吸精之鬼 第4話

692+1 :吸精之鬼 [sage] :2012/01/18(水) 17:47:22.24 ID:DgYQQ3Em (1/6)
投下します。

前回の注意点通り、今回からビッチヒロインが出ます。
今回はメイン二人(大輝と桜)は出ません。


693 :吸精之鬼 [sage] :2012/01/18(水) 17:48:51.41 ID:DgYQQ3Em (2/6)
大輝と桜が福原の家に行く前日の夜、
市内のラブホテルの一室、裸の男女がベッドで横になっていた。
既に事後なのだろう、男の方が疲れた荒い息の中で女に聞く。
「なあ、どうだったよ?気持ちよかったろ?」
「別に・・、普通」
にやついた顔で自分の胸に手を伸ばしてきた男の手を、鬱陶しそうに振り払いながら、つまらなそうに女が答えた。

活発で健康的な顔立ちは見る物に爽やかさを与え、その顔立ちとは正反対のように思える成熟した身体は劣情をそそる。
彼女の名は福原明日香、
大輝達の母の弟である福原の叔父の娘だ。

「何言ってんたよ、散々ヨガってたじゃねえか」
「当たり前じゃない」
自分を抱こうとしてきた男の手をすり抜けるようにしながらそう言うと、そのままベッドから出て、何も身につけぬまま、男に言い放つ。
「アタシだって気持ち良くなりたいんだから、盛り上げるタメに声ぐらいは出すに決まってるてしょ!」
「それなのに、・・はあ…」
最後に呆れて声も出ない、そんな溜め息をしながら、男を見る。

男に言葉がないまま数秒が経過すると、明日香はすぐに帰り支度を始める。
「ちょ、ちょっと待てよ!もう帰るのか?」
「当たり前でしょ!ここにいても意味ないし。それに、」
慌てる男を見る事なく、明日香は言い切り、そこでタメを作ると、
「明日は弟が来るからね」
と笑顔を見せた。
「その弟っての、そんな大事か!?」
「少なくても、今の時間よりは、ね!」

その後、明日香は男に何も答える事なく、テキパキと身支度を済ませると、
「じゃあね」とだけ言い残して、部屋を後にした。


694 :吸精之鬼 [sage] :2012/01/18(水) 17:50:27.83 ID:DgYQQ3Em (3/6)
その帰り道、明日香は溜め息を付きながら歩く。
”今日のはハズレだった”
友人に誘われて行った合コン、思ったより話が合ったそれなりのルックスの男と、ホテルに行ってSEXしてみた。

"ヤリマン""ビッチ"、良く言われており、今日の男もそんな事を口にしていた。
それの何が悪いのか、明日香には分からない。
気持ち良い事を求める事に何の問題があるのか、
男女の繋がり、いや、人と人とのつながり肉欲だろう。

たまにアタリもあるが、今日のはハズレだった。

「上手くいかないなあ」
明日香がつい口にそんな言葉を出した時、それは現れた。

現れた、そうとしか言いようがない。それまでそこには何もなかった。人の気配など微塵も感じなかったのだ。

「な、何、何なの?」
「初めまして、福原明日香さん。私、清水理沙と申します」
驚き慌てる明日香とは対象的に、理沙は落ち着いて自己紹介をする。

「アンタ、一体なんなの?アタシになんの用!」
「大野大輝の事で、貴女に伝えておきたい事があってきました」
「え、大輝の?」
それまで狼狽していただけの明日香が、その言葉で正気に戻ったように落ち着き、理沙を見る。
「はい、貴女には聞いておいてもらわなければならない話です」
そんな明日香をみた理沙は静かな声でそう言うと、ゆっくりと話を始めた。



695 :吸精之鬼 [sage] :2012/01/18(水) 17:51:59.31 ID:DgYQQ3Em (4/6)
話の内容、それは大輝が吸精之鬼となった事実と、吸精之鬼とは何なのか、と言うことだ。

その話を明日香は半信半疑のまま、聞いていた。
突拍子もない話で、現実的には信じがたい話だ。
だが、それを喋るこの女、彼女自体が現実的な存在ではない。

全てを話終えた理沙が静かに問う。
「そういうことです。お分かり頂けましたか?」
「そ、そんなの信じられるワケない・・」
明日香が懸命に否定の言葉を絞り出した。
そんな明日香に理沙は、
「信じるか、信じないかは貴女次第」
と冷めた言い方をすると、一転、厳しい口調になり、
「大事なのは貴女も取り込まれる危険がある、その事です」
と、脅迫めいた言い方に変わる。

一瞬の沈黙、その後にあったのは明日香の笑い声だった。
「可笑しいですか?」
「ハッハハ!可笑しいも可笑しくないも・・」
そこまで言うと、明日香はまた苦しそうになるまで笑った。

その笑いが落ち着いた時、ようやく理沙が言う。
「アンタの話を信じたとしてもさ、アタシと大輝がそんな関係になるワケないじゃん!」
「仮になったとしてもさ・・、アタシが一人の男だけで満足するって、有り得るワケないでしょう!」
そう言うと、明日香は再び笑い出した。

笑いが止む気配のない明日香に、理沙は表情を変えずに聞く。
「しかし、貴女は快楽主義者、危険性がある」
「確かにいとこ同士はカモの味ってのを聞いたコトあるし、それが本当なら、大輝は極上の味がするのかもしれないよ」
笑いと涙目を堪えながら、明日香が答えを続ける。
「それでもアタシは大輝に興味ないんだから!」
そう言い切った。

「いやあ、笑った!アンタが人間じゃないのはわかるけど、それは笑わせてもらったよ!アタシ、もう帰るけど、笑わせてもらったコトには礼を言っておくから!」
明日香はそれだけを言うと、後はもう理沙を振り返らずに帰路に付いた。



696 :吸精之鬼 [sage] :2012/01/18(水) 17:53:21.83 ID:DgYQQ3Em (5/6)
残された理沙に不快な感情はない。
今回は明日香への顔見せ、それが大きな理由だったからだ。

それ以外にも収穫はあった。
それは、笑いに隠した明日香の表情から、その本音が伺えた事、
また、明日香が自身の出生について、本人が知っている事が分かった事。
そこまで分かったのだから、充分な成果だったと言える。

この時の里沙はまだ、明日香という駒の動かし方を考えていた訳ではない。


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最終更新:2012年02月16日 15:50
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