アットウィキロゴ

「じゃあ、今度こそ服を脱いじゃってくださ~い♪」

 同性だけど、見られながら脱ぐのは抵抗がある。
 ソックス、半袖のTシャツ、ベルトをはずしてデニムを脱ぎ、美優の前で下着姿になった。

「先輩今日は白ですね!すごく似合ってます!先輩っぽくてかわいいです!」
「え!?」

 部室ではスポーツ用の地味なブラとスパッツをつけていたから、
 私が白の下着を着ている姿を見るのは初めてらしく、美優はすごく喜んでいる。 
「あんまり見ないで…恥ずかしいよぉ……」
 私は顔を赤らめた。

「下着もですよ、先輩♪」
「え!下着も?」
 理由を尋ねると、美優は肌色の全身タイツを指さしながら、
「このあとあれを着てもらうんですけど、ショーツを履いたままだとおしっこが出来ないんです。
 肌タイの下にブラをつけてるとワイヤーが肌タイを傷つけちゃうし、締め付けられて苦しくなっちゃうらしいんです。」

 説明されても実感がわかない……もしかして…着ぐるみを着たままおしっこしなきゃいけないの?

 それは逆に考えれば、私にずっと着ぐるみを着せ続けることが出来ることも意味していた。

「ささっ!どんどん脱いじゃってください!」

 部室で見られたとはいえ、こんなに直視されながら裸になるのはかなり恥ずかしい……
 また顔を赤らめながらも一気にブラとショーツを脱いだ。
 そして、自然と右手は胸を、左手は股を隠していた……

 美優が肌タイ(肌色の全身タイツの略語らしい)を持ってきて私に手渡す。
「次はこれを着ちゃってください♪」
 相変わらず美優はハイテンションだ。私がどんな思いで着ぐるみを着ようとしているのかも知らないで……

肌タイは頭のてっぺんから腰までジッパーを下して開き、その大きな口に体を足、手、頭の順に入れて着ていくらしい。
 顔の部分はポッカリ穴が開いてるから、着るともじもじクン状態になることが想像できた。
 私は髪をゴムで後ろにまとめ、団子状にする。
 練習のときはいつもそうだから手慣れた手つきで髪をまとめた。

 ついに着ぐるみに入れられちゃう……

 心臓の音がまた大きくなる。右足、左足とタイツを履くようにして履き、肌タイを腰までグイッと引っ張り上げた。

あれ、この股のジッパーはなんだろう?

 ジッパーを見ている私の前に美優が座り込み、股のジッパーに手をかけた。
「これがさっき言ったおしっこするためのやつです!ほら♪」
「きゃっ!」
 いきなり美優に股のジッパー開けられ、こんな近くで最も見られたくないところを見られてしまった!
 恥ずかしさで体中が真っ赤になる。
 思わず後ずさりし、両手で股をかくす。

「もう!あんまりからかわないで!」
 急いで股のジッパーを閉め、美優を大声で叱ってしまった……

「ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」
 さっきまでハイテンションだった美優が急に泣きだしそうな顔になる…悪気は無かったようだ……
 強く言いすぎちゃった……

「ごめんね、いきなりだったからつい大声だしちゃったの……もう怒らないからこれ着るの手伝って、ねっ。」
「ぐすっ、ぐすっ、ホント?」
「うん!」
 美優の目からこぼれそうな涙を手でぬぐってあげた。
 美優は頷き、肌タイを着るのを手伝ってくれた。
 右手、左手、頭と肌タイを着ていき美優にジッパーを上げてもらう。
 これで私は顔以外は肌色のタイツで覆われてしまった……
 まだ着て間もないのに肌タイがうっすらと汗ばみ始める……

「先輩……ちょっと抱きついてもいいですか?」
「え?」
 美優は私の脇の間に手を差し込むとその手を背中に回し、顔を私の胸に押しつけてきた。
 そして、私をギュッと力強く抱き締め始めた。

「ちょっと、美優……苦し……」
「先輩……柔らかくて、あったかくて、きもちいい……縫ぐるみみたい……」

 ゾクッ!

 はうっ!…なにこれ……

 「縫ぐるみ」と言われた瞬間、全身を何かが駆け巡った。

なにも…考えられない……
 体が…熱い……力が…入らない……

「せ、先輩!大丈夫ですか!」
 腰砕けになった私の体を美優が支える。

「はっ!」
 美優の声を聞き、我に返った私はよろよろしながら体制を立て直す。
 そしてゆっくりと美優の手を解き、大きく深呼吸する。
「フーー、大丈夫…ちょっと立ちくらんじゃっただけ……」
「ほんとに大丈夫ですか?さっきから先輩、顔が真っ赤です……」
 美優がまた泣きだしそう。本気で心配させちゃったようだ……

「ごめんね、ちょっと体が熱くなっちゃの。」
 そう言いながら美優の両肩に手を置いて美優を落ち着かせる。
 美優を落ち着かせることで私自信も落ち着いてきた。

「そうだ!エアコンつけてもらえる?これ着てると結構暑いの。」
「あっごめんなさい!私ったら全然気がつかなくって!今つけますから!」
 私が立ち直ったのを見て安心した美優は急いでテレビの上にあるエアコンのリモコンに駆け寄り、冷房のスイッチを押した。

バタバタと忙しく動く美優を見ながら私はさっきの感覚を思い出していた。

 立ちくらみなんかじゃない……じゃあさっきのはなんだったんだろう?

 毎日ハードな運動をしてるから体力には自信がある。この程度の暑さなんかじゃ倒れない。
 暑さとは違う……全身をぬるまったいお湯でとかされてしまうような…甘く心地よい感じだった……

 そんなことを考えていたら、顔にカビ臭い風が吹いてきた。
 美優はあわてて部屋の窓を開けている。  
「すみません、最近使ってなかったから臭くて……あっ、それと何度ぐらいにします?冷房の温度。」
 窓を開け終え、美優はリモコンを持ちながら尋ねてきた。
「じゃあ、20度ぐらいにしてもらえる?」
「わかりました!」

 しばらくすると部屋からカビ臭さが消え、美優は部屋の窓を全部閉めた。
 部屋の温度が急に下っていく。
 美優はタンスから長袖のシャツ取り出すと、着ていた半袖のTシャツを脱いでそれに着替えた。

 そうだ、美優は半袖に短いデニムだから20度じゃ寒いよね…全然気が回らなかった……

「23度ぐらいにしよ。20度じゃ寒いでしょ?」
「え?全然寒くないですよ!大丈夫です!
 それに、このあと先輩にはメイド服を着てもらわなくちゃいけないから冷房キンキンにしないと先輩が倒れちゃいます。」

 そっか、まだこの上にあれを着なくちゃいけないんだ。
 でも……やっぱり美優が風邪ひいちゃう……
 ここは先輩の私が我慢しないと!

「私は大丈夫!暑いの得意だから!」
 ちょっと強がってみる。
「そっ、そうですか?じゃあ、お言葉に甘えて。」
 美優は、はにかみながらエアコンの設定温度を上げた。やっぱり寒かったんだ。

 美優はニコッと私に微笑み、さっき私が脱いだ服をたたみはじめた。
 それを部屋の隅にある私のバッグの隣におき、私のもとに戻ってきた。
 手には私のショーツとブラを持っている。それを私に手渡した。

「なんで下着を?」
 美優はニーソックスを拾いながら、
「裸のまま服を着る人なんていませんから下着はつけてください♪それとニーソもお願いします♪」
 と答えた。

私は違和感を感じながらも肌タイの上から自分の下着を身につけ、美優が用意した膝上まである白のニーソックスを履く。
 ニーソックスには膝上のゴムのところに白いフリルと小さな飾りのリボンがついている。
 人が履いていたらかわいいと思えるけど……自分が身につけるとなると恥ずかしい……

「次はこれです♪ちょっとバンザイしてもらってていいですか?」
「う、うん……」
 美優はお母さんが子供に服を着せるようにして、メイド服を上からガバッと被せるようにして私に着せた。

メイド服は生地が少し暑く、長袖なので着たらすぐに肌タイが蒸れてきた。 
 色は紺色、肩には膨らみがある。まるでエプロンドレスのようだ。
 スカートはボリュームがあり、丈は膝上ぐらいで白いフリルがついる。
 腰には白い帯が巻かれ、背中で大きなリボン状に結ばれている。

「ふふっ!先輩かわいいですよ♪」
 美優はニコニコしながら私の首にピンク色のリボンがついたベルトを巻いた。ちょっと息がしづらい……
「首のベルト少し緩めてもいい?ちょっときついの……」
「あっすみません!これぐらいですか?」
 あわててベルトを緩める美優。少し楽になったけど首に何か巻かれているとやっぱり息苦しい。

 あとはマスクをかぶれば私は着ぐるみに閉じ込められてしまう……
 私が私じゃなくなっちゃう……

 私はその場に座り込んだ。
 胸がはち切れそうなぐらい心臓がバクバクなっている。
 そんな私には見もくれず、美優はマスクとウィッグを手に取る。

 美優はマスクにウィッグを被せ、自分の膝に置いて私に見せた。
「これが先輩の顔になります♪」

 大きな目は瞳が茶色く、目じりが少したれている。
 口は小さく微笑んでいて、ほほがほのかにピンク色に染まっている。
 ウイッグは茶髪のツーテール、かぶったら肩に触れるぐらいの長さだと思う。
 明るく穏やかそうな女の子の顔。ちょっとかぶるには小さすぎる気がする。

 あれっ、ちょっと美優に似てるかも……

「あっ、先輩気づきました?これ私をもとにして造ってもらったんです♪でも私なんかよりずっとかわいいです♪」
「造ってもらったの?じゃあこれも?」
 私は自分が着ているメイド服を指さす。
「もちろんです♪」

いま気づいたら私に着せようとしている着ぐるみは、かなりの額になるんじゃないかと思った。
 聞きづらいけど…ちょっと聞いてみよう。
「これ…全部でいくらしたの……」
「え?」
「着ぐるみ…」


「えっと…15万ぐらいだったと思います。」
「じゅ!15万!」

 え!そんなに!

 美優がさらりと口にした額は私の想像を遥かに超えていた。
「そんなにするの!」
 嫌々着ようとしているのがものすごく悪い気がする……

「そんな高価なもの、私が着ちゃっていいの…」
「あっ気にしないでください、私が勝手に買ったものですし。それに先輩にこそ着てもらいたいんです!」

 私の為に……涙が出そう……
 ……よし!美優の為にも着ぐるみを着てあげよう!

 私は勢いよく立ち上がり、
「着るわ!マスクをかぶせて!」
 と意を決して美優に言った。
「え!でもまだマスクの説明が…」
「あとで聞くから!」

私は試合前のように気合が入っていた。いい緊張感を保っている……

 美優はそんな私を見て、あわててマスクからウィッグを外し、
 ヘルメット状のマスクを頭頂部の蝶番を支点にして前後に割り、私の頭の上にもってくる。

「じゃあかぶせますよ?いいですか?」
「うん!」
「口開いてください。はい、あ~ん。」
「え?あ~~ん、ふぎゅ!」

 口に何か入ってきた!鼻にも!息が…息が出来ないよ!

 すでにパニック状態になっている私に気づかず、美優は私の頭を前後に割れたマスクでサンドイッチみたいにはさみ、
 マスクの両脇の隙間にコの字型のクリップをカチッとはめて隙間を閉じ、ウィッグをかぶせた。

 顔がつぶれちゃう…きついよ!何も見えないよ!くっ…苦しい……

「ひふぅ…ふぎゅぅ……」(美優…助けて……}

 私はマスクの中のスポンジで顔を押しつぶされるのにくわえて、視界の悪さ、呼吸のしづらさから更にパニックに陥ってゆく。
 心臓がオーバーヒートしている。全身からドバッと汗が出た。
 天井を見上げ、声にならない声で美優に助けを求めながら、膝から崩れ、その場にへたりこんでしまった……

 ……い!先輩!私に合わせて鼻で息してください!

 遠くから美優の声が聞こえる……

 吸ってーー!吐いてーー!吸ってーー!吐いてーー!……

 美優の掛け声に合わせて鼻で大きく息をする……鼻でなら息できる……
 頭がだんだんはっきりしてきた……

「先輩!しっかりしてください!先輩!先輩ってば!」
 美優は座り込み、大声で私に呼びかけている。

 息ができることがわかった私は、手を自分の胸に当て気持ちを落ち着かせる……
 顔を美優に向けて首を縦にふって美優の声に答えた。

「ほんとに大丈夫ですか!?」
「んん!」
「よかった~。」
 私が急に崩れたから私以上に混乱したんだろう……美優はぐったりしながらその場に寝転んだ。

 また心配させちゃった…しっかりしなきゃ!
 そういえば口の中に何か入ってるから声が出せないよぉ……
 鼻も何か筒みたいなのを入れられたからジンジンするし……

 そのことを美優に伝えるためマスクの口元を指さした。
 それに気づいた美優はムクリと起き上がる。

「説明してなかったからびっくりさせちゃいましたよね。すみませんでした……」
 美優は申し訳なさそうに頭を下げ、マスクの説明をし始めた。

「このマスク、中の人が声を出せなくなるように猿轡がついてるんです。
 でも、小さい穴があるからストローとかを使えばマスクしながら水とか飲めます。」

 猿轡?そんなの聞いてないよ!
 あっ、でも説明聞かずに「マスクつけて!」っていったの私だ!……ちゃんと聞いとけばよかった……

「苦しいと思いますけど、鼻に入れたチューブで呼吸してください。
 それと、瞳がサングラスになってるんで見えると思いますけど、
 色つきだし小さいから気を付けてください。」

 たしかに視界が悪い。それに汗で曇ってきたから周りの状況がほとんどわかんない……

「顔側のマスクの中はほとんどウレタンっていうスポンジ状のもので埋めてあります。
 直接肌とプラスチックがあたると顔が傷だらけになっちゃうんで……
 ちょっと小さすぎかなって思ってましたけど、先輩の顔ちっちゃいからぴったりですね!いい感じです♪」

 隙間がないからかなりきついよぉ……スポンジが汗を吸ってべちゃべちゃして気持ち悪い……  

「これでだいたい説明は終わりです!あっ、それと何か言いたいときは体で表現してくださいね♪」

 色々とかなり辛いけど、私はとりあえず頷いた。

最終更新:2017年12月15日 22:51