Lv-"D", unpleasant……

582 Lv-"D", unpleasant…… (1/5) ◆6AvI.Mne7c sage 2010/03/04(木) 00:19:27 ID:2RZQKwWp

 朝目を覚ますと、今日も掛け布団が盛り上がっていた。
 いつものこととはいえ、うんざりしながら、僕は布団を跳ね飛ばす。
 するとそこには、やはり下着姿の女性――僕の姉さんが潜んでいた。
「あふぁ♪ ほふぁほうはーふぅん♪(あは♪ おはようたーくん♪)」
 そして彼女は、僕の朝立ちしたモノに、唾液塗れの舌を這わせている。
 僕は何も言わず、姉さんの身体を先程跳ねのけた布団へと、両腕で突き飛ばす。
「ひゃぁん♪」
 何の抵抗も感じさせないまま、姉さんは僕の身体から、跳ね飛ばされた。

 これらは全ていつもの光景。僕にとって――姉さんにとって当たり前の日常。
 僕に突き飛ばされた姉さんは、体勢を戻すことなく、視線を僕に向け続ける。
 ただ僕の姿を自らの瞳に捉えて、それ以外はどうでもいいかのように。
 そんな姉さんの姿に背筋を凍らせつつ、僕は急いで制服に着替える。
 途中で何度かこちらに接近を試みる姉さんを、眼圧で威嚇し留めながら。

 途中で堪え切れなくなったのか、姉さんが僕に懇願してくる。
「ねえ、ワタシもアナタのおキガえ、テツダってあげたいの。
 だから、そっちにイってもいいよね? いいよねぇっ!?」
 そう言いながら、のそのそと僕の居る場所に接近してくる姉さん。
「駄目だ姉さん、絶対に来るな。それ以上来たら絶交してやるから」
 かなり強く牽制をかける。これでほんのしばらくは大丈夫だ。
 けれどまったく油断はできない。僕は急いで着替えを終える。
「じゃあ姉さん、僕は朝食を食べて、学校に行くから――」
「あはっ♪ いつもイジワルなことイうよね、たーくんってば♪」
 姉さんが話しかけてくる。蕩けるような、恋する少女のような瞳で。
 僕は決して、その瞳を直視しないようにしている。気持ち悪いから。

「あはっ♪ アサゴハンはちゃぁんとできてるからね♪
 キョウはたーくんのダァイスきな、おミソシルとかぁ……」
「……悪いけど、姉さんの作った朝ごはんは食べない。いらない。
 何が入っているのかもわからないものなんて、僕は食べないから」
「……もう、アナタはホントウに、つれないなんだから♪」
 何が嬉しいのか、にやけ顔でしなを作る姉さん。気持ち悪い。
 相手をするのが嫌で、僕は彼女を無視して、部屋から出ようとする。

「でもダイジョウブなのよ。アナタはカナラず、ワタシのモトにクるから。
 だってたーくん、ワタシのコトがダイスきなんだもの。わかってるもの♪」
 無視し続けている僕の背後から、ひたすら姉さんが話しかけてくる。
「ワタシたち、コドモのコロに、ケッコンのヤクソクをしたんだもん。
 だから、オットになるアナタからのクチヅけを、ずっとマってるからね?」
 はっきり言って、姉さんは異常だ。狂ってしまっている。
 もうじき20歳になるのに、いまだに子供の頃の約束を引き摺っている。
 そう、2年前のあの悪夢の日から、ずっと――


583 Lv-"D", unpleasant…… (2/5) ◆6AvI.Mne7c sage 2010/03/04(木) 00:24:07 ID:2RZQKwWp

 ある日突然、僕の姉は狂った。
 何を言っているのか解らないと思うけど、僕にもよく解らなかった。
 いや、兆候は前々からそれらしきものがあった、と今では思う。
 僕が姉に女を意識し、他所他所しい態度を取り始めたくらいから。
 僕の成長した全裸姿を、偶然通りすがった姉に見られたころから。
 僕の同級生の女友達を、僕の部屋に招いたのを見られたときから。
 僕が女の子に告白されたことを、うっかり姉に喋ったあたりから。
 とにかく、日に日に姉の心中(ナカ)で、狂気が熟成されていき――
 とうとうその感情が爆発し、僕の家は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

 僕が16歳になった誕生日の朝、目が覚めると僕の股間が生温かった。
 いや、生温かいなんてものじゃなくて――とてつもなく、熱かった。
 その強烈な違和感と気持ち良さに恐怖を感じ、掛け布団をめくると――
 そこには全裸の姉が居て、僕のモノを自分のナカに咥えこんでいた。
「あ、おはよ……ぅんっ♪ それからおっ、誕生日おめでとう♪
 ちょっと早いかも……だけど、お誕生日プレゼントだよっ♪
 これで貴方も立派な男になれたわ♪ おめ、っでと、うっ♪」

 そこから先の数日間は、正直いまだに僕にもよくわからないままだ。
 うっすらと覚えているのは、僕の悲鳴で部屋に両親が踏み込んで来たこと。
 頬を叩かれて僕から引き剥がされ、そして両親に罵倒される全裸の姉の姿。
 覚えていたのはそこまでで、僕は衰弱するように、三日三晩ほど眠り続けた。
 次に目覚めた時に初めて見たのは、憔悴しきった母さんと父さん――
 そして、まるで子供のような純粋さと――狂気を瞳に湛えた、姉さんの姿。
 姉さんはあの夜の出来事を全く反省しておらず、なおかつこう言ってきた。
「おはよう、ワタシのダンナサマ♪ キスをする? それともエッチする?」
 全力で姉さんを突き飛ばしたのは、多分その時が初めてだった。
 とにかく、僕は姉さんが怖かった。怖くて怖くて仕方なかった。


 結局それから2年が過ぎ、僕の家族は完全に壊れてしまった。
 父さんはもともと仕事人間だったのが、さらに家に寄り付かなくなった。
 母さんは心労で体調を崩し、療養のために長期の入院を余儀なくされた。
 姉さんは医者の前ではうまく化けるので、精神病棟にはぶち込めなかった。
 僕は隔離されるほどの理由も、身を寄せる親類もなく、逃げられなかった。
 基本的に借金とカツカツの稼ぎ故、独り暮らしに逃げるのも不可能だった。
 結果、いま家には僕と姉さん――あの気持ち悪い女しかいない。

 あの事件以来、姉さんは狂気に落ちてしまい、精神が一部退行してしまった。
 別に一般人としての生活が、全てできなくなったわけじゃない。
 現に姉さんは演技力のみで、何人もの精神科医を欺き通してみせた。
 けれどやっぱり、心の芯のどこかが崩れて、歪んでしまっていた。
 その最たる例が、僕に対しては粘着質に甘え甘やかすような現状だ。
 姉さんは、毎日毎日くだらない理由をでっち上げ、僕を愛撫してくる。
 時には布団の中。時には風呂の中。そして果てにはトイレの中。
 もちろん、ただなすがままではなく、僕自身もいろいろ抵抗はしている。
 時に腕力に訴えて。時に言葉で訴えて。時に距離をとることで。
 けれど、それらの行為は全てが無駄だった。
 むしろ拒めば拒むほど、姉さんは興奮して手に負えなくなる。

585 Lv-"D", unpleasant…… (3/5) ◆6AvI.Mne7c sage 2010/03/04(木) 00:29:53 ID:2RZQKwWp

 学生の僕が完全に姉さんから離れられる、まっとうな時間――学校。
 けれど当然ながら、学校には下校時間が存在する。
「帰りたくない……けど、ムダなんだろうな………」
 友人宅でも野宿でも、姉さんは僕を迎えに来てしまう。
 周囲は姉さんを正常だと思っているから、僕が悪者にされてしまう。
 だから毎日毎日、嫌だけど諦めて、僕は家に帰るしかなかった。

「あはぁ♪ おかえりなさいませ、ダンナさま♪
 ワタシにする? ワタシにする? それとも……ワタシにするぅ?」
 帰宅すると、姉さんが裸エプロン(透過率50%)で出迎えてきた。
 当然僕はそれを無視して、自分の部屋へと向かう。
 途中で姉さんが僕に縋りついてきたけど、全力で振り解く。 
「アナタ、ごハンよりもワタシをタべてくれたら、ウレしいな?」
「うっ……、うるさい姉さんっ! 僕に、近寄るなッ!?」
 割と本気で腕を振るい、姉さんの身体に叩きつける。
 けれど大きな胸に当たったせいか、逆に腕を跳ね返された。
 くそ……っ、昔はドキドキした姉さんの巨乳が、今は疎ましくさえ感じる!

「……はっ、たーくんが……シのオムネ……サワ………れた……♪
 ウレし……キモチい……………ひゃあaAあアAaん♪♪」
 対する姉さんは僕の触れた胸の部分を触り、やたら必死に悶えていた。
 ってなんだろうか、この甘酸っぱいような匂いと、液体の滴る音は?
「あは、あははぁ♪ ごごごめんなさぁいた~きゅぅん♪
 ワタシイマのでイっちゃった~♪ おまけにおモらしまでしちゃったのぉ♪
 でもしょうがないのぉ♪ おネガいだからユルして、ね♪」
「……………………!!」
 確かに姉さんの言うとおり、姉さんの足元に、水溜まりができている。
 そして姉さんのエプロンの下半身部分が濡れて、肌に張り付いている。
 それはいまだに現在進行形で垂れ続け、小水独特の匂いも漂ってきた。

「…………くそ、が!」
 最悪だ。最低だ。付き合ってられないっ!?
 僕は姉さんに背を向けて、自分の部屋に向かうことにした。
「ねぇたーきゅん♪ おソソウしたワタシを、シカってくれないの?」
 その場に立ち尽くしたまま、なおも尿を垂らしつつ、僕を見つめる姉さん。
 それを見た僕の中で、鬱積していた怒りが突然、爆発してしまった。
「知るかよっ!! 勝手に片づければいいだろうがっ!!?
 それから僕は今日も外で食べて来たから、晩ご飯はいらないぞっ!!
 もう寝るから、鍵は閉めてるから、絶対に入ってくんな!!!」

 言い捨てるだけ言い捨てて階段を駆け上がり、僕は部屋に閉じ籠った。
 姉さんは一応悪いと思ったのか、廊下でゴソゴソ掃除を始めたらしい。
 とりあえずすぐに2階に駆け上がってくる気配は、なさそうだ。

587 Lv-"D", unpleasant…… (4/5) ◆6AvI.Mne7c sage 2010/03/04(木) 00:33:24 ID:2RZQKwWp

 部屋の入口を封印して、僕はベッドの上に倒れこんだ。
 姉さんにはああ言ったものの、実は夕飯を食べてきてなんていなかった。
 ただ姉さんと一緒に居たくないがために、逃げ出しただけだ。
 まあ、夕飯を食べるとしても、姉さんの作ったものは食べないけれど。

「ああ……、ひもじい……」
 ここ最近寝不足なうえ、空腹でなんだか意識が飛びそうだ。
 本当は今すぐにでも台所に行って、なにか適当なものが食べたい。
 けれど今すぐ部屋を出れば、食事を部屋に運んでくるだろう姉さんに遭遇する。
 それだけは避けたい。むしろ姉さんから、永久に逃げ出したいのに。
「あんな気持ち悪い女、誰が好きなもんか……!?
 あいつさえいなくなれば、僕は少しだけ自由になれるんだ!
 あいつさえ、あいつさえ、あいつさえ……!」


(ははは。嘘をつくなよ、僕)
 とそこで、僕の頭の片隅で、何かが語りかけてきた。
 何なんだ? この訳のわからない展開は?
(僕が何かだって? 僕は僕さ。君自身なんだよ)
 もう1人の僕? なんでそんなトンデモ展開になっているんだ?
(君がなんて言おうと思おうと、僕は君の本心そのものなんだよ)
 あはは、そうかこれは幻聴なんだ。タチの悪い夢なんだ。
 あの気持ち悪い姉さんに疲れた僕が、狂いかけてる証拠なんだ。

(あはははっ。よく言えたもんだな、僕。被害者ヅラなんかしちゃって)
 僕の心の中のもう1人の自分が、僕を糾弾するように訴えかけてくる。
(姉さんが君に男を意識したのも、元は君のせいじゃないか?)
 覚えていることも苦痛になったあの記憶が、また僕を蝕んでくる。
(思春期の性欲のはけ口に、姉の身体を選んだのは、どこの誰だ?)
 そうだ。一番最初に姉さんの身体に欲情したのは、僕のほうだったんだ。
(オナニーのおかずにしてしまって、それを見られた無様な弟は誰だ?)
 僕は今の姉さんと似たようなことを、姉さんにずっとしていたんだ。
(とうとう我慢できず、寝ていた姉の身体を舐め回したのは、誰だっけ?)
 そのくせに、今では自分が何も悪くないと、本気で信じていた。
(それでは収まらず、その姉の身体に、射精した馬鹿は誰だっけ?)
 そうでもしないと、姉さんが怖くて、自分が怖くて……!!
(そしてそれを全部知られ、姉の心の箍をぶち壊したのは――) 
「う……うるさいうるさい!! 黙っててくれよおおお!?」
(それでバツが悪くて逃げ出し、自分だけで何事もなかったとか――)
「僕は……僕はこんなことを望んで――違うんだあああ!?」
 耐えきれずに、僕はその場で膝をついて倒れ――ることはなかった。
 いつの間にか背後に居た全裸の姉さんが、僕を抱えていてくれたから。
 狂う前の優しかった瞳の姉さんが、僕を愛おしく見つめてくれていた。
(なあ僕、本当は君は、姉さんのことが――)


588 Lv-"D", unpleasant…… (5/5) ◆6AvI.Mne7c sage 2010/03/04(木) 00:37:19 ID:2RZQKwWp

「……がぅ、違う!? 違ああああああああああああああああぁっ!!?」
 みっともなく大声を出して、僕はその場で飛び起き――られなかった。
「……って、さっきの対話は――僕の、夢?」
 どうやらもう1人の僕とか、昔のまともな姉さんとかは、僕の夢だったらしい。
 ほっとしたような、がっかりしたような、複雑な気分だった。

「ってあれ? なんで身体が動かな――ってコレは……」
 さっき起きられなかった理由はどうやら、胸元にいる姉さんのせいらしかった。
 姉さんはなぜか僕の身体の上に寝そべり、すぅすぅと寝息を立てている。
「しかもなんか、口の中に塩味と酸味が……」
 こっちに関しては理由は明白だ。姉さんの口元に、米粒が付いていたからだ。
 どうやら僕が寝ている間に忍び込んで、ご飯を口移しで食べさせたらしい。
 自由に動かせる腕で僕の頬に触れると、そこにも米粒があった。

「くそぅ……。気持ち悪い……気持ち悪い………はず、なのにっ」
 姉さんに口移しされた事実に気付いて、僕は確かに嫌悪感を感じていた。
 だけど同時に、なんだかわけのわからない、安心感さえ感じてしまった。
「僕は、こんな気持ち悪い姉さんに、一体なにを求めてるんだ……?」
 僕はなにをやっているんだ? 僕はなにをやっているんだ!?
 僕は姉さんを、跳ね飛ばさなければならないのに、なのに――
 なんで僕は姉さんの頭を撫でようと、手を伸ばそうとして――

「……ぁは♪ たーくんってばやっと、ヤサしくしてくれるのかな?」
「っぁぁぁああああああああああああっっっ!!?」
 僕の手が姉さんの頭に触れる直前で、突然姉さんが目を覚ました。
 いや、多分姉さんのことだから、ずっと寝た振りをしていたんだ。
「あはっ♪ ウレしいなぁたーきゅん♪
 やっとツンデレたーきゅんが、ワタシをミトめてくれたんだね♪」

「違う。断じて違うっ。僕はそんなつもりじゃなかった。
 姉さんに恋愛感情も抱かないし、欲情だって2度としない。
 僕は姉さんが嫌いで、嫌いで、嫌いで――」
 デモホントウハ、ボクハズット、ネエサンノコトガダイスキデ――

「ね~え~? ヒトリでぶつぶつイってないで、ワタシとアソびましょう?」 
 僕が自分のとった行動に混乱している間に、姉さんは全裸になっていた。
「あのコロにクラべて、ワタシはキレイになったかな? たーくん♪」
 姉さんが狂う前。思春期の僕が欲情してしまった、オンナの身体。
 あの頃よりも幾分が発育した、艶めかしい姿の姉さんが、そこに居た。
 僕は抵抗することも忘れ、その姿に見蕩れて――見惚れていた。


「たーくん、ダイスきです♪ たーくん、アイしてます♪
 ワタシとイッショに、カイラクのナミにノまれて、オボれましょう♪
 ワタシとフウフになって、シぬまでずっと、イッショにクらしましょう♪」
「………………っ!」
 無意識に姉さんの身体を包みこみそうだった両腕を、なんとか直前で止めて。
 僕はギリギリのところで、いつものように姉さんの身体を突き飛ばした。

 残念そうな顔の姉さんを視界の端に捕えながら、僕はただひたすらに祈った。

――この手がいつか、姉さんを突き飛ばさずに、抱きしめてしまいませんように。


                          ― Which is it that an unpleasant? ―

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最終更新:2010年03月07日 20:51
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