142 キモウトとひきこもり兄Ⅱ(乙女の迷走) sage 2010/08/08(日) 21:13:14 ID:/Tp8G9jG
「あの!?本当に桜ちゃんは妹なんですか?」
「お義兄さんと呼ばせてください!!!」
「あの!!好きなモノは何ですか?!!」
「好きな人とかいるんですか!!!」
「趣味は何ですか!!?」
「あの!!?」
「妹さんは家では何をやっているんですか!!!?」
やかましいわっ!!!!!
(一人side)
授業開始まであれが続いていたから正直びびってた。
俺としてはせいぜい桜と親しい子ぐらいしか話をかけてこないと思っていたけどこの結果だった。
なんとか話は出来ていたけど今はそのせいか疲労感しかない。
今は1時限目。国語をやっている。担当の先生が来たときに不審に思われたけど名前を確認されただけだった。
内容が頭に入らない。多分昼までこのまま過ぎていく勢いだと思う。それにしてもなんなんだったんだアレは?
ジャ◯ーズファンの黄色い声援みたいだったぞ?もしくは俺を韓流スターとかと思っている人がいるのか。俺は随分と出世したようだ(笑)。
だがよくみてみると男子諸君は大体桜のことを聞いてきている。はぁはーん、妹よ、色々と人気なんだな。嬉しい半面、込み上げてくるものがあるぞ。
一方女子の皆さんは俺のことを中心に聞いてきてくれている。まさかこの俺がねぇ?あれだ、妹さんと仲良くしているからその分お兄さんにもって考えだろう。
妄想はほどほどにしておかないとな。親身になってくれているんだから、ありがてぇ。ついこの前までは引き篭もりだったしな。
黒板にはどうやら簡単な古典の解説が書いてある。俺は板書しなくても桜に見せてもらえばいいのでさっきからそんな考え事をしていた。
(桜side)
どうやら兄さんは人気者になってしまいそうです。ただでさえあんなにカッコいいのに気取らないのがうけているのでしょうか?
確かに兄さんはカッコいいです。でも話はお世辞にも上手とは言えないです。
ですが私からしてみれば兄さんの声、体、優しさに触れれるだけで十分だと思います。私には特別に接してくれています。
私は兄さんにとって特別な存在なんです。兄さんは私を必要としてくれていますし私も兄さんを必要としています。
___兄さんの隣で歩くことが出来ればそれでいいのかもしれません。
ふと思いました。
ですが私の心にはひとつの不安が、兄さんが私を必要としてくれなくなったら?
もし兄さんに彼女でもできたりしたら私はどうなってしまうのでしょうか?
___そんなことは許せません。兄さんの隣にいるべきは私なんです。兄さんを守れるのは私だけです。
しかしどうすればいいのでしょうか。あのときのようには二度としたくありません。
兄さんがいるから私は生きていけるんです。
兄さんを失ったら私は壊れてしまいます。
ですが兄さんの幸せを奪う権利は私にはありません。
兄さんが壊れてしまうのは嫌です。
兄さんの辛い顔は見たくないです。
兄さんの顔は笑うための顔です。涙は似合いません。
愛しいです。ずっと前から好きです。
兄さんがどこかにいくのは寂しいです。
兄さんの隣に私がいないのは許せないです。
兄さん、兄さん、兄さん兄さん兄さんっ!!!?
___私は……どうすれば…?
143 キモウトとひきこもり兄Ⅱ(乙女の迷走) sage 2010/08/08(日) 21:16:00 ID:/Tp8G9jG
昔のことです。
兄さんには知られてないですが、今までに兄さんに告白をしようとして私に相談をしてきた豚どもがいました。
裏でその豚どもは始末しましたがそれが兄さんの陰口の原因となっていたとはそのときは思いませんでした。
3年くらい前。兄さんが中学三年生のころのことでした。
私を快く思わなかった豚どもがどこからか仕入れた嘘とホントの混ざった噂を流していきました。
次の日には同年代にはほとんど伝わっていました。私の学年にも流れてきたほどです。兄さんはそれほど女子の中では人気でした。
ですがその噂と私のせいで兄さんは……。
「あいつシスコンらしいぞ。」
「おいまじかよそれ。確かにアイツの妹可愛いよな。でも流石に妹に欲情するのは気持ち悪いな。」
「ねぇねぇ、一人くんって妹のこと好きなんでしょ?」
「うそっ~まじでぇ~きもい~。」
「まだ一緒の布団で寝ているんだって~気持ち悪いよね~。」
「うそー!!!マジありえないーーー!一人くんのこと考え直さないとねぇー?」
「カッコいいけど妹に手を出しているとかマジ最低だよねー!!!」
その日の夜はとても静かでした。
晩ご飯を食べ終わり他愛もない話していたときです。
兄さんも覚悟を決めて話してきたんだと思います。
「なぁ桜。変な噂って聞いているか?」
「うん知ってるよ。わたしとお兄ちゃんが仲がいいって噂のことでしょ♪」
「そうだな。……なぁ桜?」
「何、お兄ちゃん?」
「お前もいい加減に自分のベットで寝ろよ?俺だってもう子供じゃないし、お前ももうそういう歳じゃないだろ?」
「お兄ちゃん……。」
「いつまでも俺に甘えていたら結婚相手なんていなくなるぞ?」
「お兄ちゃん…おにいちゃん……………。」
「お兄ちゃん!!!ひどいよ!!!わたしお兄ちゃんのこと好きだよっ!?愛しているもん!!!なんでっ!??なんでダメなの?!」
「昔言ったもんお兄ちゃん!!おとなになったら結婚してあげるからなって嘘じゃないよね!?」
「おい!!!落ち着けよ桜!!お前も"そんなこと"ぐらいわかるだろ!!」
「お兄ちゃん……"そんなこと"ってどういうこと!?わたしは真剣だよ!!?お兄ちゃんのためならなんだってするもん!!キスだって……それにセックスだって!!!」
「お兄ちゃんがしたいことなんだってするよ!?これからず~~~っと一緒だよっ!!?わたしたちは結ばれる運命なんだよっ!!?」
「ねぇ?お兄ちゃん!!!わかr」
「いい加減にしてくれ!!!!!!
「もうっ……疲れた………。ごめんもう寝る……。また明日にしてくれ、桜。」
兄さんはそう言って部屋へと向かって行った。そのときの私はもう嫌われたと思っていました。
自然と涙がこぼれてしまいました。兄さんに拒絶された悲しさと叶うことのないこの気持ちを吐き出すことしかできませんでした。
「ごめんね…ぐすっ…お兄ちゃん……。ごめんね…きもちのわ…るいっ…ぐずっ…妹でごめんね……。」
涙も枯れ、心が落ち着いたので私も寝ようと兄さんと共同の部屋に行きました。
中からは微かにすすり泣くような声が聞こえてきました。
私が部屋に入ってからはその音すらしなくなり、ただ深い闇があるだけでした。
私はそのとき初めて自分が兄さんに酷いことを言っていたか理解できました。
私は自分がしたことを肯定したいがために兄さんを救うことができませんでした。
あのときの私はただの無力でわがままで兄さんの重荷でしかなかった。
ただ自分のことだけを考えて兄さんのことを考えてあげれなかった。
兄さんの苦しみを取り除けなかった。
どれだけ赦しを求めても救えぬ莫迦でした。
___でも今は違います。
144 キモウトとひきこもり兄Ⅱ(乙女の迷走) sage 2010/08/08(日) 21:18:24 ID:/Tp8G9jG
あの日からでした。兄さんに対する陰湿ないじめがあったのは。
兄さんの悪口や誰も話を兄さんの話を聞いてくれなくなり兄さんの心は荒んでいきました。
兄さんは誰も信頼できなくなっていきました。私への態度も変わっていった気がします。
急に素っ気無くなったり、暴力を振るうこともありました。
正気に戻るとすぐ謝ってくれましたがそれが逆に兄さんを追い詰めていたのかもしれません。
悪いのは全部私なのに兄さんは自分ひとりで抱え込んでしまいました。
そのせいか独り言が多くなって、会話も「あぁ。」とか「うん。」しか言わなくなりました。
___今思えば兄さんが狂い、私がこんな性格になったのはこの時期からのような気がします。
学校の2学期を過ぎた辺りからは来ることの方が珍しくなっていました。
私はなにもできないままでした。することが兄さんを傷つけていると知ってしまったからです。
兄さんはただぼんやりと外を眺めているだけでした。
そしてある日を境に兄さんは学校に行かなくなり、受験当日まで外を出ませんでした。
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私にとっても兄さんにとっても辛く嫌な過去。
これが私が背負う十字架。贖罪など到底出来ない。だから一生をかけて兄さんを守らないといけません。
罪滅しとは違います。私の人生をかけて兄さんを幸せにさせることが大事なんです。
___それがわたしにできる唯一のこと。
国語の時間もあと少しです。兄さんと昼食を摂りたいので終わったら伝えておかないといけません。
ノートを覗くとあんなに考え事をしていても意外とペンのほうは動いていたようです。
兄さんはあとで板書をみせてくれと頼むでしょうからいつもより綺麗に書いておかないとだめです。
あぁ昼ごはんが楽しみです。
(一人side)
ふぅ~やっとお昼だ。国語いい数学といい授業が辛いな~。腹もすごく減った。
一応桜と一緒に昼食を摂ることになっているので教室で待っている。桜は今係の仕事でプリントを届けているらしい。
夏休み明け最初の授業なのでどうやら短縮授業で今日は半ドンらしい。
本当はもう帰っていいらしいんだが桜が弁当を持ってきているためここで済ませようってわけだ。
そして俺のまわりには桜の友達と思われる子がきている。桜が女子の友達を持っているのはわかった。
で、なんで俺はその知らない女の子に絡まれているんだ?
「一人さんの趣味って何ですか?」
「えぇっと(なぜ苦いとこをつくんだ)……。」
「ゲームとか漫画とか…あとアニメとかだよ。」
「意外ですね。」
「ま、まぁ……ひきこもりだったし……オタクと…とか、変わらないと思うよ?」
「一人さんがオタクなのですか、少し引きますね。」
「ご、ごめんね。気持ち悪いよね?」
「まぁ……そんなとこです。そんな汚らしい趣味は桜ちゃんも嫌がっていると思いますよ。」
「…………(うわぁーこの子的確に俺のHPを削ってきているもうだめだ)。」
「どうしたんですか?一人さん。」
「えと、それで、俺に何か用かな?って思ってた。」
「あぁ~そうでしたね、私も桜ちゃん待っているんです。いつも一緒に食べているので。」
「あ!じゃ、じゃあ、いつも桜と食べているのは君なの?」
「はい、そうですよ。大体二人か三人で食べてます。」
そうだったのか~、桜は物静かだからこういうのは予想がつかなかった。それに話がそれて良かった。
意外と仲良くやってるいるのかもな、ちょっと安心した。
「一人さんこれからよろしくお願いします。私の名前は上田紗耶といいます。気軽に呼んでくださいね。」
「こ、こちらこそよ…よろしくね紗耶ちゃん。」
145 キモウトとひきこもり兄Ⅱ(乙女の迷走) sage 2010/08/08(日) 21:19:57 ID:/Tp8G9jG
紗耶ちゃんか…どうやら女子のリーダー格らしい。とにかく委員長気質だろうな。でも根は優しそう。
そして結構可愛い。桜とか麻奈ちゃんとはちょっと違う可愛さ、でも桜は可愛いというか綺麗って言ったほうがよさそうだな。
不思議な麻奈ちゃんと活発紗耶ちゃんか……高校生活も面白くなりそうだ。この勢いなら彼女もできるのかもしれん。
スタスタスタスタスタ!!どうやら桜が戻ってきたみたいだ。
(麻奈side)
朝一人くんと話すときは緊張しちゃっていつもと違うキャラになっちゃったけどおかしくはなかったと思う。
私は結構恥ずかしがり屋だし、内気だからなんであんなに積極的になれたのか私自身不思議だった。
どうやら一人くんは桜たちのグループでお昼を食べるらしい。
このままでは一人くんと一緒にご飯食べれないや。紗耶ちゃん意外と怖いし、あまり仲良くないし…うぅ~。
こうなったら当たって砕けろの勢いしかないのかな~でも私ビビリだし、あぁ~不甲斐ないよーーーー。
桜も戻ってきたみたいだし……桜に頼んでもなんか気まずくなりそうだし、私ってもう詰んだの?
「兄さん待たせてしまってすみません。さぁ食べましょうか。」
「桜さんおかえり。」
「はい、ありがとうございます。紗耶も待っていてくれたんですね。」
「まぁね、あんたの兄さんとも話していたから暇じゃなかったし。」
「兄さん、わざわざ紗耶の相手をしていただいてすみません。」
「相変わらずあんたは私にケンカを売るのが好きなのね。一人さんも私と話していて楽しかったでしょ?」
「う、うん……まぁ面白かったかな~?!紗耶ちゃんとりあえずご飯にしよう?それと麻奈ちゃんも一緒に食べない?」
ウワァァァンもうこの流れだと入る場所ないよーーー。いっこ前の席なのに~っ!!一歩が遠いよ~~!!
とりあえずジュースでも買って作戦考えないと~。
ふぇ!?一人くんがこっち見てる。これはチャンス?それとも……。
「麻奈ちゃん……聞いてる?もしかして俺ハブられてるの?」
「兄さん、麻奈にはよくあることです。自分の世界に入りすぎて言葉が聞こえないんです。」
「青木さんって素でこんなのかしら?意外だったわ。」
「麻奈ちゃん~起きてる~?お~い!!」
ど、どうしよう今なら一緒にごはん食べたいって言えるけど…あぁもう…紗耶ちゃんがいるとどうもだめだ~。
どうしよ、どうしよ。と、とりあえず一人くんに声かけてみなきゃ…ってあれなんでこんなに一人くんの顔が近いの?
え!?どういうことさっきまで1mの距離があったのに?!
「麻奈ちゃん~大丈夫?ペタッ」
今一人くんが触ったの?えっまさかそんな。あっこれ一人くんの手だ。あぁ頬が紅くなってくるぅ~。
「あ……。」
「麻奈ちゃん?」
私、もうダメかも
「あぅ、あ!?いっいやぁあああああああああああああああああ??!!!」
バタンッ
(一人side)
「桜!!!麻奈ちゃん倒れたぞ!!!どうすればいいんだ!!?」
「大丈夫です兄さん。すぐ起きるから気にしなくていいです。」
「む・・・むきゅ~。う・・うぅ、あれ?私また倒れて…えと…そうだ。恥ずかしくなって…。」
「ほ、ホントだ…そっそうだ麻奈ちゃん?」
「ふ、ふぇ!?一人くん!?何かな!!?」
「い、一緒に御飯食べない?」
最終更新:2010年09月12日 21:16