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妹との約束のため、喫茶店で待つ真希。
喫茶店の中央には大きな水槽があり、色鮮やかな魚たちが泳いでいる。
真希は水族館で働いおり海の生物が好きで、水槽のあるこの喫茶店は大のお気に入りで待ち合わせの時はよく利用していた。
昨日は水族館でトラブルがあり、仕事が終わったのは明け方近く、家で仮眠を取ってきたが眠い。
気を抜くと眠ってしまいそうだった。

ふと、窓の外に見える浜辺に目をやると、若い男がロープで黒い物体を引っ張っているのが見えた。
何気なく見ていたが、その物体は自力で動いている。
ウミガメ そう分かった瞬間、真希は喫茶店を飛び出し走り出していた。
走りにくい浜辺を全力で走り、男に近づく。
ロープに繋がれているのはやはりウミガメ。
可哀想なウミガメを見て、喰ってかかろうとした男は真希の知っている人物だった。
男は昔、真希が片思いしていた高校の先輩、拓海だった。
拓海の方も真希に気づいた。
なんともいえない空気が2人を包む。
しかし、真希からウミガメの虐待を切り出した。
拓海は真希の言葉を遮らずにじっと聞いていたが、話が一段落すると、なにか言いにくそうな素振りを見せながら、小さな声で「同意の下でやっている」と。
波の音に消されてよく聞こえないと聞き直す真希に「ついてきて」と言って、ウミガメを抱きかかえて、駐車場に停めてある彼の車へと向かって歩き出した。

ワンボックスカーを開け大きなプラスチックケースを取り出し、そこへウミガメを入れ車に積み込む。
拓海に促され真希も車の助手席へ。
車の中から3月で冬の色をした海を眺めながら、拓海が話し始める。
今、後ろの座席の間にプラスチックケースに入れられているのは本物のウミガメではないと。
それを聞いて真希は拓海の説明を遮り、「造りものなら何故動いていたの」と質問をする。
少しムッとしながら、拓海が続ける。
「だから、ウミガメの中には人が入っていて、彼女もウミガメの中に閉じ込められることを同意してる」と。
ビックリして振り返りウミガメを覗き込んでいる真希にお構いなしに車は走りだす。
ウミガメの大きさからはとても人が入れそうには見えない。
拓海は車を走らせながら、「工具がないと彼女をウミガメから出せないから」と話しているうちに、海辺の一戸建てへと車は入っていく。

車を降りると拓海はプラスチックケースを家の玄関へと運び入れる。
そしてウミガメのいくつ決まった箇所の甲羅をマイナスドライバーでこじ開けていく。
甲羅の下からはボルトが現れる。
ボルトを外すと、人間でいうと背中の部分の甲羅がはずされた。
カメのシワのある身の部分が現れたが、ファスナーなどは見当たらない。
カメからは背中の甲羅を固定するためのステンレスの棒が違和感いっぱいに突き出ている。
真希はなにも話しかけず黙って拓海の作業を見守る。
次にカメはなんの抵抗もせず、されるがまま仰向けにされる。
そして拓海は腹の部分の甲羅を左右に揺すりながら引っ張りステンレスの棒を抜いていく。
甲羅を外されたカメの姿は真希の目には奇妙な生物に映った。
その奇妙な生物の腹の部分は縦に大きな切れ目があった。
切れ目はマジックテープになっていて、その下にあるファスナーを隠していた。
拓海はバリバリと音をたてながらマジックテープを外し、中のファスナーを開けた。

拓海の言葉やウミガメの大きさから、中に入れられているのは女性であることはわかっていた。
真希はウミガメの中にどんな人が入っているのかよりも、もし自分がウミガメの中に閉じ込められたらどんなに拘束感がすごく呼吸もままならず、そんな自分のすべてを拓海に握られているそんな状態を想像して、アソコが熱くなり少し湿ってきていることに我にかえった。

拓海は甲羅を外したカメの腹の辺りに開けたファスナーのところからカメの中に手を突っ込み中に入っていた女性を引っ張りだす。
どんな人が出てくるのかと、少し期待していた真希の前に出てきたのは、ぬるぬるしたような光沢を放つ青い物体。
青い物体は全身が青で、頭部はマネキンのように顔もなく、手足も短い。
甲羅を外されたカメよりは幾分人間には近づいたが、これはこれで人工的で無機質な感じがしたが、まるで手足の短い人形のように見える。
その物体はカメから出されると産まれたての動物のように床の上で短い手足を動かして動いている。
床を這いずりまわるようなその動きは拓海になにかを伝えようとしているようにも見える。

その青い物体を真希は興味ありげに近づいて見ていると、拓海が説明してくれた。
中の女の子には手足を曲げた状態で着る特殊なウエットスーツを着てもらっていてる、この特殊なウエットスーツは仕事の空き時間に拓海が造ったそうだ。
拓海の仕事はマリンスポーツグッズの製造ということも付け加えて説明を受けた。
説明のあと、カメから出されてうつ伏せで置かれている青い物体をよく見ると首の辺りに指のような形が見て取れる。
そしてお尻の辺りも脚が折り曲げられているので、足の形に膨らんでいる。
拓海が彼女の両脇を持ち、引き上げて壁もたれさせる。
膝で立った状態にされた青い物体と化した彼女の身体を舐めるように見る真希。
彼女の腰はくびれていて、胸も大きく中の女性はかなりスタイルのいいことがうかがえる。
しかし、疑問がどうやってこれを着せたのか、ファスナーどころか切れ目すら見当たらない。

そして彼女を見ていてもう一つ疑問が、顔はのっぺらぼうといった感じで顔の凹凸もない。
どうやって呼吸をするのだろうか、そのことが気になり拓海に聞いてみた。
拓海の回答はこうだった。
顔のところだけはウエットスーツのゴム素材がくり抜いていて、表面部分だけを残して周りと同じように見えるようにしている。
だから、顔の部分だけは薄くなっていて中からは外が見えるし、小さな穴もあいているので、呼吸もできるということだ。
よく見ると、顔のところが微妙に収縮していた。
特殊なウエットスーツの中での呼吸は辛いようで収縮のスピードは早くそして細かかった。

自分も彼女のようにされたいという願望を拓海にぶつけたいと真希は思っていたが、中の彼女も苦しいだろと思い、拓海に彼女を解放するよう促す。
それにそんな変態ぽい自分の思いを拓海以外に聞かれたくなかった。
拓海は膝で立たせた彼女の首と胸の間辺りを触っていたところ、切れ目が現れ、そこへ手を入れ顔へ向けて引き上げていく。
いよいよ、彼女とのご対面である。
自分より可愛い娘だったら、拓海のことを諦めようと考えていた。
それにすでに彼女が拓海の恋人の可能性もある。
ドキドキしながら、作業を見守る真希。

しかし、中から出てきたのは黒いのっぺらぼうだが、顔の凹凸は見て取れる。
頭の後ろにはお団子があるので、彼女は髪が長いことはわかったが、可愛い娘なのか若いのかすら、全くわからない。
ウエットスーツはネックエントリーと言って、首のところが大きく開き脱着ができるようになっている。
拓海に両腕を出してもらった彼女は、あとは自分でできるという仕草をすると、自らウエットスーツを脱いでいく。
曲げらた手足がようやく解放されて出てきた彼女は、曲げられていた関節を伸ばしたり、さすったりしている。
しかし、その姿は黒いマネキン。
顔だけでなく全身黒いゴムのようなもので覆われている。

拓海が「着替えておいで」と声をかけると黒いマネキンの彼女は頷き、奥の部屋へと消えていった。
拓海はあのマネキンのようなスーツについて説明してくれた。
あれは以前、会社でスイミングキャプを作っていたが発注がなくなり余った素材を会社から分けて貰らい、彼女を採寸して造ったそうだ。
着るときは唯一あいている首のところから、空気を送り込んでやり少し膨らませてから身体を滑り込ませると簡単に着ることができる。
そのため、空気が完全に抜いてしまうと黒い第二の皮膚のようになる。
頭全体を覆うマスクはスイミングキャプを造る要領で、鼻と目のところに小さな穴をあけてある。
穴も外からはあいているかわからないくらい小さいが中からは視界は充分確保できている。
しかし、呼吸に関しては穴が小さ過ぎるため、ゆっくりと呼吸するのには問題はないが、呼吸が荒くなると口の型が浮き出たり、マスクが膨らんだりするそうだ。
被るときはマスクを裏返しにし、首にあたる部分を大きく開いて一気にかぶる。
すると全身黒い皮膚に覆われたマネキンの完成となる。
締め付けられ具合は始めの採寸で調整が可能と拓海が説明し終わる前に、真希が小さく呟いた。

それは今までの一部始終を見ていて少し恥ずかしいが思っていたことが口をついて出た。
「私のも造ってもらえませんか?」
「えっ!?」拓海が聞き返して、沈黙が続く。
顔を真っ赤にした真希が、下を向きながら「私も彼女みたいにして欲しい」と。
拓海はそれを聞き、コクリと頷くと真希の採寸を始めた。
採寸が終わるころ、着替えにいった彼女がコーヒーを運んできてくれたが、その格好は先ほどの黒いマネキンの上にゴム製のメイド衣装をまとっていた。
メイドのコスチュームも拓海が造ったのか尋ねると、それは彼女が自分が着てみたいからと、スイミングキャプの素材で造ったそうだ。
すべてゴムで覆われたメイドはなにも喋らず、ただコーヒーをテーブルに置いて奥の部屋へと戻っていった。
真希は彼女のことや拓海との関係が気にはなっていたが、聞くことができず、連絡先を交換してその日は帰った。

最終更新:2014年11月17日 19:45