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人格転生6 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/01/17(火) 02:14:00.79 ID:TG32BtEP (1/4)
下校時。鮮やかな夕暮れの中、いつもの靴箱の前で由衣が待っていた。
混雑した廊下を歩いていると生徒の世間話も聞こえてくる。
「ほら、またあの子だよ」
「ああ、例のブラコン女」
「何様って感じだよね。ちょっと運動神経いいからって」
「でも…」
「うん。頭の中は空ーっぽだもんね、あはは」
「笑えるよね。お兄ちゃん、お兄ちゃんってキモイっての」
こいつらは由衣が理由もなく俺に擦り寄ってきてるブラコンバカだとでも言いたいのだろうか。
由衣にはちゃんと理由がある。それがわかってるだけに腹立たしい。
さすがに由衣のクラスまでしか、さつきちゃん効果は期待できない。
「あの、先輩方」
あれ。この声。ウワサをすればなんとやらで、さつきちゃん。
「な…なによ」
「私の親友が何かしましたか?」
「はぁ?」
「ですから私はあの子の友達なんです。先輩方のお気に触ることをしましたかと尋ねてるんです」
「何よこの子…」
「バスケ部の自称エース相手に61得点して、チームを勝たせる子の友達です」
「…なっ!? このっ!」
さつきちゃんが胸倉を掴まれた! ヤバイ!
「この子、球技大会でブラコン女とプレーしてた子じゃん、やっちゃいなよ」
もう一人の女子も止めるどころが焚きつける。
「ソフトボールでも一緒にプレーしてましたよ。打ちやすい球を投げてもらってすいませんでした」
「くっ…! ちょっとアタシにも貸してよ、そいつ!」
まずい! なんとかしないと!
「あー! ちょっと先生! こっちです! こっちのロッカー!」
すかさず大声で階段の方に教師を呼ぶふりをする。
「いやー、すいません、俺のロッカー開かなくなっちゃって」
ちょっとわざとらしいかな?
「くそ! ヤバイよ、ほら、部活行こ!」
「でもコイツ…!」
「離しなって! 先生に見つかるよ!」
「覚えてなよ…!」
よかった。なんとか騙せたみたいだ。
「『姫乃』相手に喧嘩を売るつもりでしたら、いつでもどうぞ」
「「な!?」」
ふたりとも一瞬固まったあとすぐに退散した。
俺はすぐにさつきちゃんに駆け寄る。
「さつきちゃん!」
「あ! 先輩…」
668 :人格転生7 ◆qtuO1c2bJU [sage] :2012/01/17(火) 02:56:37.43 ID:TG32BtEP (3/4)
セーラー服の1年生の赤のスカーフが乱れていた。
自分でそれを直しながら俺の方をむいて慌てたそぶりをみせる。
「何もあそこまでやる必要ないんだって」
「でも…」
「由衣のことかばってくれるの嬉しいけどさ。さっきの上級生だろ。それにあの子らバスケ部とソフト部じゃん」
「本当のことを言ったまでです」
「でも、さつきちゃんまで目を付けられたら…」
黒のスカーフだったのであれは3年生だ。2年は青。1年は赤だ。
「大丈夫です。ちゃんと姫乃の名前を出しておきましたから二度と言ってこないと思います」
「そういう問題じゃなくてさ…」
確かに姫乃グループは日本有数だから効果はあるんだろうけど…
「先輩は腹が立たなかったんですか?」
「いや、立ったけど。普通無視するって」
「それだと悪口は止まりませんよ」
そうか。さつきちゃんの言うことがわかった。逆に目立つ由衣を守るためにはここまでする必要があるってことか。
悪いイメージや悪口はすぐに広まる。特に由衣のような自由気ままに生きてる人間は、すぐにそういう的になりやすい。
改めてさつきちゃんに感謝する。
「ごめん!」
おもいっきり頭を下げた。
「え? あ、ちょ、ちょっと、先輩」
「いつも由衣のことばかりでごめん」
「い、いえ。いいんです。私も結衣ちゃんのことは好きですから」
「でも、申し訳なくて」
「いいんです。もう過ぎたことです」
「これからも友達でいてくれるかな」
「あ、はい。喜んで」
「本当にごめん」
「いいんですって。私が好きで…」
あれ? なんだか周囲の視線がやけに痛いな。
周囲からはなにやらひそひそ声が…
「ねえねえ、どうなったの?」
「下級生の子が告白したみたい」
「で?」
「ごめんなさいって」
はい!?
「あの子スカーフも乱れてるし一悶着あったんじゃない」
「でも友達でいようって」
「そりゃ、そう言うわよフツー」
ちょっと待て! さつきちゃんに目をやると顔を真っ赤にしてる。
かわいい…じゃなくて! なんかピンチになってる!
「おっぱいふにふに~!」
「きゃあっ!」
見ると由衣が側まで来てさつきちゃんの胸を揉んでいた。
ナイスだ! なんて羨ましい…じゃなかった、こういう時だけ役に立つな!
最終更新:2012年01月21日 17:32