……。そうか耳だな。わかった」
「ミィ?」
準備が終わり、ようやく食事にありつける。
タブンネにはさっきつまみ食いした唐揚げを食わせる。
ちなみに、俺はいい肉が手に入ったのでそれを食うことにした。
コリコリしててなかなか美味い。
タブンネの耳が短くなってる気がするのは気のせいだろう。
あれからタブンネはお手伝いをしようとしなくなった。
あれだけ怒られたのだ。当然だろう。
俺が食事の用意をしている今もテレビに夢中になっている。
しかし、俺はこいつのお母さんでも家政婦でもないわけで。
手伝いをする様子すらみせないなら
お仕置きしないといけない。
働かざる者食うべからずだ。
テレビに夢中なタブンネを押さえつける。
「手伝いもせずテレビを見るとはいい度胸だ。これはお仕置きだな。」
尻尾をつかみ思いっきり引っ張る。
「尻尾を引っこ抜かれるか、頭たたかれるか、好きな方を選べ」
涙目になりながら俺の方に頭を向ける。
「ミミィ……」
…ミッ?
ミィッ!?
ミィヤァ――――ッ!
(おわり)
最終更新:2015年02月18日 19:56