441 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:34:49.41 ID:IgxcIWs6
昔からお兄ちゃんは私だけを守ってくれた。
別に私が周りに疎まれていた訳では無い。
母や父も私には甘かったし、親戚も優しかった気がする。
勿論零菜もチヤホヤされて育った側の人間…だけどお兄ちゃんは違った。
小さい時から完璧な零菜とは違い、お兄ちゃんあまり目立たない子供だった。
それでも普通の人よりは勉強もできるし運動神経も良い方だろう。
だけど何事も完璧にこなす零菜が双子の妹というだけでお兄ちゃんは不出来な兄と決めつけられてきたのだ。
――同じ血…同じ顔…同じ日に産まれてきたのにどうしてお前は違うんだ――
毎日お兄ちゃんに重石の如く痛め続けてきた呪文。
ずっとお兄ちゃんは辛いのを我慢して…それでも笑って表情を誤魔化して…。
お兄ちゃんが一人になった時にみせる“孤独”が私の胸を締め付けた。
なんでお兄ちゃんが?いつも優しい私のお兄ちゃんがなんでそんなに悲しそうな顔するの?
お兄ちゃんの悲しみが私の幼心に広がっていくのが分かった。
幼い頃は何故お兄ちゃんが貶されるかなんて理解する事はできなかったが、成長するにつれて“汚れた世界”を見渡せるようになった。
そしてお兄ちゃんの苦しみを理解したのだ。
442 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:35:10.23 ID:IgxcIWs6
お兄ちゃんの苦しみを理解した後、私の悲しみが憎悪に変わるまでそう時間はかからなかった。
すべて零菜が居るから…零菜が居るからお兄ちゃんが傷ついているのだと。
だからお兄ちゃんが家を出ていった時、寂しさもあったがこれでやっとお兄ちゃんが救われると心の底で小さく喜んだ。
高校卒業後、すぐにお兄ちゃんを追いかければ良いだけ…理由をつけてお兄ちゃんが住む家に上がり込めば同棲だって出来る。
妹が実家を出て一人暮らしの兄を頼る…その図を作ればお兄ちゃんは絶対に私を迎え入れてくれる。
――お兄ちゃんは絶対に私を“守る”のだ。
それが妹である私の特権であり、逆に私がお兄ちゃんを守る力にもなる。
お兄ちゃんの妹は私だけ――お兄ちゃんの理解者は私だけ――お兄ちゃんの家族はワタシだけ。
そう…ワタシだけなはずなのに…。
443 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:35:38.00 ID:IgxcIWs6
「美味い!こんな美味しいハンバーグは近年稀だ!」
私が作ったハンバーグを満面の笑みを浮かべ口に押し込んでいる女の子。
初めて見た時は女の子か男の子か区別がつかなかったけど、お兄ちゃんがこの子を空ちゃんと言っていたので女の子だと分かった。
別に悪い意味で区別がつかない訳では無い。
ボーイッシュな雰囲気が全面的に押し出されているので、美形な男子と言われても納得してしまうと言うことだ。
多分男の子からも女の子からもモテるだろう。
「そっか。由奈が作る料理はなんでも美味いからな」
空ちゃんの隣に座るお兄ちゃんが自分が作ったかのように喜んだ。
「ありがと。そう言ってくれると毎日作ってる甲斐があるわね」
「おう!ぼくが美味いって言うぐらいだから喜んでいい!」
ハンバーグのソースがついた箸を私に向けて高らかに声をあげる空ちゃん。
それを瞬時に張り付けた笑顔で流し、お兄ちゃんに目を向けた。
私の視線に気がついたお兄ちゃんは私の目から避けるように目を反らした。
「はぁ……(この子なんなのよ…)」
ため息を吐き捨て、隣に居る空ちゃんへと目を流す。
444 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:36:21.91 ID:IgxcIWs6
今日は日曜日…いつもならお兄ちゃんと二人で映画見てイチャイチャしたり、手を繋いでデートしたりお兄ちゃんのパンツに鼻擦り付けながら自分を慰めたり(これは毎日だけど…)私の癒し日になるはずだったのだが…。
今日の昼12時――突然我が家に見知らぬ女の子が訪ねてきたのだ。
それがこの子…降崎 空ちゃん13才。
見た目はまだ小学生じゃないかと間違えるぐらい幼さが残っているのだが立派な中学生だそうだ。
突然やってきた小さな訪問者に意味が分からず、玄関前に立つ女の子に何か用事?と問い掛けると「ここ兄ちゃんの家?」とだけ聞き返してきたのだ。
兄の知り合いにしては歳が離れすぎているので少し不安になりながらもお兄ちゃんに知り合いか聞いてみると、慌てたように空ちゃんと外に出て行こうとしたのだ。
流石に見過ごせず難色を示す兄と空ちゃんを無理矢理リビングに入れて今に至るのだが…。
「ねぇ、お兄ちゃん…そろそろ空ちゃんとどういう関係か教えてくれない?」
空ちゃんとお兄ちゃんが食事を終えるのを待ち、お兄ちゃんに問い掛けた。
お兄ちゃんに限って小さな女の子に手を出すような事は無いと思うのだけど…。
445 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:37:54.30 ID:IgxcIWs6
「ぼくと兄ちゃんの関係?そりゃ…一言では表せない関係ってヤツかな」
空ちゃんの言葉に私の手が震えた。
「誤解を招く言い方するなよ!由奈、俺と空ちゃんは変な関係なんかじゃないからな!?」
焦ったように否定する姿がどれだけ嘘臭いかお兄ちゃんは分からないのだろうか?
まぁ、お兄ちゃんがそう言うのだから本当なのだろう。
しかもこの空ちゃんって子…やたらお兄ちゃんにベタベタ触って…。
「お、おい…怒るなって。後でちゃんと事情を話すからさ…」
怒る?顔に出ていたのだろうか?
笑顔を保っていたつもりなのだけど…。
「まぁ、いいわ…お兄ちゃんご飯食べたなら早く服着替えてきたら?洋服はいつも通り机の上に置いてるから」
「分かった、着替えてくるよ」
「あっ、兄ちゃん食器ちゃんと流し台に置かなきゃダメだろ!」
椅子から立ち上がりリビングから出ていこうとするお兄ちゃんに空ちゃんが食器を指差し指摘する。
良くできた子だ…多分母親の教育が行き届いているのだろう。
だが、ここは私とお兄ちゃんの家。
他人のルールなんて無用なのだ。
「そ、そうだな…悪い悪い」
居心地悪そうに頭を掻くと、食器に手を掛け持っていこうとした。
446 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:38:24.82 ID:IgxcIWs6
「待って…大丈夫よ私の仕事だからお兄ちゃんは早く服を着替えてきて」
お兄ちゃんの手を掴みそれを阻止する。
お兄ちゃんの世話は私がする。
二人暮らしを始めてからの決まり事なのだ。
絶対に誰にもさせない…。
「で、でも…」
「いいから、いいから」
お兄ちゃんの背中を押してリビングから退場させた。
お兄ちゃんをリビングから追い出した後、すぐにテーブルへと腰掛けた。
お兄ちゃんが服を着替え終わるのが5分ほど…早くしなければ。
「な、なぁ…由奈姉ちゃん何してんの?」
目の前に座る空ちゃんが恐る恐ると言った感じで話しかけてきた。
「何してるって…何が?」
今は空ちゃんの相手をしている暇は無いのに…。
「いや…なんで由奈姉ちゃんの食器から兄ちゃんの食器にオカズ移してるの?」
不思議そうに首を傾げ此方を見ている。
「なんでって?こうしたほうが美味しいからに決まってるじゃない」
早くしないとお兄ちゃんが降りてきてしまう…。
オカズをすべてお兄ちゃんが使った食器に移し変えると、早速お兄ちゃんの箸を掴みオカズを口に運んだ。
「んふふ…美味しい…」
やっぱりお兄ちゃんが使った後の食器で食べるご飯は格別だ。
447 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:38:50.24 ID:IgxcIWs6
日曜日、週一回の私の楽しみの一つ。
お兄ちゃんが居る前ですると怒られるので隙をついてしかできないが、お兄ちゃんと共有しているというだけで私の空腹は満たされていく。
いつもならこの後お兄ちゃんの箸と歯ブラシと昨日お兄ちゃんが履いていたパンツを使ってオナニーするのだけど、邪魔な事に思春期真っ只中の女の子が目の前に居るのだ…。
「……な、なんで兄ちゃんのヤツ使うんだ?」
「なんでってお兄ちゃんを愛してるからだけど?あっ、まだ空ちゃんには早いかもね」
先ほどから何をオロオロしているのだろうか?
他人の家にきて落ち着かない?なら早く帰ればいいのに…そうすればお兄ちゃんと二人っきりでイチャイチャ絡み合って…それからそれから…。
「変態だぁーーー!!!」
突然空ちゃんが大声をあげて椅子から飛び降りた。
変態?私が?人の家に勝手に上がり込んで何様?
これだから子供は嫌い…常識を知らないから。
「はぁ…もういいや。分かったから早く帰りなさいよ。お兄ちゃんとどういう関係か知らないけど…お兄ちゃんに近づいたら女の子でも張り倒すわよ?」
何処の子か知らないけど、そろそろ私も我慢の限界だ。
448 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:39:37.05 ID:IgxcIWs6
私はお兄ちゃんとの時間を潰されるのが一番嫌いなのだ。
最近、お兄ちゃんにまとわりつくチンパンジーに苛立ちを覚えているというのに零菜も出てきて…。
「変態の癖に高圧的!変態は影で生きる生物なんだぞ!?おまえはただの変態じゃないのか!」
「はぁ?空ちゃんいい加減にしないと、素っ裸で外に放り出すわよ?」
箸をテーブルの上に置き椅子から立ち上がる。
真っ裸にはしないが、もう出ていったもらおう…休みまでわざわざ他人の相手なんかしてられない。
「うわぁぁぁあッ!!兄ちゃん助けてぇ!!高圧的な変態に襲われッわわわれッ、れ」
「あ、待ちなさい!お兄ちゃんに告げ口するつもり!?許さない!お兄ちゃんが怒ったら構ってくれなくなるでしょ!!」
ガクガク震える足を引きずりリビングから出ていこうとする空ちゃんの前に立ちはだかる。
「ひぃぃぃぃぃいッ!?ぼ、ぼくはッ兄ちゃんの妹なんだぞ!?兄ちゃんに言えば怒ってくッれむっ!?」
叫ぶ空ちゃんの口を押さえ込み、フローリングに押し付けた。
今なんて言ったのこの子?
お兄ちゃんの妹?
笑えない…全然笑えない。
449 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:40:17.89 ID:IgxcIWs6
「あのね?逆撫でする冗談は辞めたほうがいいよ?特に私は子供でも容赦しないから…分かった?分かったなら頭を縦に振りなさい」
私の声に反応し、空ちゃんが頭をコクコクと動かし二度頷いた。
「分かってくれたならいいの…私、物分かりがいい子は好きだから」
空ちゃんの口から手を放し、立ち上がる。
早くご飯を食べないといけないのに…こんな事をしているとお兄ちゃんがリビングに戻って……。
「由奈…おまえ何してんだ?」
真後ろから聞こえてくるお兄ちゃんの声…。
後ろを振り向かなくても分かる――これは間違いなく怒ってる時の声だ…。
※※※※※※※※
「そうなんですよ!だから私が何とかしたいんです!!」
勢いよくベッドから立ち上がり大声をあげる。
夜中なら近所迷惑になるかもしれないが、今はまだ16時。
16時でも独り言で大声を張り上げていたら近所関係無しに迷惑…どころか病院に連れていかれるかもしれないが今は電話中。
しかも相手はあのトップモデルの篠崎 零菜さん。
本当に偶然と奇跡が重なって出会えたと私は思っている。
しかも電話番号の交換までしてくれた。
450 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:40:42.95 ID:IgxcIWs6
しかし、電話番号を交換したとしても零菜さんはモデル…私から電話することができず番号を毎日見ていると、突然今日零菜さんから電話が掛かってきたのだ。
見間違いじゃないかと何度も見返したが間違いなく零菜さんの番号が表示されていた。
電話の内容は何気ない日常会話。
今は休憩時間らしく、暇ができたので電話をしてきてくれたとのこと。
忙しい中わざわざ零菜さんから電話をしてくれたのだが、突然のことで話す材料を用意しておらず、情けない事に零菜さんからの話しにただ笑いながら聞いてることしかできなかった。
そんな感じで零菜さんの話を30分ほど聞いていると、電話番号を交換したあの日の話になった。
初めは他人に話していいのか迷ったが、まったく関係無い麗美さんだからこそ話せる内容だと判断し、優くんと由奈ちゃんの相談をさせてもらった。
勿論優くんの素性は伏せ、友達からの相談として零菜さんに話した。
話の内容に驚かれると思っていたのだが、そんなことは無く零菜さんは親切に相談に乗ってくれた。
そして相談していくにつれ、私もいつの間にか自分の感情を剥き出しにして零菜さんに話していたのだ。
451 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:41:09.15 ID:IgxcIWs6
なんとか優くんを助けてあげたいこと…由奈ちゃんに間違っている事を自覚してほしいこと…。
気付けば零菜さんにすべてを話していた。
『ふふ、本当にその男の子のこと好きなのね…』
「いや、まぁ……ははっ…はい…」
別に隠しても仕方ない。
麗美さんなら問題無いだろう…。
「あっ、そうだ!麗美さんって兄妹居るんですか?」
麗美さんの名字は優くんと同じ。そんな偶然ある訳無いと思うのだけど一応…。
『兄妹?初めて会った時に言わなかったっけ?
兄と妹が二人居るわ』
「あっ、そうでした!ごめんなさいっ!」
そういえば言っていた気がする…夢のような時間だったのであまり覚えていないのだ。
『あっ、ごめんね?休憩終わっちゃった。また電話するわ』
「あ、そうですか……分かりました。それではまた…」
電話を切り、ベッドに放り投げる。
麗美さんの兄妹…。
でも、優くんとはやっぱり関係無いみたい…確か麗美さんは私や優くんと同い年。
それに今思い出した事だが、優くん本人が妹は由奈ちゃん一人しか居ないと言っていた。
優くんと顔が少し似ているけど、やはり思い過ごしのようだ。
てゆうかそんな偶然続く訳が無い。
452 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:41:42.17 ID:IgxcIWs6
「ん…メール?」
投げた携帯が青い光でピカピカ点滅している。
あの光の色はメールが届いた時に光る色。
再度携帯を掴み中を確認すると、知らないアドレスが表示されていた。
メールの内容を確認してみる。
『今さっき電話したのにメールでごめんね?
さっきの話だけど、薫ちゃんが強引にでも引き剥がせばいいんじゃない?
多分、そういう関係は他人が間に入らないと改善されないんじゃないかな?
一度薫ちゃんからその男の子をデートに誘ってみたらいいよ。それで薫ちゃんの気持ちを伝えてあげなよ。
お節介でごめんね?でも応援してるから頑張ってね』
文を何度も読み返し、確認する。
「これって、麗美さんだよ…ね…」
わざわざ忙しい中メールしてまで相談に乗ってくれるなんて…。
麗美さんの言う通り、私が何とかしないといけない。
「よ~し!さっそく優くんに電話しなきゃ!」
麗美さんの言葉に勇気づけられた私は早速優くんを誘うべく優くんの携帯にメールを送った。
「よし……あっ、零菜さんにもメールしなきゃ!」
先ほど送られてきたアドレスにメールを返す。
「これでOK…って、あれ?そう言えば……私零菜さんにアドレス教えたっけ?」
453 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:42:10.49 ID:IgxcIWs6
ふと、零菜さんのアドレスを見て疑問に思った。
記憶を遡り思い出してみるが、教えた記憶は無い。
「ま…いっか!優くんとデートかぁ…ふふっ楽しみだな」
多分零菜さんと初めて会った時にでも教えていたのだろう…。
つまらない疑問を頭から消し去ると、優くんからの返事を待つことにした。
※※※※※※※※
「……」
携帯を閉じテーブルに乗せる。
私は電話は苦手だ……苦痛さえ感じている。
電話が苦手と言うより会話が苦手と言ったほうがいいかもしれない。
とくに他人の場合は…。
ため息を吐き捨てテーブルの上にある小さなティーカップを掴み口に持っていく…私の愛用しているティーカップ。
四年ほど前に父から誕生日に貰った
プレゼントだ。
他にも誕生日になるといろいろなモノが届けられる。
どれも高価なモノばかりで、必ず手紙が添えられている。
手紙の内容は…まぁ、見飽きた殺し文句の羅列だ。
綺麗だ…愛してる…お付き合いしてください。
正直飽き飽きしている。
自分に自身があるのか、自分撮りの写真を添えるファンも多い。
そういった手紙はすべて読まずに捨てる事にしている。
貰ったモノも知り合いに流している。
454 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:42:32.92 ID:IgxcIWs6
仕事柄、プライベートを貰ったもので身を飾ると滑稽に映るからだ。
「零菜さん、そろそろ大丈夫ですか?」
私の元に小柄な女性が歩み寄ってきた。
眼鏡を掛け、髪を後ろに縛りスーツを着こなす女性…名前は…忘れた。
別に覚えなくていい。
覚える必要が無い…。
「貴女…明日から違うモデルの子についてね」
「へっ?」
唐突に発せられた私の言葉に顔をひきつらせている。
「私のマネージャーは違う子にするから。だから貴女は違うモデルの子について。話はそれだけ、さようなら」
手のひらをヒラヒラとなびかせ消えるように急かすと、オドオドとスタジオから姿を消した。
これで何人目だろうか?もう覚えていないが、軽く二桁は超えているだろう。
別に要領が悪いとか合わないとかでは無い。
単純に同じ顔を見ていると飽きてくるのだ。
だから飽きたら捨て飽きたら捨ての繰り返し、誰も私に歯向かわないから余計に腹が立つ。
ヘラヘラと人の顔色を伺ってはペコペコと…唯一私に反抗するのは血を分けた双子の兄だけ。
そう…私より劣ってるあの“不出来”な兄だけなのだ――。
455 名前:狂もうと ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日:2011/03/29(火) 23:44:45.41 ID:IgxcIWs6
「……」
優哉の顔を頭に浮かべたら腹が立ってきた。
テーブルから携帯を雑に取り優哉の元に電話をかける。
今頃は空が家の空気を歪めているころだろう。
見知らぬ“妹”が家に突然上がり込んできたのだから、由奈が黙って見ていられる訳が無い。
「……」
数コール鳴らしてみたが、電話に出る気配を見せない。
仕方なく電話を切る。
まぁ、いい…空を迎えに行った時にでも話せばいい。
どうせ電話しても由奈が出て優哉に繋がないだろうし…。
「ふふ…今度はどんな歪んだ表情を見せてくれるのかしらね?あの“兄妹”は」
――私の暇潰し……それは言葉通り目標を“潰す”ことだった。
最終更新:2011年04月16日 12:37