人格転生 第2話

626 :人格転生4 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/01/15(日) 23:24:19.36 ID:qPV2u+J3 (6/8)
「さっきの人、すごい綺麗だったね」
「ああ…だな…」
「鼻の下ビヨーン」

由衣が俺の唇を掴んで下に下げようとしてくる。

「痛いわっ!」

って、それより、なんで思い出せないんだろう。デジャブみたいな感覚なのだろか。あの人にあったって感覚がするだけっていう。

まさか…昨日爺ちゃんに聞いてた家政婦さんじゃないよな。
でも普通おばさんぐらいの人がくるもんだよな。
でも、やばい。あの爺ちゃんのことだから、あの人の感じなので怖い。
俺のこういうカンはよく当たる。既視感があるのも紹介の写真かなんかで見たからだろう。

うちの家は見ての通り一戸建てというより、自分で言うのもなんだが豪邸だ。
死んだ両親がITと商社のエリートだったからだ。今は爺ちゃんがあの家と資産を管理している。
このへんもいろいろと複雑なのでおいおい説明していこうと思う。

とにかく、うちの場合が場合だけに、もしあの人が家の家政婦になると困ったことになる。
とくに、こいつがいるだけに。俺は由衣を見つめる。

「やだ…お兄ちゃん…そんなに見つめられたら恥ずかしい…」

何も考えてないバカはほっとこう。

「学校行くぞ」
「待ってよぅ」


教室に入る。

「おはよう」
「おはようございまーす!」

なぜお前まで上級生のクラスにまでついてくるんだと、あえて由衣には突っ込まない。
いつものことだからだ。

「ああ、おはよう」

さらに、いつものように声をかけてくれる一名以外はスルー。
他のクラスメイトはおはようと小声で返すか無視だ。

俺みたいなシスコン野郎はお断りとでも言わんばかりなのだが、それは違う。原因は由衣だ。
そりゃそうだろう。自分の兄に付きまとい同級生はおろか上級生にも多大な迷惑をかけてる奴だからだ。
例えば球技のイベントで、うちのクラスにいるバスケ部のエース相手に一人で61点取ってチームを優勝させるくらい目立てば、嫌でもそういう視線にもなる。ちなみにあの試合はヤバかった。
ソフトボール大会では上級生のエースを全打席ランニングホームラン。

さらに全学年の男子生徒の告白を「あたしブラコンだから無理」というふざけた断り方で振ったりしていたのも原因だ。

一時はそれで由衣がいじめられそうに、というより、いじめてきた相手に危害が及びそうだったので、以降は俺を通して告白などの面倒事を処理している。
運動神経が良すぎるというのも考えものだ。他はからっきしなのに。さらに天然。

だからなのかこいつは全然周りを気にした素振りをみせない。


627 :人格転生5 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/01/15(日) 23:28:06.16 ID:qPV2u+J3 (7/8)
一部の由衣に、というより俺に友好的な女友達に助けてもらってる形だ。
きちんと返事をしてくれる学級委員の姫乃愛理(ひめの あいり)も数少ない友人だ。
ストレートの髪に身嗜みに歪みがなく優雅な姿勢と物腰。
相変わらずお嬢様特有の優雅な気配が伝わってくる。
そういやこいつも変わってるんだよな。人のこと言えないけど。

「今日も元気でなによりだな。美里兄妹」
「まあな」
「元気だよ~で、聞いてよ…あのね…今日ね、お兄ちゃんがね…」
「だが今度からはもう少し早めに登校することだな。二人共、もう少し時間に余裕を持ったほうがいい」
「ああ、今朝ちょっとあってな」
「でね…お兄ちゃんってば鼻の下伸ばしてさ…」
「何があったんだ?」
「由衣が通りすがりの人とぶつかってさ」
「すごく綺麗な人だったんだよ~でお兄ちゃんったら」

微妙にズレてる俺たちの会話。人の会話中に入ってくるのもやめて欲しいが言っても聞かない。

「なるほど。由衣君が通りすがりの綺麗なお姉さんとぶつかったんだな。で良也君がデレデレしていたと」
「うん! そうそう!」

あっさりと理解してしまう愛理も凄いと思う。しかも手の方は日直の仕事もこなしながら。
さすがハードボイルド口調の委員長。将来は探偵かなんかになればいいと思う。

「それはそうと、結衣君」
「え、なになに?」
「紗月が来てるぞ」

廊下を見ると由衣と同級生のスカーフをした女の子がいた。
姫乃さつき(ひめの さつき)は160cmの由衣より小柄で150前後くらいのちっちゃい子だ。
本人はそのことを気にしているのでちっちゃい子という紹介は失礼かも知れない。
ちなみに委員長の愛理とは苗字が一緒だが、従姉妹で姉妹ではないらしい。

「あ、先輩、愛理さ…愛理先輩、おはようございます」
「ああ、おはよう、さつきちゃん」
「おはよう、サツキ」

さっき、口ごもったけど、さつきちゃんって、ときどき愛理様って呼ぶ時あるんだよな。
最初は百合百合な関係かとドキドキしてしまったが、何を考えてるか愛理に一発で当てられてこっちが顔を赤くしたこともある。
まあ、お嬢様同士の付き合いもいろいろあるらしい。

「由衣ちゃん、行こ」
「うん! さっちん!」

しかもこの二人仲がいい。
本当にさつきちゃんにはお世話になっている。
俺がいない間、学校で由衣の面倒を見てるのは実質さつきちゃんだからな。
さつきちゃんのおかげで、由衣は自分のクラスでこのクラスで浴びるような冷たい視線を浴びずにすんでいる。
由衣の情報は全部さつきちゃんからのものだ。
さらには頭は弱いが運動神経抜群の憎めない子という地位を確立してくれている。
どんだけいい子なんだよ。涙出てきた。

「それでは失礼します」
「ああ、由衣を頼む、さつきちゃん、君しかいないんだ」
「あの、なんで泣いてるんですか?」

俺はさつきちゃんと由衣を見送った。

「良也君も大変だな」
「まあな」


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最終更新:2012年01月21日 17:24
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