外に出ると夏の日差しが容赦なく降り注いできた。
校庭には見慣れた顔の子供たちが体育座りをして綺麗に並んでいる。
それに日傘をさしているお母さん方、デジカメを構えている教頭先生、そしてかおりんが立っていた。
「あっ!アリスちゃんだー!」
「ほんとだー!アリスちゃーん!」
子供たちは校庭に入る前から着ぐるみ姿の私、アリスちゃんを指さして元気よく呼んでいた。
私たちは走って校庭に入り、みんなの前に立った。
やっと落ち着いてきてたのに、また胸がパンパンになる……
全身から汗がドクドクでてくる……心臓が破裂しちゃいそう……
み、みんな見てる……こんなカッコした……着ぐるみの私を……
……やっぱり……恥かしい!
あぁん!んくぅ!!……ら、らめ!いっちゃう!……た、耐えなきゃ……
……みんなが……見てるんだから……
私のあそこからじわっ!と蜜が噴き出してきた……
いっちゃう寸前だった……でも子供たちの視線で逆に理性を取り戻せた。
ブルブル震えながらもなんとか耐えしのいだ……
そんな私に気づいていない上凪さんは、練習の通りに元気にあいさつを始めた。
「よいこのみんな♪こんにちわ~!」
『こんにちわー!』
みんなも元気にそれに答える。そんなやりとりがすごく遠くに聞こえた……
「今日はみんなに正しい交通のルールを覚えてもらいたくて参りました!上凪です!よろしくお願いしま~す♪」
そういうと、上凪さんはぺこりとお辞儀をした。
みんなは拍手で応じる。
ハァ…ハァ…ハァ……んん!……次は……私の番……
さっきよりは落ち着いてきたけど、相変わらずドキドキしっぱなしだった……
もう息が上がってきてる……
「なんと!今日はみんなのために、うさみみライダーアリスちゃんがきてくれました!拍手~♪」
子供たちの拍手と同時にぴょん!と一歩前に出て、さっき会議室で練習した決めポーズをしてみせた。
そのときに、あのサイズの小さいスクール水着が食い込んできて……フニャフニャになったあそこを刺激する……
それに跳ねると肌タイで乳首が擦られちゃう……
はぅぅ!………こんなんじゃ……ぐすっ……もたないよぉ……うぅぅ……
予想以上に辛くて……私はマスクの中で泣きだしそうだった……
「ご挨拶はこれぐらいにして、早速はじめましょ~♪」
非情にも安全教室は始まってしまった……私のせいで止めるわけにはいかない。
ひっく…ひっく…………だめ……だめだめ!くじけちゃだめ!
アリスちゃんは……正義の味方なんだから!
私は、着ぐるみの中の自分を捨てて、アリスちゃんを演じきる……私がアリスちゃんになることを決めた!
そう思ったらこんな恰好をしててもそこまで恥かしくなくなってきた。
でも気持ちだけでそんなに状況は変わらない……
なによりも顔まで体を覆われてるから暑い……そのうえ、衣装が全身をぎゅうぎゅうと締め付ける……
「まずは標識クイズからで~す!」
上凪さんはそういって、足元に置いてあるダンボール箱の中から手作りの道路標識のパネルを取り出した。
「この標識の意味がわかる子は大きく手をあげてね~♪」
『ハーイ!ハーイ!』
みんな元気に手をあげる。
私も上凪さんの方を向いてピョンピョン跳ねながら手をあげる。
んんっ!………ハァ…ハァ…ハァ……
やっぱり動くたびに……女の子の大事なところが刺激されちゃう……
「じゃあ……そこの黄色いシャツを着てる男の子!」
「はい!」
上凪さんが一人の男の子を指さすと、その子はスッと立ち上がった。
名前は成瀬雄太(なるせゆうた)くん。一組の子でいつも校庭で元気にサッカーをしてる。
「どうろをわたっちゃいけないやつです!」
雄太くんは大きな声で答えた。
「アリスちゃん!正解は?」
上凪さんが私にふる。
アリスちゃん役の私が体を使ってあってるか間違ってるかを判断する。
もちろんあってたからピョンピョン跳ねながら両手で頭の上に○をつくった。
あぁん!……あっ……だめ……そこは……
「正解で~す!はい!みんな拍手~♪」
パチパチパチパチ!
雄太くんは照れながら腰をおろした。
私は拍手を忘れていた……それどころじゃなかった……
さっきのポーズでショーツの中に入れたティッシュが……私の……一番感じるところに入ってきちゃった……
なおそうにもみんなの前だからなおせない……
焦りからどんどん汗が出てくる……
そんな調子で標識クイズは続いていく……
ポーズにまぎれて腰をふってなんとかティッシュをずらそうとする……なおらない……
その動きでよけいに乳首は擦れちゃうし……ティッシュが敏感なところを刺激してくる……
はぅぅ!……ハァ…ハァ……どおしよ……
しかもこの暑さ……着ぐるみの中はサウナ状態……
全身がビチョビチョ……特にファーが巻かれてる首回り、手袋とブーツの中はもっとビッショリ……
ハァ…ハァ…ハァ……暑いよぉ……
体中ビッチョリで……気持ち悪い……それにティッシュが……ビチャビチャ……
このままじゃ……染み出ちゃうよぉ……
あそこはもっと大変なことになってる……
もしかしたら……スクール水着にまで染み出しちゃってるかもしれない……
(眞田さん、だいじょぶですか?)
子供たちに見えないように口を標識パネルで隠しながら、上凪さんが小声で話しかけてくれた。
みんなあんなに楽しそうなのに私がへばっちゃいけないと思った。
私は小さく頷いてみせた。
上凪さんも小さく頷き、標識パネルをダンボール箱に戻した。
「標識クイズはこれで終わりで~す!次は横断歩道のわたり方をお勉強しましょう♪みんな右を向いてくださ~い!」
子供たちは上凪さんが指さす方を見る。そこには白線で横断歩道がかいてある。
みんなにちゃんとした横断歩道のわたり方を教えれば安全教室は終わる。
でもここからが本番でもある……
これが終われば……お昼休み……それまで……もつかな……
「じゃあ初めにアリスちゃんにわたってもらいましょ~♪」
私はぴょん!と跳ねながら大きく手をあげ、横断歩道の前まで走って行った。
んくっ!……ハァ…ハァ…ハァ……もう……だめ……
私はうずくまり、膝に手をつこうとする……
でも横目にみんなの顔が見えた……なんとか耐えて、胸をピン!と張った。
『んっ!』
あっ!声出しちゃった!
……みんなには……聞こえてないみたい……いちいち感じてちゃだめ……
「それではお願いしま~す♪」
私は大きく頷き、練習でやった通りに横断歩道を一気に走って渡った。
また乳首と股が刺激されちゃう……
ピーーー!!
上凪さんが首に下げた笛を大きく鳴らす。
その音に合わせて私は上凪さんの方を振り向き、首を傾げる。
「だめだめ!そんなんじゃ車にひかれちゃうよ!!しょうがないなあ……アリスちゃんもみんなといっしょに練習しようね♪」
私はがっくりと頭を下げる。
このやりとりは何度も練習したからばっちりだった。
頭をあげると上凪さんが私にウィンクをしてくれた。
ハァ…ハァ……よかった……うまくいって……
でも……疲れた……
ちょっと走っただけなのに一気に汗が出てきた……
マスクの中のスポンジも汗を吸ってて、動くとビチャビチャ音が鳴る気がする……
上凪さんは子供たちの方を振り向き、ピン!と人差し指を立てた。
「アリスちゃんみたいに急に飛び出しちゃだめだよ!これは絶対に守ってね♪」
『はーい!』
私はお尻が地面につかないように膝を抱えて座り、みんなと一緒に上凪さんの話を聞く。
これでちょっと休める……
そうだ……深呼吸しよ……すぅーーふぅ~~すぅーーふぅ~~……
「横断歩道の前に立ったら、まず車がきてないことを確認します!
右みて~、左みて~、もっかい右みて!
車がきてないことが確認できたら運転手さんに見えるように手を大きくあげてわたりましょ~!
みんなわかったかな~?わかった子は大きく手をあげてね♪」
『はーい!』
上凪さんは安全教室が始まってからすごく元気いっぱいだった。すごく楽しそう……
みんなもそんな上凪さんに負けないくらい元気よく手をあげた。
上凪さん……子供好きなんだ……
ふぅ~……よし!私も頑張んないと!
ほんのちょっとの時間だったけど、今の私にとっては貴重な休憩時間だった。
私は勢いよく立ち上がり、ピョンピョン跳ねながら手を高々と上げた。
あぁっ!……また……
でも現実は厳しかった……動くたびに……感じちゃう……
「アリスちゃんもわかったみたいね♪みんなもアリスちゃんと一緒に練習しましょ~!」
『はーい!』
ここからが大変だった……
5人づつぐらいの子供たちと一緒に白線の横断歩道をわたる……何回も……何回も……
ハァ…ハァ…ハァ……あぁん!……ハァ…ハァ…ハァ……
歩くたびに……乳首が擦られて……なかでティッシュが暴れて……感じちゃう……
どんどんおつゆが漏れてきちゃう……
それにけっこうふわふわの尻尾を引っ張る子がいる。
引っ張られると……いじめられ続てるあそこにスクール水着が食い込んで……そのたびいっちゃいそうになる……
あぅん!!んくぅ!……だ、だめ!……みんなの前で……
……お願いだから……引っ張らないでよぉ……
どんどん体温が上がってくる……しかも始まった時よりも日差しが強くなってきた……
私の体力はもう底につきそうだった……
ハァ…ハァ…ハァ……んんっ!……おかしく……なっちゃう……
……あとすこしだけど……もう……限界かも……
いよいよ最後のグループになった。
でも私は立ってるだけでやっとだった……もう歩けそうにない……
肩で息をしながら私は茫然と立っていた。
そんな私の手を誰か引っ張る……
振り向くとそこには萌ちゃんがいた……
「アリスちゃん……まきちゃんせんせえしらない?」
悲しそうな顔で私の……アリスちゃんの顔を見つめる……
『……』
「きょう……いないの……どこにも……うぅぅ……」
萌ちゃんの目から大粒の涙が溢れだす……
……萌ちゃん……
私は声を出しそうになった……目の前にいることを教えてあげたかった……
でも今の私は……まきちゃん先生じゃない……アリスちゃんだった……
私はしゃがみこみ、体中汗でびっしょりなことを忘れて萌ちゃんの頭を胸で優しく抱きしめた……
「ふっ!……」
ごめんね……寂しい思いさせちゃって……
私はここにいるよ……だから……もう泣かないで……
萌ちゃんは急に私が抱きついてきたからびっくりしてた……
そんな萌ちゃんをさらにギュッと抱きしめる……
私は萌ちゃんが泣きやんだのを確かめてからその場に立ち上った。
萌ちゃんはポカンとした顔でアリスちゃんとなった私を見上げる……
私は一歩後ろに下がってアリスちゃんの決めポーズをしてみせた。
そしたら萌ちゃんはすごく嬉しそうに笑ってくれた。
私は萌ちゃんのおかげでちょっと元気が出た。
そして萌ちゃんと手をつないで一緒に横断歩道をわたる練習をした。
なんとか倒れずに、みんなに横断歩道の正しいわたり方を教えることが出来た。
上凪さんがみんなを整列させて、安全教室終了のあいさつをする。
「これで交通安全教室は終わりで~す!そしてお昼休みの後にアリスちゃんとの握手会があります!みんなきてね♪バイバ~イ♪」
上凪さんは手を振りながら玄関へと走る。
私も残った体力を振り絞り、その場でピョンピョン跳ねてから腕を大きく振って上凪さんといっしょに玄関へと走っていった。
あぅぅ!……ハァ…ハァ…ハァ……
やっと……終わった……
緊張の糸が切れたのか、私は玄関に着いた途端に全身の力が抜けて膝から崩れ落ちそうになった。
そんな私を上凪さんがあわてて抱きかかえてくれた。
「だ、だいじょぶですか!」
『ハァ…ハァ…ハァ……だいじょぶです……ちょっと……疲れちゃって……』
「すぐ戻りましょう!脱水症状を起こしてるかもしれません!」
『はい……』
上凪さんはササッと自分のパンプスと私のブーツの裏を雑巾で拭いた。
そして私は上凪さんの肩をかりて階段をあがる……
『ハァ…ハァ……ふぅっ!』
「どうかしましたか!」
『い、いえ……なんでも……ないです……』
「そうですか?……もうちょっとですからね!頑張ってください!」
『はい……』
また変な声……出しちゃった……そろそろ……ばれちゃう……
上凪さんの助けもあってなんとか会議室に辿りついた。
最終更新:2014年12月02日 19:29