義理兄妹 2

7 名前:義理兄妹 2 ◆Xaq9.y7Ff2 [sage] 投稿日:2011/04/05(火) 22:57:31.58 ID:JUm2/O/x
無粋な携帯がパジャマのポケットで振動する。
はっきりいって不愉快極まりない。
ずっと、お兄ちゃんの腕のなかで眠っていられたらいいのに
まあ、そんな現実逃避は意味がないので目覚めることにする。
目の前にはお兄ちゃんの胸板があって、私は思い切り深呼吸をした。
うーん、肺の中がお兄ちゃんでいっぱいだ。
……いけないいけない。悦ってた。朝ご飯作んなきゃ
でも、その前にお兄ちゃんにイタズラしようかな。
態勢をかえて上からお兄ちゃんの顔を覗き込める様にする
両手をお兄ちゃんの頭の両サイドにおき、唇と唇を合わせる
あったかい
いつまでもこうしてたい
でもだめ、呼吸音が変わった 4,3,2,1
すっと頭をあげて お兄ちゃんの顔をのぞきこむ
ぼんやりとした瞳があらわれた。


8 名前:義理兄妹 2 ◆Xaq9.y7Ff2 [sage] 投稿日:2011/04/05(火) 22:58:27.98 ID:JUm2/O/x
「うん?あ、おはよう。サキちゃん」
「おはよう。よく寝てたね、疲れてるの?」
「うーん、わかんない。というか、顔が近いよ」
「それは起きない場合、鉄拳制裁を施すためだよ」
「輝かしい一日の始めにケガしたくない」
「起きろ。そして、お兄ちゃんのいて座は最下位です」
「マジすか。隊長、俺、今日、生き残れないっす」
「・・・早く帰ってきてね」
夫婦漫才を一方的にぶっちぎり台所に向かう
お弁当の準備は昨日のうちに済ませたし、朝の献立も考えてたから時間かかんないよね
料理が私、掃除がお兄ちゃん、洗濯は当番。
家事分担okってお兄ちゃんは良いお婿さんになるなぁ、
もらうのは私だけどね 。


9 名前:義理兄妹 2 ◆Xaq9.y7Ff2 [sage] 投稿日:2011/04/05(火) 22:59:19.85 ID:JUm2/O/x
ご機嫌な気分で朝の身支度を整え、朝食の用意をすると、結構な時間だ。
えっと、さっき洗面所で見かけたから部屋にいるのかな、お兄ちゃんは
遅刻させる訳にはいかない、未来の妻としてはね。
「お兄ちゃん、遅刻するよ~」
目に飛びこんできたのは、書類を見つめるスーツの男の人だった。
お兄ちゃんは身長は175くらいで普通だが、顔が少々強面の部類に入るから笑っていないと威圧感がでるし、真剣な表情は多少怖く感じる。
私が知らないお兄ちゃんの顔。私が届かない大人のひと・・・
舞い上がっていたテンションが急降下する。
さっきまで笑顔だったのに今の私は仏頂面だ。


10 名前:義理兄妹 2 ◆Xaq9.y7Ff2 [sage] 投稿日:2011/04/05(火) 23:00:07.44 ID:JUm2/O/x
そんな私の態度が不思議なのか、こっちを伺うお兄ちゃん
ごめん、お兄ちゃんが悪いんじゃないの
こんな風に心配かけさせたり、八つ当たりしたりしてほんとに子供だ。
ああ、いやになる。
重い空気の中、朝食が進み、私は食事が終わったお兄ちゃんに飲みものを差し出した。
「またプロテイン入ってたりする?」
「だって筋肉つけないと、また体脂肪率戻るよ」
「いやいや、ランニングちゃんとしてるよ。結構な筋トレもしてますよ。そして激マズなのだよ、プロテイン」
「うん、じゃあ、腹筋割るつもりでいこうっぜ」
「おっさんの体に無茶をいいすぎだっぜ。いびりに近いっぜ。」
「ずべこべ言わないで飲め。いびりレベルを上げるわよ」
「やはりいびりだったのか!」
バカ話で少し私の気も晴れた。やっぱりお兄ちゃんは笑顔がいいよ。
私の知ってるお兄ちゃんでいてほしい。

アンニュイな気持ちが渦巻くなか学校へと歩を進め、午前の授業を消化する
四限目、校庭をみると、体育祭の練習をしていた。
みんな、両親が応援に来たりするのだろうか。
両親かあ・・・・・・。
私と両親との写真は少ない。それでも、時間のことを考えれば多いのかもしれない。二年という短い時間を考えれば ・・・
子宝に恵まれない白城夫妻と近所で両親は有名だったらしい。
そんな中、お兄ちゃんを養子に迎えたが血の繋がった我が子というのが欲しいものなのか、


11 名前:義理兄妹 2 ◆Xaq9.y7Ff2 [sage] 投稿日:2011/04/05(火) 23:01:00.34 ID:JUm2/O/x
長年に及ぶ不妊治療の結果、ようやく授かったのが私。
そして、幸せの絶頂期にあえなく二人ともども事故死。
二才の私はなにも覚えてないし、悲しいかと言われても分からない 。
むしろ幼少期にインパクトの強いものと言えば、お兄ちゃんにわがままをいって困らせたことかな
家は私たちのものになったらしけど、当時21のお兄ちゃんが2つの私を抱えて生きていくって・・・
まあ、生活費がヤバいときも何度かあったけど、行事事にはできるだけ顔を見せてくれたし、特に他の子の両親が羨ましいとかは思わなかったけどね。
ありがとう、お兄ちゃん。やっぱり、お兄ちゃんのこと考えると元気g
フゥー
朝からのアンニュイモードを吹き飛ばしたときに右耳に息を吹きかけられた。
背筋を駆け巡る悪寒に耐え、右を向くと表情がまったく読めない鉄面皮こと
佐原 有希 がいた。
「なによ」
「いや、余命三カ月の患者みたいな顔から幸せで頭いっちゃってる顔に変化してていて、面白かったから」
「なにも、おもしろくないわよ」
「知らぬが仏」
はあー。なんでこいつは冗談を真顔で言ってくるんだろう。
この娘とは幼馴染。
今みたいに冗談も言えないほどコミュニケーション能力がなかったこいつの話相手になったのが小学校のころ
いまでも、一番の友達だったりする。
同じ高さの目線で、同じ様な価値観を共有し、相手の考えをある程度予測できる、居心地のいい関係。
はあ、お兄ちゃんの考えなんてわかんないけどね。
駄目だ、今日は鬱スパイラルみたいだ。
せめて、同じ目線にたてればちがうのかな。
有希みたいに同い年なら考えてることもわかるのかな。
お兄ちゃんと同い年って・・・タイムスリップ?お兄ちゃんが17のときだから19年前?


12 名前:義理兄妹 2 ◆Xaq9.y7Ff2 [sage] 投稿日:2011/04/05(火) 23:01:46.91 ID:JUm2/O/x
「あああ、もう!タイムマシンとかないのかな?」
「全く話がつながってないわよ、紗希。」
「だから、過去に行きたいの!19年前。わかれ、それくらい。」
「無茶言いすぎよ。そう、紗希はタイムマシンがほしいのね」
「そうよ。そういうありそうもないことにでもすがりたい気分なの」
「藁おもつかむってやつね。」
「そう。そんな気分なの」
「・・・私はタイムマシンなんかほしくないわ」
「!!なんで?いろいろ便利なことに変わりないじゃない」
「でも、タイムマシンがあれば、現在は無意味なものじゃない」
「無意味?なんでよ、自分の都合のいいように現在を変えることだってできる  じゃない」
「でもそれって、今まで生きてきた時間は意味がないって言ってるようなもの  よ。いやなことも楽しいことも全部含めて、私はここに生きているって思いた いの」
そういった、有希の目は同い年とは思えないほど、澄んでいてきれいだった。
「そうだね。私の17年は無為にしたくないかな」
「あら?ものわかりがいいのね、今日は」
「その減らず口どうにかならないの」
苦笑まじりの私に微笑をむける、有希。
この娘は気付かない大切なことを教えてくれる。
そうだよね、悔んだり、あり得ないことを考えるよりも、今、できることを考えようかな。お兄ちゃんと過ごした17年は変えがたいものだし。
お兄ちゃんのご飯を作って、一緒に暮らして、一緒に寝て、こんな幸せなこともないよね・・・私がこれ以上を望めば・・・砂上の楼閣なの?


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最終更新:2011年05月13日 22:53
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