三つの鎖 23 後編

260 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01:30:57 ID:lvsVY0kD
 耕平が部屋を出ても梓は見送らなかった。
 「梓」
 「見送りはいらないって耕平さんも言ったじゃない」
 そう言って梓は僕にしなだれかかった。梓の素足が僕の足に絡まる。そのまま僕に頬ずりする。
 「梓。離れて」
 「いや」
 僕の言葉を無視して抱きつく梓。
 この一週間、梓はずっとこの調子だ。
 看病してくれるのはありがたいし嬉しい。実際問題、体調不良は深刻だった。今でこそ多少ましになったけど、最初は立ち上がるのもおぼつかなかった。
 ただ、多少は体調が良くなった今でも僕にべったりとくっついてくる。
 「兄さん」
 梓の白い指が僕の頬に触れる。冷たくて滑らかな感触。
 僕を見上げる濡れた瞳。上気した頬。
 梓は僕の頬を愛おしそうに撫でる。僕はその手をそっと掴み、ゆっくりと引き離した。
 不満そうに僕を見上げる梓。
 「そんなに私が嫌なの」
 そう言って梓は僕に抱きついた。柔らかい感触。背中に梓の腕が回される。
 「違うよ。風邪がうつる」
 「嘘つき」
 背中にまわされた梓の腕に力がこもる。
 梓は僕を見上げた。無表情な表情の中で瞳だけが強烈な感情を放っている。
 劣情なのか、憎悪なのか。分からない。
 それでも、こんなのは良くない。
 僕と梓は兄妹だから。
 「梓。離して」
 梓は何も言わずに僕の頬に触れた。冷たい感触。
 梓が口を開こうとした瞬間、電子音が部屋に響く。
 僕の携帯電話。
 僕は手を伸ばしディスプレイを見た。
 洋子さんだ。
 「もしもし」
 『幸一君。体調はどうだい?』
 元気そうな洋子さんの声。
 少し聞こえにくい。にぎやかな場所にいるようだ。
 『実は今空港にいる。これからアメリカに戻る』
 そういえば洋子さんは一旦アメリカに戻って、仕事を辞めるための引き継ぎをすると言っていた。
 『三週間ほどで帰国できると思う。それまで夏美を頼むよ』
 「はい」
 『ちょっと待って。娘と代わるから』
 僕から離れる梓。不機嫌そうな視線が突き刺さる。
 『あ、あの、お兄さん?』
 久しぶりに聞く夏美ちゃんの声。
 それだけで涙が出そうになる。
 「うん。久しぶりだけど、元気にしてる?」
 『も、もちろんです!あの、お兄さんの体調はどうですか?』
 「大丈夫。もうすぐ登校できると思う」
 明日、とは言えない。
 それぐらい今の僕の体調不良はおかしい。今までに経験した事の無いぐらい長引いている。
 『あ、あの、お兄さん』
 「っ!」
 股間に服越しに何かが触れる感触に思わず声を漏らしそうになる。
 梓が、僕の股間をパジャマの上から触れている。
 『お兄さん?』
 「い、いや、何でもない」
 膝を閉じようとするのを梓は体を入れて防いだ。
 そのまま下のパジャマを無理やりおろし、トランクスの上から剛直を撫でる。
 『あ、あのですね』
 梓の白い指がトランクスの隙間から剛直に直に触れる。
 ひんやりとした感触にうめき声が漏れそうになる。
 『あの、梓がいいって言えばですけど』


261 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01:32:46 ID:lvsVY0kD
 梓の白い指が僕の剛直を擦る。
 僕は携帯電話を持っていない手で梓を引き離そうとするけど、離れない。
 『そ、その、今度、お見舞いに行っていいですか』
 梓の赤い舌が剛直の先端をぺろりと舐めた。
 「っ!」
 『え?お、お兄さん?大丈夫ですか?』
 携帯電話から心配そうな夏美ちゃんの声。
 「だ、大丈夫だよ」
 必死になって梓を引き離そうとするけど、体調不良に加え片手では引き離せない。
 梓は剛直を舐めながら擦る。その刺激に意思とは無関係に剛直が固くなっていく。
 「お、お見舞いだよね」
 『は、はい』
 足を使って梓を引き離そうとするのを、梓はかわした。僕の足がむなしく宙を蹴る。
 仕返しとばかりに梓は剛直の先端を咥えた。
 熱くて湿った感触に体が震える。
 「っ、もう治ると思うから、遠慮しとくよ」
 『…そうですか』
 残念そうな夏美ちゃんの声に胸が痛む。
 「っ!」
 『お、お兄さん?』
 梓の舌が剛直の先端を激しく舐める。
 「ちゅっ、じゅるっ、んっ」
 しゃぶる音が微かに聞こえる。
 「ご、ごめん。電池が切れそうだからもう切るよ。洋子さんによろしく」
 『は、はい。お大事――』
 最後まで聞かずに僕は電話を切った。
 携帯を投げ捨てるように置き、両手で梓を引き離す。体調不良でも、両手なら何とかなる。
 地面にペタンと座り僕を無表情に見上げる梓。その瞳が奇妙な光を放つ。
 抵抗したせいか、頭痛が激しい。心臓がでたらめに暴れる。息苦しい。
 それらを無視して僕は梓を睨んだ。
 「梓!なんて事をするんだ!」
 ズボンを上げようとする僕の手を梓の手が押さえる。
 無視してズボンを上げようとした瞬間、手に激痛が走る。
 痛みをこらえて手を見る。
 手首の関節が、外されている。
 「暴れないで。後ではめるから」
 そう言って梓は僕の股間に顔をうずめた。
 痛みを無視して梓を引きはがそうとするけど、片手では何もできない。
 梓の白い手が僕の剛直を握る。
 「っ!止めろ!」
 僕の言葉を無視して梓は再び剛直を咥えた。
 「んっ、ちゅっ」
 ざらりとした舌の感触に背筋が震える。
 僕を見上げる梓の視線。熱っぽい光を孕む瞳。
 むき出しの華奢な肩。白くて柔らかそうな素足。
 頭がおかしくなりそうな嫌悪感と、確かに感じてしまう快感。
 「っ!いい加減にしろ!」
 無事な方の手で梓の髪を掴み引きはがす。
 「いたっ!!」
 梓の悲鳴。それでも僕は手を離さない。
 艶のある綺麗な長い髪。
 「自分が何をしているのか分かっているのか!?」
 梓は涙の浮かんだ瞳で僕を睨んだ。
 「なによ。妹にしゃぶられて大きくしているくせに」
 「梓!」
 「痛いから離して」
 痛みを全く感じさせない梓の声。
 僕は奥歯を噛みしめて梓の髪を離した。
 その手に梓の両手が伸びる。
 「あぐっ!?」


262 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01:33:56 ID:lvsVY0kD
 再び手首に激痛が走る。
 「この一週間寝てばかりで溜まっているでしょ?大人しくして」
 梓は再び僕の足の間に体を滑り込ませた。
 引き離そうとするが、痛めつけられた両手では何もできない。
 「んっ、ちゅっ、ちゅっ、はむっ」
 僕の剛直を咥え、しゃぶり、舐める梓。
 「っ!止めろ梓!」
 足で梓を離そうとするけど、できない。
 執拗に剛直の先端を舐める梓。さらに白い手が剛直を上下に擦る。
 梓の唾液でべとべとの剛直と梓の白い手が滑らかに滑る。
 血のつながった妹に口でされる嫌悪感と背徳を含む快楽。
 「ちゅっ、んっ」
 僕を見上げる梓の濡れた瞳。
 視線が合った瞬間、感じてはいけない快感が脳天を突き抜ける。
 梓に咥えられたまま、僕は達した。
 「んっっっ!?」
 驚いたような梓の声。
 溜まっていたせいか、自分でも驚くほどの量が出る。
 「んっ、ごほっ、んっ」
 苦しそうにむせる梓。
 梓の白い喉が小さく震える。
 「んっ、こくっ」
 懸命の喉を鳴らし僕のを飲み込む梓。
 「っ、やめっ、ろ」
 声が震える。
 僕の言葉を無視して梓は最後まで飲み込んだ。
 口を離す梓。口の端から白濁が微かにこぼれる。それを梓はぺろりと舐めた。
 「ふ、ふふ」
 梓は座ったまま僕を見上げて笑い声を洩らした。
 「ふふっ、あははっ。さすが私の兄さんね。妹にしゃぶられてこんなに出すなんて」
 梓の言葉が胸に突き刺さる。
 「ねえ、どうだった?血のつながった妹に口でされるのってそんなに気持ち良かったの?」
 僕は唇をかみしめた。
 「男は刺激されるとこうなるだけだ」
 「なによ言い訳して。認めなさいよ。妹にしゃぶられて出しちゃうほど気持ちよかったんでしょ?」
 梓は立ち上がって僕の手を握った。激痛とともに手首がはめられる。
 「っ!」
 「ねえ。どうなのよ。気持ち良かったからこんなに出たんでしょ?」
 もう片方の手も激痛とともにはめられる。
 手早くズボンをはきなおし、僕は梓を睨んだ。
 梓は恍惚とした表情で僕の視線を受け止める。
 「兄さん。あんな女より私の方が気持ち良かったでしょ」
 その言葉に頭が沸騰する。
 「夏美ちゃんの方が気持ち良かった」
 梓の表情が凍りつく。顔から血の気が引く。
 痛いほどの沈黙が部屋を満たす。
 どれぐらいの時間が立ったのだろう。梓は口を開いた。
 「そう。そうなの」
 静かな梓の声。
 でも、そこには怖気が走るほどの激情が込められている。
 今更になって言ってはいけない事を言ってしまった事に気がついた。
 でも、もう引けない。
 無表情に僕を見つめる梓の視線を僕は正面から受け止めた。
 梓の手が僕にゆっくりと伸びる。
 僕の頬に触れる直前、一階で物音がした。
 玄関の開閉の音。階段を上る足音。
 足音は僕の部屋の前で止まり、ドアが開く。
 「あ、起きてたの?」
 僕たちを見て京子さんは微笑んだ。
 「幸一君。立てる?」


263 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01:35:04 ID:lvsVY0kD
 「…はい」
 「じゃあ着替えてくれる。今から病院に行くから」
 京子さんは僕の額に触れた。
 「うーん。熱、下がってないわね」
 「お母さん」
 梓は不機嫌そうに京子さんを見た。
 「別に病院なんかに行かなくても兄さんは大丈夫よ」
 「梓ちゃん。今まで幸一君がこんなに体調不良が続いた事なかったでしょ。もしかしたらただの風邪じゃないかもしれないから、一応お医者さんに診てもらいましょ」
 京子さんの言う事は正論だ。
 梓はそれ以上何も言わなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 兄さんが診察を受けている間、私と京子さんは待合室で座って待っていた。
 この病院に最後に来たのは、兄さんが入院して、いえ入院させて以来だ。
 「梓ちゃんごめんね。幸一君の看病をまかせっきりにして」
 「気にしないで」
 むしろ私は兄さんを一人占め出来て嬉しかった。
 寝ている兄さんの傍にいるだけで幸せだった。
 熱を帯びた兄さんの大きな手を握っているだけで幸せだった。
 苦しそうな兄さんの寝顔を見ているだけで幸せだった。
 「梓ちゃん?」
 京子さんは怪訝な表情で私を見た。
 「兄さん大丈夫なのかしら」
 私を無表情に見つめる京子さん。その表情からは何を考えているか分からない。
 「加原さん!」
 私と京子さんは声の方向を振り向いた。そこには看護師の女性がいた。
 「ちょっと行ってくるね」
 京子さんは立ち上がって看護師の方へ歩いて行った。
 そういえばここは京子さんが働いている病院だ。
 そんな事を考えていると、京子さんが戻ってきた。
 「病院の方で欠員が出たからヘルプで働いてくるわ。悪いけど幸一君をお願い」
 「分かったわ」
 「何かあったら連絡してね。帰るのは日付が変わるころだと思う」
 そう言って京子さんは去って行った。
 病院の待合室は騒がしい。そんな中一人で私はぼんやりとしていた。
 脳裏に浮かぶのは今日の事。
 兄さんの精液の味。
 私は唇をなぞってため息をついた。
 素直に嬉しかった。
 兄さんは私で気持ち良くなってくれたんだ。
 妹の私を女として見てくれたんだ。
 それなのに、兄さんの言葉が脳裏に浮かぶ。
 (夏美ちゃんの方が、気持ち良かった)
 私は唇をかみしめた。
 惨めな気持ちが私を襲う。
 屋上で兄さんが夏美を犯している光景。
 あれがどれだけ私を打ちのめしたか。
 夏美でも、兄さんに抱いてもらえる。春子も、兄さんに抱いてもらった。
 私も兄さんに抱かれたい。犯されたい。滅茶苦茶にされたい。
 何でなの。兄さんから見て、私に魅力が無いの。
 兄さんになら何をされてもいいのに。
 何でそこまで兄さんは嫌がるの。
 血のつながった妹を抱くのが、そんなに嫌なの。
 他人が決めた禁忌なんて、無視すればいいのに。
 そんな事を考えていると、兄さんが診察室から出てきた。ふらつく足取りで私の隣に座る。
 「どうだったの」
 「ただの体調不良だって」
 兄さんは怪訝そうに周りを見渡した。
 「お母さん、お仕事に行ってくるって。急に欠員が出たらしいわ」


264 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01:35:52 ID:lvsVY0kD
 「そう」
 短い兄妹の会話。
 もっと兄さんとお話したい。兄さんの声を聞きたい。
 「加原さんの保護者の方いますか?」
 受付の人が声を張り上げる。
 私と兄さんは顔を見合わせた。
 「私、行ってくる」
 私は立ち上がり受付に向かった。
 「ええと、保護者の方ですか?」
 「妹です。付き添い出来ました」
 私を見て不思議そうな顔をする受付の人に私は言った。
 「診察室に入っていただけますか。先生がお呼びです」
 私は診察室に入った。そこには初老の医者がいた。
 「どうぞお座りください」
 私は言われるままに腰をおろした。
 「兄さんに何かあったのですか」
 「ああ、心配しないでください。どこか悪いとかいうわけではありません」
 じゃあ一体何なの。
 「お兄さんは一度この病院に入院していますから記録が残っています。鍛えているだけあって健康そのものです。驚異的な回復力でした。ただですね、今回は何か悩み事でもあるのかと」
  最近の内科は個人的な悩みまで聞くのかしら。
 「お兄さんの体調不良ですが、どうもストレスが原因と思われる点がいくつかあります。それも強いストレスです」
 ストレス。強いストレス。
 「健康なのに体調不良が長引くのもストレスが原因だと思われます。何か心当たりはありますか」
 「ありません」
 医者は首をかしげた。
 「お兄さんが悩んでいるのでしたら、その悩みを取り除ける手助けをしてあげてください。どうも悩みをため込んでいて、それが体調不良につながっているように見受けられます」
 医者の話はそれで終わりがった。
 私は受付で精算してお薬を受け取って兄さんに近づいた。
 「梓。先生はなんて言ってた」
 「栄養のあるものを食べさせてだって」
 「そう」
 兄さんは疲れたように言った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 病院から帰るタクシーの中で兄さんは泥のように眠り続けた。
 玄関を開けて家に入ると、おいしそうな匂いがした。
 兄さんは気が付いていないようだ。私は兄さんの肩を支えながら兄さんをベッドまで連れて行った。
 「今からご飯を作るからちょっと待ってて」
 兄さんは何も言わずに眠った。その寝顔は疲れ切っているようだった。
 食卓の上にはメモが置いてある。見覚えのある文字。
 『京子さんから連絡をもらいました。よかったら食べてください』
 名前は書いてなかったけど、誰かは分かった。
 キッチンに入ると、お皿にラップがしてあった。鳥の照り焼きとサラダ。コンロには鍋が置いてある。開けるとお粥が入っていた。どれも丁寧に作られている。
 私はそれらを全て捨てた。
 手早くお粥を作り、できたそれを持って二階に上がる。
 部屋に入ると、兄さんは相変わらず眠っていた。
 私は兄さんをそっと揺らした。
 「兄さん。お粥を作ったけど食べられる?」
 兄さんは薄らと目を開け起き上った。
 「…ありがとう。いただくよ」
 震える手を伸ばす兄さんを制して、私はスプーンを握った。
 「その手じゃ食べられないでしょ」
 私はお粥を掬って兄さんの口元に持っていった。
 兄さんは私を睨んだけど、諦めたように口にした。
 「はやく良くなってね」
 私は思っていることと正反対の事を口にした。
 そんな私を兄さんは疲れたように睨んだ。


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最終更新:2010年07月12日 20:26
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