145 キモウトとひきこもり兄Ⅳ sage 2010/09/25(土) 01:35:39 ID:IEd262kT
(一人side)
「兄さんお出かけですか?」
「あぁそうだよ」
「どこにいくんですか?」
「えぇっとまぁ散歩みたいなもんだよ」
「そうですか、車に気をつけてくださいね。あ、すぐ帰ってきますよね?」
「たぶん大丈夫だと思うよ。」
「ならいいです。行ってらっしゃい兄さん。」
「ん、行ってくる~。」
バタンッ!!
こんな風に外に出たはいいものの身体からは汗がダラダラ出ている。
暑い……これじゃ麻奈ちゃん見つける前に俺が干からびるぞ……。
携帯とかほとんど使わないからアドレスも聞いてないし…というか持ってきてないな…これじゃ探すのにも一苦労だ。
あたりを見回しても住宅が並んでいるだけでこの暑さの中で外に出ているのは俺ひとりだけだった。
とりあえず日陰でも探して休まないと死にそうだ……。
「あちぃ……それにセミさんも頑張りすぎだろ…。お前達死んでいいころじゃないのか……?」
時間は12時を過ぎた頃。
空から照りつける太陽が燦々としており身体から水を奪っていく。
アスファルトから映える陽炎は頭の中のようにゆらゆらとしている。
意識もなんだか朦朧としてきた。
少し先に人がいるようだけどかすんで見えない。
「あ!!!一人くん!!!!こっちです~!!!!こっち~~~!!!!」
スタタッ
どうやら天使が迎えに来たのかもしれない。そうだ、桜のこと頼むように言っておかないと……。
「天使さん、妹のこと頼みます…。」
「何言ってるですか!!!私ですよ!!麻奈です!!!」
「麻奈ちゃん…?!麻奈ちゃんって天使だったの……?」
「ふざけたこと言ってないで早く家にきてください!!!水ならいくらでも出しますから!!」
「うおっ!?麻奈ちゃん引っ張らないで!!!痛い!!痛いって!!!」
半ば強引に麻奈ちゃんに連れていかれた。意外と力が強い。怒らせたら怖いタイプなのかな?
「はいお茶です!!!それにしても体力ないですね~もっとガツーンとしないと女の子を守れませんよ!!?」
「お茶ありがと、なんだか最近体の調子が悪くてさ、まだ学校に慣れてないのかもしれないからね。」
「そうなんですか~。なら一回ゆっくりしてからケーキづくりの練習にしましょうか?」
「いや大丈夫、お茶飲み終わるころにはよくなってるから。」
「なら大丈夫そうですね!私は先にある程度用意しておきますから終わるまで待っていてください!」
ひとりだけになってしまった。
改めて麻奈ちゃんの部屋を見ると俺と桜の部屋とは真逆の可愛い部屋にみえる。
一言でいうとぬいぐるみだらけだ。あちこちにネズミさんやらクマさんのぬいぐるみがある。
というか初めて女の子の部屋に入った。今さらだけど恥ずかしいな。
146 キモウトとひきこもり兄Ⅳ sage 2010/09/25(土) 01:36:55 ID:IEd262kT
(麻奈side)
一人くんと二人きりです!!!この前みたいに桜に邪魔されないから仲良くなれるチャンスです!!!!
これはデートなんじゃないですか!!!?しかも最初から家でデートだなんて/////
よし!!!今日は頑張るです!!!一人くんとケーキを食べたりしてイチャイチャするですよ!!!
卵よし!!砂糖よし!!薄力粉よし!!!その他よし!!準備バッチシです!!!
「一人くん~!!準備できましたよ~!!!」
「早いね、もう準備できたの?」
「そりゃ楽しみにしていたんですから~!!それに早く作りたいかな~って思ったからです!」
「ありがと麻奈ちゃん。」
ナデナデ
「っ~~~~!!!!な、何するんですか!!!?」
「うわぁ!!そんなに驚かないでよ!?この前もそうだったけど。」
「いきなり頭ナデナデされたらだれだってびっくりしますよ!!??」
「そういうものなの?!桜はいつも嬉しそうだけど…?」
「桜は普通じゃありません~~~!!!それにいつもナデナデってどういうことですか!!?」
「桜に感謝するときとか、
なんとなく気分でやってるけど?」
「むむむ、兄妹で変なのですか……これだと太刀打ち出来ないです。」
「ま、まぁそんな細かい意味はないから安心していいよ。」
「そうなんですか?」
「うん、そう。」
「そうですか、ならいいです!早速ケーキですよ!!!」
(数時間後)
「どうですか~?これが手作りケーキの破壊力ですよ!!」
「これは……美味い!!麻奈ちゃん美味いよこれ!!!」
「当たり前ですよ~!!はい、あ~んです!!」
「麻奈ちゃん!!?」
「あ~んです!」
「あ、あ~ん。モグモグ」
「どうです?美味しいですよね!?」
「お、美味しいよ…麻奈ちゃん強引な性格なのか……。」
「強引じゃないです!!!桜がやっているんですから私もやるのですよ!!」
なんかおかしい気がするけど気にしちゃだめだ。
147 キモウトとひきこもり兄Ⅳ sage 2010/09/25(土) 01:38:00 ID:IEd262kT
(数時間後)
「今日はほんとありがとね麻奈ちゃん。」
ナデナデ
「っ~~~~~!!!恥ずかしいですよ!!。」
「ホント動物みたいでかわいいな~。」
「動物じゃないです!!!人ですよ!!!!…それにかわいいだなんて……。」
「麻奈ちゃんは十分可愛いよ。あ、そうだ!そういえば麻奈ちゃんはいつ桜と仲良くなったの?」
「な、なんでですか!?」
「いつ桜と仲良くなっていたのかな~って。」
「そ~ですね、多分高校の初めのころですよ。」
「何がきっかけで?」
「お話してたらです。性格があっていたんだと思いますよ?」
「ふ~ん意外だな~。」
「意外とは何ですか!!!私は桜とすっごく仲良しなんですよ!!?」
「お…おお、じゃあ桜が欲しがりそうな物ってわかる?」
「そうですね~~一人くんが渡せば何でもいいと思いますよ。」
「俺が?」
「一人くんが桜のことを考えて選んだってことに意味があるんです。女の子はそういうものなのですよ!!」
「そうか、そうなのかもね。ありがと麻奈ちゃん。」
「いえいえです。あ、桜の分のケーキはもって帰らなくていいですか?」
「ケーキは誕生日のドッキリにしようと思っているんだ。だからまだ遠慮しておくよ。」
「そうなのですか~!一人くん優しいお兄さんですね!!!私もこんなお兄さんが欲しいです!!!」
「は、恥ずかしいな~。そうだ、麻奈ちゃんも誕生日教えてくれたら一緒にパーティーしようね。それに妹ならいくらでも大歓迎だよ。」
「はぅ……冗談なのに!!一人くんはもしかしてシスコンさんなのですか!!?」
「…シ…シス。」
「一人くん?」
「ぁ……ぁあ…。」
「一人くん!!!どうかしたのですか!!?」
「ぬわぁあ!な、なに麻奈ちゃん!?」
「なにボケっとしてるんですか!!!!」
「いや、なんでもないよ……ちょっとボケっとしてただけ…。」
「顔色悪いですけど本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、心配かけてごめんね。」
「本当に桜と一人くんは似ていますね~!!不思議なところもそっくりです!!」
「そうなのかな。あ、麻奈ちゃん今日はもう帰るね。」
「あ、もう少しゆっくりしていってもいいんですよ?」
「いや、よしておくよ。桜がご飯作っていると思うから。」
「そうなのですか…少し寂しいですね。」
「ごめんね麻奈ちゃん…それと今日はありがとね。」
「一人くんが頑張っているのを応援するくらいお安いなのです!!玄関までですけど送りますね。」
「それじゃ麻奈ちゃんまたね。」
「バイバイで~す!!」
バタンッ
うぅ…一人くん行っちゃったよ…でも今日は楽しかったです!!
それにしても一人くんが急に黙り込んだのは何か理由があったのかな。
それとも一人くんなにか昔にあったのかな…。
148 キモウトとひきこもり兄Ⅳ sage 2010/09/25(土) 01:39:09 ID:IEd262kT
(一人side)
ケーキ美味しかったな~。ある程度覚えたし紙にまとめたから一回練習すれば大丈夫か。
日も傾きだした。
辺りは夕日が影を作り、暖かさの中にどこか静けさを感じさせている。
行くときもそうであったように道には人の気配は感じられず、まるで世界に一人だけいるかのような錯覚が起きる。
やはり今日も体調が悪いのだろう。昼の時といい、ボケっとしていたときのことも。
それでも明日だけは意地でも…。
「明日は桜と買い物か……久しぶりだな。」
帰り道の寂しさを紛らわすためにひとり呟いた。
返事が返ってくるわけでもなく、声は闇の中に消えていった。
もうすこしで家につくはずだ。
そうしたら家に桜もいるはずだしこの寂しさは消えるだろうと頭に思い浮かべながら歩いていた。
道をよく見ると懐かしさがわいてくる。
しかしどこか変わっている。どこか違っていた。
だからこそ今を大切にしていこう思った。
学校に再び行けるようにもなったし、麻奈ちゃんや紗耶ちゃんとも仲良くなった。
少しずつだがこうして昔のように人と関わりを持てるようになった。
___桜のおかげだな
だからこそ俺がしっかり者にならないとな。
あともうすこしだ、早く歩くか。
(桜side)
兄さん……遅いです。
どこにいるんですか…早く帰ってきてください…。
はぁはぁ……兄さん!兄さん!!兄さん!!!
兄さん、散歩じゃないんですか…!?
もしかして事故に巻き込まれたとか……いやです!そんなの絶対にありえません!!
連絡も取れません…心配です…兄さん…。
兄さんのベットに入って慰める。
私は兄さんがいなくて心配なのになにをやっているんでしょうか…。
股間はおもらしをしたみたいに濡れてしまっています…。
でも兄さんの匂いがします…。
今はこの快楽に溺れても…。
「兄さん…ハァハァ…クンクン…クチュクチュ…っ!ハァハァ…兄さんのが入ってくるよ…ぁ!にいさん!!にいさん!!
にいさんごめんなさい…えっちで汚い妹でごめんなさい!…ハァハァ…でもにいさんじゃないとだめなんです!!!
いいですにいさん!!もっとわたしを犯してください!!ずっとにいさんといられるからだにしてください!!
クチュ…あぁ!!兄さん気持ちいいです!!ひゃ!にいさん痛い!!!いたいよ!!
だめ!!もうだめです!!イク!イッちゃいます!!!兄さぁあああああん!!!」
ハァハァ……兄さん……汚い子ですみません……。
でも…兄さんしかいないんです…。
兄さんがいないと私……。
149 キモウトとひきこもり兄Ⅳ sage 2010/09/25(土) 01:40:55 ID:IEd262kT
ピンポーン!!
兄さん!?兄さんなんですか!!?は、早く兄さんを兄さんを!!!!
私は急いで着替えて玄関を開けました。
ですがそこにいたのは……。
ガチャ
「兄さん!!?」
「……コホン…すみません。こちらに紅瀬一人さんはいますか?」
「あっ……。」
「すみません、紅瀬一人さんはいますか?」
「は、はい…私の兄ですが今は出かけていますのでよろしければ中で待っていただけますか?」
「お心遣い感謝します。」
「いえ、どうぞお入りください。」
兄さん、誰ですかこの人は…私は兄さんのことは何でも知っているはずです…。
くやしいですが綺麗な人です。歳は兄さんと同じくらいかもしれません。
私の小さな胸よりもずっと膨らみが大きい胸です。それに振る舞いの一つ一つがとても優雅です。
一番気になるのは髪の色がブロンドで眼の色も私とは違う青色。日本人のそれとはかけ離れた容姿。
「あのすみません、兄さんとはどんな関係で?」
「今日はそのことについて話に来たので一人が来てからでいいでしょうか?」
兄さんを呼び捨てで呼んだなんて……何者なんですか兄さん。
許しません…絶対に許しません…。
(一人side)
ふぅ…もう目の前だ。
昼よりかは日差しもなかったから倒れることはなかったしスムーズにいけたな。
ありゃ…鍵持ってくるの忘れてたな。まぁ桜がいるだろうから大丈夫か。
鍵を探してポケットの中に入れていた手でそのままインターホンを押す。
家の中からスタタッと桜の歩く音が聞こえてきた。
ガチャ
「兄さんお帰りなさい。」
「ただいま、桜。」
「兄さん今お客さんが来ています。兄さんに会いに来たようです。」
「そう、随分珍しいね。それじゃ先に居間に行ってるよ。」
「はい、わかりました。私はお茶を用意しておきますね。」
居間に入るとそこにいたのは金髪の女性だった。俺にこんな知り合いがいたかと思考を張り巡らしたが全く覚えがなかった。
「会いたかったぞ一人!!」
ガバッ!!
いきなり抱きつかれた、自分でもなにが起こっているのかわからなかった。
「一人!!一人!!!あぁ~本当に嬉しいよ!君に会えてよかった!!」
「ちょ、いきなり抱きつかないでください!!!」
「あ、あぁすまない…つい嬉しくて…。」
「で、改めてお訊きしますがどちら様ですか?」
「え…?なにを言ってるんだ一人…私を忘れたとでも言うのか…?」
「すみません本当に覚えてないです。」
「嘘だ!昔から好きだったじゃないか!!ずっと、ずっと!!君は憶えていないのか!!?」
150 キモウトとひきこもり兄Ⅳ sage 2010/09/25(土) 01:42:17 ID:IEd262kT
肩を掴まれた。彼女の頬には涙が垂れている。どうやら本当に俺の知り合いらしい。
「落ち着いてください!話なら十分聞きます。私も思い出すかもしれません。」
「落ち着いていられるか!!!君のためにここまで来たというのに!!!なんてバカバカしいんだ!!」
顔がものすごく近い、彼女の顔は怒気にみちていたが声にはどこか涙が混じったように聞こえた。
「一人っ!!なんで!!なんでだ!!!ぐすっ…私はずっと君に逢いたくてしかたがなかったのに…。それなのに!!君ってやつは!!」
「落ち着いて!!! ってちょっtうわぁああああ!」
彼女を落ち着かせるために彼女の手を抑えたが力が強く彼女に押し倒されてしまった。
そして運が悪く、ちょうどそこで桜がお茶を持ってきてしまった。
「兄さんお茶持ってきまし……な、何やっているんですか…兄さん。」
あぁやばい完全に誤解されてる……。このままじゃ今日は一緒の部屋じゃ寝れないな…はは…。
「兄さん?お客さまと戯れるのは後にして下さい。それにまだちゃんと自己紹介していないようですし早くしましょう?」
「あ、あぁそうだな…。すいませんどいてくれますか?」
「妹さんも来たようだしそうしようか、一人さっきは取り乱してすまなかった……このとおりだ。」
彼女は立ち上がると俺に目をあわせて申し訳なさそうに謝った。
育ちの良さを感じさせる謝り方だ。どこかの社長娘とかなのかもしれない。
「お名前を教えていただけないでしょうか?」
桜が切り出した。桜の顔はどこか好奇心にあふれた表情だった。彼女に興味があるのだろうか。
「改めて名乗ろう、私の名前は伊吹瀬里朱だ。どうだ?一人思い出してくれたか?」
「せ、せりす…?」
「そうだ、お前の彼女にして許嫁の瀬里朱だ。」
理解できなかった、そう言うしかない。
隣座っている桜の見ると表情は読み取れなくなっていた。ただ、黒い何かが見えた気がした。
最終更新:2010年09月26日 20:38