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『きっと、壊れてる』第3話(1/5) sage 2010/06/12(土) 01:14:57 ID:PRdamgs/
夢を見ていた。
あれはまだ俺達が10歳頃の事だったか。
両親の提案で、家族全員で人気テーマパークへ行く事になった。
海外生まれで近年日本に上陸してきた遊園地だ。
休日だった事もあり、園内は人で溢れ、乗り物も1、2時間待ちだったのを覚えている。
滝を模した急斜面のコースを落下するのが売りの人気アトラクションが観える。
「父さんはここで待っているから、みんなで乗ってきなさい」
これから行列に並ぼうとしたその時、父親が言い出した事だ。
「え~!お父さん乗らないの?」
家族のひんしゅくを買いながらも父親は少し疲れたから、と言って断固拒否した。
後にわかる話だが、父親はどうやら高い所が苦手らしかった。
あまり納得もしていなかったが、時間ももったいないので家族で相談の結果、俺と茜が二人で乗って来る事になった。
残りの家族はジャングルに似せた川を船で冒険するアトラクションに乗る事にしたらしく、
2時間後にこのテーマパークのシンボルでもある、お城の正門の前で待ち合わせをする事になった。
「浩介、茜をよろしくね」
母親にそう言われるまでもなかった。
普段からあまり言葉を発さず表情も豊かでない茜を、俺はこの頃から何かと気に掛けていた。
茜は学校でまったく友達がいないわけでもなさそうだったが、基本的には学校からまっすぐ家に帰り、
一人でジグゾーパズルや本を読んでいる事が多かったからだ。
「茜は本当にこれ乗りたかったのか?恐かったら父さん達と行ってもいいんだぞ?」
「ううん、これ乗りたい」
意外にもハッキリと意思表示をした茜を見て、俺は少し驚いたが、
正直一人で乗るのも心細かったので、助かったと思いながら行列へと駆けた。
行列の中110分間も待ち、心身共に疲れ果てた頃ようやく順番が回ってきた。
一応兄として妹を気遣う。
「茜、疲れたな」
「ううん、茜は大丈夫。お兄ちゃんがいるから」
別に退屈させないほど喋り続けた覚えはないが、茜には心地よい時間だったようだ。
茜は、並んでいる最中、少しの疲れも見せずに順路に設置されている人形達を何も言わずジッと眺めていた。
俺はすぐに飽きてしまった気がするが、茜は気に入ったようだった。
イカダをモチーフとした乗り物に乗り込む。
このアトラクションのコース全体は人口の山のようになっていて、最後の大滝が目玉となっている。
途中小さいドロップはあるものの絶叫というほどでもなく、子供でも楽しめる仕様なのだ。
ちょうど先頭の座席に座る事ができ、俺は浮かれていた。
「見ろよ!先頭だぜ!やったな」
「うん、良かったね。お兄ちゃん」
幼い二人の冒険者を先頭にイカダは進む。
途中、主人公のウサギが意地悪なキツネとクマを翻弄している様がレールのサイドにある、動く人形達で表現されていた。
ストーリーがわかりやすく、これもこのアトラクションの人気の一つなのだろう。俺達は夢中になっていた。
そして、物語はクライマックスへ。
主人公のウサギが、キツネとクマに捕まってイカダに括り付けられ川に流されてしまう。
この先には、国外にも名を轟かす巨大な滝しかない。
狭いトンネルの中をイカダは徐々に上へ上へと昇っていく。
俺はいつの間にか茜の手をしっかり握っていた。
まるで自分が本当の冒険者になったようで、この先に待ち構えている巨大な滝をどう乗り越えるか、
どう茜を守るか、という事を必死で考えた。
考えた末で当時の俺が出した答えは、茜が怖がらないように、安心できるように、という事だった。
今思えば、茜は兄に手を握られるのを嫌がってもおかしくない年頃だったが、
俺の手はしっかりと握り返され、二人は滝壺へと堕ちていった。
612 『きっと、壊れてる』第3話(2/5) sage 2010/06/12(土) 01:16:31 ID:PRdamgs/
「高かったな!落ちた時、水がちょっとかかっちゃったよ」
アトラクションの出口から外に出ると、辺りはすでに暗くなっていた。
今思うと、テーマパーク内とはいえ、子供だけでこんな暗い所を歩かせるなんて我が親ながら適当だ(苦笑)
茜と手を繋いだまま、待ち合わせ場所であるライトアップされたお城へ向かった。
しかし、約束の時間を過ぎても、正門の前にいるのは俺と茜だけだった。
茜はこの状況でも不安はないのか、近くを通りかかった犬のキャラクターの着ぐるみに興味津々で、
俺の手をシッカリと握ったまま立ち止り、着ぐるみの方をジッと見つめていた。
長い鼻に垂れ下がった耳、半開きな目。どこに魅力を感じるのかよくわからなかったが、茜は気に入ったようだ。
「あの犬が好きなのか?」
コクッと頷ずいた茜を見た俺は、『じゃあぬいぐるみを買ってやる』と言った。
両親から念のためにお金を預かっていたし、約束の時間に遅れてくる方が悪い!、と思った俺はお土産屋さんに茜を連れて行き、ぬいぐるみを選ばせた。
この時は、女子はなんでこんなに人形の類が好きなのだろうと思ったが、今思えば男子がヒーロー物を好きなのと同じ理由だろう。
「ありがとう!お兄ちゃん!」
買った人形を受け取った茜は、今まで聞いたこともないような大きく明るい声で俺に礼を言った。
この笑顔は、この夢を観る前からずっと憶えていた。
純情無垢で、心の底からの感謝の意。
俺はこの時、生まれて初めて女の子を可愛いと思った。
「お父さん達どこだろう?」
「お兄ちゃん、あっちの方に似た人がいたよ」
「ほんとか!?じゃあ行ってみよう」
お土産屋を出て、迷子の家族探しを再開した俺らは、1時間後やっと合流する事ができた。
どうやらアトラクションが俺らの乗った物よりさらに混んでいて、ここに来るまでの道も何回か間違えてしまったらしい。
無断で人形を買ってしまった事を叱られるかも、と思ったが待たせてしまった引け目を感じているのか御咎めなしだった。
こうして、俺達の遠足は幕を閉じた。
余談だが、この日茜に買ってあげた人形は、数年後散々な目に合う。
その時茜は、深くて黒い、すべてを飲み込むような瞳で、ただジッと対象を見つめ一言「壊さないで」と呟くだけだった。
「兄さん朝よ、起きて」
懐かしい夢を見ていたからか、茜の声がいつもより大人っぽく聞こえた。
「ん~。」
「起きなさい。今日は朝から打ち合わせだって言ってたでしょ?」
「面倒だなぁ」
本当は後3時間ぐらい寝ていたいが、『眠いからサボってしまおう』では通用しないところが社会人のツラい所だった。
しかし、浩介は茜には家族的な意味で頭が上がらなかった。
毎朝、浩介より1時間以上も早く起床し、朝食と浩介の弁当を作って、洗濯をする合間に浩介を起こす。
仕事をしながら簡単にできる事ではないな、と浩介は思っていた。
お嫁にもらうにはこんな女性が良い、と思うのは事実だったが、それを茜に伝える勇気は浩介にはなかった。
居間のテーブルで朝食を取る。
村上家の朝食は基本的にはパンだ。
和食等も茜に言えばおそらく作ってくれるが手間がかかるため、浩介はこれ以上茜に負担を掛けるのを嫌い懇願した事はなかった。
「うまいな、このパン」
いつもとは何かが違う味に思わず口を開いた。茜もそう感じたのか、コクと頷いた。
「近くにね、『ゾウのパン屋』っていうパン屋さんができたのよ。そこのベーグル」
「なんで『ゾウ』?」
「さぁ?優しそうだからじゃないかしら?」
「あいつら、キレると恐いゾウ・・・」
自分でも寒いと思った浩介だったが、たまには普段頑張ってくれている茜にサービスをしたつもりだった。
おそるおそる茜の顔を見る。
「馬鹿なこと言ってないで、早く食べて支度して。私も今日は早く出るから」
「・・・」
滅多に言わない冗談をバッサリ斬られた浩介は、二度と言うまい、と心に誓いパンを口に押し込んだ。
そのベーグルは夢の中の遊園地で食べたチュロスより、優しく甘く浩介には感じたのだった。
613 『きっと、壊れてる』第3話(3/5) sage 2010/06/12(土) 01:17:26 ID:PRdamgs/
「兄さん、明日デートしない?」
「デート?」
夕食を食べ終わり、居間でパソコンをいじっていると、妹からの提案があった。
「そう、久しぶりに湘南辺りに行って、のんびり散歩でもしたいの」
「湘南かぁ・・朝早く出るのか?」
「そう、午前中は海辺を散策して、午後はショッピングでもしたいわ」
別に今回が初めてではない。
茜は前からたびたび浩介を誘っては少し遠出の散歩や買い物を楽しんでいた。
浩介もまた、時間がゆっくり流れるようなその趣味に付き合う事で、仕事の疲れを癒す事が出来た。
明日は特に予定もないな、と頭の中でスケジュールを確認すると、浩介は同意した。
「あぁ、別に構わないよ。もうすぐ本格的に暑くなってしまうからな。行くならこの時期だ」
そう告げると、茜は少し目を細めて頷いた。最近見せる事が多くなってきた嬉しい時の表情だ。
「なんで今回は湘南なんだ?」
「兄さんは小動神社って知っている?鎌倉に近い所にある小さい神社なんだけど、雰囲気が良さそうで一度行ってみたかったの。」
「"こゆるぎ"神社っと、へぇ展望台もあるみたいだぞ。」
浩介はインターネットで茜の言った神社を調べ、茜にホームページが見えるようにパソコンを回転させた。
「もう、すぐインターネットで調べるのは良くないわ。そういうのは歩いて見つけたりする方が楽しいのよ?」
最近何かといえばパソコンで調べるクセが付いている浩介に茜は注意する。
「言われてみればそうだな、じゃあ周辺を明日適当に歩いてみよう。」
「そうね、ランチは海辺の店がいいわ。」
「それぐらい調べてもいいだろう?」
「だ~め。明日兄さんがおいしい店を足で探すのよ?フフッ」
久しぶりのお出掛けに機嫌が良いのか、茜と浩介の周りにはとても良い雰囲気が流れていた。
美佐と再会して以来、割と放っておいてしまったからな、と浩介は茜の顔を見ながら考える。
男と女の関係を抜きにしても、茜は浩介にとって今、たった一人の家族だった。
「トゥルルル~・・・トゥルルル~」
少しして、まだソファーでPCをいじっていた浩介のズボンから電子音が鳴り響いた。
浩介の携帯電話だった。
携帯のディスプレイを見る。『玉置美佐』と表示されている。
「はい」
「もしもし、浩介?今大丈夫?」
「あぁ大丈夫だ」
「え~っと・・突然なんだけど!明日どこかへ一緒に出掛けない?」
申し訳なさそうな美佐の声を聞いて、浩介は付き合っていた頃の有無を言わせない美佐の強引な誘い方が懐かしくなった。
だが、明日は茜と出掛ける約束をしているので当然浩介は断る。
「明日か?ちょっと予定が入っているな」
「あ~・・そっか!わかった!ごめんね急に」
「いや、かまわないよ」
そう言って電話を切ろうとした時、テーブルの方からいつの間にか近づいていた茜は、浩介の頬を愛しそうにゆっくりと撫でながら耳元で囁いた。
「行ってきたら?私とはいつでもデートできるわ」
意外な発言に驚いた浩介は思わず「えっ?」と声を発していた。
「ん?どうしたの~?浩介~?」
反対の耳で美佐の声が響き、浩介は我に返って茜に囁き返した。
「どういうつもりだよ?」
「別に。言った通りよ。兄さんにはいつも私の相手をしてもらっているから。久しぶりに違う女の子とも出掛けたいでしょ?
といっても、美佐さんじゃあまり新鮮味もないでしょうけど」
嫌味か、本心か、美佐をコケにされた気がして浩介は少しムッとした。
そして反抗期の少年のように茜の目から目線をわかりやすく外し、電話越しの美佐へと喋りかけた。
「美佐」
「ん~?どうしたの~?」
「やっぱり予定が空いたんだ。どこかへ出掛けよう。」
「えっ!ホント!?いいの?」
一瞬で花が咲いたように美佐の声が明るくなった。
「あぁ、ちょうど俺もどこかへ行きたいと思っていたんだ」
浩介は本心でもないが、まったくの嘘でもない決まり文句を言い放ち、待ち合わせ場所は後でメールすると言葉を残して電話を切ると、茜の顔を見た。
「あら?どうしたの?怒った顔をして。そんなに私と出掛けたかった?」
挑発するように言葉を放つ茜を見て、浩介は何か今日は違うと感じた。
まるで俺と美佐をデートさせたがっているみたいだ、とも思ったが、確証がない分、茜を問い詰めるのは難しかった。
614 『きっと、壊れてる』第3話(4/5) sage 2010/06/12(土) 01:18:20 ID:PRdamgs/
「じゃあ、そろそろ今日の分」
浩介のズボンに手をかけ、脱がし始める。
こんな空気でよくそんな事する気分になるな、と思った浩介だったが、茜が浩介の男性器を優しく撫で始めると、
いつの間にか深い深い森の中で迷子になった子供が、やっと探し出してくれた母親に甘えるような気持ちになった。
「兄さん」
手でむき出しの浩介のモノを愛でながら、茜は言う。
「ん?」
「他の女の子と遊びたかったら、遊んでもいいのよ?でもね、私といる間だけは私の事だけ考えてね?この世界で二人だけなのよ、
こうしている間は。誰にも邪魔できない二人だけの世界。」
茜はそう言うと、浩介の物に『チュ』っとキスをしてから口に含み、わざとなのか、『ジュポジュポ』と激しい音を立てながら奉仕を始めた。
「ウゥ・・」
浩介は茜の髪を撫でながら、奉仕の感触に全神経を集中させる。
「ジュポ・・ジュポ・・ピチャ・感じているのね、かわいい」
兄を馬鹿にするな、と思った浩介だったが、普通の兄妹はこんな行為をしない事を思い出し、無言のまま茜の服を脱がし始めた。
着衣のまま絡むのが好きな浩介を知ってか、茜は家の中でも常にワンピースかスカートだった。
今日は白い長袖のブラウスに黒い膝上丈のスカートを穿いていて、浩介はブラウスのボタンを一つずつ解放して行く。
新しく買ったのだろうか、今日の茜は薄いピンク色の下着を身に付けており、爽やかで可愛らしい妖艶さがそこにはあった。
ブラジャーを少しずらして、乳首を外に出すと着衣のまま淫らな事をしているという実感が沸き、浩介はより興奮する。
手を伸ばしてスカートを捲った。小振りで赤ん坊のように綺麗で、マシュマロのように柔らかい尻を下着の上から鷲掴みにし、
揉みしだきながら、浩介は尻をこちらへ向けるように、と夢中になって口で奉仕している茜に言った。
血の繋がった兄妹が、お互いの恥部を懸命に嗅ぎ、舐める、味わう。
この世界ではそれが常識で、二人の愛だった。
興奮が抑えられなくなってきた浩介は、狭いソファーの上で強引に二人の体勢を正常位に変えて、ショーツを左足だけ脱がし右足に括りつけると、
無我夢中で茜の膣に自分の物を押し込んだ。
「アンッあせらないで?」
強引な行動を窘めつつも、少し嬉しそうな表情をしている茜に浩介は疑問を投げかける。
「茜、一つ質問してもいいか?」
そう言いつつも浩介は腰を最初から激しく、丁寧に、確実に動かす。
「ンッンッ・・・・ンッ・なに?・・ンッ」
「俺は・・なんでこんなにもお前の身体で発情する?」
本気で疑問に感じた事だった。美佐に出さえ、こんなに欲情を抱いた事はない。
「フフッ」
滅多に見せない笑顔をみせると、茜は掴んでいたベットのシーツを離し、浩介の体を手繰り寄せて、耳元でこう囁いた。
「おもしろい事を聞くのね、兄さんは。いい?愛する人間に一番発情するのは、人間として正常な機能だわ。」
「愛する人間?」
「余計な事は考えなくてもいいの、私が導いてあげるから。さぁ、今日も膣内に出して?」
そう言うと、茜は背中をベットに戻して微笑んだ。
「・・・」
乱れたブラウスから覗く綺麗な色をした乳首と、既にシワになっているであろうスカートから覗く太ももを見た浩介は、
茜の手首を握り、固定した体勢で、何も考えられなくなるように腰だけを懸命に動かし、すべてを茜の膣内に解き放った。
茜の言った『愛する人間』という言葉は、『家族』を指しているのか『男女』を指しているのか、という事と、
自分は茜に対してどっちの感情を抱いているのか、という事が、最後まで浩介にはよくわからなかった。
615 『きっと、壊れてる』第3話(5/5) sage 2010/06/12(土) 01:19:38 ID:PRdamgs/
茜はいつもの通り、浩介の腕枕で余韻に浸る。
「兄さん、『死体検死医』って読んだことある?」
「いや、ない。医療物か?」
「そう、医学博士で変死体解剖34年の経験を持つ著者が、死亡推定時刻の割り出し方とかを書いているらしいわ。」
「死亡推定時刻の割り出し方ねぇ・・そんな物知ってどうするんだ?」
「解答者の解答法を知っていれば、問題を出す方も問題を難しくする事は可能よね?」
少し悪寒がしたのは気のせいだろうか、確認するように浩介は軽口を叩く。
「まるで誰か殺してしまおうって言い草だな」
「さぁね・・・美佐さんにでも試してみようかしら。私だって嫉妬ぐらいするのよ?」
茜の表情はいつもと変わらなかったが、声のトーンが微妙に違うのを察知した浩介は、すぐさま本気で妹を叱った。
「おい茜!」
茜は真剣になった兄を見て満足したのか、一瞬で元の声のトーンに戻すと、浩介の髪を撫でながら囁く。
「フフッ安心して?兄さん。私は暴力が嫌い。それに漫画やドラマじゃあるまいし、素人がプロの監視医の目を誤魔化すなんて不可能だわ」
「それに」
「それに?」
「私にはそんな事をする理由がないもの」
嫉妬は理由にならないのか、と浩介は言いたかったが、話を蒸し返すのを嫌い、違う話題を振ろうと茜に語りかけた。
「茜」
「何?またシたくなったの?」
「・・違う。お前七夕の話って知っているか?」
「七夕?」
「そう、七夕」
「織姫と彦星が年に1度会う話じゃなくて?」
やはり普通そう答えるよなぁ、と思いながらも浩介は続けた。
「茜は七夕の日に雨が降ると『年に一度なのに織姫と彦星がかわいそうだ!』と言うのはおかしいと思うか?」
「よくわからない質問ね。でもおかしいのではないかしら? だって私達から見えないだけで、実際は愛し合ってるわけでしょう?」
「やっぱり、そう思うか。じゃあ誰にも覗かれる事なく二人っきりでいられる織姫と彦星は逆に雨が降っていた方が良いと?」
「それも違うと思うわ。」
「じゃあ、どっちが良いんだ?」、
「そもそも、実は雨が降ると、天の川の水かさが増して織女は向こう岸に渡ることができなくなるって聞いたことがあるわ。
それに例え私達の場所から見えなくても、海外や晴れている国内に移動すれば天の川が見えるじゃない」
なるほど、と思った浩介を見つめながら茜は続ける。
「・・・それに・・・二人はね、きっと祝福してほしいのよ」
「祝福?誰に?」
「存在する物すべてに。愛し合っている自分たちを観てほしいの」
「いや、そもそも天の川で会うのは親が決・・」
「自分達だけの世界を壊されたら、きっと生きていけないと思うから」
「・・・」
茜が彦星と織姫を、おそらく浩介と茜に当てはめて考えているのを感じて、浩介は何も言えなかった。
周囲に明かす事はできない兄妹という事実。
その血と言葉の鎖は浩介と茜に一生絡みついて離れない。
浩介は茜の七夕に対する回答が今一つ何を言いたかったのか読み取れなかったが、
- 二人が永遠に天の川で会わなければいけない事だけは、理解できた。
第4話へ続く
最終更新:2010年06月30日 18:58