狂もうと 第11話

49 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:13:32.32 ID:UyrXbG1V

「分かった、それじゃ土曜日にまた電話するよ。うん、それじゃバイバイ」
携帯の電源をOffにし、ガラステーブルの上にそッと置く。
本来ならベッドにポイっと投げるのだが、まだ購入して3日しか経っていない新しい携帯なので雑には使わない。
まぁ、大切に使うのは始めの頃だけなのだが…。

「兄ちゃん、今の誰だったの?彼女か?」
くりっとした小さな瞳が下から覗き込む。

「違う違う。友達だよ。」
俺の顎下にある頭を優しく撫で、テレビに目を向ける。

素人だろうか?見たこと無い熟女がテレビの中で綺麗な着物を着飾り演歌を熱唱している。
演歌に興味が無いオレからすれば、年寄り臭いなぁと思ってしまうのだが、俺の膝上に陣取るこの小さな妹…13才の空ちゃんはこの演歌が大好きなのだ。

空ちゃんいわく演歌は日本が誇る文化らしく、女の心をよく分かって歌っているとのこと。
いつ頃演歌を聞くようになったかと言うと、物心ついた時から空ちゃんのお母さんが演歌を口ずさんでいたらしい。
演歌好きはお母さんの影響のようだ。

「そんな事より……なぁ、空ちゃん」

「なぁに~?」
テレビから目を離さず俺の胸に後頭部を擦りながら返答する。


50 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:13:57.99 ID:UyrXbG1V

「なんで俺の膝の上に座ってるの?」
部屋に入ってからずっと気になっていたのだが、俺が床に座るなり当たり前の様に膝の上に腰を落としてきたのだ。
別に甘えられるのは嫌いでは無い。
由奈で慣れているから空ちゃんが重いとも思わない。
だけど俺と空ちゃんは今日いれても二度しか顔を会わせていないのだ。
そんな俺になつかれる要素があったとは思えない…。

「ぇ……ダメなの?」
俺の声に反応した空ちゃんがやっと此方へ目を向けた。
あれだけ元気な空ちゃんの目がどこか弱々しい。

「あっ、いや…別に俺はいいんだけどね?突然だったからビックリしたよ」
ミスったと思い誤魔化すように笑う。
そう言えば空ちゃんは兄妹が居なかったんだ…。
母親と二人暮らしで父に引き取られたのは空ちゃんの母親が亡くなったからだそうだ。
多分兄や姉が出来て嬉しいのだろう…。
そういう事なら俺も兄として甘やかしてあげなければ。

「兄ちゃんが嫌なら…離れるけど…」

「いいよ別に、俺の膝ぐらいならいつでも。兄に甘えるのは妹の役目だからな」
ゆっくりと膝から立ち上がろうとする空ちゃんの腰を掴みそのまま膝に乗せる。

「そっか…兄か…うん…」


51 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:14:28.46 ID:UyrXbG1V
嬉しそうに俺の膝を手の平で撫でている。
真後ろに居るので表情は分からないが、多分空ちゃんは笑顔だろう。
空ちゃんの背中を見て何となくそう思った。

中学生とはいえまだ親が恋しい時期…あの父に甘えるなんて無理な話だ。
せめて兄らしく甘やかしてやろう…。


「なぁ、兄ちゃん……さっきからずっと気になってたんだけど…」


「あぁ…わかってる」
ため息を吐き、ドアに目を向ける。
なんて事ない見慣れたドア。

そのドアから小さくだが、カリカリ…カリカリ…と音が聞こえてくるのだ。
俺と空ちゃんが部屋に入ってからずっと聞こえているのだが、流石に空ちゃんも無視できなくなってきたようだ。

「猫じゃねーの?」

「いや…猫なんて飼ってないよ」
家にペットはいない…何故なら由奈が嫌いだからだ。
そしてこの家には俺と空ちゃんの他にもう一人長年一緒に暮らしてきた妹が居る訳で…。

「な、なんか喋ってる?」
空ちゃんがビクビクしながらドアを警戒している。
テレビの中では一人熟女がマイクをもって歌っているのだが、もう空ちゃんはそれどころではないらしい。


――やん――ちゃん――


52 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:14:51.96 ID:UyrXbG1V
「……」
確かに、小さくだけど声みたいな音が…てゆうか声が聞こえてくる。
聞き慣れた声が…。

心配する空ちゃんをベッドに座らせ、ドアに近づく。
そして耳をドアにくっ付け声の内容を確認する…。






――お兄ちゃ…お兄…開け…お兄ちゃん…開けて…私も入レ…





「怖いわ、アホ!!」
鍵を外してドアを勢いよく開ける。

「きゃっ!?」
ドアの目の前に立っていたのだろう…開けると何かにぶつかる衝撃と小さな悲鳴が聞こえてきた。

「痛たたたっ…あっ、お兄ちゃん!」
床に倒れ込んでいた由奈が俺の顔を見るなり飛び付いてきた。

「由奈、お前ちゃんと反省してんのか?」
抱きつく由奈を引き剥がし、問い掛ける。

「ぅう…反省してます…だから私も部屋に入れてください…お願いします…」
涙目になりながらヨロヨロと俺に近づく由奈の頭を掴み、再度遠ざける。

「ッそ…そんな…おにちゃっ…」
あからさまな俺の拒絶にショックを受けたのか、絶望的な表情を浮かべその場にへなへなとへたりこんでしまった…。

「……はぁ…分かった分かった……分かったから泣くなよ」
震えながらボロボロと涙を流す由奈の頭を撫で立ち上がらせる。


53 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:15:29.90 ID:UyrXbG1V
「お前もう二十歳越えてんだぞ?もう少し大人の余裕を持てよ由奈」
何が原因で喧嘩になったのかは知らないが、成人を迎えた人間が中学生と本気で喧嘩するものじゃない。

「空ちゃんも許してくれるか?ほら、由奈も謝れ」
腕にしがみつく由奈を前に押し出し、空ちゃんに謝らせる。

「別にボクは怒ってないよ?お姉ちゃんできたみたいで楽しかったし!」
ベッドに腰かける空ちゃんが笑顔を浮かべ小さく手を振った。

「そっか…それならいいんだ」
まだ短い時間しか空ちゃんと過ごしていないが、優しい子だと言うことは分かった。
これならいい関係が築けそうだ。

「それじゃ、テレビでも見よっか?由奈もいい加減離れろ」
由奈を引きずったままでは動き辛いので腕にしがみつく由奈の手を放し床に腰を落とした。
そうすると先ほどまで俺の膝を椅子として使っていた空ちゃんは当たり前のように俺の膝の上に座ろうとするのだが…。

「ちょっ…空ちゃんアンタなにしてんのよ?」
由奈が瞬時に空ちゃんのお尻と俺の膝の間に腕を差し込み、座るのを阻止した。

「何って…兄ちゃんの膝に座ろうとしたんだけど?早く腕どけてよ…座れないじゃないか」


54 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:18:34.62 ID:UyrXbG1V
お尻を悩ましげにくねくね動かし何とか膝にお尻を落とそうとするのだが、それを由奈の腕がさせない。

「空ちゃん…お兄ちゃんの膝の上は古(いにしえ)から私専用って決まってるのよ?貴女は座布団の上に座りなさいよ」
テーブル下にある座布団を指差し、そこに座るよう伝える。

「えぇ~…ボク兄ちゃんがいい」
強引に由奈の腕の隙間からお尻をねじ込み、膝に腰を落とす。

「ダメ……って言ってるでしょ!」

「ッ!!?あんぎゃーっ!!!」
突然空ちゃんがお尻を押さえて飛び上がった。
その隙をついて今度は由奈が俺の膝へと滑り込む。


「おまえ…何したの?」

「えっ?いや、中指をズボっと」
何処に?と問いかけようか迷ったが、何かを失いそうだったので辞めた。

「姉妹喧嘩みたいだな…」
こう見ると本当の姉妹に見えてくる。
膝の上で上機嫌に鼻歌を歌う由奈…その前でお尻を押さえて悶え苦しむ空ちゃん。

「はは、仲良くしろよ」
この光景を見て笑えているのは多分、空ちゃんを妹として受け入れられたからだろう。


「痛いなッもぉー!んじゃボクは由奈姉ちゃんの上!」
お尻の痛みが引いたのか、勢いよく立ち上がると由奈の膝の上にダイビングした。


55 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:19:10.03 ID:UyrXbG1V
「ちょっ、私の膝の上はお兄ちゃんの耳掻き専用なのよ!重いから退きなさいッ!」

「嫌だぁ~ッ!!由奈姉ちゃんが退け~ッ、そしてボクの耳も掻け~ッ!!!」
俺の膝の上でジタバタと暴れる妹達。
重苦しかったが…少し嬉しかった。
いがみ合いながらも幸せな空気が流れていたから…。







「あら、仲良くしているのね?」
しかし、その幸せは一瞬で消え去った。
冷たい声に由奈と空ちゃんが身体を強張らせる。
勿論俺も。
突然の声にビックリしたのではなく、零菜の声だと確認できたから強張らせたのだ。

「ちょっと…なに勝手に入って来てるんですか?」
由奈が空ちゃんを退けて立ち上がる。
先ほど空ちゃんに向けていた目とは違い完全なる敵対心を目に宿し零菜を睨み付けていた。

「ちゃんとインターホンは鳴らしたのよ?でも誰も出ないから…居ないのかと思ったのだけど、中から優哉の声が聞こえてきたから勝手に上がらせてもらったの」
悪びれる素振りすら見せず、部屋の中へと入ってくる。
一瞬零菜の部屋に行った時の事を思い出したが、あの時のように過呼吸に陥る事は無かった。今でもあの時感じた身体の異変の原因は分からない…本当に何だったんだろうか?


56 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:19:37.98 ID:UyrXbG1V
「で、どうしたんだ?何か用か?」
由奈同様、立ち上がり零菜の前に立つ。
今こうして普通に話せるのだから、単純にあの時は身体の調子が悪かったからなのかもしれない。

「空を迎えに来たのよ」

「え、空ちゃん?」
由奈が空ちゃんの顔と零菜の顔を交互に見ている。
そう言えばまだ由奈には空ちゃんのこと説明していなかった…。

「あのな由奈…空ちゃんはy「空は貴女の妹よ?」

「…はぁ?」
俺の言葉を遮り発せられた零菜の言葉に由奈が呆れたような表情を浮かべた。
呆れたというより、意味が分かっていないのだろう。
そりゃ唐突に妹が出来ましたなんて言われても理解するなんて無理な話だ。

「ちょっとお兄ちゃん…この人なに言ってるの?」
零菜の目先に人差し指を出して指差す。

仕方ない…別に隠すつもりは無かったのだが、空ちゃんが居なくなってから由奈には事情を話すつもりだったのだが…。

空ちゃんにはリビングで待ってもらい俺と零菜で由奈に事情を話した。
始めはぽか~んとした表情で聞いていたのだが、零菜が深く事情を話すにつれて由奈が顔をしかめていくのは分かった。

「――って事なのよ…分かった?」


57 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:20:08.89 ID:UyrXbG1V
零菜が話終える頃になると、由奈は元の表情を保っておらず明らかな苛立ちを全面に見せていた。

「お兄ちゃんにあれだけ偉そうにグチグチ言ってたお父さんがねぇ……でっ?なんで空ちゃんが家に来たんですか?」

「空がお兄ちゃんに会いたがったからよ?」
零菜の口から出たお兄ちゃんと言う言葉にうすら寒さを感じた。
零菜は俺の事を“お兄ちゃん”なんて可愛らしい言い方は普段しないのだ。
それを分かって言っているのだろう…零菜の口が狐のようににやけた。

「残念ですが妹は一人で間に合ってます。それに家族が増えたなんていきなり言われても困ります。
当主である父と“次期”当主である零菜さんで対処してください。私と兄は父の尻拭いなどしたくありませんので…それにそれは貴女の仕事でしょ?今まで父に可愛がられてきたんだから貴女がお姉ちゃんになってあげるべきよ」
正論…なのかどうか分からないが、由奈の言うことに俺は少し納得していた。

しかし…。

「あのな…由奈」

「ん?なに?」
零菜に畳み掛けに入った由奈を手で制した。
零菜の味方になるつもりなんてまったくないが、俺は空ちゃんの兄になると決めたのだ。


58 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:20:50.18 ID:UyrXbG1V
「空ちゃんを俺の妹として受け入れようと思う。だからお前も空ちゃんを妹として見てやってくれないか?」
由奈に頭を下げ頼み込む。
空ちゃんは間違いなく由奈にもなついている…空ちゃんも兄妹が多いほうが嬉しいだろうし、俺も家族が増えるのは純粋に嬉しい。
だから由奈にも空ちゃんを家族として受け入れてほしいのだ…。




「……はぁ?お兄ちゃん正気?」
だが、俺の思いとは裏腹に頭上から聞こえてきた由奈の声は冷たいモノだった。

「いきなり家族が出来ました?なにそれ?アニメじゃあるまいし……アホらし。
私は絶対に無理だから…私の兄妹はお兄ちゃんだけ。それ以外考えられないの。
話はそれだけ?なら、帰ってもらえますか?他人が家に入ってくるとイライラするので」
由奈から出た言葉は完璧な拒否だった。
由奈は間違いなく零菜も姉とは思っていない。だからここまで徹底して相手を追い詰められるのだ。

「そう……ならお姉ちゃんは諦めるしかないみたいね。優哉は空のお兄ちゃんになってくれるのよね?」

「あぁ、俺は空ちゃんの兄になるよ」
俺の言葉に反応した由奈が此方を睨み付けてきたが、これは俺も引き下がれない。


59 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:21:20.70 ID:UyrXbG1V
「ありがとう。それじゃ、今日は帰るわ」
それだけ伝えると、空ちゃんが待つリビングへと向かってしまった。
俺も後を追うためにリビングへと向かう。
リビングの扉を開けて中を確認するとテレビを見ながらソファーに寝そべりケラケラ笑っている空ちゃんの姿を発見した。
初めて来た家とは思えないほどくつろいでいる。

「空、帰るわよ」

「えぇ!?もう帰るの…?」
もっと遊びたかったのだろうか?
残念そうな表情を浮かべている。

「いつでも遊びにきていいよ。携帯番号は零菜に教えとくから」
新しい携帯番号を零菜に教えた後、玄関で二人を見送った。
空ちゃんの事だからまた近いうちに遊びにくるかも知れない。
それまでに何かゲームでも買っておこうか…。



「……お兄ちゃん」

「……はぁ」
それより先に片付けないといけない大問題があるんだった…。
気を引き締め後ろを振り返る。
目の前に由奈が立っていた。

「ビックリした…こんなところで何してんだ?」
由奈に軽い口調で話し掛けたが、内心かなり焦ったと思う。
何故なら今、目の前にある由奈の表情は一度も見たことが無かったからだ。
どういう行動をとれば正解なのだろうか?


60 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:21:49.25 ID:UyrXbG1V
頭を巡らせ考えに考え抜いた結果、何故か由奈の肩にポンッと手を置いて自分の部屋に戻るというヘタレ行動に至ってしまった。
部屋に入るとベッドに腰かけテレビに目を向けた。
テレビを見る気なんてない…平然を装っているだけ。すべての意識は扉に向かっていた。

俺が部屋に入って数分後、由奈が部屋入って来た。
別にやましい事なんて無いのだが、どこか心苦しい。

「お兄ちゃん…なんであの子を妹にしようなんてバカなこと言ったの?」
ベッドに腰かけ俺の前に立つと、俺を見下ろし小さく呟いた。

「別にバカなことじゃないだろ?兄妹になりたいって空ちゃんも頑張ってんだから俺達も歩み寄らなきゃ」
由奈の手を掴み引っ張り寄せる。
機嫌が悪い妹を機嫌良くさせる方法は兄として心得ている。
少しだけ力強くグイっと引っ張ると、ゆっくり此方へ倒れ込んできた。
それをしっかり支える。

「なっ?ギクシャクしてるよりはいいだろ?」
由奈を膝に乗せ背中を撫でる。
されるがままだった由奈も時間が経つにつれて俺の首に手を回し甘える様に頬をすりよせてきた。

「分かった……でも条件がある」

「条件?なんだよ?」


61 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:22:14.27 ID:UyrXbG1V
多分何かを買えとかだろう……貯金はまだあるから高額でなければある程度の物なら買ってやれる。

「今すぐお兄ちゃんから私にキスして」
やはり由奈…斜め上を要求してくる。

「なんでキスなんだ?買いたいモノとかないのか?鞄とか服とか」
由奈の年頃なら欲しいものだってたくさんあるはずだ。
それを差し置いて兄とのキスなんて…。

「いらない。私の目を見て私にキスして」
真剣な目付きで俺の目を見ている。
これは引き下がりそうもない…。


「分かった…キスだけだぞ?」
してしまえば由奈も空ちゃんと仲良くするって言っているのだ…家族でもキスぐらいは挨拶のうちに入るはず……多分。
サッとして終わらそう。

由奈の目を見て口を近づける。




「ん……んうっ!?」
由奈の唇を合わせた瞬間、突然口の中に何かが滑り込んできた。
慌てた俺は由奈から離れようと後ろに仰け反るが、由奈も同じように倒れ込んできた。

「んッ、ゆ…なッ!」
由奈が俺から離れない。
引き剥がそうと試みるが、体重をかけてしがみついているので剥がそうにも剥がれないのだ。
口の中を何度も何度も出し入れする物体。
間違いなく由奈の舌だ。


62 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:23:07.94 ID:UyrXbG1V
逃げるように避ける俺の舌を由奈の舌が追いかけて絡める。
ぐちゅぐちゅっと卑猥な音が部屋に響く。

「お兄ちゃっ…んあっ、は、あんッ…」
悩ましげに喘ぐ由奈の声に耳がおかしくなりそうだ。

「ッ…やめっ…ろ!!」
なんとか力ずくで由奈を押し退け、距離を取る。

「はぁ、はぁ……お兄ちゃん気持ちよかったでしょ?」
なんとも言えない目で俺の口を見ている。
気持ちよかった?
妹とキスして嬉しがる兄なんて居るわけ無い。

「そんな訳無いだろ…もうしないからな」
由奈の唾液でベトベトになった口を服の袖で拭い、ベッドから立ち上がる。
今は少し頭を冷やしたほうがいい…。由奈も頭に血が上っているだけだろう。

「私はもの凄く嬉しかったよ?だってお兄ちゃんからキスしてくれたんだもん……私だからしてくれたんでしょ?私が妹だからしてくれたんでしょ?」
大きく見開いた目が俺を威圧するように覗き込んでいる。

「こんなこと、他人にしたら絶対に許さないから…」
前に回り込み俺の唇に自分の人差し指を這わせると、その人差し指を自分の舌でいやらしく舐めて見せた。


63 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/04/10(日) 19:33:40.19 ID:UyrXbG1V
くちゅくちゅと音をたてて指を舐め回し口から指を抜くと、由奈の唾液で光る人差し指を再度俺の唇にピトッと付けて微笑んだ。

「ふふ……私の指とお兄ちゃんの唇…赤い糸じゃないけど繋がってる…」
人差し指を唇から離すと、蜘蛛の糸の様に糸を引いていた。
その唾液糸を由奈が自ら舌ですくい取る。

「私が成人してようがそんなこと関係無い。本当の妹は私だけ…お兄ちゃんも妹は私だけって言ってくれたもんね?
だから空ちゃんのこと“義妹”として扱ってあげる。だけど…だけどもし空ちゃんにお兄ちゃんがこんなことしたら…私は空ちゃんを――」
多分…俺は思い出せないほど昔に由奈の接し方を間違えていたのかもしれない。
何時からかなんて思い出せない…だけど間違いなく由奈は…。






――「コロスから。」


狂っていた。


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最終更新:2011年05月06日 22:08
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