関西から来たキモウト 第4話

147 名前:関西から来たキモウト16 ◇qtuO1c2bJU[sage] 投稿日:2012/06/13(水) 15:47:09.09 ID:FdkUhPFU
…目が覚める。ここはどこなんだろう。
ベッドに手をつき周りを見回す。
いつもの景色と違う。いつもの匂いとも違う。
アタシはどうなったんだろう。やけに頭が痛い。

『あなたは妹。有が抱きたいのは私なの。ごめんね。
 所詮あなたは妹で、あなたがやってることは無駄な努力。
 有が妹のあなたを異性として好きになることはありえないの。
 ちゃんと言ってあげないとダメと思ってね。
 勘違いしてそうだから』

「…っ!!!」

すぐに思い出して吐き気を催す。

(あの女…八つ裂きにしたる…!)

強烈な殺意と共に、その時のお兄のアタシを見るなんとも言えない顔を思い出す。

(アタシの想いは終わったん…?)

そのあとに続くのは深刻な悲しみ。悲恋?
それも、もとから報われることのない。

『神菜の本当に好きな人のことは知らないけど、それが本当に無理な恋なのか。
 それを考えたらいいと思う。無理ならさっさとあきらめる。好きなら頑張ってみる。
 可能性があるなら頑張れ! 応援してるぞ! あんまり泣くなよ!』

「お兄…う…ぐす…ぅ……」

涙が止まらない。頭が痛い。胃がムカムカする。

(無理とちゃう! 無理とちゃう! 可能性があるなら応援してくれるって言ってたやん…!)

でも…やっぱりアタシは妹…世間では認められない。
可能性は考えた。結婚はしなくても、一緒に暮らすようにすること。
親が離婚したあと戸籍を変えること。別の国に移住すること。

どれも現実的じゃない。
そもそもお兄がアタシを女として見てない。
結ばれるという前提条件がすでに無いのだ。

「お兄…お兄さん…ウチのお兄…グス…」

だから一番の目的はアタシを好きにさせることだったのに。
涙でぼやけた過去のメールの文字を見直す。
まだメールがなくて手紙のやりとりをしていた時の文章も、今では全部携帯の中に入っている。
それを見ながら思う。あの頃のままでいれたらどんなに良かったか…

『おにいへ
 とうきょうはどんなとこ? おもろいん? うちもこんど行くで。
 おにいとけっこんしたら、どっちですんだらええんかな。
 いまからなやんでいます。おにいだいすき!
 そっちからもあいにきてや!』

結局あの頃、両親はうまく行くことはなく時間と距離だけが過ぎて、文字でしか離せなくなった。
でも実際の距離が遠くなって時間が経つごとに、アタシはお兄との心の距離が近づいていった。

なんでも話せる相手。一番大事な相手。
思春期に入った頃には、もうお兄を一人の男性として愛していた。


148 名前:関西から来たキモウト17 ◇qtuO1c2bJU[sage] 投稿日:2012/06/13(水) 15:48:13.10 ID:FdkUhPFU
なんでも話せる相手。一番大事な相手。
思春期に入った頃には、もうお兄を一人の男性として愛していた。

―ガチャ

遠くからドアの開く音がした。誰な? お兄?

アタシは急いでベッドに寝転び毛布にくるまった。
気付かなかったけど自分の服と下着が汗でびっしょりで気持ち悪かった。
頭痛も治りそうになかった。


149 名前:関西から来たキモウト18 ◇qtuO1c2bJU[sage] 投稿日:2012/06/13(水) 15:49:15.04 ID:FdkUhPFU
「ただいま」

俺は玄関から妹を寝かせた自分の部屋に向かう。
正直気まずい。神菜が俺を男として見てる。
そんなことを意識してしまうと、なぜか緊張してしまう。
いつも通りにしてればいいのに。

『ゴメン…好きんなってゴメンな、お兄、好きやねん…ゴメン…』

くそ。神菜の泣き顔を思い出すたびに心が締め付けられる。
ドアの前に立つ。持っている大きな手さげ袋を見る。
中にはさっき翔子から借りてきた服が入っている。

『服? こっちに来る時、持って来なかったの?
 ま、いいわ。ちょっと待ってね。あの子の身長だと…』

翔子は意外にも親切に、神菜用の服を貸してくれた。
神菜が夏風邪を引いたみたいと言ったら、自分にも責任があると目を逸らしながら謝っていた。

―コンコン

自分の部屋のノックをするなんて始めてだ。

「神菜、入っていいか?」

返事がなかったので入った。神菜は寝ていた。
まだ意識がないんだろうか。相当ショックだったみたいだし。
ベッドの側に座って神菜の額に手を当てる。

「…ん…っ」

神菜の息が漏れる。起こしてしまったと思ったがそのまま寝息を立てている。
それにしても凄い熱だ。汗も酷い。
俺は熱を計るため、体温計を手にとった。
神菜の左肩に手をやり、その脇に当てた。

「…ん…んぅ…ぅ…ぅん…」

妹の声がやけに色っぽいので、こっちまで変な気分になりそうになる。
体温計を固定するために肩と腕を抑えたままじっとする。
待ってる間にふと妹の胸に目が行く。
上下してる胸の膨らみが、小さかった妹も女になったんだと改めて意識させる。

―ピピピ

体温計が鳴ったので温度を見る。

「40度!? ヤバ…! 医者呼ばないと…」

携帯をポケットから出そうとした瞬間、腕を掴まれた。

「か、神菜?」
「医者は呼ばんでええよ」
「…でも、こんなに高熱…」
「熱やないから」
「無理すんなよ」
「ちゃうってホンマに」
「でも…」
「もっかい体温計貸して」
「あ、ああ」


150 名前:関西から来たキモウト19 ◇qtuO1c2bJU[sage] 投稿日:2012/06/13(水) 15:49:40.55 ID:FdkUhPFU

神菜は何度か深呼吸をしたあと、目を閉じて自分の脇に体温計を当てて計り直す。


「38度1分…?」

神菜の体温は下がっていた。それでもかなりの熱だけど。

「さっきの40度はなんだったんだ?」

妹を見つめながら質問する。

「お兄が触るから…」
「え?」
「お兄のせいで熱上がっただけやから…」
「悪い」
「謝ることちゃうから、ええ」

つまり…そういうことか…?

結局、神菜はそのあと大人しく着替えたあとバファリンを飲んでから眠った。
服の着替えのとき『あの女の匂いがする』って言ってたけど。

はあ、しばらくは安静だけど、これからどうなるんだろう。


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最終更新:2012年07月15日 22:40
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