悪徳の館(その2)

260 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:35:21.05 ID:wwcjCl3E

 そもそも千早は、この水無月家の歴史に於いても、かなり特別な存在だった。
 信濃源氏の嫡流たる水無月家に、女を正嫡の後継者として置いた前例は無い。
 例え、当代が男子に恵まれなかったとしても、しかるべき筋から、しかるべき資質の後継者を養子として迎え、それに直系(あるいは傍系の)の娘を添わせ、その子を正嫡とするのが伝統とされてきた。
 また、いかに直系の男子であろうとも、その資質を認められなければ、嫡子として水無月宗家を継ぐ事は出来でも、それ以上の役割を担うことは出来ない。
 つまり、信州グループ総帥として、振るうべき辣腕を持たなければ、財団経営に参加するどころか、本家で飼い殺しになってしまう。
 早い話が、いかに血が濃くとも、女と能無しは企業経営に参加できないのである。
 後代に残す血を管理するために、あてがわれる異性以外は抱く事も許されず、それが嫌なら出家か出奔するしかないという、辛い生き方を強制されることとなる。
 これが、千年続く現代の名門の実情であり、その封建性は、能力主義が導入された分だけ、さらにタチが悪くなったと言えるだろう。
 まあ、株主や取締役たちに言わせれば、ただ、その家に生まれたと言うだけで、無能なる者に、大事な財団経営を任せることは出来ないと言うだろうが。
 つまり千早が、その千年の禁を破った最初の一人ということになる。
 彼女こそが、女の身を以って水無月家を継ぎ、さらに信州グループの総帥の座に就くことを約束された最初の一人であった。

 そもそも千早の父、水無月藤十郎という男が、水無月家累代の中でも出色の人物といわれた男だった。
 信州グループをバブルの波に乗せてさらに発展させたばかりか、その終焉を予期するや、無計画な拡散経営を抑えて不景気を乗り切った男である。
 さらに政界再編の波に乗って、国会に出馬するや否や、圧倒的に強固なその地盤や、潤沢すぎる軍資金を武器に、たちまち数回の当選を果たし、今では与党最大派閥の顔役とまで言われている男なのだ。
 その彼が言い放ったのだ。
 我が後継者は千早以外にいないと。
 しかも、当の千早がまだ小学生だった頃に、である。
 そして、万人がそれを納得するほどの才気に、彼女は溢れていた。



261 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:36:29.20 ID:wwcjCl3E

 宗家を継ぐというだけなら知らず、グループの総帥の地位まで女児に継がせるなどとんでもない! と息巻く一門の大人たちも少なからずいた。
 だが、水無月藤十郎の圧倒的な影響力と、数学オリンピックに出場するほどの千早の早熟な学才に、やがて彼らは反論の言葉を失い、沈黙を余儀なくされてゆく。
 なにより千早の前に立てば、彼女が発する圧倒的なオーラに、よほど鈍感な者でない限り気付くであろう。
 それはまさしく、人の上に立つことを生まれながらに宿命付けられた者のみが纏い得る存在感であり、たとえ信州グループに数多の人材ありと言えども、彼女以外にその空気を所持しているのは、現総帥・水無月藤十郎のみであったのだ。



「――で、兄さんはそんな千早ちゃんのことをどう思ってるの?」
「……………」
「気付いてないとは言わさないわよ? 千早ちゃんが兄さんをどう想っているかなんて、よっぽどのバカか朴念仁でもない限り、すぐに分かるんだから」
「……………」
「答えなさいよ」
「……………」
「答えられないの?」
「……………ッッ」

 秀彦は何か言いたげに首を振るうが、がっちりと姫子の大腿部に頭部を挟まれ、なによりその顔面に彼女の全体重が乗っているとなれば、口など利けるはずがない。
 ベッドに横たわった兄の顔に、股間を押し付けるように座り、愛撫を強制する妹は、彼女のあどけない美貌と相まって、ひどく淫靡でいやらしい眺めに見えた。
 彼女がフリルのついたワンピースを着ている――スカートの下は何も穿いてないのだろうが――に対し、秀彦が寒々しい赤裸であるのも、彼の立場を象徴していると言えるかも知れない。
「ふふふ……まあ、答えられないなら無理に答えることはないわ……んッ!!」
 そう言いながら笑う姫子は、背まで伸びた亜麻色の髪をなびかせ、みずからの股間から生じた快感に身を任せ、そのまま唇を噛んだ。


262 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:37:53.34 ID:wwcjCl3E

 ここは長野にある水無月家の別邸――信州グループが東京に進出するまでは本宅であった住居――であり、のべ一万坪の敷地を所有する大豪邸である。
 無論その地下には、その豪邸に相応しい数のおびただしい地下室や地下倉庫・地下施設があり、兄妹が睦み合うこの部屋は、そんな忘れられた地下の一室であった。


(やっぱり……兄さんの舌は最ッ高……ッッ!!)
 そう思いながら、姫子は身を揺すった。
 その瞬間、まるで以心伝心のように彼女の望んだポイントを兄の舌が襲う。
「くうッッ!!」
 思わず声が迸る。
 のけぞりながらも兄の髪を掴み、本能の命じるままに彼の顔に体重を乗せる。
 むろん彼の顔が苦痛に歪むのを見届けながらだ。
 姫子は酷薄な笑いを浮かべ、その上で秀彦の呼吸をさらに妨害すべく、おのれの陰核を兄の鼻に押し付け、叫んだ。
「さあ!! 早くあたしをイカせないと窒息しても知らないわよ兄さん!!」


 姫子は、この姿勢が好きだった。
 舌での奉仕のみならず、セックスの際も彼女は、正常位ではなく騎乗位を好んだ。
 秀彦の愛撫から与えられる物理的な快感だけでは物足りない。――無論それだけでも我を忘れるほどのエクスタシーを彼女は享受する事が出来るが――それ以上に彼女は、兄の存在を文字通りおのれの尻に敷き、彼を見下ろす瞬間が好きなのだ。
 そして、まるで触手のように股間を這いずり回る兄の舌は、確実に彼女の肉体を昂ぶらせ、股間の隙間から僅かに覗く兄の瞳には、被虐の興奮に歓ぶギラギラとした光が宿り、それが彼女の心をさらなる高みへと追いやる。

「~~~~~~~~~ッッッ!!!」

 声にならない悲鳴が地下室に響いた。
 性感の頂点を知る者のみが味わえる電流が姫子の肉体を貫き、この瞬間ようやく彼女は一個の征服者から快感に悶える一人の女へと戻り、そのまま脱力してベッドに倒れこむ。
 さすがに舌と唇だけの愛撫ではセックスと同量の絶頂は望むべくも無いが、今夜はそれを望むつもりはない。



263 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:39:26.40 ID:wwcjCl3E

 姫子はのろのろと身を起こし、秀彦を見る。
 まるでフルマラソンを完走したランナーのように顔面蒼白になり、荒い呼吸を繰り返す兄。その股間には、まるで石のように硬くなった彼のものが屹立し、その存在感を誇示していた。
(あ~あ……今夜が危険日じゃなかったら……腰が抜けるまでたっぷり兄さんを可愛がってあげられるのになあ……)
 そう思いながらも、こきりと首を鳴らし、腕時計を見る。
 針は、午前二時に差しかかろうとしていた。
 むろん、この館の主たる水無月千早が起きている時刻ではない。
(そろそろ、よね)
 姫子はひそかに笑うと、まだふらつく足でベッドを降り、地下室の扉のロックを外す。

「姫子……?」

 ようやく落ち着いたらしい秀彦が、不審そうな視線を妹に向けるが、姫子はいちいち気にもしない。
 逆に姫子は、いかにもわざとらしい声色で兄に頭を下げる。
「ごめんね兄さん~~」
「ごめんって……何が?」
「例の兄さんとの約束の一件だけどさ、話したらメイドさんたちがやっぱりヘソ曲げちゃってさ~~」

 その瞬間、秀彦の視線が一気に険しくなる。
 おそらく妹が言わんとしている意図に気付いたのであろう。
 成績こそ人並みであっても、彼は決して頭の回転の鈍い男ではない。
 そして、そんな兄を嘲笑うように妹は形だけの謝罪を続ける。
「週末にノルマが果たせないなら、今夜働いてもらう。それがいやなら東京なんかには行かせないって、菊島さんが仁王立ちして言うのよね~~」
「今夜って、おま――」


 その瞬間、ドアからコンコンとノックの音が鳴った。


「どうぞどうぞ~~みなさん御苦労様です~~」
 にやつきながら姫子が開け放ったドアからぞろぞろと地下室に入って来たのは、都合十人のエプロンドレスを着込んだ女性たちの群れ。
 メイド長の菊島優子を筆頭に、この屋敷で働く全てのメイドたち。
 彼女たちは、ここにいる古神秀彦の肉体を、その妹たる姫子と共有する女たちであった。
――無論その事実は、水無月千早の知るところではない。


264 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:40:40.54 ID:wwcjCl3E

「秀彦さん、話は姫子さんから聞きましたわ」
 凛とした声で、先頭のいかにも生真面目そうな眼鏡メイドが言う。
 だが、彼女――菊島優子の口元は歪み、目元は淫らな欲望に潤んでいる。
「残念ながら、自分の勤めを果たさずに東京に遊びに行きたいと仰られましても、ワタクシどもと致しましては、素直にハイいってらっしゃいとお見送りするわけにはいきません。お分かりですわね?」
「じっ、自分の勤めって……いつからそんな――」
 だが秀彦の反論を最後まで言わせる気は、もちろん菊島には無い。
「貴方様は、ワタクシどもの勤労意欲を維持させるための大切なレクリエーション。つまり水無月家に対してつつがなく御奉公をするためにも、秀彦さんの申し出をこのまま見過ごすわけにはいかないのです」

 そう言いながら菊島は、つかつかと早足でベッドに歩み寄り、いまだ硬くなったままの秀彦の男根――ではなく、その下の睾丸をぎゅっと握り締める。
「ぎッッ!!」
 秀彦の顔が、またも苦痛に醜く歪む。
 反射的に、菊島の握撃をふりほどこうとおのれの股間に伸びる秀彦の腕だったが――そのまま空中で、別のメイドの手によって差し押さえられた。
 いや腕だけではない。
 またたく間に五人のメイドたちが彼の体に取り付き、気がつけば秀彦は、女体というロープに縛られて、微動だにできなくされてしまっている。
「へえ……!」
 見慣れたはずの眺めではあるが、いつもながらその見事なコンビネーションに、高みの見物を決め込んでいた姫子も、思わず賞賛の声をもらしてしまう。

 信州グループ次期総帥に直接仕えるメイドたちともなれば、当然彼女たちは単なる家事手伝いではない。有事の際には秀彦とともに千早の身を守るボディガード役でもある。つまり、彼女たち全員が何がしかの体技の玄人であるということだ。
 ならば、その身体能力――つまり彼の急所を握り締める握力――も、やはり普通の女性の比ではない。

「ふふふ……こんなか弱いメイドさんにあっさりキンタマ握られて悶え苦しんで……男のクセに情けないと思わないのですか?」

 むろん返事をもらうための質問ではない。
 なぜなら、魚のように口をパクパクさせている秀彦の口を、菊島はおのれの唇であっさり塞いでしまったからだ。
 そのまま、彼の口元からは水蛇がのたうつような淫靡な音が洩れ聞こえてくる。むろん彼女の舌が秀彦の唇を犯す音だ。
 唇だけではない。
 彼の体にまとわりつくメイドたちは、そのまま秀彦の乳首や男根、肛門や首筋、背中や脇腹などの急所に指を伸ばし、あるいは舌を這わし、まるで捕食せんばかりの勢いで彼の全身を凌辱し始める。
 先程まで菊島の手によって握り締められていた睾丸も、いまや別のメイドが口をすぼめて吸い込んでいた。


265 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:45:34.20 ID:wwcjCl3E

「しかしまあ、相変わらずエゲツないわよねえ、あなたたち……」

 苦笑いを浮かべながら姫子がメイドの一人に囁く。
 話し掛けられたメイドも、応じるように笑いながら、こりこりと頬を掻いた。

 共有といってもルールはある。
 メイドたちは責任者の菊島を含めて、集団ならぬ一対一のセックスをしない、というものであり、そのためかもしれないが、メイドたちが秀彦の肉体を貪り合い、男根を奪い合う様は、まるで牡鹿に襲い掛かる群狼のごとき壮絶なものとなるのが常であった。
 現に、ベッドの上では、先程に引き続き五人のメイドが、エプロンドレスを翻しながら秀彦の肉体に絡みつき、あるいは唇で、あるいは舌で、あるいは指で、あるいは性器で、彼の肉体を蹂躙している。
 もっとも菊島優子が引き連れてきたメイドは総勢十人なので、当然先発組と後発組に彼女たちは分かれている。一人の人間の体積から考えれば、十人という人数はやはり一度に性的接触を図るには多過ぎるためだ。

 というわけで、ベッドの周囲には残り五人のメイドたちが順番を待っているわけだが、姫子が話し掛けたのは、メイドたちの中でも彼女と一番仲の良い、シャーリー江馬というハーフのメイドだった。
 イギリス系白人の血を引く彼女は、メイド長の菊島と同じく眼鏡が似合う美人だが、そのレンズの奥のまなざしは菊島と違って慈母のようにおだやかで優しげなものであり、そんな彼女を姫子は姉のように慕っていたのだ。

「まあメイドというのは、それだけストレスの溜まる仕事だということですわ」
 そう答える江馬に、姫子は皮肉な笑みを崩さず言い返す。
「嘘ばっかり。ただ単にあんたたちが淫乱メイドだってだけでしょうが」
 そう言われては江馬としても返す言葉も無い。江馬としては引き続き苦笑を浮かべる以外になく、そんな彼女に姫子が言葉を続ける。
「まあ、うちの兄さんにかかれば仕方ないわよね。あの菊島さんでさえこのザマなんだからさ」
 そう言いながら顎で姫子が指し示す彼女――菊島は、まだ秀彦の唇を他の女に譲ろうとしない。彼とのディープキスが始まって、すでに十分は経過しているだろう。
 秀彦の顔面はまたも蒼白になっており、そろそろチアノーゼでも起こしかねない顔色になっているが、彼の首に両腕を回した菊島は、おそらく秀彦が失神するまでキスを辞める気は無いのではなかろうか。

「メイド長は……ひょっとして秀彦さんが好きなのですか……?」
 江馬がぽつりと呟く。
 菊島の瞳には、キスという行為を楽しむ以上の情動が見え隠れしている。
 少なくとも、あんな目をして男とキスをする女の心に、快楽追求以上の感情が無いはずがない。


266 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:47:44.87 ID:wwcjCl3E

「かもね」
 姫子も、それまでの笑顔を引っ込め、真顔になって呟く。
「いいのですか姫子さん?」
 心配そうな眼差しを向ける江馬に、いいも悪いもないわよ――などと姫子は強がったりしない。ただ彼女は、少し寂しそうな光を目に宿しながら言った。


「……だって……兄さんはああいう人なんだもの……仕方ないじゃない」


 江馬としては、そんな姫子から視線を逸らしてうつむくしかない。
 姫子が、一個の女として兄・秀彦に熱い想いを寄せているのは江馬としても知っている。
 しかし、だからといって江馬に何かを言う資格はない。
 なんとなれば、彼女もまた秀彦の肉体が生み出す圧倒的な快楽に魅せられた女の一人だからだ。今更あの男の“味”を忘れてしまえと言われたところで、そんなことは不可能に決まっている。少なくとも、この家の一つ屋根の下でともに彼と暮らす以上は、だ。
 だから、せめて本気にならないように、心まで奪われてしまわないようにするくらいしか、江馬としては姫子に報いてやれるすべがない。何と言っても、そもそも秀彦の肉体をメイドたちに提供したのは、他ならぬ姫子なのだから。

「ではなぜ、秀彦さんを我々に差し出すような真似をしたのです?」

 今更ながらの質問を姫子にする江馬。
 だが、相変わらず姫子はその問いに答えない。
 答える言葉を持たない――というわけではないのは江馬にもわかっている。
 ただ、普段は明るく素直な姫子が、この質問をされた時だけは頑なになり、石のように沈黙してしまうことを知っている。
 しかも奇妙なことに、彼女の沈黙には拒絶の匂いが無い。
 つまり――たとえば誰かから脅迫などされて――いやいやながらに兄を自分たちに抱かせているわけではない、ということも江馬にはわかるのだ。
(一体どういうつもりなんだろう……?)
 江馬としては、そんな姫子の態度に首を捻るしかなかった。



 むろん、姫子には姫子の理由がある。
 と言うより、これはあくまでも嗜好の問題であり、理由というほどの「理」ではない。
 だから姫子は何も語らない。
 言ったところで、おそらく江馬には理解できないことを姫子は知っているからだ。


267 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:51:08.42 ID:wwcjCl3E

(ああ……兄さんが、あんなに苦しんでる……あたし以外の女に責められて……ッッ!!)

 姫子の股間がじゅん、と疼く。
 いまや地下室には、女たちのもらす息遣いや喘ぎ声が充満している。――にもかかわらず、秀彦の声だけが聞こえない。
 当然であろう。彼の口はいまなお「声」という呼気を発せられる状態には無い。
 ベッドに横たえられ、ショーツを脱ぎ捨てたメイドに騎乗位で犯され、別のメイドの指で肛門を抉られ、二つの乳首には同様にそれぞれ別のメイドがすっぽんのように吸い付き、そんな状態の兄の唇を、いまだに菊島が独占し続けている。

 いや、さすがにキスは続いていない。二人の唇は離れたままだ。
 だが、菊島の行為は、キスよりもさらに秀彦の呼吸を阻害し、もはや兄の肉体は失神寸前まで追い込まれていることは見れば分かる。
 なぜなら、開いたままの秀彦の口には、先程から絶えることなく彼女の唾液が流し込まれている。しかも彼が口を閉じられないように、その鼻を菊島がつまみ、気道を完全封鎖しているとなれば、もはや兄がブラックアウト寸前なのは明白だ。
 むろん通常なら抵抗するだろう。秀彦は仮にも千早の学生生活におけるボディガード役として東京から送り込まれた男だ。気力体力ともに、そこら辺の男子高校生の比ではない。
 だが、さすがに古流剣術東雲流の遣い手と言えど、体に覆い被さった何人もの成人女性を跳ね返すパワーはない。しかもメイドたちも彼の抵抗を防ぐように、巧妙にポジショニングに気を配って秀彦の動きを封じているとなれば、なおのことだ。
 そして、なぜこんな殺人未遂スレスレの真似を彼女たちがしているのかも姫子は知っている。

「ひはッッ!!」

 騎乗位で秀彦に跨っていたメイドが、まるで通電したかのように身を震わせる。
「あああああ出てる出てる出てる出てる出てるッッッッ!!!!!」
 しかも、その震えは止まらない。
 メイドのエクスタシーのせいだけではない。
 兄の終わらない射精が、メイドの絶頂を終わらせないのだ。
 むろん秀彦の肉柱を挿入している以上、そのメイドは安全日なのであろうが、おそらく彼女の子宮には、いまや溢れんばかりの秀彦の精液が流れ込んでいることだろう。
 そして数秒後、ようやく射精が途切れたらしい秀彦が、がくりと四肢を脱力させ、彼に跨るメイドも満足そうに倒れこみ、他のメイドに支えられている。おそらく二人は気をやると同時に気を失ったのであろう。


268 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 13:54:38.19 ID:wwcjCl3E

――意識喪失を伴う射精は通常時よりもさらに量が多く、絶頂感も高く、長く続く。
 江馬は知らないが、いわゆる「腹上死とは死ぬほど気持ちいいらしい」という理屈を応用した責めで、これも姫子が兄とのセックスで開発し、つい先日、菊島に提供したテクニックの一つに過ぎない。
(本当は兄さんを縛り上げて、女性上位の体勢でやるのが一番気持ちいいんだけどね)
 そう思いながらも、これは安全日でなければ出来ない行為であるため、姫子にはあと数日は不可能なプレイではあるが、それはいい。
 ぜえぜえと息を荒げながら、潤んだ目で菊島が眼鏡の奥から失神した兄を見つめているが、それもどうでもいい。

 服のポケットからハンカチを取り出し、口元を拭う。
 ピンクのハンカチがべっとり唾液で濡れる。
 むろん通常の精神状態で、こんな餌を前にした動物みたいに涎を垂らす趣味は、姫子には無い。
 彼女はイったのだ。
 さっきの光景を目に焼き付けた瞬間、股間や胸といった性感帯に一切の物理刺激を与えることなく、姫子は絶頂に至ったのだ。
 自分以外の女たちに、自分の兄が凌辱され、征服され、支配され、そして悶絶させられたという視覚情報だけで、彼女の肉体は直接的な性行為以上のエクスタシーを脳に送り込んだのだ。
 愛する男を奪われているというマゾヒスティックな感情と、愛する男が弄ばれているというサディスティックな感情が、互いに交差し、絡み合い、絶妙なまでの刺激を与えてくれる。
――これこそが、姫子が秀彦をメイドたちに捧げた理由だった。


270 名前:悪徳の家(その2)[sage] 投稿日:2011/04/24(日) 14:12:21.12 ID:wwcjCl3E

(でも……まさかこんな程度で終わりだなんて思ってないよね兄さん……)
 失神したメイドをベッドに横たえ、残ったメイドたちが再び彼の体にまとわりついていく。
 依然として硬度を失っていない陰茎に、今度は菊島が跨り、同時に口に水を含んだメイドが秀彦に口移しで水を飲ませて意識を回復させ、そのままディープキスに移行していく。
 そう、メイドたちは十人もいるのだ。
 彼女たちが全員満足するまで兄が解放されることは無い。
 そして、それが終わった後、――疲労で勃起すら出来なくなった兄を、心行くまで姫子がイジメ尽くすのだ。
 バイブを使い、ローターを使い、ペニバンを使い、浣腸を使い、ドラッグを使い、兄が泣いて泣いて、声が涸れるまで泣き叫んでも絶対に許さない。男の形をした最高級の「肉」を、朝までかけて姫子がゆっくりと喰らい尽くす。
――これこそが、毎週末に行われているメイドたちと兄妹との「宴」なのだ。
 いつもと違うのは、明日が学校だということだが、まあいいだろう。授業中に居眠りしている生徒など珍しくもあるまい。


 メイドたちも、そして主君である千早でさえも、姫子にとっては兄を精神的にいたぶるためのオモチャに過ぎない。
(さあ……楽しい夜の始まりよ)
 姫子はぺろりと唇を舐めた。


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最終更新:2011年04月29日 14:47
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